A sign of defeat エロティカルファンタジー世界にて、俺は生きる 作:くっろいの
翌朝。
体の疲れは取れていても精神的な疲れは取れていなかったのか、俺はあのあと思ったよりも早く眠ることが出来た。そしてたっぷり寝たおかげか、早めにすっきりと起床。大きく伸びをしてこれから恐らく自分の拠点となる部屋を見渡す。
「ん、んぅぅぅぅ……っ! ふぅ……えーと、サリアさんのところに行く時間って決まってなかったよな……」
セクスゥムさんが去った後、俺はベッドの毛布の下で素っ裸なことに漸く気付きある意味動けなかったことに感謝していた。もし裸で出ていたら……うぅ、恐ろしい。
そのまま裸で寝るのは気が引けるので身体が少しずつ動くようになってからなんとかベッドから這い出て、備え付けのタンスに向かい寝間着とか無いかなーと探してみたのだが。だが……! こんなドスケベ世界にまともな寝間着なんてあるはずもなく!
あったのはシースルーやら極小布面積やら大事な部分が穴になっている下着やら……そんなものを備え付けのタンスで提供するのか、サービス良すぎないかある意味……。
「……普通なのは、元々着ていた服だけか……」
俺の最初の服装は茶色いコートに普通の服、下着は可愛い系ではあるけどそこまで過激ではない。それとおまけに一本の直剣、これだけで見たらここがエロ世界だなんて想像も出来ないよな。しかし現実は非常、ここはエロが優先されるっぽい都合の良い世界……!
世界の法則も、神も、魔法も、魔物も、冒険者も、全部がエロとか本当に酷い世界だ!
などと、心では憤りつつ比較的マシっぽいバスローブみたいな服を発見してそのまま就寝、今に至る。
起床後はバスローブを脱いで最初の服を着ようと思ったんだが……女性用の下着とか触ったことなんかない。しかしなんとなく、こうすればいいかな? ぐらいの意識が働いてくれるお陰で問題無く着ることは出来た。そこは都合がいいんだな……。
「……よし」
タンスの戸の裏に備え付けられた大き目な鏡を見て確認、特に変わったところはない。こんなところに鏡があるとはな……。
昨日セクスゥムさんに見せられた、快楽に蕩けている少女ではない。深紅の瞳と烏の濡れ羽色と言える艶のある髪が特徴的な、凛とした雰囲気の和風美少女だ。
その眼差しは鋭く、気を引き締めているおかげか結ばれた口も合わさってカッコいい。しかし、背は正直低めで前髪ぱっつんという点も含めてみると幼い可愛さもある。
かっこかわいい凛とした和風美少女、それが今の俺の身体だ。
「………………えへへへ……」
可愛いなぁ……自分と言うのがすごく惜しい、可愛い子だなぁ……。
っていかんいかん、俺が顔を緩めると少女も顔を緩める、凛とした少女がふとした瞬間顔を緩めるとかそういうのは好きだけどこれは俺なのだ。
もっとしっかりして、この凛とした表情を維持しなければならない……!
「失礼します」
「ひやん!?」
ドアが急に開いたぁ!?
「は、はいなんでしょう!?」
「ギルドマスターからの伝言です。ハルカさんが来れる時間に好きに来て欲しい、とのことです」
へ、変な声を出してしまった、きりっとしようと意識した直後だったのに……!
い、いや、このお姉さんが悪い、普通ノックしてから入るものだ、いきなりドアを開けて入ってくるとかどういうことだよ!
