恋の駆け引き after OPENING【大人編】 作:しおり@活字は飲み物
ここは銀子ちゃんの研究部屋、時刻は夜12時を回ったところ。
今夜は銀子ちゃんの部屋にお泊まりすることになった。特に予定してたわけじゃないけど、あいは女流名跡戦の挑決リーグで桂香さんに引率されて、今朝から東京入りしているし、問題ない。
た、たまたまだよ!?
銀子ちゃんと夜11時過ぎまで研究会をして、キリの良いところまで終わった段階で、お開きにできることはお互い分かってたけど、意を決してお泊まりの了承をもらった。まあ、夕飯をコンビニに買いに行くついでに、こっそりアパートに戻って泊まる準備をしてきてたんだけど。
俺が先にシャワーを浴びて、その間に布団を用意しておいてもらった。薄っぺらいシングルの布団だったけど、ないよりは全然マシ。
今は銀子ちゃんがシャワーを浴びて戻ってくるのを待っている。
それにしても緊張するな〜〜
戦型の打診はしてみたけど、受け入れてくれるか分からないし、大丈夫かどうかって、どうやって確かめればいいんだろう?
布団は出してもらえたから、こっちの意図は伝わっていると思うけど、銀子ちゃんのことだから、場合によっては一晩中、将棋漬けにして終わる可能性も捨て切れない。まぁ、それならそれで、またの機会に取っておけばいい。
これからは、恋人同士としてだけじゃなく、プロ棋士同士、研究会のパートナーとして一緒に将棋を指していく。今日はお互いをそんな唯一無二の相手にしようと、改めて約束を交わすことができたのだから。
ドライヤーの音が止まったから、もうそろそろかなぁ?
あ〜〜! 緊張する!! 手汗がヤバイ…
そもそも、部屋入ってきたら、どうやって近づけばいいんだ!? 初手に入る前のことなんて考えてなかった!
し、しかも良く考えたら俺、さっき『姉弟子、あんたほんとは俺に抱かれたいんじゃないの?』なんて言っちゃったよ!?
何言っちゃってんの俺!!
この状況で、俺から改めて誘うのってヤバくない!?
そんなことをもんもんと考えていると廊下の方から物音がした。
トン…トン……トン………
不審に思って近づいてみると、廊下にあるバスルームのドアが内側からノックされてる。どうしたんだろう? 鍵が開かなくなったのかな?
「銀子ちゃん?」
「や…いち……」
「どうしたの?」
「……あの、その……わたし、どうすればいいか………分からなくて……」
バスルームのドア越しにも、恥ずかしくて身動き取れない様子が伝わってきた。そんなに恥ずかしがられると、こっちまで緊張する…
「開けるよ?」
バスルームのドアを開けると、ハワイの夜の天使がいた。
銀子ちゃんはなぜかハワイで俺から強奪したパーカーを着ていた。風呂上がりだからか、桂香さんからもらったカチューシャと俺があげた雪の結晶の髪飾りは着けてなくて、脚は素足でショートパンツは履いていないようだった。
俺は一気にあのハワイの夜、ホテルの姉弟子の部屋の前の廊下に引き戻されたような感覚を覚えた。
だってあの時と同じように銀子ちゃんの首筋は真っ赤で、細くて長い睫毛も微かに震えていたから。
「……さっきまで着てたのは、汗かいちゃったから…これは、たまたま…ここに、干してて……」
銀子ちゃんは表情が見えないくらいうつむいて、震える声で囁いているけど、あまり頭に入ってこない。
それよりも、聞きたいことがあった。
「いいの?」
銀子ちゃんは俺と一瞬だけ目を合わせてから、視線を落とした。そして、微かに
一歩近づいて左手を肩に置く。銀子ちゃんは一瞬びくっとしたけど、振り払ったりはしない。
