某所にてキャラクターシートに登録されていたヒロイングラビティーノエルのファンノベルになります。イラストの使用を許可頂いた炭酸様にはノエルちゃんをメインに据えたストーリーの執筆を許可して頂いたことも含め心からの感謝を。
薄闇の中で、嗚咽と水音が響く。
「ひぅ……ダ、メ。もうむりなの、やめ――っっ、やぁあっ、そこ、はぁ」
目の前で辱められるのは、大切な家族だった。
「おね、ちゃ――逃げ、」
その表情を苦悶と快楽に彩りながらも。彼女は私だけはと必死に声を投げて――私はそれに応えることもできずに、自分を辱める男の腕のなかで喘ぐことしかできない。
「おねえ、ちゃん――、っ、やぁっ待っ――ッ!!」
水音とともに悲鳴をあげ喘ぐ彼女に、私は懸命に手を伸ばそうとするけれど。そんな足掻きを嘲笑うようにして、げらげらと笑う男たちが妹との間を塞ぐように詰めて。
声にならない嬌声が、目の前の男の向こうから鼓膜を揺さぶる。
許してと乞う。もうあの子を犯すのはやめてと縋りつく。
必死になって懇願する私のうえに圧し掛かった男が、飽きたら捨ててやるよひょうひょうと言って――、微かな抵抗も、全身を貫いた衝撃と快楽に塗り潰された。
明滅する意識のなか――、男たちの向こうで凌辱される彼女の泣き声が、耳朶に届く。
あぁ、まただ。
また私は、守れない。
大切な家族だった。
4人家族で暮らすにしては少し広く、そして何年か未来の技術の粋を詰め込んだような家に暮らして、同じ年ごろの子どもたちやその家族ではなかなか見なかったようなものを扱う私の家族は、少し特別ではあったとは思うけれど……それでも、どこに出しても恥ずかしくはない自慢の家族だった。
ママは優しいひとだった。一つ年下の妹にばかり構ってばかりで私には教えてくれないことも琴音ちゃんには教えていたのに嫉妬して拗ねてたときにも、困った素振りひとつ見せずに甘えさせてくれて。私たち姉妹を、分け隔てなく大切に愛してくれていた。
パパは穏やかなひとだった。同じものを受け継いでいた私に、自分の、自分たちの持ってる力の強さを幼い私にも伝わるようにわかりやすく教え、力の使い方を間違ってはいけないと落ち着いた声で語りかけてくれた。力に溺れてはいけないよと諭しながら頭を撫でてくれるパパの手が、私は好きだった。
パパがいて、ママがいて、琴音ちゃんがいて。大好きな家族たちと、ずっと皆で暮らしていけると、そう思っていた。
けれど――無根拠に信じることのできていた幸福が薄氷の上のものでしかなかったのを悟る日が来るのは、そう遠いものではなくて。
その日。パパとママは、帰ってこなかった。
『ママとパパ、遅いね……』
『うん……、どうしたんだろう』
友達の家に行って夕方まで遊んでいた私たちが誰もいない家に帰ってきてから、既に2時間が過ぎていた。
いつも帰った私たちを出迎えてくれていたパパは居らず、いつも7時には仕事から帰ってきていたママも帰ってこない。琴音ちゃんと私を残して2人がこんな時間まで帰ってこないなんてことは初めてだったから、心配した私が何度か電話をかけても通話は繋がらなくって。
心配した私たちは、一緒にパパとママを探しに外に出た。
『うぅーん、お母さんどこにもいない……』
『お父さんはお仕事があるかもだけど、でももう帰ってきてるよね……? 2人ともどこに行っちゃったんだろう……』
その夜は、星一つ見えない新月の夜だった。
通学路、お仕事やお出かけで通う最寄りの駅、行きつけのスーパー、お母さんのよく行ってた美容院……思い当たる限りの家族がいそうな場所を探し回って、おまわりさんにも相談して。もしかしたら入れ違いで戻ってきてるかもしれないと一抹の希望を抱きながら帰路についていた私たちは、それでも心に重く圧し掛かる不安を拭いきれぬまま顔を曇らせていた。
家に帰ればパパとママがちゃんと帰ってきていることを願いながら、私たちは歩き慣れた、けれど暗くなってどこか不気味にさえ感じる通りを進んでいて。そこで、私とひっついて歩きながら暗闇のなか不安そうに瞳を揺らしていた琴音ちゃんが何かに気付いたように目を見開いた。
「お姉ちゃん、今。パパとママの、魔力が」
「え!?」
顔色を変えて振り向いて妹の指差す方向を見た私は、普段ならめったに通ることのないような細道からパパやママの気配がしたと言われるのに耳を疑ったものの、まだ習ったばかりの魔力の感知に意識を集中させ目を閉じれば、確かにそこにあったのは2人の気配で。