ギルドの制服を着た茶髪セミショートで緑色の瞳をした、クールな雰囲気の人だ。初めて見たときのふたなりでオナニーしてた人とは雰囲気が全く違うな……。
「……随分と綺麗なお部屋ですね。入ったばかりの冒険者の方の自室は凄いことになる場合が多いのですが」
伝言をパパっと告げた後、少し部屋を覗き込んできょろきょろするとお姉さんがぼそりと呟いた。凄いことってなんだよ、いやまあ想像に難くないけどさ。
「……凄いことって例えば?」
「どろどろの液体やらその液体塗れの道具やら部屋全体に漂う匂いやら。刻印持ちを全面的に受け入れるギルドに所属することで今までのタガが外れる方も多いのです」
なるほど……いやうん、俺は他の人とは経緯が違うから何とも言えないけどな? アパートとか寮とかで引っ越して初日にエッチするのが当たり前みたいな感じなのか……。
「…………いえ、匂いは少ししますね」
「え!?」
「では、失礼しました。出来れば今日中に来て欲しいとのことです」
「待っ、匂いってどういう!?」
俺の問いも虚しくそのまま職員のお姉さんはドアを閉めて去ってしまった。匂いって何、俺の鼻には何も感じられないんだけど!?
た、多分昨夜に俺がイきまくった時の、潮だとか愛液だとか、そういうのだと思うけどぉ……!
恥ずかしい、人に指摘されるというかバレるのってすごい恥ずかしい……!
「う、うぅぅぅぐぅぅぅぅ……!」
もういい、直ぐに来いとは言われてないんだ、不貞寝してもいいだろ!! 眠気はもうすっきりして無くなってるが知らない、とにかくベッドインする!!
着たばかりのコートを脱ぎ捨てて剣も放り投げそのままベッドに飛び込む。そのまま枕に顔を埋めて足をジタバタさせ、暫く俺は羞恥に悶えていた……。
まあ、羞恥に悶えると言ってもそんな長時間続けられるわけもなく……。
ある程度収まったらコートを着直して剣も持って、そのままギルドマスター、サリアさんの部屋に移動した。
部屋を出てロビーに降り、受け付けにギルドマスターに会いたい、と言えばすぐに職員の人が案内してくれたのだが……案内役が朝俺の部屋に来たお姉さんだった……!
「どうしましたか、顔が赤いですよ?」
「なんでもないです……!」
羞恥が、羞恥が蘇る、俺のエロい匂いを嗅がれたってなんか凄い恥ずかしい……!
「……くす」
「な、なんですか!」
「いえ、初々しくて食べたら美味しそうな人だなぁと」
「うひぃ!?」
お、美味しそうってなんだいや分かるけども!! 俺ってネコなのか、ネコしか出来ないのかなぁ!?
これは、元男として意識して頑張らないとならないな……ネコのままってちょっとプライドが悲鳴を上げそうだし……。だがしかし、正直セクスゥムさんには絶対敵いそうにないし、まずこのオープン過ぎる世界に慣れないといけないかな……。
「到着しました」
「え? あ、はい、ありがとうございます……」
考えていたらいつの間にか到着していた。そして俺の葛藤を余所に、そのまま職員のお姉さんはカウンターに戻っていく……。な、なんか弄ばれたような気分だよ畜生……。
確かに元々童貞で女の人と接する機会も少なかったしそもそも性転換して立場とか変わって、世界そのものも変わってしまってる
「……いつまで百面相しているつもりだ? 早く入ってこい」
「はひ!?」
……まず、ビビりというか驚きすぎるのを直そう。
項垂れつつドアを開け、中に入るとサリアさんと何故かセクスゥムさんもいた。サリアさんはきりっとした顔でセクスゥムさんはいつも通りのニヤニヤ顔だ。
「昨日はよく眠れたか?」
「あ、はい、ぐっすりと眠れました」
「結構。本はきちんと読んだな? 問題が無ければ、直ぐにでも手続きを終わらせてギルドカードを発行するが」
昨日セクスゥムさんに教えてもらったことも含めて、まあ大体は理解したと思う。細かい部分はまだ読み切っていないが、最低限の知識はある筈だ。
「問題はないです。ただもう少し本は貸してほしいんですけど良いですか?」
「構わん、お前が好きな時に返してくれ。さて、それでは冒険者登録だ」
受け付けとかでしないんだろうか……などと考えている間にサリアさんが机の上に大きな台座に乗った水晶を取り出して机の上に置く。
台座にはカードが出てきそうな穴が開いており、如何にもといった風だ。
「では、この水晶に手を置け。あとは勝手に選べ」
「は、はぁ……?」
「まあ見ればわかりますよぉ」
言われるがままに水晶に手を置く。置いた瞬間身体から何かが抜けて流れていくような感覚がして、その直後に水晶からウィンドウみたいなものが浮かんできた!?
