監禁され、犯されるだけの生活。でも──。
気が付いたら男のペニスが私を貫いていた。
「え? 何これ!? やめてください!」
しかし男はやめるどころか、一層激しく動き出す。
異物感と男から伝わる熱が、私に強い嫌悪感と恐怖を与える。意識が明確になるにつれて、私に腰を打ち付ける男をはっきりと感じるようになっていく。
恐い。気持ち悪い。なんで。いや。恐い恐い……恐い!
「やめて! ねぇやめてよ! ねぇ!」
叫んでしまう。感情を上手くコントロールできない。
男のペースがどんどん上がっていく。
もう出されるんだ。嫌。なんでこんなことに……。
荒い息づかいが耳につく。
「お願い……中は嫌……。お願──!?」
男が突然、唇を押し付けてきた。そしてすぐに私の中からそれが引き抜かれる。
あ……お願い、聞いてくれたんだ……。
男から放たれる液体をお腹に感じてから、漸くそれを理解できた。
あれから1週間経った。その間に幾つかのことが分かった。
私は10畳程の洋室に監禁されている。そして窓の外に見える景色から、ここは高層マンションの1室だと思われる。
「退屈……」
日中、
初めての後にあいつは「僕は涼真。これからよろしくね」と存外に甘い声で告げてきた。その言葉通り涼真は毎日、私を抱いた。
「……」
この部屋にはパソコンやテレビなんかは無い。あるのはベッドとタンスに椅子がひとつだけ。部屋から出られない以上、ただ考え事をしながら時間が流れるのを待つしかない。
唐突に玄関から音がした。多分、涼真が帰って来たんだ。
さらに暫くしてから部屋のドアが開けられる。
「ただいま」
「……」
はっきり言って私はこの男が嫌いだ。こんなことをしてくる奴を好きになるわけがない。それにこんなことをしてくるくせに、まるで彼氏か何かみたいに私に接してくる。
得体の知れない気持ち悪さがある。
そして何より恐い。
涼真が私の腰に手を回す。
ぞわぞわとした悪寒が身体に走る。
こいつが私の身体を触り出すと、決まって服を脱がしてすぐに挿入してくる。そして毎回私に精液を掛けてくる。
それが堪らなく嫌だ。こいつの性欲をただただ一方的に吐き出されると、惨めで悔しい。私はなんの為に生きてるんだろうと考えてしまう。
「……またするの?」
「嫌かい?」
嫌に決まってるでしょ!
涼真が私の着ているワンピースを剥ぎ取る。下着も脱がされ、全てが電灯の光に晒される。
次いで涼真も服を脱ぐ。もう何度も見た涼真のそれがいきり立っている。
「うん、やっぱり凄く綺麗だ」
「……」
そんなことを言われても気持ち悪いだけだって分からないのかな?
「愛してる」
そう言って私の唇を貪る。ねちゃねちゃとした感触がする。吐き気がする。
でも抵抗はできない。
私は首から下が動かない。
ムカつくけどどうすることもできない。
また犯され、掛けられる。
もう8日目だというのに慣れたりはしない。
少ししてから涼真が私の背中と膝裏に手を回す。
「お風呂入ろっか」
「勝手にすれば」
私に選択肢は無い。
お姫様抱っこで運ばれる。
涼真は私を犯した後、必ず一緒にお風呂に入る。
「隅々まで綺麗にしてあげるからね」
「~~っ」
風呂場の扉が開けられる。介護用の椅子がある。ひじ掛けが付いていて安定してる。
「じゃあ座って」
そう言って私を椅子に乗せる。
「うーん、とりあえず体から洗うね」
始まってしまった。
「……」
意外と涼真の洗い方は丁寧でとても優しい。赤ちゃんを洗ってあげるときみたいに、私を傷付けないようにしている感じだ。
スるときは私のことなんて考えないくせに……。……違う、いい加減認めよう。
涼真が中に出さないのは、多分、私が中は嫌って言ったから。妊娠が嫌ならピルでも飲ませればいいのに、それもしないで必ず外に出してくれる……。
それに涼真の行為から痛みは全然感じない。認めたくなかったけど、優しいのだと思う。
そして何回も愛してるって……。
……なんでこんな訳の分かんない態度なんだろ。監禁してレイプして、優しくして……。何か事情があるのかな。
「痛くない?」
「……」
なんだよそれ。なんで優しくするんだよ。
「あれ? もしかして痛かったかな」
「……大丈夫」
そんな安心した顔しないでよ。
「よかった。最後はお尻とアソコを洗うね」
「……うん」
涼真が私の汚ないところをゆっくりと擦っていく。恥ずかしくて死にそう……。でもなんか……。
「……ん」
やば。変な声が出ちゃった。気づかれたかな?