首元にあるジッパーの金具を半分くらいまで下ろす。
あの日の水着に似た、黒のレースの下着……
あの夜の別れ際と違って、銀子ちゃんは恥ずかしそうに下を向いてしまっていたから、俺は顎に手をやって少し持ち上げて、もう一度『証拠』を見せた。
銀子ちゃんは、俺の首にほっそりとした両腕を絡ませて、『返事』をくれた。
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確かに『恥ずかしい』と言った。
緊張でバスルームを出られなくなっていたから、八一に抱き抱えてもらって部屋へと戻って。布団にたどり着いたら、パーカーをあっという間に脱がされて。八一もシャツを脱いで上半身だけ裸になって、私は下着姿のままで、キスを繰り返して抱きしめ合った。
ぴたりと触れ合った素肌から伝わる体温が、最初は裸で抱き合っていることを意識させたけど、だんだんと二人とも熱くなって、溶け合ったみたいに、いつの間にか気にならなくなった。
多分、今が『キスの少し先』なんだと分かった。
そして、背中に回っていた八一の手が、ブラのホック部分を探っているのがわかって、つい言ってしまったのだ。
『恥ずかしい』と。
胸が小さいのがコンプレックスなのは、鈍感な八一だって分かってるし、むしろネタにしてイジってくるくらいだ。
だから、優しさで言ってくれたのだと思った。『じゃあ、最初は見ないから、背中を向けて』と言われた時は。
言われた通り、素直に後ろを向いてみたら、あっという間にブラのホックを外されて、両方の肩紐をするする下されて、気づいた時には手の届かない場所に放り投げられてしまっていた。
手元には隠せるものが何もなくなっていたから、慌てて両腕で胸の前を覆ったけど、八一はそれを直接は
最初は、研究を始めた時と同じようにお腹のあたりに両腕を回して抱きしめられた。背中に八一の素肌を改めて感じて、鳥肌が立った。
首筋に顔を埋められて、唇と舌が耳たぶから肩までゆっくり辿っていって、くすぐったいのと気持ちいいの中間みたいな感覚に体が震えた。
体が少し離れて、うなじにキスをされながら両手でゆっくりと背中を撫であげられた。
「あっ……んっ!」
びっくりするくらい甘ったるい声が出てた。自分にこんな声が出せるなんて、自分でも知らなかった。
これが、あられもない声ってやつ?
いけない!
聞かれちゃう!!
とっさに左手で口を覆って、これ以上声が漏れるのを防ぐ。
でも、胸のガードが弱まるのを待っていたかのように、八一の攻めが始まってしまった。
背中を撫でていた両手が私の脇の下に差し込まれて、ゆっくり前に体重をかけられた。布団に倒れこまないように咄嗟に右手を布団の上について支えたら、もう防御に使う駒は尽きてしまっていた…
しかもシーツが滑って片手では支えきれなくて、結局両手は布団の上。
固く囲ってあった玉の囲いを一枚一枚剥がして、丸裸にする様に…
気づいた時には、声も抑えられないし、胸を
キスしていた時と違って、喋れることを思い出して、とっさに制止の言葉を紡ぐ。
「あっ…やっ! だ、ダメッ!!」
それなのに、八一は私の耳たぶを優しく
「……なんで、ダメなの?」
「んっ! だって! い、いやっ」
イヤだと言ったらやめてくれるだろうという淡い期待は、質問の方向性を少しずらすことで呆気なく打ち砕かれた。
「痛いの?」
「っ……ああっ」
そうじゃないけど!
「痛くは、ないんだね」
「あっ!」
ならいいでしょ? ってそうことじゃないのに〜
「じゃあ、気持ちいい?」
「んっ〜〜」
そんな、ホントのこと言えないよ!
