ある月曜日、テレビの音も聞こえず簡素な料理をする音だけが鳴る部屋で、陽咲乃愛は昨日の新聞を読んでいる夫の陽咲永輝に向かい「ねぇ。あなた」と切り出した。
「そろそろあの子に真実を教えましょう」
「あぁそうだな。叶愛。昨日の新聞を読むのも飽きてきたところだ――――――。
「ミラボレアスによってゲームは始まってしまったからな」
永輝は新聞をテーブルの上に置き、真剣そうな顔で手を組み一息ついた。
「あの子に教えてやらなきゃな。俺達親子三人は人間じゃないと」
「勿論よ。全始神様からあの子の力を制限するように言われて17年‥‥愛は実に人間らしく育ったわ。あまりに非力に育て過ぎて人間共からいじめられるぐらいにね!」
乃愛は青筋を建てながら調理に用いていた包丁を震々と振るわす。
額には龍の顔を用いた紋章が現れた。
「落ち着け乃愛。いや‥‥ミラグレンザ。もうあの子は弱い存在じゃなくなるんだ!」
「‥‥!。ごめんなさい。ミラエテーネ。カッとなったわ。17年も人間みたいな生活を送ってたせいかしらね」
自虐気味に笑うグレンザの手をエテーネはギュッと握る。
「俺も人間的になったみたいだ。全始神から君と番になり子を成すように言われ最初互いに拒絶してたよな?」
「うふふふ、そうだったかしら」
「そうだとも」
ジィっとエテーネもとい永輝は
「本来だったら俺達は人間の身体になることも他種族のように交尾することもないが、敢えてそれを行い産まれたのが愛だ」
「そうね。最初はオギャアオギャアって煩わしささえ感じたけど段々あの子に愛情を持つようになっていったのよね」
愛の成長過程を懐かしみながら乃愛は話を続ける。
赤子から高校生になるまであっという間だった。
『光陰矢の如し』とは人間にしては良く考えた言葉である
「私たまに思うの。あの子には強烈な加護が付いてるんじゃないかって、ミラボレアスの力を使え無いのに逆境があっても友人なり自分の力なりで乗り越えて来たわ」
「運も実力のウチと言うからね。龍雅君に感謝だな‥‥‥‥尤も彼も愛の敵になってしまうが」
そこで二人は口に出しての会話を辞めた。
あの子、起きたみたい。
そのようだな。
愛が目覚めた。自室の扉を開け階段を降りいつも通りにキッチンにパジャマ姿で現した。
「おはよー。お母さん。お父さん。あれなんか今日いつもより静かだね」
「おはよー。愛」
「おはよう愛。まぁこんな朝も良いじゃないか。それより父さん達お前に大事な話があるんだ」
「なに?」
愛娘に伝えなければならない‥‥‥愛も高貴な血統である『ミラボレアス』の一員だと。