『速報です。本日午前11時頃、死刑囚が投網拘置所より脱走しました。投網市警察によると抑留者、刑務従事者に多数の怪我人が出たとの情報が入っており……』
「おやおや、死刑囚が勾玉の所有者に選らばれるなんて悪運が強い奴もいるもんですぅ」
興味深いニュースにテレビを見ると「休憩ですね」と読んでた参考書を机の上に置きながら少女は自作のクッキーを食した。
ふわぁぁぁと両手を伸ばし凝り固まった肩を叩く。
「そのまま法に従い死んでいれば辛い思いをせずにすんだものを……ねぇ、アクラ・ヴァシムちゃん?」
「キュイイイ」
彼女は手の平ほどの大きさの甲殻種のモンスター『尾晶蠍クラ・ヴァシム』の頭を撫でる。
勾玉所有者は自在にモンスターの大きさを変えられるのだ。
指定した大きさも相まって現存の蠍に似た容姿をしてるアクラ・ヴァシムだがその実は全く作りが異なる。
普通の蠍は10本の脚を持つのだがこのモンスターは6本だけ。
赤く光る4つの目を持つ。
更には特殊な結晶を作る体液を持ち、時に纏い時には外敵に噴射し結晶によるダメージと拘束攻撃を与えるという防御にも転じられる非常に強力な攻撃手段を持っているのだ。
「あの祖龍は言いました。ゲームを制し玉座を目指せば望みを叶えられると……」
「キュイ?」
小型化させたアクラ・ヴァシムを机の上に置くと、少女はアクラ・ヴァシムに語るように言った。
「1年前……蒼王は自殺を計りすんでのところで双子の姉である私が止めました……以来、あの子は暗闇の中……私はまたあの子に光を見せたいんです」
『たゆまない人生という光を―――』
アクラ・ヴァシムの上に滴がポツ、ポツと落ちる。
「あの子は虐められてから性格が変わってしまった。やんちゃなところもあったけれどどこか憎めなくて私にとっては可愛い弟だったのに……」
「―――正直言ってあの子から生きる楽しみを奪った連中を許せません。でも復讐し更に悲劇を増幅させるのはいや。幸いにもいい選択肢が出来たから私がこの手をあいつらの血で染めることはないでしょう」
「……血に染め上げる対象は他にいっぱいいますからね。先ずはこの極悪脱走死刑囚からです。あなたの力を貸してアクラ・ヴァシムちゃん」
「キュイ」
……
…………
………………
……………………
全国的に報道された馳踊彩人が脱獄したニュースを見てたのは彼女だけではない。
遠い場所にある黒結家でも、龍我、銀羽、金皇の3人にもニュースの内容は伝わっていた。
「全く日曜日に相応しくないニュースだな」
「って言うかこれどう考えても勾玉所有者の仕業よね?」
「だろうな」
死刑囚が勾玉所有者に……悪夢以外の何物でもないな。
「ちょうどいいわ。私達でこいつを倒さない?。こんな真性のクズにあの力は勿体なさ過ぎるもの」
「名案だな!。俺達のトレーニング相手にはぴったりだ」
「まぁ、能力を把握しておくことは大事か……。ふん、では行くか悪者を成敗に」
3人の目的は一致した。