吉羽光が勾玉の力を宿したのは一週間前だった。
「吉羽ぇ、お前キャラプリン買ってこいや。俺の大好きなキャラだ!分かるよなぁ?」
「‥‥‥はい」
階段に座った金髪の少年に命じられ、光はオドオドした様子で校外にあるコンビニを目指した。
中学生活‥否。小学校で黒輝龍雅に『遊び』を邪魔されてから自分の人生はおかしくなったように感じていた。
あん時は全盛期だったなぁ‥‥‥。
陽咲愛‥‥‥‥人形遊びが好きな同級生の女子を、教育委員会である親の威をかり担任に手出しさせずほぼクラス全員でよって集って虐めてた時を思い出し少しばかり気分が高揚するが、自分は使いパシリにされてる現実が伸し掛かりすぐまた落胆した。
あの龍雅に邪魔されて以来(自業自得だが)、彼の生活は目茶苦茶となる。
彼が愛にしていたイジメが公になり光の両親は教育委員会の職を解かれ懲戒解雇となった。
『本当に申し訳ございませんでした』と涙目で会見したその当日に帰宅した両親に光は殴られたり蹴飛ばされたりし、次の日熱を出したが両親は労基署や人伝に職探しにいき介抱してくれたのは祖母だけだった。
その後‥‥一ヶ月もしない内に両親は離婚。
父も母もすぐ蒸発した‥‥‥。
だらしない両親を見兼ねた同棲していた父方の祖母が、まだ幼い光を引き取り今日に至るまで面倒を見てくれた。
祖母からは何度も
『光。あんたはまだ幼いけどとんでもない事をしでかしたんだよ。今度はちゃんと婆ちゃんがあんたが輝けるように面倒見てやるからね』
と言われた。
台詞の始まりの際はムスッとした様子だが、半ばからは孫を可愛がる優しい祖母の目に変わる。
子供ながらに祖母の叱咤の言葉は心に響き‥‥‥‥。
嬉しかった。
だけど結局こんな人生か‥‥‥。
当初描いていたエリートへの道のりは外れ、あまりお金が掛からぬよう地元の高校へと進んだ。
そしたら「お前の顔見ててムカつく」と言うひょんなことでイジメられて今ではパシリだ。歳下にもタメで呼ばれパシられる。
変な反社会的勢力の傘下にもパシリの名目で無理やりいれられてしまった。
「‥‥俺は社会の外れ者だ。親ガチャ当たったと思ったけど人生こんなハードモードになるなんて予測出来たかよ!」
右足を思いっきり叩きつけ、目から涙を零した。
彼は人生に悲観していた。
しかし彼が仕出かした事を考慮すればとても彼には同情出来ない。
彼自身もそれはどこかで納得している。
今の光に相応しい言葉は因果応報だろう。
「クスクスクス。大変ね、器に見合わないプライドを持ってしまうと」
「誰だ‥‥?」
馬鹿にしたような口調がした方を見ると『白いドレスを着た少女』が立っていた。
その少女は太陽のような神聖さを醸し出し、浮かべるその笑みの裏には月のように真っ暗なドス黒い雰囲気を感じる。
はい。と彼女は握った右手を彼の前に差し出しゆっくりと開いた。
手を開く際に黒き瘴気が漏れ、白く光り輝く勾玉が渡された。
「弱き人間。この力を受け取るがいいわ。尤もそれをアタリかハズレか判断するのは貴方次第だけどね、くれぐれも楽しませてね?。吉羽光」
「どういう事だ‥‥?」
親指で彼女は自分の心臓部分を差し示した。
「ここにそれを入れなさい。そうすれば貴方は人間を越え、見える世界も違って来る」
恐る恐る勾玉を入れると、脳裏に白き身体から闇の如き狂竜ウィルスをバラ撒く『天廻龍シャガルマガラ』が映し出され彼は勾玉使いとして覚醒した。
「ハァ!。これがモンスターの力‥‥‥。ありがとうミラ‥いない?」
礼を言うべき祖龍は消えていた。
光はこの力を用い今まで馬鹿にしてきた同じ高校の輩を殺害。
勾玉使いとして自分の名前のように光輝くようにまた新たな人生を歩むはずだった。
‥‥‥‥‥‥
「ゲェッ‥‥‥ガハッ!ゴホッ!」
「弱い人間風情が、私に勝てると思った?」
自身の人生の歯車を狂わせた原因の1人である陽咲愛に手も足もでず、全身を炎や雷で焼かれたり、首が凍りついたり、心臓と肺を何度も潰され死にかけていた。
かろうじて勾玉の再生能力でギリギリ死には至ってないが生き地獄だ。
愛はただ立ち尽くし攻撃のモーション等一切とってないのに光の身体はどんどんボロボロになっていく。
ゴミを見るような視線を光に浴びせながら。
「お‥‥‥まえ‥‥‥何で‥‥まが、た、ま使いでも‥‥ない‥‥く‥‥せに‥‥」
「私は勾玉使いではないけど本来持つべき力を封じられ人間として育てられたモンスター。手枷を大量に付けられた状態の私を甚振れて楽しかった?」
「ぐ‥‥‥ぅ‥‥!」
「あんた如きに私のモンスターとしての力を感知させはしない」
愛の周りに勾玉使いの基本属性である火・水・雷・龍・氷の他に複合属性や双属性等他の属性も集まる。
「永遠に魂まで消え去るがいい――――――
『森羅万象』
手だけ翳し、彼女が放った属性エネルギーの攻撃は光速を遥かに上回る速度で光にぶつかり彼の存在は抹消した。
彼は死んだと言う事実すら気付かず無となった。
「これで人間時代の忌々しいあの記憶に決着が付いた‥‥あとは龍、貴方が私を本当に愛してるか確かめるだけだね」
真っ黒な翼を生やし愛は空を飛ぶ。