顔を見合わせた私たちは、恐る恐ると街灯の明かりも届かない薄暗い横道に踏み込んでいく。
「……本当にこんなところに、パパとママがいるのかな」
「え、それは、わからないけど……でも確かに、パパとママの魔力があるよ?」
ただでさえ日の沈んで一刻の過ぎた時間帯である。暗闇を照らしてくれる街灯もなく月明りもないなかでは視界の確保もままならない。むむっと気合をいれて琴音ちゃんが手を翳して、けれど数秒を経てしゅんと落ち込んだ。
「どうしたの……?」
「お母さんから教わったキラキラ星の魔法でピカって照らしたかったのに、上手くいかなかった……」
「えっなにそれ私も教えてもらいた――、……あれ?」
携帯の画面を開いて明かりを確保しながら文句を言おうとした私は、そこで疑問符を浮かべる。
「パパとママの魔力、わかんなくなっちゃった」
第六感とでもいうべき神経を集中させての感知は確かに集中力の要る作業だけれど、それでも何のアクシデントもなしに失敗するようなものではない。困惑しながらパパとママの気配を追おうとして四苦八苦していた私の隣では琴音ちゃんもまた困ったような声をあげていた。
「本当だ、私も魔力わかんなくなっちゃった……。パパとママ、離れちゃったのかなあ」
「そうかも……。ここ暗いし、ちょっと進んでパパたちがいなかったら一度向こうに戻って――」
帰ってこない家族を追う唯一の手がかりであった魔力の気配が途絶したのに、携帯を持つのとは別の手で握り合う琴音ちゃんの手が震えるのを感じ取る。
こんなに暗くて静かで、どこかで凶暴なワンちゃんでもいるのか背筋の震えるような唸り声さえ聞こえるような状況。怖いのは私も同じだったけれど、お姉ちゃんなんだからと心を奮い立たせながら妹を先導して躓かないように足元を携帯で照らしながら先へ進んで――、
見た。
見てしまった。
「――ぇ」
ケモノがいた。
全身を刺々しい剛毛に覆ったソレは、鋭い爪から滴り落ちる血で足元を濡らしながら唸り声をあげる。細い路地を照らすライトが不安定に点滅しては幼い私たちからすれば巨人のようにさえ見えた逞しい肉体を照らした――、牙を剥き出して嗤ったケモノは、立ち竦む私たちのことを気にも留めぬまま、壁に背を預けるようにして倒れる誰かに腕を振り抜いて。
鮮血が飛び散った。
首の半ばまでを鋭い爪に抉られた人影はぐらりと傾いて私たちの方向に倒れ込んで。足元を照らすようにして画面を向けていた携帯の明かりに、血まみれになった男性の顔が照らされる。
「っ。う、ぇッ、え?」
「……パ、パ?」
大切な家族は、学校に行く前はその手で頭を撫でて見送ってくれていたパパは、紅い血を留めなく首元から溢れさせながら倒れていて。いつもは穏やかに私たちを見守っていてくれたその目は虚ろになって私たちを見上げていた。
私の手から滑り落ちた携帯がアスファルトの上で跳ねる。震えながら倒れるパパの奥を見た私は、携帯を落としたときに一瞬だけ照らされた、胸の中央に穴をあけたママに気付く。
「ママ……うぇ、どうしてパパ、ママ――」
「――ほぉ? お前たち、コレの娘か」
目の前に、ケモノの顔があった。
「っ、あ」
「ひっ……!?」
混乱と衝撃のままに琴音ちゃんとともにパパとママに駆け寄ろうとした私は、突如目の前に現れたケモノの視線に立ち竦む。両親を血の海に沈めた怪物に迫られた私は、何事かを語るケモノが私の、琴音ちゃんの首筋に鋭い爪がなくても女の子の細い頸など簡単にへし折れそうな太い指を這わせるのに何もできぬまま硬直してしまっていて。
逃げなくちゃと、助けなくちゃと、せめて琴音ちゃんだけでもと――、頭のなかではやらなければいけないことはわかっているのに。恐怖に支配された身体は、指一本動かすのさえ覚束ない。
首筋に爪が食い込むたびにびくびくと震えすすり泣く琴音ちゃんを面白そうに眺めていたケモノは、ぱくぱくと口を開いて震える私に視線を向け、ギラついた目で値踏みするように私を見て――、
「ボス! 車用意できましたぜ――、その娘たちは? ……口封じが必要なら殺りましょうか?」
