いやらしいダンジョン~男に厳しく女にはさらに厳しく~ 作:有脳
今回は背景的なものなのでエロはないです。
ホルコルア大陸にあるロスチャイルド王国の南の端に、小さな集落「エルオスの村」がある。
実際にはその名は通称であり、名前らしい名前など王国の地図にもいかなる書籍にも記されていない。
かろうじて地図にも集落があるということと、住人たちが数十人程いるということが一番近くの街や一部の行商人に分かる程度しか知られていない。
そのような小さな集落に数週間前、大きな地震が襲う。
住人たちは近くの山へと避難したことで大した被害もなく、安堵したもののその地震は住人たちに更なる恐怖を齎した。
今まで見たことのない洞窟のが現れたのだ。
避難した山から下山する途中、住人の中の一人の男が麓に洞窟を見つける。
「なんだぁ?この洞窟は。」
以前には存在しなかった洞窟に、住人たちは困惑する。
「近寄らないほうがいいじゃろう、魔物が出てくるかもしれん。」
杖を突いたいかにも長老然とした老人から“魔物"という言葉が出ると住人達の顔は青褪める。
せっかく地震という天災から逃れたのに更なる命の危機が迫っているのか、と。
「とにかく村に戻るのじゃ、戻って街に誰かを使いにやらねばなるまい。」
「そ、そうね。村に戻りましょう、ここでは何もできないわ。」
女が動揺を隠せないままそういうと、そうだそうだ、と周囲から声が上がり住人たちは村へと向かう足を急いだ。
しばしの時間を移動に費やし、住人たちは村の前へとたどり着く。
外から見る限りは、地震による村の被害は幸いなことに少ないようだった。
家の外に置いていた薪の束や藁束といったものが落ちたり倒れたりといったものだけで済んでいた。
一つだけ、村の中央の井戸にある違和感を除いては。
「なんだ?誰かいるぞ!」
「まさか盗人か?」
住人たちがどよめきだす。
井戸の縁には黒い外套を纏う人物が腰かけていた。
外套を纏う人物は、住人たちが戻ってきたのを認めると立ち上がり両手を広げて声をかける。
「やあやあ村の住人諸君、御機嫌よう。」
外套の人物は村をさも自分の所有物であるかのように振舞いながら本来の住人たちを迎える。
声をかけられたものの、自分たちの村で不審な人物に迎えられるという状況に住人たちは困惑し、反応できない。
そんな中でも外套の人物は気にしたようなそぶりを見せずに言葉を続ける。
「私は君たちが帰り道に見つけたであろう洞窟の住人でね、エルオスという。」
「嘘をつくな!どうせ村の食料でも盗みに来た盗人かなんかだろ!」
住人たちの中から若い男が怒りを露わにしながらエルオスと名乗る人物を声を荒げる。
それに対してエルオスは心外、といった声色で返す。
「私は食料など盗まないさ、別に飲まず食わずで生きていけるからね。」
「でっ、では、何故こんな街道の端にある何もない小さな村にきなすった。」
長老然とした老人が困惑を隠しきれないながらも疑問を返す。
それに周囲の住人達もそうだそうだと声をあげる。
「挨拶と言っただろう、引っ越しの。」
「それで納得するとでもお思いかね?」
「では教えよう、わかるように。」
そう言うとエルオスは再び井戸の縁に腰かけ、パンッと手を打つ。
すると次の瞬間には住人たちの数と同数の椅子が現れ、エルオスは住人たちに右手を差し出し、。
「それに座るといい。疲れただろう、歩き詰めで。」
突然現れた椅子へと座ることを促された住人は恐る恐る椅子に腰かける。
それを認めるとエルオスはうむ、と頷き口を開く。
「私は人間ではないんだ、世に言うダンジョンマスターというものでね。」
「ダンジョンマスター……?」
「ダンジョンの支配者さ、迷宮を作ったり、魔物を増やしたり使役する。」
「てことはお前が魔物の親玉か!」
「間違ってないよ、ある意味では。」
魔物を増やすという言葉に反応した若い男がバッと立ち上がりエルオスに詰め寄り胸倉をつかみ殴りかかろうとする。
「ふざけるな!バケモノが!この村から出ていきやがれ!」
「良くないな、暴力は。」
そう言うと同時に掴みかかったはずの男がバランスを崩し倒れる。
男が掴んでいた筈のエルオスが消え、井戸の屋根の上に座っていたのだ。
「マっマルス、大丈夫か?」
マルスが倒れたそばの男が驚きながら声をかける。
「話を最後まで聞かないからだよ、君が。」
