※この作品はR-18です。

二次元ヒロイン詰めあわせ - 多重クロスハーレム -   作:みゆ_ハーメルン

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予告した話を投稿しました。
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第5話 リアルマーダーミステリー

 マキマ(『チェンソーマン』)、安心院なじみ(『めだかボックス』)、新条アカネ(『SSSS.GRIDMAN』)、モニカ(『ドキドキ!文芸部』)。4人のメタ的ラスボス系ヒロインは三宅勇太(みやけ ゆうた)のための都市を管理、運営している。

 都市は山と海に囲まれた風光明媚な地勢だ。

 

 この日、勇太は他のヒロインとともに山中のペンションに来ていた。

 同行するのは千反田えると入須冬美(『氷菓』)、結崎ひよの(『スパイラル』)、霧切響子(『ダンガンロンパ』)、白鐘直斗(『ペルソナ4』)、岩永琴子(『虚構推理』)という面々だ。

 勘が鋭ければこの面子から察することもあっただろうが、勇太は鈍かった。

 登山中はえるとひよのが勇太の左右に着いていた。

 木立から現れたペンションを見て、えるが歓声をあげた。白壁と赤屋根の瀟洒な建物だ。

「わあ。かわいらしい建物ですね!」

「本当です! いかにも高原の避暑地という風情ですね!」

 豊かな黒髪のえる、太いおさげ髪のひよのという、幼(いたい)けな美少女2人が勇太の左右で甲高い声をあげる。

 

「ブヒィ。僕は疲れたデプゥ」

 肥満体で体力のない勇太は登山で疲弊していた。

「だらしないわね、勇太くん。もっと鍛えたほうがいいんじゃないかしら」

「いくら普段、動くことがないからといって限度があるね」

 響子と直斗が容赦なく言う。2人は登山を経ても汗をかくことさえなかった。

「まあまあ。体力はひとそれぞれですから」

 琴子が飄々として言う。じつは、そう言う琴子は義足だ。だが、気軽そうに杖をくるくると回している。

「ブヒィ…」

 少女たちに叱責され、勇太は落ちこんだ。

 

「いや。ここまで自分の足で歩いて、よく頑張ったぞ。勇太くん」

 冬実が勇太に声をかける。

 長身で黒髪のストレートロングヘア。白いカチューシャを装着している。大人びた美貌に、長い前髪が垂れている。えるとともに、セーラー服の制服を着ていて、大きな胸がセーラースカーフを押しあげている。

「ブヒヒ」

 冬実に褒められ、勇太はたちまち気をとり直した。

 1泊の予定のため、旅装は全員が鞄が1つの軽装だ。勇太の鞄は冬実が持ってやっていた。

 

 えるがペンションの扉を開ける。板チョコレートを思わせる彫刻がされている。

「ごめんください!」

「予約した三宅です!」

 えるとひよのが声をかける。

 

「入りたまえ!」

 廊下の奥から声が返ってくる。

 玄関から廊下が伸びていて、曇りガラスの嵌った扉が並んでいる。玄関広間には受付台があり、上階への階段もある。

 ペンションは2階建てで、上階に客室がある。

 廊下の最奥は応接室だ。他の扉は食堂や図書室に繋がっている。

 声は応接室からしていた。

 

 応接室には3人の女性と1人の少女がいた。

 『ビブリア古書堂の事件手帖』の篠川栞子、『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の九条櫻子、『天久鷹央の推理カルテ』の天久鷹央。そして、『「小市民」シリーズ』の小佐内ゆきだ。ゆきは制服のセーラー服の姿だ。

 栞子は白のロングスカートのワンピースで、黒髪のストレートロングヘアの、清楚な美人だ。ワンピースは胸元が豊かだ。櫻子は長身で、それに似合った白いワイシャツと細いズボンを着ている。細身だが、シャツの胸元は張っている。黒髪のストレートロングヘアで、凛々しい美人だ。鷹央は軽くウェーブしたロングヘアで、やや童顔の、大きな目の美人だ。

 

 声をかけたのは櫻子だった。ソファに深く腰かけ、組んだ足に両手を乗せている。

「ペンションのオーナーは食料の買出しのために留守にしている。いまは私たちだけだ」

「そうですか… 荷物はどうしましょう」

「客室の鍵はフロントにある。勝手に取っていいそうだ」

 鷹央が片手を上げる。

「茶菓の類も好きにしていいそうだよ。私たちはもういただいてるよ。君たちもどうだい?」

「皆さんもここにお泊りですか?」

「はい… 都会の喧騒を逃れて、と言いますか…」

 栞子が小声で答える。

 

「このペンションは評判が良いの。オーナーの手料理も美味しいらしいし」

 ゆきが訥々と話す。

「でも、お夕飯のコースメニューにデザートがないのが残念なの… 仕方ないから、ここに来る前に水羊羹を買ってきたわ。客用の冷蔵庫があるから、収(しま)わせてもらってるの。あなたたちも要冷蔵のものがあったら収うといいの」

 

 頭脳明晰で容姿に優れた女性が集合していることになる。いずれも知能指数は300を下らないだろう。しかも、それぞれの元作品では奇人変人として男性を寄せつけなかった女性たちだ。

 平常な男性なら、この部屋にいるだけで、優秀な遺伝子に生殖本能が刺激されて堪(た)えられないだろう。

 

「ここの客室は10部屋だ。私たちはもう部屋を取っている。フロントの鍵棚(キーラック)で、空き部屋が分かるはずだ。一応言っておくと、私は1号室だ」

 櫻子が言う。次いで、栞子、鷹央、ゆきも部屋番号を申告した。

 

 勇太たちは顔を見合わせた。残りは6部屋、勇太たちは7人だ。

 えるが勇太の腕を取る。

「勇太さん♡ 私の部屋に泊まってください♡」

 ひよのがもう片方の腕を取る。

「いえいえ!♡ ぜひ私のお部屋に!♡」

「ブヒヒ」

 美少女たちに取り合いにされ、勇太は相好(そうごう)を崩した。

 

 響子が革手袋でトランプのカードデッキを掲げる。眼光が鋭い。

「勇太くんと泊まりたいのはみんな同じよ。ここは公平にカードで決めましょう」

 

 相談の結果、えるたちはババ抜きで1人を選ぶことになった。通常のババ抜きとは逆に、最後までジョーカーを持っていた者の勝利だ。

 「超高校生級の探偵」の響子、「探偵王子」の直斗、現人神であり、天命の探偵である琴子という頭脳派が揃っていたが、ババ抜きは運の要素が大きい。勝者は冬実だった。

「では、私は勇太くんが寝るのにふさわしい部屋を選んでおこう。千反田、意見を聞かせてくれ。小佐内さん、案内してくれるかな?」

 冬実は同年代のゆきに頼んだ。

 