「……いぃや。この件は派手に報道されるだろうし目撃者のガキ2人殺した程度でどうこう変わるもんでもないさ、放っとけ。……この男も、全身麻痺を振り払ってメスを庇おうとしたときは上等な相手かと思ったが、所詮は火事場の馬鹿力か。歯応えのない奴だったな」
駆けつけた手下と気軽な調子でそんなことを言いながら、私たちから手を離したケモノは路地の奥へと消えていく。
放心する少女を置いて立ち去る直前。一度だけ振り向いた彼は、私たちを見て酷薄に笑みを浮かべて――倒れるパパとママをくいと指し示しながら言った。
「従うなら最大限の配慮をもって扱うとまで言ってやったんだがな。お前たちのための力などではないなんぞと言って抵抗するからこうなった。……ガキの内からいい失敗例を見れて良かったな? 絶対強者に歯向かえばこうなるんだ。覚えておけば長生きできるかもしれんぞ」
お前たちの両親と違って、な。
そういってゲラゲラと笑いながら歩き去っていくケモノの姿が暗闇の奥へと消えて、エンジンのかかる音と共に気配も消えて。そこでようやく、私たちは動くことができた。
「っ、ぁ……、あっ」
「ッ――パパ、ママ……!!」
倒れる2人に縋りついて。拙い知識で容態を確認した私は――すすり泣く琴音ちゃんを抱きしめながら、ぼろぼろと涙を流す。
「っ……!」
「パパ、ママぁ……!」
――許さない。
斃れた両親を嘲笑ったケモノ、得体のしれない獣人、だけではない。
パパとママを傷つけた相手に対して、血を流し倒れる家族に対して何もできずに、ただ恐怖に支配され怯えるばかりだった自分が、許せなかった。
……結局、父さんと母さんはなんとか無事だったけれど。それでも、大切な家族を傷つけられた事実に変わりはなくて。泣きじゃくる妹を抱きしめながら一緒に強くなろうと、もう二度と大切なひとを喪うことがないようにと誓って――。
そう。
だから、私は――。
『――お姉ちゃん、ねえ。お姉ちゃんってば』
『もしかして寝てたりなんかしてないよね? お姉ちゃん、大丈夫ー?』
「……大丈夫。ちょっとぼうっとしてただけ」
しっかりしてよぉと口にする琴音ちゃんの声に苦笑しながら、私は目的地へと足を進めていく。
『本当に1人で大丈夫なのぉ? 別行動になるとはいえ今日はお姉ちゃんとバディ組むことになる人も来てるらしいからポカしないように気を付けてよー?』
「だ、大丈夫だよ! 訓練はずっとしてきたし、魔法だっていろいろ応用できるようになるくらいには成長したもん! 努力は嘘をつかないんだよ!」
『私もそこは否定しないけれど……お姉ちゃんちょっと抜けたところあるからなあ、ちょっと心配かも……。まぁ、今回は内部に協力者もいるし荒事に発展する可能性も低いらしいとはいえ気を付けてよ? 危ないオトコに誑かされないでね~』
「ちょっと、琴音ちゃ……!」
港町の通りを行き交う雑踏に紛れ移動する中でつい大声を出してしまった私は恐る恐ると辺りを見回すが、人目こそ集めながらも怪しまれている様子もないようだった。携帯越しに如何にも疑わし気にからかってくる琴音ちゃんの言葉を慌てながら否定する私の姿を見てまさかこれから特大の鉄火場に飛び込もうとしていると思う人はいないのだろう。年長の女性の向ける微笑まし気な視線から逃れて路地へ足を踏み入れた金髪碧眼の少女は、開いた端末に詰め込まれた情報に目を通しながら目的の場所まで足を進めていく。
「――ここから、か」
ここから私の、いや私たちの戦いが始まるのだ。
正義を守るための、悪を討つための、復讐を果たすための、そして――何もできなかった過去を、拭い去るための戦いが。
その日は、民間警備会社と銘打たれた治安維持組織に所属する異能者グラビティーノエルの……鐘楼ノエルの、初任務だった。
・鐘楼ノエル(グラビティーノエル)
金髪碧眼。金髪の髪の毛は長めでたまに髪型をアレンジする。
身長:156cm
B/W/H :85/69/80
胸が弱い。妹よりは小さい。
原案の炭氏と筆者の性癖のままに虐められるヒロインちゃん。後天的サディスティックな元カレや自分を負かしてきた怪人や異能者によって調教済み。変身することでグラビティーノエルとして魔法を駆使し家族の仇を追う。
変身衣装はミニスカドレス、よく敗北した対魔忍みたいなことされてるけれど別に変身した衣装が卑猥というわけでもない。
教えを受けた師匠の影響もあり装備を含めた身の回りはややオーバーテクノロジー気味。