「……」
涼真からの反応は無い。黙々と洗ってる。大丈夫みたいだ。よかっ──!?
びっくりした。いきなり私の手が掴まれ、涼真のペニスに押し付けられた。
「ごめん、もう今日はしないつもりだったけど我慢できないんだ。手でしていいかな」
訊いておきながら、すでに私の手は涼真のペニスに密着させられてる。
ビクビクとしているのが分かる。不思議と嫌悪感は湧いてこない。
「……いいよ」
涼真が私の手をペニスに押し付けるようにして、ゆっくりと扱き出す。
ボディソープで抵抗が弱まってるのに、あまり強く擦らないようにしているのが伝わってくる。そんなに弱くしなくてもいいのに。この程度で感じるのだろうか?
「もっと強くしてもいいよ」
涼真の手が止まる。
あれ? なんで?
「……それはダメ。
どうしてそんなこと言うんだよ……。
「……」
駄目だ。どの言葉を選べばいいか分からない。
「……身体洗う続きをするね。気持ち良かったよ。ありがと」
「……うん」
我慢しなくていいのに。
私の手の中に残る涼真の熱が……。
さらに3週間経った。初めての日から1ヶ月。相変わらず私の世界は10畳の洋室とお風呂場だけ。
でも退屈なことを除けばそんなに不満は無い。
「早く帰って来ないかなぁ」
あのお風呂の日以降も涼真は私を毎日抱いてくれた。……いつの間にか嫌悪感は綺麗さっぱり無くなって、純粋な悦びと快楽だけが私を支配していた。
……涼真を愛しているのだと思う。
身体の動かない私の世話を嫌な顔をしないでしてくれる。エッチも優しい。毎日同じベッドで寝て、何度も愛してると言ってくれる。
ここまでされたら好きになってもおかしくないと思う。
ガチャガチャと玄関から音がした。
涼真が帰って来た!
涼真の精液を浴びる感覚を想像してどきどきしながら待っていると、やっと部屋のドアが開けられた。
「おかえりなさ……い……」
「ただいま。今日は新しい家族を連れてきたよ」
新しい家族……?
涼真が連れてきたのは14、5歳程の美しい少女だった。まるで真冬の湖に突き落とされたかのような衝撃。
私と涼真だけの世界が壊される。それは受け入れ難い。
涼真は何を考えてるの?
「紹介するよ。この子は
「はじめまして。私も身体を動かせませんが、仲良くしてくださいね」
鈴を転がすようなとはこの子の声を言うのだろう。儚げな長い睫毛が透明感のある声と相まって、深窓の令嬢という雰囲気。
「……うん……よろしく」
雪もお姫様抱っこをしてもらっている。身体が動かせないというのは本当かもしれない。
だけど、だからってその場所に居ることを許したくはない。
そこは私だけの場所だ! 涼真は何を考えてるの? もう私に飽きちゃったの? でも昨日もいっぱい掛けてくれたし……。
「どうしたんだい? 具合が悪いのかい?」
涼真が不安げに私の目を覗き込む。
「……うん。少し頭が痛くて」
心配してほしくて、つい嘘をついてしまう。子供じゃないのにカッコ悪い。
「それは大変だ。分かった。今日はゆっくり休んでて」
「……え、いやそこまででは」
「無理はいけませんよ。大事になるかもしれません。お休みも必要ですよ」
雪がしゃしゃり出てくる。
ムカつく。お前は黙ってろ。
しかし私の願いは叶えられず、今日はシてもらえないことが決まってしまった。
「じゃあ僕たちはお風呂に入ってくるからね」
2人がお風呂に向かう。ほどなくして水が打ち付けられる音が聞こえてきた。
涼真が雪の裸を見ていると思うとイライラする。男の人ならきっとムラムラしちゃう。
嫌だ。涼真に掛けてもらえるのは私だけ。あんな奴に涼真の精液を渡したくない。
でも私にそれを止める力は無い。身体も動かないし……。涼真に飽きられてしまうと私は生きていけない……。
怒りと不安に苛まれていると2人が戻って来た。
「僕はやることがあるからまた後でね」
そう言って涼真は雪と私を残し、部屋からいなくなってしまった。
「大丈夫ですか?」
雪が話し掛けてくる。その顔は私を心配しているように見える。
「……大丈夫」
ぶっきらぼうに答えると雪が柔らかな笑みを見せる。
何それ。これじゃ私だけが悪者みたいじゃない。
「よかったです」
何か嫌な感じ。
幸せな世界が軋むような、そんな気がした。
翌日の夜にそれは起こった。
「……ん、ん、ん、涼真……様……」
「……っ! 雪……!」
涼真が雪の股ぐらへと腰を打ち付ける。雪の甘ったるい声が私を苛立たせる。
2人が交わるのを眺めながら唇を噛み締める。
涼真は今日も私を抱かないと言った。私の体調を心配して、大事を取りたいらしい。
大丈夫と言っても聞いてくれなかった。渋々了承したら、涼真は私の目の前で雪を触り始めた。そしてすぐに始めてしまった。
くちゃくちゃという音と肉のぶつかる音が、部屋に充満する。
「……もういくよ」
「ください……! 中に……!」
涼真が雪の奥へ奥へとペニスを侵入させ、震える。雪の最奥に愛を吐き出していると理解させられる。
私の中でマグマのような嫉妬心が爆発する。
なんで? なんでなの!? 私にはお願いしても中に出してくれないのに!