 冬実たちが上階に行く。

 ひよのが櫻子たちに尋ねる。

「皆さんの御職業などを伺ってもかまいませんか?」

「そうだな。同宿として、自己紹介しておくべきだろう」

 櫻子が言う。

「九条櫻子。職業は標本士だ」

「篠川栞子。古書店を経営しています…」

「天久鷹央。医者だ」

 栞子と鷹央が続く。

 ミステリードラマなら、テロップで名前と職業が表示されそうな質疑応答だ。

 勇太は愚鈍なため、そのわざとらしい会話にも違和感をおぼえることがなかった。

「さっきまでここにいたのは小佐内ゆき。君たちと同じ学生だそうだ。見れば分かるだろうがね。そうだろう、少年」

 櫻子は年長の勇太を「少年」呼びした。

 美女の櫻子に子供扱いされ、勇太はかえって気を良くした。くぐもった笑いを洩らす。

「ブヒヒ」

 

「皆さんはこちらには休暇で来られたんですか?」

「ああ。君たちも旅行かい?」

「はい。1泊して、明日はバーベキューをする予定です」

「そうか… 君たちのように、少年とじかに接することのできるAランク、Bランクのメスが羨ましいよ」

 都市に居住する女性キャラクターはS〜Dランクに階層的に格付けされている。

 勇太の専属である選ばれた(スペシャル・)8人(エイツ)のSランク。日常的に言葉を交わすAランク、日常的に視線を交わすBランク。

 Cランク、Dランクは勇太と直接的に接触することはない。ただの都市住民だ。もちろん、勇太が望めば昇格できる。

 いわば、Sランクは親衛隊、Aランクは近衛軍、Bランクは常備軍、Cランク、Dランクは予備軍だ。

 だが、Cランク、Dランクの女性キャラクターも元作品のヒロインだ。才能と容姿がともに優れ、学校や会社にいれば、教室や職場の男性の欲望を1人で独占する。そうした女性たちが約100万人の都市人口の半数を構成していた。

 

「私のようにCランクのメスは、少年のことを思ってオナニーすることが精々だからね。もちろん、この旅行にも《御神体》は持ってきているよ♡ まさか、旅先で少年と同宿になるとはね♡ 今晩は《御神体》ではなく、少年が泊まっている部屋のほうに拝跪してからオナニーするつもりだ♡」

 《御神体》とは勇太の陰茎から型取りしたシリコン製の張型(ディルド)のことだ。

 栞子が歓声をあげる。かぼそい声で、普段から小声なことがうかがわれる。

「わあ…!♡ 《御神体》をお持ちなんですか?♡」

「ああ♡ 先週、発売された最新版も買ったよ♡」

「羨ましいです…♡ 私も欲しいのですが、古書肆(こしょし)の収入だと、なかなか難しくて…♡ バナナを代わりに使っています♡ 旅行にも持参しました♡ もちろん、致す前には勇太さまの御所の方角に拝礼していますが…♡」

 鷹央が会話に参加する。

「1本100万円だからね。医者の給料でも厳しいよ♡」

「マゾオスに貢がせればいいさ♡ 幸い、私は実家が資産家でその必要はないがね♡ 小佐内という彼女などは、あの若さで手練手管に長けているそうだ♡」

 

 櫻子たちと歓談しているあいだに、冬実たちが戻ってくる。冬実が報告する。

「勇太くん。私たちは2号室だ。シングルベッドの部屋しかなかったが、私たちは同じベッドでかまわないだろう」

「いいデプよ。ブヒヒ」

 ひよのが声をあげる。

「夕食までは自由時間になりますね。どうしましょうか」

「せっかく、旅先で知り合いになったんです。よければ、みんなでお話ししませんか?」

 えるが櫻子たちに声をかける。

「せっかくのお誘いですが…」栞子がおずおずと言う。顔が紅潮している。「私は遠慮します。勇太さま御自身にお声がけいただくことを思うと、とても心臓が耐えられそうにありません…♡ 私は本を通じて、勇太さまのことを思っているのがふさわしいようです…♡」

 栞子は細い腕で自分の体を抱いた。ワンピースの豊かな胸が括(くび)りでる。

「霞ヶ丘詩羽先生(『冴えない彼女の育てかた』)の『催眠術師・勇太の隷属学園』シリーズや、千寿ムラマサ先生(『エロマンガ先生』)の『異世界転生者・勇太のハーレム覇道伝』シリーズといった文学作品を読んで、勇太さまへの畏敬の念を高めてきました。ですが、実際に勇太さまにお会いすると緊張してしまって… お見苦しいさまを見せてしまいそうです」

 霞ヶ丘詩羽、千寿ムラマサ、可児那由多などの天才小説家が執筆する官能小説は、この都市のベストセラーだ。すべて勇太を主人公のモデルにしている。一部はいわゆる実録小説だ。

「そうですか… 残念ですが、勇太さんを思うあまりのことなら仕方ありませんね」

 えるは両眉を下げた。

 

 栞子が自室に引きあげる。

 ゆきが栞子に続く。

「私は大人数でいるのが苦手だから。失礼させてもらうわ」

 

 ひよのがピンと指を立てる。

「これだけ人数がいるんです。親睦を深めるために、ゲームでもしませんか? ジェスチャー伝言ゲームなどいかがでしょう」

 鷹央がソファから体を起こす。

「いいね。面白そうだ」

 ただのジェスチャーゲームではなく、ジェスチャー伝言ゲームというのが巧みだった。ただのジェスチャーゲームなら、頭脳明晰な女性たちが集結しているこの場では、凡人に出番はないだろう。勇太のような愚人なら、なおさらだ。だが、全員が参加するジェスチャー伝言ゲームなら、むしろ出来の悪いものが注目される。

 えるたちは勇太を中心にして盛りあがった。

 時間が過ぎ、窓外は夜の暗黒になった。

 

 えるが壁の振子時計を見る。

「オーナーはお帰りが遅いですね」

 その言葉と同時に、図ったように電話の呼鈴が鳴る。

 櫻子が電話を取る。わざとらしく声をあげる。

「えッ!? 土砂崩れで道が通れなくなった?」

 

 響子が立ちあがり、応接室に据えられた音響機器を操作する。

 スピーカーから雨の効果音が流れる。

 

 櫻子は受話器を置くと、勇太たちに報告した。

「この雨で土砂崩れが起きて、道路が塞がれたそうだ。明日にならなければ復旧しないらしい。オーナーも下界に足止めされたらしい。申しわけないが、食事は私たちで支度してくれと言われたよ。食料はあるものを好きに使っていいそうだ」

 えるが勇太の腕に体を寄せる。

「土砂崩れですか… 怖いですね」

 ひよのがもう片方の腕に抱きつく。勇太の顔を見上げる。

「雨も強くなってきましたし、これはいわゆる《嵐の山荘》というやつですね!」

 