「声、聞かせてよ」
「ひゃん!」
無意識にこの状況から逃げようと思って体を前に進ませようとしたけど、それはただ余計に退路を狭めただけだった。
逃げ損なった私は布団に両肘を突いて倒れ込むのを辛うじて防いでいるだけで、むしろ八一も肘を突いて体を密着させるように覆いかぶさってきて。
自分の意思で動いているようで、相手の思惑通りに動かされていると気づいた時には、もう、どこにも逃げられなくなっていた。
八一は左手で私の手を包み込んで、首筋やうなじに唇を這わせながら、右手で私の胸の頂きを摘んで攻め立てる。
「ここ…」
「ひゃっ!!」
「こうすると気持ちいいんだって?」
「あ、あ、あんっ!」
「ぎんこちゃんも?」
「ん〜〜」
八一の言う通り胸を攻められる度に感じたことのない快感が走って、堪えようとしても恥ずかしい声が止められない。その声に煽られたみたいに、八一の吐息も荒くなっていく…
こんなことになるなら、『恥ずかしい』なんて言わなければよかった。まだ正面からされる方がマシだった気がする。
でも、まだされたことないから、比べてみないと分からないか…
いつの間にか比べる為に、正面からもしてもらうことを、心の底で期待してしまっている自分の思考の桃色さ加減に、自分で呆れていると…
私の思考を読んだように、くるりと視界が反転させられ、今まで見た中で一番大人のオトコの顔をした
正面からされるのは、キスとかが入る分、より難易度が高かった。
*****************
この前この部屋に来た時、もしかしてとは思ったけど、背中からするのは想像以上によかった。
口づけが出来ないし、顔が見えないのは残念だけど、口と両手が自由に使えるし、密着感もある。
銀子ちゃんの小さい胸も仰向けだと重力に負けてしまうけど、うつ伏せ状態なら柔らかい丸みを感じられた。
なるべく早急にならないように揉みしだいていたら、頂きが段々と固く尖っていって…
俺の手がそこを攻める度に、かわいくて甘い鳴き声を聞かせてくれるようになった。いつまででも聞いていたいくらいだった。
そして何よりうなじや首筋に舌を這わせて、銀子ちゃんの甘い香りを吸い込みながら、堪えようとしても堪えきれない震えや声をダイレクトに感じられて。
もうそれだけで、全身が熱くなって、無意識に息が荒くなっていく。
背中からを堪能して、反転させて同じように正面からも攻めた。
こっちはこっちで胸を触りながら、唇以外にも色々な所にキスできる上に、時々銀子ちゃんの快感に耐える表情が拝めて眼福だった。
そろそろ、いいかな?
キスの位置を首筋、肩、鎖骨とゆっくり下げていって、胸の頂きにたどり着いた。反対側の胸は指で弄びつつ、口に含んで舐め上げてみたら、銀子ちゃんの体は大げさなくらいビクッと跳ねた。
「ちょ! ちょっと!」
「ん?」
「なんで、な、なめるのよ!?」
「ああ…気持ちよくなるらしいよ? 男も女も」
「そ、そんなこと…んん…」
「ほら…」
「あっ、あっ…だ、だめ…そんな、なめちゃ…」
舐めるだけじゃなく、吸い上げてみたり、舌先で転がしてみたりしたら、とたんに声の色が変わってきた。
体の反応で分かる。
今の『だめ』は『もっと』の意味だ。
銀子ちゃんの右手は必死にシーツを掴んでいて、左手は俺の頭を押し退けようとしたのか、逆に押し付けようとしたのか、もう本人も分からないんだろうけど、俺の頭を掻き抱いている。
銀子ちゃんは、口では『いや』とか『もうむり』とか囁いてるけど、俺を煽って『もっとして』と言っているようにしか聞こえない。ご要望にお答えして、口と手の位置を交換する事にした。
ちょっと調子に乗りすぎた…
余りにも攻めすぎて、息も絶え絶えになってしまったから、一旦攻めるのをやめて少し体を離して、荒い息で脈打つ紅潮した銀子ちゃんの肢体を上から眺めた。
なんて、きれいなんだろう。
息が整ってきた銀子ちゃんは、俺を振り仰いでちょっと恨めしそうにこう言った。
「やいちばっかり、ずるい」
「うん? 何が?」
「私ばっかり触られて……私もやいちに触る…」
「え!?」
触るって、その、銀子ちゃんから攻めてくれるってことか!?
「どうすれば、やいちも、気持ち良くなるの?」
そんな、上目遣いで、エ、エロいこと言わないでよ!!
「どうすればって…」
「…教えて?」
いや待って、小首を傾げてかわいく言うことじゃないから!言ってることの意味わかってんのかなぁ!?