「は、はいてく……」
「種族は……やはりオリエンタルか。顔つきや雰囲気があったしな」
「元々迷い人は大体オリエンタルなんですよぉ」
つまり大体日本人と。えーと、クラスを選ぶのか。
本にあった通りの六種類。まあ、無難にファイターだろうな。ローグは自信ないし。
「スレイブになるんだったら私が飼ってあげてもいいんですけどねぇ……♪」
「お断りします!!」
「ざぁんねん♪」
えーと、ホログラムウィンドウに指をやればいいのかな……? うん、そうみたいだ。ファイターを選択、それから……。
「終了だ」
「ほえ?」
「ギルドカード作成は終了、直ぐにカードが出るぞ」
「え? そんなぱっと終わるんですか?」
などと言い終わる前にカードが穴から出て来た。鉄の色のカードだ、よくある盾と交差した剣のマークが左上にあって真ん中に俺の名前とクラス、ランクが書かれている。
「裏面にはお前が今現在発現している刻印が刻まれている。あまり人に見せないために普段は消去しておくことができる、念じれば出来るからやってみろ」
ふむふむ、裏面に……おお、これか。『媚薬分泌』……セクスゥムさんが行っていた通りだな……。で、念じれば消える……おぉ、本当に消えた!
「基本的に刻印は公開するな、『自動謝罪』等が付いたら目も当てられん」
「は、はい……」
これで完了かぁ……は、早いなぁ……。
「これで正式にお前は冒険者、淫乱の代名詞の仲間入りだ」
「そう言われたらカードを返したくなるんですが!!」
「じゃあ刻印抱えたまま、普通の生活をしますかぁ?」
「奴隷まっしぐらだな」
ぐ、ぐぬぬぬ……!
い、淫乱の代名詞の仲間入りって、それはひどくないか、いや世界観というか法則を知ったら確かにそうだとは思うけども!!
「さて、文句もないようだし早速だがお前にギルドから指名依頼だ。なぁに、せっかくだから少し面倒を見てやろうと思って用意した簡単な依頼だ。気軽に受けるといい」
「文句はありますけど……って指名依頼? それはありがたいですけど、その内容って……?」
ギルド指名依頼:ハルカ・ミドウ
『薬草採取』
依頼者:アリア・アルタリス
報酬:銀貨10枚
というわけで、お前のために用意した練習用の依頼だ。
アルサードの近くにある森の少し奥に鎮静効果のある薬草の群生地がある。
ギルドから採取用の袋を支給するのでそれをいっぱいにして持ってきてくれ。
魔物は普通に出没するので気を付けろよ?
渡された紙の内容はこんな感じだった。なんか、ゲームっぽい感じがあるな……。
「私からの話は以上だ。お前のこれからの健闘を祈っておくぞ」
「くすくすくす、私も祈っておきますかねぇ」
…………こんなに不穏な祈りは聞いたことがないよ。
「では受付に戻り、袋を貰ってさっさと出発しろ。今の時間帯なら行って帰ってきても夕方前には間に合う」
「今からですか!?」
「そう、今からだ! 善は急げと言うのだろう、走れ!」
「は、はい!?」
そのまま俺は、部屋から追い出されてしまったのであった……。
正直に言うとこれからが不安でたまらないよ……。