A sign of defeat エロティカルファンタジー世界にて、俺は生きる 作:くっろいの
ギルドの中に入ると……嬌声やら色っぽい声やら談笑やらでかなり騒がしい空間だった。
ドアを開けてまっすぐ進むと上下の階段がありそこを中心に左右に施設が分かれている。
左側が多くのエロい格好をした人たちの溜まり場である酒場らしき所。これまたエロい格好の給仕が注文を受けて酒やら料理やらを運んでいる。
……ちょっと待て、テーブル席でめっちゃエロイ音でキスしてる人とかいるんだけど!?
わ、わ、上半身全裸でくねくね踊ってる人もいる、どういうこと!? そ、そのまま、しゃがみ込んでテーブルの下に……。
……こ、これ以上は気にしないでおこう、うん、刺激が強すぎる……。
んっ、ん……! 右側は……カウンターと酒場よりはマシな雰囲気の待合椅子とテーブルかな? こっちはこう、よくある冒険者的なイメージそのままだ。
受け付けの人が数人、それに向かう冒険者達。なんか、冒険者もエロいけど受付の人達もすっごいエロいんだけど……?
このギルドって俺がいてもいいんだろうか、その、こんな普通の格好の俺が……。
「んー? どうしたのかしら、きょろきょろして?」
「あ、いやなんでもないです、はい……」
や、やっぱりこのまま立ってたら声かけられるよね……う、う……カ、カウンターに向かってみよう、情報が少しでもわかれば御の字かな……。
ちょうど空いたカウンターに行く。黒い悪魔っぽい角が生えた女の人だ、ギルド職員が皆着ている服ってデザインはきっちりしてるけど、雰囲気がエロい……。
「冒険者ギルドアルサード支部へ、ようこそ……っ」
「え、えーと……?」
……何かこの人、様子がおかしいんだけど……? 近付いたら分かるけど、ちゅこちゅこ音が鳴ってるし腕が動いてるし……?
「要件を、お伺いいたします……っ♡」
「あ、その、冒険者になりたいんですが……」
いやうん、俺もまあ気付いてるよ。この人勤務中にオナニーしてるって……。気になるのは腕がその……どう見ても扱くような動きなんだけど?
男だけが持つはずの、肉の棒を扱くような音と動きなんですけど……!?
「冒険者、登録ですね……っ♡ では、奥の部屋に、どう、ぞぉぉ……っ♡♡♡」
あ、イったな……。
びくんびくんしてる受付の人が落ち着くのを待ってカウンターの横にある扉へ案内される。その際、受付の人のタイトなスカートの下からその、白い液体が垂れさがっているのが見えた。
やっぱりふたなりなんだな……しかも他の人に反応が全くない、両性具有は珍しくないのかな?
扉を開けるとそのふたなりの人が立っていた。俺が入ってきたことを確認したら奥の部屋へと案内してそのまま立ち去ってしまう。
その奥の部屋っていうのがちょっと……その、両開きでなんか偉い人の部屋っぽいんだけど……?
「……入っていいんだろうか……?」
「問題ありませんよぉ」
「うひぅぅぅぅ!?」
な、なんか、なんかぬるりとしたものが頬を、俺の頬をぉぉぉ!?
「くすくすくす♪ いい反応ですねぇ♪」
聞き覚えのある声、振り向くとさっきギルドの前で会った凄い格好の女性が!? なんか、口から異様に長い舌が伸びてるんだが……!?
「貴女が来たら会うようにギルマスに言ったのは私ですよぉ、さあさあ入りましょうねぇ」
「そ、それよりなんで舐めたんだよ!?」
「くすくすくす♪」
にゅるんと長い舌を口の中にしまい俺の背中を押してくる、待ってこの人凄い力強いんだが!? マントの下がどうなってるか分からないけど背中の感触的に普通の手っぽいのに凄い力なんだが!?
ぱちんと指を鳴らすだけでドアがガシャンと開いてそのまま中に押し込まれるぅ!?
「……随分と強引だなセクスゥム」
「緊張している様子だったのでぇ?」
中にはこう、偉い人の机っぽいのとそこに座っている金髪の女性がいた。すごいキリリとした雰囲気であのエロい冒険者達の元締め……っていうのかな? そういう役職にいるとは思えないな……。
いや、スタイルがすごくいい、スーツっぽい雰囲気の服を押し上げる胸とか凄いわ! いやまあ、大きさに関しては俺を押し込んだ人の方が圧倒だけども。
内装は床一面に赤いふかふか絨毯に片方の壁全体が本棚、高級そうな机の上には羽ペンとかランプとか書類とかがあってなんというかボスの部屋っぽい雰囲気がある。
「まあ、いい。お前が冒険者になりたいという迷い人……いや、お前にも分かりやすく言えば異世界人だな?」
「……え?」
今この人、なんて言った? 迷い人? 異世界人……?