「……ええと……」
そりゃ、ナニをアレして貰えれば100%気持ち良くなるだろうけど、ディープキスを打診しただけで人を絞め殺そうとするレベルの
かと言って、せっかく銀子ちゃんから攻めてくれようとしてる、貴重な機会をスルーするのも、もったいないし…
う〜ん、どうしたもんか…
「その、俺も慣れてないから分かんないけど…自分がされて気持ちいいこと…すればいいんじゃないかな…」
この回答なら逆に、銀子ちゃんが何されたら気持ちいいか分かって、王手飛車取りもあるかもしれない。
「……分かった」
どうだろう…この手でよかったんだろうか。長考する時間がなかったからほぼ感覚で打ってしまった緩手みたいなものだし、何されるか分かんないって言うのも、結構不安になるもんなんだな。
銀子ちゃんは布団から起き上がると俺にあぐらをかいて座るように指示して、少し悩んでから向かい合うように俺の膝に座った。
向かい合ってるから当然銀子ちゃんの顔が見えるんだけど、それはもう真っ赤っかだ。自分から言い出したから後には引けないけど、よく考えたら恥ずかしくて仕方なくて後悔してる感じ。
何をどうやってしようかぐるぐる考えてるのが分かって、俺の彼女めっちゃかわい〜な〜と思っていたら、また考えてることが読まれて、睨まれた。
「目! つぶって!」
「はいはい」
大人しく目をつぶって、銀子ちゃんを待ち受ける。俺の腕の中の銀子ちゃんは、一頻りかわいい声でうーうー悩んだ後、俺の首におずおずと両腕を回してきた。
お、とうとう来ちゃいますか??
どこにキスしてくれるのかな〜?
今までの銀子ちゃんは積極的に見えても、自分から行動を起こすってことはほとんどなかったから、すごく新鮮な気がする。
ハワイの時とかもキスを待ってるような態度は取ってたけど、自分からしてくる訳じゃなかったし、封じ手の時も提案はしてきたけど、俺から封じられることを望んでたし…
でも、最初に桜ノ宮のラブホに連れ込まれた時は、俺にキスしようとして失敗して、頭突きされたんだった。
ん……? 今回は大丈夫…だよ…な?
不意に不安になって、恐る恐る薄目を開けると、なぜかぎゅっと目を閉じた銀子ちゃんが、一瞬後ろに引いてから突撃してきた!!
「うわっ!!」
咄嗟によけようとするけど、両腕で首を抱きかかえられてるから上手くいかなくて、仰け反った反動で二人とも後ろに倒れてしまった。
「きゃぁ!!」
「ちょっと! キスする側の人はギリギリまで目をつぶっちゃダメなの!」
「だ、だって…」
「あと、勢いよくぶつかるのも禁止!」
「うう…」
「も〜、危ないなぁ」
「むぅ…」
本当に危なかった…キスでこれなんだから、欲望に負けてアレをナニしてもらおうなんてお願いしたら、下手すりゃ噛みつかれてるわ!
俺の胸に倒れ込んで、さすがに反省してる様子の銀子ちゃん。
ちょっと言い過ぎたかな? と思って、よしよしと頭を撫でてあげたら、俺の肩に顔をグリグリ擦り付けてきた。何度もされているその仕草だけど、肌に直接されると柔らかい肌と髪の毛の動きがくすぐったい…
「そんなに恥ずかしいなら、無理にしなくてもいいよ?」
「……する。このまま動くな」
「動くなって…銀行強盗かよ」
ぎんこだけに…
結局、俺は押し倒されて、上に乗った銀子ちゃんに「気持ちいいコト」されることになってしまった。
なんだこの、美味しいシチュエーション…あり得なさすぎて夢でも見なかったくらいだぞ!?