涼真を愛していると自覚するにつれ、私の深いところに精液を注いでほしいという思いが強くなっていった。
だから涼真に中に出してとお願いした。
でも涼真は私に負担を掛けたくないからと首を縦には振らなかった。
少しだけ不満だったけれど、私のことを大切にしてくれていると思うと嬉しくもあった。その時もたくさん掛けてくれたし、愛されていることに疑いは無かった。
でも……!
「……あり、がとうごさ、います」
ぐったりとした涼真の下で、幸福感が滲み出ている雪を見てしまうと、私だけが愛されているわけではないと分かってしまう。
「……最高だった。愛してるよ」
そして、私にも見せたことのないような気持ち良さそうな顔で雪の中にぶちまけた涼真。
ギリギリと歯軋りがやめられない。
昨日、感じた不協和音は本物だった。
でもまだ壊れていない。まだ取り戻せる。そう信じたい……。
私の世界は壊れ始めた。
涼真が私にしてくれる頻度は、次第に減っていった。反対に雪を抱く回数はどんどんと積み重なっていく。私はもう3日も掛けてもらっていない。
言葉では表現しきれない寂しさとそれを凌駕する憎しみが私を圧迫する。苦しい。
もし身体が動くなら、雪を殺しているだろう。涼真を拘束して、私の中から溢れるほど射精を強要するだろう。
そう考えると障害者でよかったと心底思う。
涼真が居ない間は雪とふたりきりだ。雪も私が憎んでいることはとっくに察している。だから今も気まずそうにしている。
「あの……」
雪がおずおずと話し掛けてきた。
なんだと言うの。あなたとは会話をしたくない。
無視していると、雪が勝手に続ける。
「夏さんが私を嫌っているのは分かります」
だったら構わないでほしい。
「でもそれはちょっとした勘違いのせいだと思います」
「……どういうこと」
何を言いたいの?
イライラする。
「だって──」
その後に続く言葉の意味はよく分からない。意味不明なことを言って、私をからかっているの? 性格最悪。
玄関から音。涼真だ。
もうそんな時間。今日は抱いてもらえるといいな。
「ただいま」
部屋のドアが開けられる。
「おかえりなさい」
「おかえり」
涼真が大きな段ボール箱を持って入ってきた。
なんだろう?
「その箱は何?」
「ん、ちょっとね」
涼真が曖昧に答える。箱は部屋の隅に置かれた。
よく分からないけれど、箱くらい大して重要じゃない。そんなことよりも……。
「今日は夏に相手してもらおうかな。いいかい?」
「! うん!」
やった!
嬉しくて、まだ触られてもいないのに私のお腹の奥からぞくぞくとした痺れが昇ってくる。
涼真が服を脱ぎ始める。ペニスがはち切れそうなくらい勃起している。
優越感が私を満たしていく。
雪が今、どんな顔をしているか気になって、チラっと見てみる。目が合った。
?
雪は悔しそうにするでもなく、複雑な表情で私を見ていた。
何を考えているの?