「そこのセクスゥム曰く、以前会ったことがある迷い人、異世界人には独特の魔力の流れがあったらしい。そしてお前にもそれがあるとのことだ」
「誤魔化しは効きませんよぉ♪」
そ、そう……なのか……? いや、そういうことなんだろう。バレてるなら誤魔化しは効かないだろうしな……。
「そ、その通りです。この世界について何も知りません……」
「ん?……あぁ、安心しろ。迷い人というのは確かに希少だが希少であるだけでそこまで重要な存在ではない。実験動物になるなどという未来はない」
え、そうなのか? いやまあ、それなら良かった……かな?
「とは言え、多くの奴らにとって興味深い存在であることは確かだ。あまり言い触らすべきものではないことは理解しているな?」
「それはもちろん!」
このギルドマスターさん……そういえば名前聞いてないな。この人なら話さない雰囲気あるけどその、セクスゥムって人は……。
「くすくすくす、私も話しませんよぉ?」
「はぁ……確かに信じられないような気持ちは分かるが、信じるしかないぞ。一応こいつは約束を破ったりしたことはあまりない」
あまり、ということはあるにはあるんですねー……。
「まあ、いい。それよりもお前は迷い人、異世界人。この世界についての常識を一切知らない存在だ。そしてお前は刻印を発現している」
「刻印……ってなんですか。俺が起きた森で会った緑色の肌をした子供も言ってましたけど」
「緑色の肌の子供、ゴブリンか。あれは亜人種の魔物だ。まあそれも含めて知らねばな」
本当にゴブリンだったのかあの少年達!? あの可愛い系ショタがゴブリンだったのか……!
「さて……世界が違うのだ。本当に基礎の基礎から教えてやらねばならんな。まずはこいつを使うか……」
ギルドマスターが立ち上がると壁一面の本棚に向かい、かなり上段から一冊の本を取り出した。
というか今気付いたけどタイトルが読める本と読めない本がある。ギルドマスターが取り出した本は読めるが、読めない本の方が多いな。
「そ、それは……?」
「我々がこの世界について話をしても、客観的には見えん。それが当たり前だからな。そこでこの本が役に立つ」
結構分厚くてハードカバーだな。ボロい所もあるから結構古いものだとわかる。
「これは別の世界からやって来た一人の冒険者が書き残したこの世界の特徴を書き記した本だ。お前がやって来た世界と同じ世界かは知らないが役には立つだろう」
そう言うとひょいと本を渡される。恐る恐る捲ってみるとまず目に入ってきたのは……。
「に、日本語!?」
「ほう……同郷か?」
「お、俺が住んでいた国です」
著者は24歳の女性、この世界にやってきたら15歳くらいの女の子になっていたらしい。エロ同人とかも描いてたらしくそういった知識は豊富、その観点から色々と書いてあった。
「マリカ・イツキ。冒険者としてはまあ中堅のプラチナで引退しここから離れた地で暮らしているらしい」
お、おぉ……まず第一に同郷の人へ向けての一言。ようこそ剣と魔法のエロファンタジー世界へ……だと……。
「その本は貸してやる、ギルドの一室をやるからそこで読むといい。どうせお前は冒険者になる以外に道はないのだしな」
「くすくすくす♪ じゃあ暇をしている私もお邪魔しますかねぇ、何でも質問に答えてあげますよぉ」
待って、この人来るのか、この凄いやばそうな人が!?
「諦めろ、その気になったこいつを止められる存在はこの街に存在しない」
「穏やかじゃない言い方ですねぇ?」
「事実を言ったまでだ。だがまあ、こいつに何でも質問していいというのはかなり運がいいぞ。疲れるまで聞いてやれ」
「は、はぁ……」
本は貰った部屋とやらで読むことにして……いや、冒険者になる以外に道はないってどういうことだ?