…いえ、嘘です…二回くらい見ました…
銀子ちゃんは体を少し起こすと少し伸び上がって、俺の左頬に唇を押し当てた。
や、やわらかい…
温かくて柔らかい感触は少ししたら離れていって、今度は俺の唇にその小さな唇を少し開いて覆いかぶせた。唇の内側の濡れた部分が、俺の唇に触れているのが分かった瞬間、無意識に右手で銀子ちゃんの頭を後ろから押さえて、キスを返していた。
「ん〜〜!!」
銀子ちゃんから抗議の声が上がる。
片手で押さえてるだけじゃ当然だけど、するりと逃げられ唇を離されてしまった。
「はぁ…う、動くなって言ったでしょ!」
「これくらいさせてよ」
「だ、だめ!」
「へいへい」
このまま言い争って、せっかくのこの美味しいシチュエーションを中断するのはもったいない。観念して体の力を抜いた。
気を取り直して銀子ちゃんからのキスを受ける。たどたどしく、触れるだけのキスを何度もされて、なんだかむず痒い…
銀子ちゃんはぎゅっと目を閉じてるから、薄目を開けて、彼女の顔を至近距離で観察する。
うーん。俺にはもったいないくらいの美人だ。髪の毛はサラサラで艶めいているし、肌はすべすべで産毛も毛穴も見えないくらいだし、細くて長いまつ毛まで完璧。そんな美人に上になってもらって、キスしてもらってるなんて、ほんとに現実かな? 夢オチとかないよね? いまさら…
そんなことを考えていたら、銀子ちゃんの細い指が俺の顎に触れて、首を傾けるよう促される。銀子ちゃんも反対側に首を傾けて、今までより唇を深く合わせた。
首を傾けた時に銀髪がサラサラと落ちてきて、俺の頬に触れていて、こそばゆい。銀子ちゃんもくすぐったかったのか、その落ちた髪を左手でかき上げて耳にかけた。その耳も羞恥心からか、
その赤い耳に無意識に手を伸ばした。
耳と頬に触れたのがきっかけになったのかは分からないけど、銀子ちゃんの舌が俺の唇に触れてきた。さっきの二の舞にならないように、ゆっくり口を開いて銀子ちゃんの舌を口内に受け入れた。
銀子ちゃんは自分がされてる時は恥ずかしいのか、ほとんど声も吐息ももらさなかったのに、今は余裕がないのか、呼吸を止めないようにするので精一杯なのか、『ふっ…』とか『はぁ…』とかすごく色っぽい吐息を漏らしている。さっきはすごく聞きたいと思ってたけど、いざ聞こえると悩ましい。
上になった銀子ちゃんから、自然と唾液が流れ込んできて、時々ゴクリと飲み込む度に、極上の酒か媚薬を飲まされているような心地になる。
それにしても、たどたどしいけど意外にうまいな…
流れもスムーズだし…
ん??
流れ??
ほっぺちゅー、
深めのキスの後、
触れるだけのキス、
クロスキスの後、
舌で舐めてから、
ディープキス…
あれ?
理性が投了した後、俺が銀子ちゃんにした流れ……
そりゃそうだ、普通のキス以上が今日初めてなら、参考にできる「気持ちいいコト」は俺が今日したことしかないんだから。
はたと、今日自分が相手にしたことを一から十まで追体験することになるのだと悟った時、つまり俺がしたことを彼女が『気持ちいい』と思ってくれたことが分かった瞬間。
ぎゅうぅぅぅっと心臓を鷲掴みにされたように、色々なものが混ざった強烈な感情が俺に襲いかかった。
それは、喜びとか、愛しいとか、いじらしいとか明るいものだけじゃない。独占欲とか所有欲とか支配欲とか薄暗い感情もそこにはあった。
このまま、されるがままになんて、なってられない。
慌てて銀子ちゃんの肩を掴んで引き離そうとしたら、びっくりしたのか口づけしたまま銀子ちゃんが目を見開いた。
至近距離で目が合う。俺がキスをやめさせようとしているのが伝わったんだろうけど、無視することにしたのかまた目をつぶって舌を絡めてきた。
やばい、ヤバいって! なんで今、そんな情熱的なキスしてきちゃうのさ!?
さっきは理性が投了したとはいえヒトの知性は保っていたけど、このままこんなことされてたらケダモノ化してしまう!!
意地になってキスをやめてくれない銀子ちゃんを無理やり引き離す。
「んっ…はぁ、なに?」
「も、もういいから!」
「でも、まだ…」
「お、おしまい!」
「………」
なんだか、主導権を奪い返されそうになっていると不満そうな銀子ちゃんは、とっておきの盤外戦術を思いついた時みたいにニッと笑った。
「さっき、男でも気持ちいいらしいって言ってたわよね」
「え?」
まさか、俺の胸を狙って!?
慌てて銀子ちゃんの動きを止めようとするけど、それより先手が動く方が早かった。
俺の左胸に柔らかい毛先が降り注ぐ感触とともに熱くて、柔らかくて、しっとりとしたものが押しつけられた。
間に合わないと覚悟を決めて、とっさに左手で手元のシーツを掴んだ。
ぺろりと舐め上げられる。
ぞくっと今まで感じたことがないくらい強い快感が身体全体を乱暴に駆け巡った。
もう、それだけで、限界だった。
どこかで、ビリっと布が裂けるような音がしたけど、そんなことに構っている余裕はなかった。
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