 窓外では夜空が晴れ渡っている。

 勇太はえるたちを見回した。

「こ、これはどういうお芝居なんデプ?」

 えるとひよのに挟まれた勇太に、冬実が歩みよる。ここでは冬実がもっとも勇太の扱いに慣れている。

 冬実は冷厳な美しさを湛えた顔を、勇太に近づけた。

「嵐に遭い、交通が遮断されてしまう。旅行のトラブルとしてはよくあることだろう。君はただ状況の推移に身を委ねていればいい」

「ブ、ブヒィ…」

 冬実の迫力に勇太は黙りこんだ。勇太の視線は冬実の顔より、その下の、胸の膨らみに向かっていた。

 

 えるが両手を叩く。

「そうだ。お夕飯の支度をしないといけませんね。よければ私がお手伝いしますが…」

 年長者の櫻子と鷹央は無言でいた。いずれも家事とは無縁だ。

 年少の冬実も、傲然と腕組みをしていた。他の面々も同様だ。

 えるは慌てたように言葉を継いだ。

「私がなにか簡単なものを御用意しますね。不調法者なもので、勇太さんや皆さんに御満足いただけるかは分かりませんが…」

「私もお手伝いします!」

 ひよのが挙手する。

 

 えるとひよのが応接室を出ていく。

 鷹央はソファに寝そべったまま、寝転がるように体の向きを変えた。勇太のほうにスナック菓子を差しだす。

「私たちにできることは何もないようだし、おとなしく待っていようじゃないか」

 その後、1時間ほどして、えるが応接室に顔を出した。

「もうすぐお夕飯ができますから、篠川さんと小佐内さんを呼んでもらえますか?」

「僕が行こう」

 直斗が気軽に立ちあがる。廊下に出ていく。

 しばらくして、階上から大きな音が聞こえた。扉を強く叩く音と、直斗の大声が、距離をおいて伝わる。

「篠川さん! どうしたんだ! 篠川さん!」

 響子がソファから立つ。

「なにかあったみたいね。行ってみましょう。勇太くん」

「ぼ、僕もデプか?」

 勇太は気後れしていたが、響子がなかば強制して立たせた。上階へと向かう。他の面々も続いた。調理場にいた、えるとひよのも合流する。

 2階の廊下では、直斗が客室の扉を叩いていた。ゆきが不安そうに佇んでいる。

「どうしたの?」

 響子が尋ねる。

「篠川さんが室内にいるはずだけど、返事がないんだ。鍵がかかっていてドアを開けられない。もしかすると、病気かなにかで倒れているのかもしれない」

「フロントの鍵棚(キーラック)にマスターキーがあるだろう。取ってこよう」

 櫻子が言う。しばらくして、鍵を手に戻ってくる。

 扉の鍵穴に差すと、金属音とともに半回転した。

「よし。開いた」

 扉を開ける。だが、その動きは、衝撃とともに妨げられた。チェーンロックがかかっている。

 だが、扉に隙間ができ、室内を覗くことができるようになった。狭い視野から、倒れた栞子の足が見える。

「ドアを破りましょう」

「そうだな」

 響子と直斗が合意する。2人は合図で、肩から扉に体当たりをした。

 チェーンロックの金具が壊れて飛び、扉が大きく開く。

「きゃッ!」

 えるが口を手で押さえ、悲鳴をあげる。

 室内には、「死体」と書かれたゼッケンを着けた栞子が倒れていた。

 

「ブヒィ…」

 ここまでの茶番劇を、勇太は呆然と眺めていた。

 

 鷹央が栞子の脇に屈みこむ。

 ゼッケンを着けた栞子の首筋に触れる。

「ダメだ。もう亡くなっている。体温からして、死後1、2時間というところだな」

 栞子は俯(うつぶ)せで倒れていた。鷹央は栞子の体を裏返した。栞子は体の力を抜き、死んだふりを続けている。

「頭部に打撲傷がある。これが死因のようだな。なにか球状のもので殴られたようだ」

 

 えるが口を押さえて言う。

「そんな… 殺人ということですか?」

 ひよのが首を傾げる。

「でも、鍵がかかっていたんですよ。ドアの鍵はマスターキーを使ったとしても、チェーンロックがかかっていたんですよ」

 

 琴子が堂々と部屋を横断し、正面にある窓に着く。瀟洒な格子窓だ。 杖先で窓枠を示す。ネジ状の錠が根元まで嵌めこまれている。

「窓にも鍵がかかっています。小細工で外からかけられるようなものではありませんね」

 部屋には扉と窓の他の出入口はない。

 

「つまり、これは密室殺人!」

 ひよのが大声をあげる。

 

 客室は狭く、奥行きのほうが長い。

 手前の角に衣装棚(クローゼット)がある。

 左手に鏡台が、右手にベッドがある。ベッドの奥に小棚(サイドボード)があり、壁に倒れかかっている。

 栞子は部屋の中央で倒れていた。

 響子が衣装棚(クローゼット)を開け、ベッドの下を覗きこむ。

「誰も隠れていないわね」

 

 えるが勇太の腕にしがみつく。勇太の顔を見上げる。大きな目が潤んでいる。

「誰かが篠川さんを殺して、密室の中から消えてしまったなんて… 私、怖いです。勇太さん、助けてください」

 鈍感な勇太にも、これがマーダーミステリーで、自分が探偵役だということがようやく理解できた。

「そ、そういうことデプね。良いところを見せてやるデプよ。ブヒヒ!」

 

 勇太は部屋を見渡した。

 栞子の足下に何かが落ちているのを見つける。バナナの皮だ。

「ブヒッ!?」

 まるで、バナナの皮で足を滑らせたような状況だ。

 さらに、栞子が倒れたほうを見る。ベッドの頭板(ヘッドボード)がある。左右の柱頭は球形をしている。

 勇太は声をあげた。

「わッ、分かったデプゥ!」

 

 だが、勇太の言葉を遮るように、響子が敢然と言った。

「みんな。真相が分かったわ」

「ブヒッ!?」

 勇太が動転した声をあげる。普段から甘やかされた勇太は、他人に言葉を遮られることに慣れていない。

 響子は冷静な声で説明した。

 革手袋で床上のバナナの皮を指さす。

「これを見て。バナナの皮よ。篠川さんはこれで転んで、頭を打ちつけたんだわ」

「だが、彼女は球状の鈍器で打撲傷を負っている。誰かに殴打されたとしか思えない」

 鷹央が反論する。

 響子は続いてベッドの柱頭を指さした。

「篠川さんはこれに頭を打ちつけたのよ。これで、状況はすべて説明できるわ。篠川さんが死んだ理由も、部屋が密室だった理由も。つまり、篠川さんの死は事故だったのよ」

 観衆が嘆声をあげる。

 一方、勇太は顔全体を赤くし、悔しがっていた。

「ブッ、ブヒィ! そッ、それ、僕がさきに思いついてたんデプゥ! さきに答えるなんてズルいデプゥ! 本当は僕が当ててたんデプゥ!」

 勇太は癇癪を起こしそうになった。だが、その寸前でえるが疑問そうな声をあげた。

「でも… 霧切さんの説明はなにかおかしいような気がします」

「ブヒッ!?」

 勇太はふたたび驚声をあげた。

「たしかに… どこか釈然としません」

 ひよのが追随する。表情に疑念を浮かべる。

 