雪の表情の意味が気になる。でもすぐにそんなのどうでもよくなった。
雪を椅子に座らせるとベッドに居る私へと涼真がやって来る。
「愛してるよ、夏」
「私も愛してる……」
涼真が優しいキスをしてくれた。舌を絡めていると胸が揉みしだかれる。
「ん……」
口付けをしたままエッチな声が出てしまう。
涼真の手つきが少し乱雑になる。焦ったように服を脱がしてくる。
涼真が私で興奮してくれてると思うと嬉しくなる。早く私で気持ちよくなってほしい。
下着も脱がされる。
「綺麗だ……」
「……うん」
涼真が私の脚を持ち上げ、恥ずかしい格好をさせる。
これだとエッチな穴もお尻も丸見え……。恥ずかしさで身体がどんどん熱くなる。
「あ……」
涼真が私の股に顔を埋める。舌が私の中に入ってくる。
「やぁ、汚いよ……」
しかし涼真は余裕が無いのか、そこに顔を密着させ一心に私を味わっている。
恥ずかしい……。けどチラっと見えた涼真のペニスが、今にもお漏らししそうになっているのを見ると、嬉しくて頭がちかちかする。
どれくらいそうしていただろう。気が付くと私はおねだりしていた。
「入れて……。涼真がほしいの……」
涼真が慌ただしくローションを垂らす。神経がおかしくなってるせいか、私は濡れにくい。だからいつもローションを使ってくれる。
「ん……」
ローションを塗りたくられる。
そして──涼真がグイグイと私に入ってくる。目を閉じ、その感触を噛み締める。
この瞬間が大好き。強く求められていると実感できる。安心できる。
目を開けて涼真を見ると、堪えているような切ない顔をしていた。かわいい。大好き。
キスをしてから涼真が動き出す。
幸せな時間。涼真がいつもより激しく突く。この上ない安心感が私を満たしていく。
よかった。まだ飽きられてない。まだ私を求めてくれる。
それから無限にも一瞬にも感じる時間が過ぎる。そして遂に涼真が苦しげに言葉を落とす。
「いく、中に出すから──」
「──!?」
今なんて……あ、ダメ……ぼぅっとして何も考えなられない。ぎゅぅって来る──。
涼真が私の中で強く震える。
「あ……」
少し遅れてそれを理解して、嬉しさが込み上げてくる。感情が一気に押し寄せて来て、どうしたらいいか分からない。涙が自然と溢れ出す。
好き。大好き。愛してる。
しがみつきたいという欲求が私を苦しめる。動かない身体が恨めしい。
震えが止まり、少しずつ涼真のペニスが小さくなっていく。
涼真が私からペニスを引き抜く。
「……」
……?
待ってても期待する感触は訪れない。いつもはイッて少しすると、頭を撫でてキスをしてくれる。だけど今は無表情で私を見下ろすだけだ。
どうしたのかな。もしかしてあんまり気持ち良く無かったのかな。
不安と罪悪感が湧いてくる。私が中に欲しいって言ってしまったばっかりに、気持ち良くイッてもらえなかったのかもしれない。どうしよう。嫌われたら生きていけない。
「ね、ねぇ。どうしたの?」
「……気持ちよかったよ。今までありがとう」
「え、今までって……」
涼真が段ボール箱へ向かい、中からビニールシートを取り出し、床に敷く。
「夏さん……」
雪が憐れみを含んだ声音で私の名を呟く。
「え、え? なに、なんなの?」
涼真と雪の不穏な雰囲気に、嫌な感じがむくむくと大きくなっていく。
涼真が私の腰に腕を回す。まるで荷物でも持つように乱雑に抱えられる。痛い。
「痛いよ。ねぇ、どうしちゃったの」
「……」
ビニールシートの上に下ろされる。
硬いフローリングが不快。少しだけイライラする。
けど、涼真が箱から取り出した物を目にして、そんな感情は吹き飛ばされる。
「……なに……それ」
ノコギリが銀色に輝く。涼真は答えない。私の声が聞こえていないかのように何の反応も見えない。
「ねぇ、涼真! りょうま!」
もう分かり始めていた。
冷たい鉄の感覚。肩にギザギザの刃が添えられる。
「嫌! 嘘だよね!? ねぇりょう──!?」
肩から熱。痛み。
「──!!!」
声にならない叫びが漏れる。そして──。
「ぁぁぁああああ! やめて! や、めて! 助けて!」
腕が切り離される。
次いで反対の肩に痛み。
ぎこぎこぎこぎこ。ぶちぶち。
「りょうまぁりょうまぁ! たすけてころさないで! りょうま!」
「ふぅ。やっぱり手間だな。ん?」
涼真がやっと私の目を見てくれた。
「!? りょうま! 許して、もうわがまま言わないからぁ、お願いおねがぃ」
「目がキモイな」
ノコギリを置く。涼真の手が私の顎を掴む。グリグリと頭を引っ張り上げられる。そして頭が外され、ポイッとゴミでも捨てるみたいに段ボール箱に入れられる。
今度は脚の付け根から痛み。
「りょうまぁ──」
痛み。痛み。痛み。長い苦痛。身体がバラバラにされる。
「よし。こんなもんか」
涼真が満足げな声で言った。そこに罪悪感も迷いも、愛も感じられない。
「ひどいよ。あいしてるっていってたのに。あいしてるのに、ひどいよ……」
涼真がバラバラになった私の身体を箱に入れ、蓋をする。もう暗くて何も見えない。
時間の感覚が分からない。気が付いたら雪の嬌声が聞こえていた。
涼真……。
ふと、雪の言葉を思い出す。少しの納得が私の悲しみを誤魔化そうとしている。
──だって私たちはラブドールですから。愛なんて夏さんの妄想にすぎません。だから仲良くしましょう。