愛紗の人質にされ、彼女が捕らえられる原因となった母子がボロボロの姿で見つかったのは、夜になった頃だった。
あまりにも帰りが遅いため、桃花は馬を飛ばし、三人を探したのである。
そして日も暮れた頃にようやく参道を必死で進む親子の姿を見つけたのだった。
歩き続けてきたのか、母親の着物はドロドロに汚れ、足はガクガクと震えていた。桃香たちは一旦、母親と子を馬に乗せると、村へ引き返した。
桃香の家で親子は手厚い保護を受け、ようやく母親は落ち着きを取り戻したようだった。自分が捕まり、そのせいで愛紗が祝家荘に捕らえられた。自分達はそこでお役御免となったのか、解放された。祝家荘にも役人はいるが、彼らと祝朝奉はグルなのを知っているため桃花村まで戻ってきたのだった。
すぐに若者達が桃香の家に集まった。
「すぐに愛紗を助けにいくのだ!」
鈴々の言葉に血の気の多い何人かが同調した。それを、桃香は制して言った。
「落ち着いて、皆。これはきっと罠だと思う。祝家荘の人達が愛紗ちゃんを捕まえておいて、二人を逃がすとは思えないもの」
人質に使うために三人とも捕らえておくはずだ。それをせずわざわざ親子を返したのは、きっと祝家荘の罠だろう。愛紗を救うために攻めこんできた自分達を一網打尽にするつもりだろうと、桃香は言うのだ。
「でもこのままじゃ愛紗が……」
「分かってる。だから落ち着いて作戦を立てよう? ね?」
桃香は何とかいきり立つ鈴々を宥めた。そして、皆で今後の対策を立てることにした。何とか話し合いで解決したいと思った桃香だったが、今まで何度も話し合いの機会はあった。だが祝家荘は桃花村に帰順を求めてくるだけだったのだ。話し合いは無意味というのが多くの者の意見だった。
兵力では祝家荘が勝っている。少ない兵で戦うためには夜襲しかないだろうと、結論になった。
桃香と鈴々が兵士をまとめ、今夜すぐに奇襲をしかける。そして愛紗を救出し、一気に離脱するという作戦だった。
また、万が一の時のために数人は村に待機させることにした。
もし桃香たちが負けることになった場合、桃花村そのものが危ない。
その時は北方の公孫賛を頼ることになった。公孫賛は桃香と同じ師を持つ学友で、今は北方で軍を率いている。
真夜中になって、桃香たちは出発した。
暗い夜道を月明かりだけを頼りにして、馬を走らせる。
数刻走り、桃香たちは祝家荘の前まで辿り着いた。
夜中のため、静まりかえっている。
桃香は斥候を二人ほど選んで先行させた。
村は不気味なほど静かで、桃香は不安を覚えた。
斥候達が帰ってきた。
祝朝奉の屋敷は皆眠っているのか、静まりかっているらしい。
「お姉ちゃん、行こう!」
鈴々が言った。桃香は無言で頷くと、手を挙げて合図した。
先頭に桃香と鈴々が二人で進み、その後ろを仲間達が駆けていく。
村を駆け抜け、屋敷まであと一歩と迫った時だった。
火矢が一つ、屋敷の中から放たれた。
瞬間、一斉に松明が屋敷の中から灯り、弓が飛ぶ。
さらに周りからも一斉に敵が湧き上がった。
「罠だっ!」
誰かが叫んだと同時に、弓の雨が劉備軍を襲った。
弓が終わると周囲の伏兵が切り込んでくる。
隊列は滅茶苦茶になり、逃げようと散り散りになった者から討たれていく。
ある者は斬られ、ある者は弓で射られ、ある者は落とし穴に落ちる。
戦場は大混乱に陥った。
「お姉ちゃーん!」
「鈴々ちゃん!」
乱戦の中で二人は互いを見失った。
「引いてっ! 皆、引いてーっ!」
撤退命令を桃香が出した瞬間だった。
草むらから熊手が飛び出し、桃香の襟首に引っかけたのだ。
そのままぐいと引かれ、桃香は馬から落とされた。
声も出せないまま桃香はずるずると草むらへ引き込まれ姿を消した。
混乱する戦場で桃香が消えたことに気づける者はいなかったのである。
鈴々は何とか生き残った者を集めて、戦場から離脱する。
朝になる頃には、祝家荘の前は桃花村の若者達の死体がそこら中に落ちていた。
鈴々が村に戻った時には人数が出発した時の三分の一になっていた。
そこで皆は初めて桃香がいないことに気づき、戦慄するのだった。
今後の作品展開
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恋姫無情 蜀編の続き
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恋姫無情 魏編
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恋姫無情 呉編
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ハイスクールD×Dの陵辱小説