 えるは部屋の奥に行き、倒れかかった小棚(サイドボード)の下を覗く。

「あッ、なにか落ちています! 勇太さん!」

 勇太は肥満体を動かし、えるに着いていった。

 小棚(サイドボード)の下に落ちていたのは文庫本だった。霞ヶ丘詩羽著『催眠術師・勇太の隷属学園17 生徒会の陥落』だ。

 えるが独りごちるように言う。

「篠川さんは寝る前にこの本を読むつもりだったのでしょうね。私も枕元に本を置いておくことがあるから分かります」

「でも、落ちている場所がなにかおかしいような…」

 ひよのが悩ましげな表情をする。

 

「わッ、分かったデプゥ!」

 勇太は興奮した声をあげた。

「この棚を起こすデプゥ!」

 勇太の命令で、えるとひよのは倒れかかっていた小棚(サイドボード)を立てなおした。少女の細腕のため、2人がかりだ。

 起きた小棚(サイドボード)はベッドの頭板(ヘッドボード)に沿った。小棚(サイドボード)は頭板(ヘッドボード)より高い。

 勇太は落ちていた文庫本を棚上に置いた。

 鼻息を荒げ、憤然として言う。

「こッ、この棚は栞子ちゃんが倒れたときに、一緒に倒れたんデプゥ! でッ、でも、それは変デプゥ! だって、この棚が邪魔で、ベッドの柱に頭をぶつけられないデプゥ! だッ、だから… 栞子ちゃんがベッドの柱に頭をぶつけて死んだはずがないんデプゥ!」

 論理的なことを話すことに慣れていないため、口調がたどたどしい。

 観衆が嘆声をあげる。響子に対するものより大きい。

 

 常識的には、マーダーミステリーの真相がバナナの皮で滑って転んだなどというもののはずがない。

 だが、勇太は愚鈍だった。えるたちの誘導があって、はじめて真相に気付いた。

 

 響子が羨望の混ざった声で言う。

「やるわね、勇太くん。探偵の能力については、私も人後に落ちないつもりだったわ。けど、勇太くんには負けるみたい」

「僕は生まれたときから探偵になるための英才教育を受けてきた。君はなにもせずに、それだけの推理力を身につけていると言うのか…?」

 と、直斗。

「お見事です。それだけの推理力を見せつけられてしまうと、私も天命の探偵の座を引退することを考えなければいけませんね。次の代の、天命の探偵をお引受けくださいませんか、勇太さん?」

 と、琴子。

「驚いたな、少年。まさか君がそれほどの推理力をもっているとは。君のことを見くびっていたよ」

 と、櫻子。

「いや、市井(しせい)に君のような賢人がいるとはね。私も洞察力や発想力には自信があったけど、まったく身のほどを教えられたよ」

 と、鷹央。

「すごいわ、勇太くん… 私も狡知(こうち)に長けた《狐》のつもりでいたけど、勇太くんの前では、二度とそう名乗れそうにないの」

 と、ゆき。

 

 頭脳明晰な女性たちに熱賛され、勇太は得意になった。くぐもった笑声をあげる。

「ブヒヒ」

 

 えるが間然と表情を改める。

「でも、だとすると、篠川さんを殺害した犯人がいるということになりますよね」

 櫻子が言う。

「さっき、館内を点検してきたが、外部の人間が侵入した形跡はなかった。篠川くんが殺害されたなら、犯人は内部のものだということだ」

「そんな…! 私たちのなかに殺人犯がいるというんですか!?」

「しかも、密室を作りあげるような狡猾な犯人です。犯人はいまも正体を隠して、私たちの様子を伺っていることになりますね…」

 ひよのが真剣な表情をする。

 えるが勇太の両腕を掴む。

「勇太さん、助けてください! 勇太さんしか頼れるひとがいないんです!」

「任せてよ。ブヒヒッ!」

 美少女に縋(すが)りつかれ、勇太は得意満面になった。

 

「私も独自に捜査するわ、勇太くん。私にも探偵としての自負があるもの」

 響子が毅然として言う。

「分かったデプゥ。好きにするといいデプよ。ブヒヒ」

 勇太は余裕そうに言った。推理の成功で調子づいていた。

 

 響子が客室を出ていく。

 えるが勇太の顔を見上げる。

「私たちも捜査しましょう。勇太さん」

 ひよのがメモ帳とボールペンを見せる。

「情報の整理は私に任せてください!」

 

 えるとひよのという2人の美少女を助手に連れて、勇太は館内を捜索した。

 地階の廊下で足をとめる。扉が開いている。

「ここはなんデプ?」

「倉庫みたいですね。普段は使わない備品を保管しているんでしょう」

 室内は雑然としていて、整備用具や、長期保存食が置かれている。

 直斗がいて、ボウガンのような道具を手にしている。スリングショットだが、長い架台が付いている。

 勇太が尋ねる。

「それはなんデプ?」

「スリングショットだ。害鳥、害獣の駆除に使うんだろう。けど、篠川さんの死因は撲殺だから、今回は関係ないな」

 直斗はそう話すと、スリングショットを置き、出ていった。わざとらしい台詞だった。

 

 えるが屈みこむ。

「わあ。古い秤ですね」

 床に金属製の天秤がある。近くには球形の錘(おもり)が置かれている。「1kg」「5kg」「10kg」と刻印されている。

 ひよのが両手を膝におき、天秤を覗きこむ。

「不便ですね。これだと1キロの次は5キロの重さしか量(はか)れませんよ。旧式のものなので仕方がないのでしょうか」

 勇太は愚鈍そうな顔のまま、えるたちの会話を聞いていた。

 仕方なく、ひよのが言葉を次ぐ。

「例えば、1キロと5キロのあいだに、中間の重さの錘があれば、組合せで1キロごとに計量することができるのでしょうが…」

「分かったデプゥ!」

 勇太は突如として声をあげた。

 

 乱暴な足取りで、ドタドタと足音を鳴らしながら上階に急ぐ。

 栞子の客室に入り、ベッドの下を覗きこむ。栞子は「死体」のゼッケンを着けて、辛抱強く死んだふりを続けていた。

 ベッドの下に球形の錘が入りこんでいる。「3kg」の刻印がされている。

 

 勇太は憤然と言った。

「わ、分かったデプゥ! 犯人はスリングショットでこの錘を撃ったんデプゥ! そ、そうデプ! スリングショットを持った手を入れるだけなら、チェーンロックがかかっていてもできるデプ! だから部屋は密室だったんデプゥ!」

 えるが両手を組みあわせ、両目をキラキラと輝かせ、尊敬の眼差しで勇太を見る。

「す、すごいです…! 勇太さん…! 摩訶不思議な密室殺人の謎を解いてしまいました!」

 ひよのが追従する。

「犯人もよほど狡猾だったのでしょうが、勇太さんの頭脳には敵わなかったということですね!」

「そッ、それほどでもないデプゥ! ブヒヒ!」

 勇太は満悦した笑声をあげた。

 

