※この作品はR-18です。

A sign of defeat エロティカルファンタジー世界にて、俺は生きる   作:くっろいの

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第2話 森の中

 俺が目覚めたのは、どこかの森だった。あの悪夢のようなトラックに轢かれた直後、少し意識が暗転したかと思ったら横になっていたのだ。ガバリと起き上がるとまず感じたのは……。

 

「……つるりと滑る黒髪……艶々だなぁ……」

 

 現実逃避したくなるような、綺麗な烏の濡れ羽色と言える長い髪の感触だった。

 

「いよっとぉ……」

 

 立ち上がり、ぽんぽんとお尻を払って自分の格好を確認してみる。黒髪ロングか、好きだけど自分がなるとはなぁ……。

 

 着込んでいるのも俺が安く買った普通のジャンバーではなくなんか武骨な茶色いコート、その下には飾りっ気のない服だ。感触からして恐らく下着も着込んでいる。

 

 お手てはちっちゃくてつやつや、爪も綺麗。頬を触ればプニプニ柔らかでいつまでも触っていたくなる感触だ。胸は……後にしよう。

 

 衣服類のサイズは全てぴったりで、この身体になって直ぐには違和感を感じないほどだ。いやまあ体中違和感だらけで逆に分からなかったのかもしれないが!

 

「それと、なんか腰にぶら下がってる重い物……これ、本物だよな……?」

 

 コートの内側、ズボンのベルトにくっついているもの。それはどう見ても剣だった。

 

 よくゲームや漫画、アニメなどで見る剣、鍔にも柄にも飾りっ気がないし鞘も変わったところはない。雰囲気的には伝説の剣という線は無さそうだ。

 

 試しにすらりと抜いてみる、本物の剣なんて見たことないし審美眼なんてまったくないが……普通の剣に見える。

 

 刃は薄くて切れそうだった、というか雑草で試したら簡単に切れたから多分本物、でも何の変哲もない普通の剣だと思う……。

 

「つまり、俺は……剣が必要な世界にTS転生したのかな……? うん、扱いに困るから今は仕舞っておこう」

 

 そしてなんとなく、本当に何となく仕舞おうとしただけだが妙に滑らかに剣を鞘に滑り込ませることが出来た。俺が鞘に収めたことがあるのは高校の修学旅行で買った模造刀くらいで、それもわたわたとしていたのだが何故か今剣を仕舞おうとしたら滑らかに出来た。

 

「え、なんだ今の? まともに触ったのなんて初めてなんだが……ま、まあ今は置いておこう、あとで考える。えーと……ここはどういう世界なんだろう、人間がいるのかな、魔族とか魔物とかそういうのはどうなんだろう? なろうの鉄板だよな、どういう世界か探るのは……」

 

 腕を組んでこれからどうするか、少し予定を組み始める。うん、少し組んだ腕が仄かに膨らんだ胸に当たる感触が気持ちいい……じゃなくて!

 

 周囲を見渡して確認する。森の中、空を見上げたら隙間から少し太陽が見える。太陽を含めた空に……異常はない。

 

 太陽は一つ、青い空に白い雲。森はよくあるイメージ通りの森だが、よく見ると一部の葉っぱが全く見たことないものだった。

 

 これは外国かもしれないで済むかもだが……ドピンクのキノコという、ファンタジーチックなものも混ざっていた。やっぱり異世界……なのだろうか。

 

 そして周囲を見渡して気付いたこと。俺、結構小さい? もともと森の中なんて歩く機会は少ないしかなり前の記憶しか残っていないが、それと比べても視線が低いような気がする。

 

 前世……というにはちょっとさっきのことすぎるが前世では一応平均身長はあったんだけどなぁ……いやいまはいい、置いておこう。

 

 まず最初の目標は……人間、というか知的生命体を探そう。それも友好的なものだとすごく嬉しい。そしてこんな森の中に長時間いることは良くないだろう、考えを簡単に纏めたら早めに移動を開始かな。