「お前はこの世界に突然現れた異物……いや、異物という程でもないがまあ変わった奴だ。何の繋がりも何の情報も何の人脈も無い、そんな奴が他のまともな職業に就けるとでも?」
「う……」
「まあ、そもそもお前は刻印持ちだ。その時点で冒険者以外の道はかなり狭まったぞ」
刻印……なんか、やばそうな、呪い染みた何かっぽい雰囲気だな……。
「だが刻印があるからこそ冒険者として生きられる。ようこそ、快楽と悦楽、淫靡で淫蕩で淫らなこの世界へ」
う、うわ、今までにこりともしなかったギルドマスターが、なんか凄みのある笑みを浮かべてるんですけど……!?
そしてなにその不穏な、不穏すぎる文句は……!
「まずはその本を読め、そして大体理解したらまた私の元に来い。それから冒険者登録をしてやる」
「は、はい」
「さて……これからよろしく、迷い人。私の名はサリア・アルタリス。このアルサードにてギルドマスターをしている」
さっきの衝撃から立ち直る前に手を差し出され、少しオロオロしてしまった。
慌てて手を握ると先ほどとは違う、少し穏やかな笑みを浮かべて握り返してくれた。
「御堂遙……いや、ハルカ・ミドウです。よろしくお願いしま、あいだだだだだだだぁぁぁぁ!?」
痛い痛い痛い痛いなんでこの人俺の手を握りつぶすくらい力籠めてるのめっちゃ痛いぃぃぃ!!
「ふ、ふふふふ……思った通りだ、良い反応だなお前は……」
「あららぁ♪ 悪い癖が出ちゃいましたねぇ」
なんかギルドマスター、サリアさんがまた違う笑顔なんだけど口から涎垂らして痛がる俺を恍惚と眺めてるんだけどぉぉぉ!
「ふふふふ……ちょっと、色々と教える前に味見してやろうかな……?」
「おやおやぁ? それなら私もぜひ参加させていただきたいですねぇ♪」
「駄目だ、するなら私だけだ」
「ざぁんねんですねぇ」
い、痛い、本当に痛い、涙出てきたし手がミシミシ音立ててるぅぅ……!
振りほどけばいいのか、いや振りほどかないと俺の手が砕ける、なんで急にこんな目に……!
「あぁ、良い声で鳴くな、良い泣き顔だな……ふふ、最近ご無沙汰だからな、こんな単純な事でも濡れてしまうぞ」
こ、このままじゃ本当に駄目ぇ……!
☞必死に腕を振り、逃れることが出来た
痛みに心が折れて屈伏してしまった……
「うぅぅぅうううああぁぁぁあああ!!」
「おぉ? おおっとっと」
手が砕けるという恐怖のあまり、全力で叫んで腕を振るい空いた手で殴りかかってしまった。だがそのおかげがサリアさん……いや、サリアは俺の手を放して距離を取る。
「はぁ、はぁ、うぐ、うぅぅぅ……!」
「ご愁傷様ですねぇ、くすくすくす♪」
こ、このセクスゥムって人もただ見てただけだしどういうことだよ……!
「む……いや、これはすまなかった。本当は少し反応を見るだけのつもりだったんだが、お前の反応が良くてついな……」
「ついってなんだよぉ……!」
「サリアの持つ刻印の一つ、『加虐性癖』ですねぇ」
「か、ぎゃくせいへき……?」
刻印の一つ……? 加虐性癖……? 刻印を得ると、そういう風に精神が変わるのか……?
「本当にすまない、私の場合は本来こんなふうに出るものではなかったのだが……いや、これは言い訳か。すまなかった」
「………………自分の、意志ではないってことですか……」
「いや、そういうわけではない。ただ少し理性が緩んでしまったのは確かだな……」
どういうことだ、意味が分からない……。
「君を怖がらせたこと、辛い思いをさせたことについてはきちんとギルドマスターとして補填する。もし私が冒険者のころだったら……少し危なかったかもな」
「あららぁ」
「ひぃ!?」
目を逸らして言うな怖いだろ!?
「ま、まあいい。君に与える部屋は三階の106号室だ、そこは空き部屋だったはずだからな。そこでゆっくりその本を読んでこの世界について、刻印について学んでくれ」
「………………わ、分かりました……」
「くすくすくす♪ じゃあ私が案内してあげますねぇ♪」
う、うぅ、なんか騙されてないか、本当に大丈夫なのか、この世界で俺はやっていけるのか……?
「それではセクスゥム。すまないが頼んだ」
「任されましたよぉ♪」
一度サリアに頭を下げ、ギルドマスターの部屋から出ていく。
未だに右手に残る痛みと本を得て俺は冒険者への第一歩を、この世界の住人としての第一歩を踏み出したのだ。