「つまり、部屋はあらかじめチェーンロックがかけられていた。犯人はドアの隙間から、篠川さんを狙撃。錘はベッドの下に転がっていった。そのあと、密室での事故に見せかけるため、バナナの皮を放りこんだ、というわけですね! 篠川さんはドアの隙間からは死角にいましたから、ドレッサーの鏡を使って、狙いを定めたんですね!」

 ひよのがメモ帳とボールペンを持ち、推理を整理する。

「そうデプ、そうデプ!」

 勇太はそこまで順序立てて理解できてはいなかった。だが、ひよのの説明を聞き、すでに自力でそう理解していたように感じていた。

「さすが勇太さん! すばらしい推理です!」

「ブヒヒッ」

 勇太は笑声をあげた。

 ひよのがボールペンの尾部を唇に当てる。

「あとは犯人を特定するだけですね! 勇太さん!」

 美少女の助手たちに尊敬され、勇太は得意だった。

 

 館内を捜索し、食堂に入る。

 食堂は白布のかけられた長卓が並ぶ。長卓のひとつには籐籠があり、果物が満載されていた。壁際には小卓と小型の冷蔵庫がある。小卓には水差しとグラスが置かれている。

 ゆきが食卓に着いている。入室してきたえるを見て、声をかける。

「千反田さん。ここにある果物を食べていいかしら」

「ええ。私が置いたものではありませんから。私が見たときには、もうありました。たぶん、ペンションのオーナーが用意したんでしょう」

「そう… けど、果物ナイフがないから、リンゴも梨も観賞用ね。食べられるのはバナナしかないわ」

「バナナですか… 篠川さんの部屋に落ちていたバナナの皮を思いだしてしまいますね」

 果物籠にはバナナがひと房あり、果実はすべて付いていた。

 

 ひよのが冷蔵庫を開ける。

「ここにある紙包みは小佐内さんのものなんですよね?」

「そうよ。名前が書いてあるでしょう」

 ゆきが机ごしに返答する。

 ひよのが声をあげる。

「あッ! 篠川さんのバナナがあります!」

「ブヒッ? 僕にも見せるデプ!」

 勇太がひよのの肩越しに冷蔵庫を覗きこむ。

 中段の棚板にバナナが載っていて、マジックペンで「篠川」と書かれている。上段には水羊羹らしい、和風の包装がされた箱がある。「小佐内」と書かれている。インクが切れかけているらしく、「小佐内」の文字は掠(かす)れていた。

 冷蔵庫の扉にはマジックペンが磁石で固定されている。

 

 えるが疑問そうな声をあげる。

「篠川さんのバナナがここにあるということは、部屋にあったバナナは篠川さんのものではなかったんですね… でも、どうして犯人は篠川さんのバナナを使わなかったんでしょう。密室での事故に見せかけても、ここでバナナが見つかったら、無用の疑いを招いてしまいそうに思います」

「ブヒィ…」

 勇太は愚鈍そうな声を洩らした。

 

 発想の飛躍は演繹的推理で、たまたま生じることもある。

 だが、論理的思考は帰納的推理だ。意志をもって行わなければ、けっしてできない。

 誰が犯人か、ここから勇太が自力で推理することはありえなかった。

 えるとひよのが顔を見合わせる。

 ゆきが食堂を出ていく。

 

 しばらくして、えるとひよのは勇太の前に並んだ。

「ブヒッ?」

 勇太が疑問そうにする。

 えるとひよのは声を合わせ、楽しげに言った。

「ドキドキ! シンキングターイム!」

 

 食堂に女性たちが駆けこんでくる。死体役の栞子を含め、ペンションにいる全員だ。

 ただ、これまでと異なるのは、その全員が白いビキニ水着に着替えていることだ。

 女性たちは勇太の前に横1列に並んだ。

 

 左端にいる響子がフリップボードを掲げる。水着姿だが、ボードを持つ手は革手袋を嵌めている。

 フリップボードには勇太を除く、宿泊客10人の顔写真と名前が列挙されている。栞子の顔写真にはバツ印が記されている。

「犯人の候補は9人。けど、3つの手がかりで1人に絞りこむことができるわ。勇太くん、分かるわね」

 

 左のほうにいる栞子がボードを掲げる。ボードは裏向きだ。

 白いビキニ水着は布地が小さく、ほぼ全裸だ。豊かな乳房が隆起している。三角形の布地は、乳房の半分も隠せていない。

 栞子は羞恥で顔を赤らめつつ、強いて声をあげた。

「まず気になるのは、なぜ犯人は私の私物のバナナを使わなかったのかということです。つまり、犯人は私がバナナを持参しているということを知らなかったことになります。私は皆さんの前でそのことを話しました。例外は、そのとき席を外していた3人のかただけです」

 声を出した衝撃で、柔らかい乳房がブルブルと震える。

 栞子はボードを裏返して表向きにした。

 える、冬実、ゆきの3人を除く6人の顔写真にバツ印が追加されている。

 

 右のほうにいる冬実がボードを掲げる。巨乳で、水着姿が煽情的だ。

「しかし、バナナが篠川さんの私物でないとしたら、犯人はどこから入手したのだろう。食堂にあったバナナではない。房が千切られていないからな。つまり、バナナは犯人の私物だった。だが、なぜ食堂にあったバナナを使わなかったのだろう。わざわざ物的証拠を残すことになる。犯人は食堂にバナナがあることを知らなかったのではないだろうか」

 冬実がボードを裏返す。

 えるの顔写真にバツ印が追加されている。

 

 右端にいるゆきがボードを掲げる。華奢な体格で、ビキニの極小の布地が薄い胸に張りついている。

「私は篠川さんがバナナのことを話したのは聞かなかったわ。けど、そのことを知らないはずがないの。だって、冷蔵庫に水羊羹を収ったときに、篠川さんのバナナを見ているはずだから。マジックペンは私が使ったときにインク切れを起こした。だから、マジックペンを使ったのは私が後のはずだわ」

 ゆきがボードを裏返す。

 残る冬実とゆきの顔写真が、丸印で強調されている。

 

 ふたたび、えるとひよのが楽しげな声をあげる。

「シンキングタイム、終了ォー!」

 

 女性たちが小走りで食堂を出ていく。

 しばらくして、ゆきが戻ってくる。元どおり、学校の制服に着替えている。ゆきは長卓に着席した。台本で決められた定位置のようだ。

 

 勇太は呆然としていた。

 いまの出来事がなかったかのように、えるが勇太に言う。

「それにしても、犯人はいったい誰なのでしょうか…」

 ひよのがメモ帳を手に、勇太を見上げる。

「捜査情報を確認したいときは、私に言ってくださいね」

 