 

 武器は持っているが戦える気はしないし、魔物とかがいなかったとしても動物は怖いし。熊とか猪とか魔物とほぼ同等の脅威度だろう怖すぎる。

 

 というわけで移動は慎重に、しかし時間を掛けたらまずいので早急に。まあド素人なので出来る気がしないが心構えだけでもしておこう、うん。

 

「剣を念のため、念のためいつでも抜けるようにしておこう、脅しにはなるかもだし……?」

 

 我ながら、自信なさげな語尾が情けない……。しかし過信するよりはいいのだ、うん、マシなのだ。

 

「目標、森の脱出。指針は人の痕跡の発見。避けるべきは野生動物や魔物カッコカリとの遭遇……よし、これでいこう」

 

 え、ド素人にも程がある方針? もっとマシな行動指針がある? すまないが今の俺にはこれが限界なのだ……。

 

 というわけで、移動を開始。正直どこに行けばいいかさっぱりで方向もなにも分からないので適当に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩き出して暫く。偶に邪魔になる草むらとかは避けたり剣で切り払ったりしてるんだが……どこかおかしい。

 

 さっき鞘に仕舞う際、妙に滑らかというか、まるでゲームやアニメみたいにすらりと仕舞うことが出来たみたいな感じだ。どういうことかというと……。

 

「俺は剣なんて振るうのは初めてなのに、妙にバッサバッサと問題なく草むらを払える……振り回されたり流されたりとかしないでそのまま止めようと思ったところに大体止められる……」

 

 サバイバルも剣もド素人な俺だが、剣に関しては何故か素人ではなくなっているような気がする。チート無し、とはあったけど何か特典とかそういうのがあったんだろうか?

 

 暫く剣を振り回しつつ進み、草むら相手に無双していた俺だが……ここで少し戦えるかもしれないと強気になったのが大失敗。

 

 チート無しって言われていたのに戦えるようになって嬉しかったのかもしれないが、どれくらい戦えるかも知らないでただ少し剣が振るえる程度になって調子付いてしまったんだ。

 

 浮かれてそのままルンルン気分で、よく分からない森を進む。後から思い返せば何をしてるんだと引っ叩きたくなるような愚行だった、本当に。

 

 森に何がいるかもすら把握してない癖に勝手に頭の中でファンタジー世界と決めつけて魔物相手に戦うイメージをしてしまっていたんだ。

 

「よし、これならゴブリンとか相手に戦っても勝てそうだな!俺TUEEEまで行かなくとも自分の身は自分で守れるようにならな、あぁぁぁぁぁああああ!?」

 

 その結果がこれ。何か、枝のような物を踏んでパキリと音が鳴ったと思ったら勢いよく宙に向かって吹っ飛んだ。そしてそのまま足に巻き付いたロープによって逆さ吊りだ、しかもこんなふうにぴったり嵌るということは最初から対人間を想定した罠……なんだと思う。

 

 罠にかかる直前まで握っていた剣は手放してしまい地面に転がっている。しかも茶色いコートが地面に向かって垂れて目立つことこの上ない、絶体絶命の大ピンチだ。

 

「え、あ、あぁぁぁ!?なんでこんな罠が!?ちょっ、降り、降りれない、降りれないぃぃぃ!?」

 

 情けない声を上げてもどうしようもなく、ナイフとかそんな刃物も持ってない。

 

 こんな無理のある体勢に急になったにしては痛みとかはほぼ無いし全体重がかかっている片足も何ともないという違和感はあったがそんなことを気にしている暇もない。

 

 ジタバタと暴れてもゆらゆらと揺れるだけでどうしようもなく、ただ気持ち悪くなるだけだ。今の俺が出来るのは、この罠を仕掛けた存在が友好的な存在であって欲しいとか誰か助けて欲しいとかそんな風に祈るだけだった。

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