再び井戸の縁に腰かけながらエルオスはマルスと呼ばれた男をとがめる。
「魔物を使役はするが別にこの村を滅ぼしたりはしないさ、私は。」
「……どういうことですかな?」
村に魔物をけしかけることが出来るがしないと言ったエルオスを訝し気に老人は問う。
当然の疑問である。
「村興しさせてあげようと思ったのさ、ダンジョンでね。」
「なっ……?」
予想していた斜め上とでもいうような解答に住人たちがどよめく。
それを見てエルオスは言葉を続ける。
「君たちが思うようなダンジョン持っているのさ、既にね。」
「だったらそこでやれば……」
「飽きたのさ、退屈でね。」
いかにもおばさんといった女性が当たり前に思うことを言えば。
それに対してエルオスはつまらなそうに返す。
「ダンジョンがあれば人が来て潤うだろう、この村も。」
「それはそうだが……」
「あなたの都合でこの村を振り回さないで!!」
話を聞いていた中年の男が肯定するも、若い女がエルオスに向かって言い放つ。
「私たちはね、この村で静かに過ごしていたいのよ!ダンジョンも魔物も関係なく!」
「わかるよ、君たちの思いは。」
「わかっていないわ!あなたはそれを奪おうとしているのよ!」
「否定しないよ、私のしようとしていることの弊害も。」
「だったら早く出て行ってよ!今すぐ!」
「無理だよ、それは。」
怒鳴る女にやんわりと返していたエルオスだったが、出て行けという言葉に対してだけは声色を変えて答えた。
「ダンジョンの構築は既に終わっているんだよ、君たちが避難したあの地震でね。」
「なんじゃと……!?」
「受け入れるといい、手遅れだよ。」
ダンジョンが既に出来上がっていると聞かされた住人たちの中に衝撃が走る。
魔物が自分たちの村のすぐ傍にいるという恐怖が場を包む。
それを見ながらエルオスは住人たちに言う。
「贈り物をあげよう、君たちに。」
椅子を出した時のように手を打つ、今度は二度。
すると音もなく村の外に住人たちの住居とは比べ物にならない大きさの建物いくつか現れる。
それを指し示し言う。
「これらをこの村に来る冒険者や商人たち使わせるといい、これが一つ。」
次に村の外を指し示す。住人たちが振り返ると村の外にしっかりとした道が敷かれていた。
「次に街道に道を繋いでおいたよ、この村をね。」
そしてもう一度手を打つとエルオスの手に袋と横に扉が現れる。
エルオスが長老然とした老人に袋を渡すとずっしりと重く、ジャラジャラと音がする。
「君たちの国の金銭を用意させてもらったよ、使うといい。」
続けてエルオスがドアノブをひねり扉を開けるとその風景はこの村の物ではなく、この村から一番近く領主や冒険者たちのギルドが設置されている街のそれだった。
「一番近くの街に続く門を開いたよ、片道のね。」
「ここから街までどれだけ離れていると思っているの!?」
「ダンジョンにある罠の応用だよ、気にしなくていい。」
住人達の理解が追い付かないままエルオスは言葉を続ける。
「領主とギルドに事情を話し、渡したお金で雇うといい、冒険者を。」
住人達が呆けたままでいるのを見飽きたのかエルオスは住人達に背を向ける。
「ダンジョンに戻るよ、私は。」
そういうとエルオスの姿は消えるが最後に声が響く。
「待っているよ、趣向を凝らしたダンジョンで。」
エルオスが消えて幾ばくかの時間が経ち、重苦しい雰囲気の中で中年の男が長老然とした老人に声をかける。
「それでそうするんだ?村長。」
長老然とした老人、村長はエルオスに渡された袋を見て、次に村の住人達を見渡す。
少しの間をおいて住人達に言う。
「あのダンジョンマスターを名乗る男の言うとおりにするしかあるまい……領主様とギルドに行くとしよう。誰か付いてきておくれ。」
「私が行く!」
誰か、という村長の言葉に若い女が名乗り出る。
エルオスに出て行けと言った女だ。
「よかろう、アマレット、ついてきなさい。」
と村長は頷き、アマレットと呼ばれた女を伴い扉へ向かう。
これが名も無き村がエルオスの村となり、世界一いやらしいダンジョンと言われたエルオス迷宮の始まりである。
一応次回からエロが入る予定です。
新米のうち、誰から餌食になって欲しい?(投票順に書きます)
-
ソライア(赤髪剣士)
-
クリコ(金髪魔法使い)
-
チェレット(緑髪斥候)