 突如として、勇太は大声をあげた。

「はッ、犯人が分かったデプゥ!」

 えるが両手を口に当てる。

「本当ですか!? 勇太さん!」

 勇太は得意満面だった。

「間違いないデプよ。応接室にみんなを集めるデプゥ!」

 

 勇太たちは応接室に集まった。死体役の栞子を除く全員がいる。

「犯人が分かったデプよ。ブヒヒ」

 勇太は女性たちを見回した。顔は興奮で上気している。

 響子が冷静に尋ねる。

「どういうことかしら。犯人を指ししめす証拠が見つかったとでも言うの」

「そうデプよ。ブヒヒ」

 勇太はくぐもった笑声をあげた。

「客用の冷蔵庫に栞子ちゃんのバナナがあったんデプゥ! でも、犯人がそのことを知ってたなら、事故に見せかけるのには栞子ちゃんのバナナを使ったはずデプ! 栞子ちゃんがそのことを話したときには、ほとんどみんないたデプ。えるちゃんと冬実ちゃん、ゆきちゃん以外はデプよ… ブヒヒ」

 えるが大きな目を見開き、瞳を震えさせる。怯えた声を出す。

「そ、そんな、勇太さん… 私が犯人だって言うんですか!?」

 冬実は無言で腕組みをしている。ゆきも無言で、無表情のままだ。

 勇太は得意げに続けた。

「えるちゃんは心配しないでもいいデプよ。栞子ちゃんの部屋にあったバナナの皮は、犯人のものみたいデプからね。えるちゃんだったら、自分が疑われないように、食堂にあるバナナを使ったはずデプゥ!」

「そうでしたか。安心しました」

 えるが安堵で眉を下げる。勇太は得々として、自尊心が満たされるのを感じた。

 残る嫌疑者は冬実とゆきだけだ。

 勇太は興奮していた。少女を推理で追いつめることの加虐性のために、性的興奮も催していた。

「けど、ゆきちゃんも犯人でないデプゥ! ゆきちゃんは冷蔵庫で栞子ちゃんのバナナを見てたはずデプからね。ゆきちゃんも冷蔵庫を使ってたんデプよ。ブヒヒ」

 ひと息おき、勇太は大声で言った。

「つまり、犯人は冬実ちゃん! 君デプゥ!」

 

 冬実は長い黒髪の頭を両手で抱えた。

「許せなかったんだ…! いくら、勇太くんへの畏敬の念が高じたあまりとはいえ、勇太くんを拒むなんて…!♡ だから、あの女に誅罰を下したんだ…!♡ たしかに、あのバナナは私のものだ。勇太くんを喜ばせようと、パイズリの練習をするために持ってきていたんだ…♡」

 えるが悲しげな目で冬実を見る。

「まさか、入須さんが犯人だったなんて… 勇太さんを思うあまりの犯行でしたか… だからといって、殺人は許されません。だって、すべてのメスは勇太さんの所有物なんですから…♡」

 

 その場にいる全員が一斉に拍手をする。

 「死体」のゼッケンを着けた栞子も現れ、拍手に加わる。

 代表として、えるが勇太を讃(たた)える。

「おめでとうございます! 難事件を解決されましたね。お見事です! 勇太さん!」

 響子が革手袋で拍手しつつ、勇太に歩みよる。

「見事ね、勇太くん。模擬事件とはいえ、勇太くんの探偵としての能力は、私をはるかに凌(しの)ぐものだったわ。勇太くん、あなたこそ真の名探偵よ」

「それほどでもないデプゥ! ブヒヒ!」

 勇太は満足感と優越感に浸った。推理はほとんど誘導されたものだったことは、すでに忘れている。

 

 万一、勇太の推理が誤答だったときは、ふたたび全員が白ビキニに着替え、「シンキングタイム」の寸劇をする予定だった。

 ここにいるのは頭脳明晰な女性たちだ。善後策を用意していないことはありえない。

 

「優勝した勇太さんには賞品を贈呈しないといけませんね♡」

「少々お待ちください!♡」

 えるとひよが言う。えるたちを残し、女性たちが出ていく。

 しばらくして、戻ってきた女性たちは、一様に煽情的な衣装を着ていた。

 

「《超高校級の探偵》の称号は返上するわ♡ 今日から、あなたの助手としてやり直すわ、勇太くん♡」

 霧切響子が言う。

 全裸同然だ。元の革手袋だけ残っている。

 乳房の上下に黒の革ベルトが巻かれている。胴から股間にかけて、薄い黒のゴム皮膜が覆っている。ただし、秘部は円形に開いている。つまり、女性の急所はまったく隠せていない。

 太腿から下も、黒いゴム皮膜のタイツで覆われている。ラテックスが光沢を放っている。

 

「僕が《探偵王子》なんておこがましかったよ♡ これからは《探偵王子》の逆、《泥棒メス猫》としてやっていくよ♡」

 白鐘直斗が言う。

 直斗は男装から一転して、深紅のレオタードを着ていた。ただし、生地は半透明といえるほど薄く、素肌が浮いている。しかも、左右の乳房と股間のところは、円形の穴が開いている。

 短髪には猫耳のカチューシャを着けている。鈴付きの赤い首輪を巻いている。尻にはアナルプラグで猫の尻尾を装着している。

 

「お見それしました♡ これからは神命あらため、男根さまという神さまに仕える巫女として務(つと)めます♡」

 岩永琴子が言う。

 琴子は左足が義足だ。

 その義足は、人間工学で設計された、合金の骨組みだけのものに交換されている。義足は下肢と、肢端の2つの部分に分かれる。その2つが足首の関節で結合する。下肢は「♂(オス)」、肢端は「♀(メス)」の形だ。そして、踵(かかと)の部分で、「♂」の矢印が「♀」の丸を貫いている。

「女はいくら知恵が働いても、所詮、女陰を男根さまで貫かれるだけの存在です♡ 一歩、歩くごとに、そのことを思い知れるというわけです♡」

 琴子は足踏みし、義足に体重をかけた。「♂」の矢印が「♀」の丸で上下する。

「ブヒヒッ」

 無様な義足に、勇太は笑声をあげた。

 

 琴子は半透明の白いレオタードを着ている。左右の乳房のところに、ハート型の穴が開いている。さらに、腹部から股間にかけて、男根を象(かたど)った縦長の穴が開いている。上腹が亀頭の半円形、下腹が陰茎の長方形、股間が陰嚢の双円形の穴だ。全裸よりかえって破廉恥だ。

 琴子は乳房が豊かで、レオタードで乳肉が圧迫されている。愛用のベレー帽は被ったままだ。

 

「本より勇太さまのほうが大事です♡ 読書するくらいしか取柄のない不束者ですので、どうか、勇太さま専用の朗読機器にしてください…♡」

 篠川栞子が言う。

 栞子は巨乳を強調するように、牛の扮装をしていた。

 ただし、水着ではない。乳房の下から股間の上まで、腹部を菱形の布地が覆っている。まるで金太郎の前掛けだ。上の2本の紐は、乳房の谷間を通り、首で結ぶ。左右の紐は背中で結ぶ。下の2本の紐は、股間の両脇を潜り、背中の紐と結ぶ。

 布地は白黒の牛柄だ。腕と足にも牛柄の筒を着けている。

 長い黒髪の頭には、牛耳のカチューシャを着けている。個体識別の黄色いタグも付いている。金色の吊鐘(カウベル)の付いた赤い首輪を着けている。尻にはアナルプラグで牛の尻尾を挿している。

 涙滴型をした長い乳房は丸出しだ。

 万巻の書物に通じ、博引旁証である栞子が、このような下品な格好をしているところを見たら、彼女を知るものは卒倒するだろう。

 

「少年♡ いまさら遅いかもしれないが、女らしさと無縁でいたことを悔いているよ♡ どれだけ媚びれば少年の情欲を煽ることができるかな?♡」

 九条櫻子が言う。

 櫻子は全裸にゴム製の長手袋とタイツを着けていた。乳房の双球には、乳首のところにハート型の二プレスを張っている。陰唇にもハート型のシールをしている。シールは陰唇にピッタリと張りつき、亀裂を浮きだしていて、かえって剥きだしより淫靡だ。すべて下品な蛍光色だ。

 独立自尊で、麗人といった趣きの櫻子が、これだけ下品な姿で媚びているところを見たら、彼女を知るものは発狂するだろう。

 

「勇太くん♡ 診療科から泌尿器科に転科するから、私を君のおチンポのかかりつけ医にしてくれないか?♡ それがおこがましいというなら、医師免許を返納するから、せめて君がおしっこをするとき、口の検尿コップで受けとめる担当看護師にしてくれ♡」

 天久鷹央が言う。

 鷹央はナースのコスプレのエロ衣装を着ていた。布は襟と袖、そして肩の部分だけだ。脇下から襟元まで、斜めに布が切れあがっている。

 胴には透明なビニール製の競泳水着を着ている。当然、乳房も陰部も丸見えで、ただ下品な光沢を帯びさせているだけだ。

 手には肘丈の薄いゴム手袋を嵌めている。医療用で、手術着らしい水色だ。競泳水着と不釣合に、足には太腿丈の白いタイツを履いている。

 医師と看護師に職業の貴賤はない。とはいえ、診療医の名医である鷹央が、ナースのエロ衣装を着ると、なおさら冒涜的だった。

 

「私は天才的な犯人、狡知に長けた《狐》のつもりだったけど… おマヌケな狸でしかなかったの♡ エロ狸をかわいがってほしいの♡」

 小佐内ゆきが言う。

 ゆきは華奢な体格だ。胸の膨らみも薄い。その左右の乳首に房飾り(タッセル)を着けている。さらに、乳房の周囲、陰部の周囲を、レースで縁飾りした紐が囲んでいる。ブラジャーとショーツの縁取りだけが残ったような格好だが、当然、下着としてはまったく機能しない。ただ秘部を飾っているだけだ。

 ショートボブカットの髪に狸耳のカチューシャを着けている。手首と足首には、やはりレースの縁飾りの付いた帯(バンド)を巻いている。

 

「さあ。服を脱いでくれ♡ 勇太くん♡」

 入須冬実が言う。

 冬実は長身の裸体に、網製のレオタードを着ている。当然、素肌は見えていて、かえって網目が艶めかしい肌理(きめ)を強調するだけだ。

 レオタードは左右の乳房と陰部のところに円形の穴が開いている。左右の穴から長い乳房が飛びだしている。胴部は網目で覆われているために、巨大な乳房と陰部の生肌(きはだ)が目立つ。

 レオタードは首元まであるもので、黒い縁が首を締めている。長い腕には黒の長手袋を、長い足には黒の網タイツを着けてている。

 

 響子たちが衣装を見せているあいだに、えるとひよのも着替えた。

「お召しものを預かりますね♡」

「腕を上げてください♡」

 えるとひよのが甲斐甲斐しく勇太の服を脱がせる。

 

 えるとひよのはマイクロビキニの水着を着て、薄いゴム手袋を嵌めていた。

 えるは乳房が大きい。マイクロビキニの三角形の布地と紐が、大量の乳肉にめり込んでいる。陰部でも、三角形の布地が亀裂に食いこんでいる。紐は尻肉に埋もれて見えない。

 えるほどではないが、ひよのの乳房も大きい。

 

 勇太は全裸になった。半ば勃起した陰茎が股間に垂れさがっている。

 

 櫻子が床に四つ這いになる。

「私の背中に座ってくれ♡ 少年♡」

 勇太は櫻子の湾曲した背中にドサッと腰を下ろした。櫻子は背骨の撓(しな)りで勇太の体重に耐えた。

 

「ブヒヒ」

 勇太が両足を広げると、少女たちが黄色い歓声をあげ、一斉に勇太の股間に集まった。

「きゃーッ!!♡」

 響子、直斗、琴子、ゆき。彼女たちの小さな頭が勇太の陰茎に押しよせる。栞子と鷹央も続く。

 勇太の両足のあいだの狭い面積に、世界最高峰の頭脳をもつ女性たちの頭が集合しているのだ。面積当たりで知能指数の合計がこれほど高まったこともないだろう。プリンストン高等研究所で、超満員のエレベーターが非常停止しても、これほどにはなるまい。勇太の陰茎を目当てに、少女たちが顔を寄せたために、それだけのことが起きたのだ。

 少女たちの美貌が近づき、まさに立錐の余地もないため、彼女たちは舌を伸ばし、舌先で勇太の陰茎に触れた。さらに、たがいに顔を押しつ引きつして、顔が近づいたときに勇太の陰茎を食んだ。

「ああ、勇太くん…♡」

「勇太くん…♡」

 少女たちが嬌声を洩らす。

 鷹央が頭を少女たちのあいだに割りこませる。密集した頭から出た亀頭に吸いつく。小ぶりな唇が滑らかな亀頭を撫でる。

 栞子が羨ましげに見て、湿った溜息を洩らす。

 

「ブヒヒ」

 頭脳明晰な女性たちが自分の陰茎に集(つど)うのを見て、勇太は優越感に浸った。

 

 櫻子の背中から腰を上げる。

「お尻の穴も舐めさせてあげるデプかね。ブヒヒ!」

「きゃーッ!!♡」

 勇太の厚顔無恥な宣言に、女性たちが嬉しげな悲鳴をあげる。

 

 鷹央が勇太の背後に座る。

「今日ほど医者になって良かったと思うことはなかったよ♡」

 チュッ♡ と音を立てて、勇太の肛門に接吻をする。

 口付けをし、舌先で舐め、勇太の肛門を湿らせたあと、手術用のゴム手袋を嵌めた指を突きいれる。

「ブヒィ!」

 勇太が嘆声をあげる。

 前立腺を的確に刺激され、勇太は膝から脱力した。長身の櫻子と冬実が勇太の全体重を支える。勇太はハンモックに寝ているように、重力から解放された。

「私もお手伝いするわ…♡」

 ゆきが勇太の後ろに回る。尻の合間に、小造りな顔を寄せる。

 舌を伸ばし、肛門の窄まりを舐める。

 ゆきは大の甘党で、味についてもうるさ型だ。県下の甘味処を制覇し、格付けするほどの菓子好きだ。普段はモンブランや餡蜜(あんみつ)を味わう、ゆきの舌が、勇太の肛門を這いまわっていた。

 ゆきが湿った吐息を洩らす。

「ああ…♡ どんなスイーツより美味しいわ…♡」

 鷹央は頭を勇太の股間の下に潜らせ、前立腺の隆線、いわゆる蟻の戸渡りを舐めた。

 射精の欲求に、勇太の睾丸は引きしまっていた。陰嚢の2つの膨らみに、響子と直斗がそれぞれ舌を這わせる。

 えるとひよの、琴子の3人が交代で勇太の陰茎を咥える。1人が陰茎を呑みこみ、顔を引いたときに、残る2人が陰茎の側面に吸いつく。

 美少女3人によるトリプルフェラだ。それだけでも言語道断だが、その3人は才色兼備の才媛でもある。しかも、さらに4人、合計7人の美女、美少女が勇太の股間に口で奉仕していた。セプタプル(7人による)フェラだ。人語を絶する贅沢だといえた。

 体は櫻子と冬実が支え、顔は栞子が豊かな乳房で受けとめていた。

 

「ブヒッ。刺激が強すぎて、おチンチンが疲れてきちゃったデプ。もっとまったりしてほしいデプ」

 どれほどの権力者や資産家でも適(かな)わない奉仕を堪能しつつ、勇太はさらに贅沢を言った。

 

 勇太の両脇に、櫻子が腕を差し、抱きかかえるようにして体重を支える。

 栞子と冬実が勇太の股間の下に潜りこむ。2人とも自身の長い乳房を持ちあげる。栞子が陰茎の下部を、冬実が陰茎の上部を乳房で挟みこむ。2人の大量の乳肉は、パン生地のように柔軟に変形し、密着していた。

 栞子は長い乳房を勇太の股間に潜らせ、顔を肛門に接近させていた。つまり、パイズリアナル舐めの体勢だ。

 冬実は床に仰向けになり、勇太の陰茎を乳房で挟みつつ、その谷間から突出した亀頭を咥えていた。つまり、パイズリフェラの体勢だ。

 パイズリアナル舐めか、パイズリフェラのどちらかだけでも、特別に乳房の長い巨乳でなければ実現できない。

 勇太はその2人を駆使し、上下でダブルパイズリさせていた。しかも、その2人とも頭脳明晰な才媛だ。信じられないほどの贅沢だった。

 栞子が舌を突きだしたまま話す。

「高校生のころから胸が大きくなって…♡ 道ばたや車内で男性に見られて苦痛でした…♡ 私が読書に没頭するようになったのは、そのせいもあったかもしれません…♡ でも、こうして勇太さまに御奉仕できるなら、胸が大きくて良かったです…♡」

 栞子と冬実は動作を同調させ、勇太の陰茎を乳房で擦りたてた。さらに、おのおのパイズリアナル舐めとパイズリフェラを施す。

 

「ブヒッ! 堪らんデプ! もう射精(で)ちゃうデプ!」

 

 櫻子が立ちあがり、腰を突きだす。

「少年♡ 少年の優秀な遺伝子を私に注いでくれ♡」

 だが、櫻子は長身で腰が高く、足が長い。立ち後背位(バック)の体位では、勇太の腰は高さが届かない。

 勇太が劣等感をおぼえる寸前で、響子が左側に跪(ひざまず)いた。両手を組みあわせ、乗馬のときに踏台にするように差しだした。だが、乗馬とは異なり、勇太はその両手に足を置きつづけた。まるで鞍(くら)だ。

 右側では、直斗が同様にした。

「これで問題はないわね♡ 勇太くん♡」

「ああ♡ 片付いたね♡」

「ありがとうね。響子ちゃん、直斗くん。ブヒヒ!」

 櫻子が勇太に謝る。

「すまない♡ 少年♡ 骨好きが高じて、カルシウムを摂りすぎてしまったのかもしれない♡ もう四足歩行でしか歩かないと誓おう♡ そもそも、脊椎動物の骨格は二足歩行に不適当だからね♡」

「特別に許してあげるデプよ。ブヒヒ!」

「ああ…♡ 賢明なうえに、寛大だなんて、君はなんて偉大なんだ♡ 少年♡」

 勇太は後背位で櫻子の陰唇に陰茎を挿しこんだ。

「おほッ!?♡」

 櫻子が唇を尖らせ、嬌声を洩らす。

 勇太は櫻子の下腹を突いた。パンパン♡ パンパン♡ と、打擲(ちょうちゃく)の音が響く。

「おおッ!♡ おおッ!♡ おおッ!♡ おおッ!♡」

 櫻子は長い足に手を置き、前屈みになって喘いだ。垂れた乳房が前後にブルブル♡ と揺れる。

 えるやひよの、冬実たちが勇太の股間に縋りつき、肛門や陰嚢、櫻子の陰唇からはみ出した陰茎に舌を這わせる。

 勇太たちの一団は部屋を経巡(へめぐ)りはじめた。カップルが立ち後背位(バック)をしながら歩くようなものだが、勇太は一歩も足を動かしていない。櫻子、そして勇太を載せた響子と直斗が歩いていた。まるで輿(こし)だ。

 勇太たちの牛歩のような行進を、残る女性たちが囃(はや)したてる。まるで知能の欠如した若者たちの乱痴気騒ぎだ。彼女たちの知性を愛した男性がこの場面を目撃すれば、失意と衝撃のあまり、失禁して射精し、そのまま廃人になるだろう。

 

「ブヒィ! もう射精(で)るデプゥ!」

 勇太が宣言する。

 観衆の女性たちが拍手喝采する。

 

 ビュルッ♡ ビュルルルッ♡ と、勇太は櫻子の膣内に射精した。精を放つ快感が陰茎に伝わる。

 勇太はまだ歓声に包まれていた。

 栞子が四つ這いで、垂れた乳房をブルブル♡ と揺らしつつ、勇太に近づく。

「次は私に射精してください!♡ 勇太さま!♡」

「いや、私に射精してくれ!♡」

「私にも射精(だ)してください!♡」

 女性たちが勇太に強請(ねだ)る。

「ちゃんと全員に射精(だ)してあげるデプよ。ブヒヒ!」

 勇太はくぐもった笑声をあげた。

 

 山奥の山荘に女性たちの歓声が響いた。

 

 毎月、もっとも勇太を喜ばせるイベントを企画発案したメスには、マキマから「ゴールデン手コキグローブ賞」が授与される。この月、「ゴールデン手コキグローブ賞」の栄冠に輝いたのが、えるたちだということは言うまでもない。

 

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