女の子の名前は御坂美琴、というらしい。
なんていうか、
可愛らしくて、美しくて、ちょっとカッコいい、素敵な響きの名前だなって、思った。
オレも自己紹介して。
「よかったらお茶でもしない?今なら奢るよ♪」
バチコーン☆とオレの出来る全開のイケメンウィンクしながら聞いてみたり。
「あ、あぁあ///うん・・・」
よし!第1関門クリア!
お店はさっきのとこにした。猫ちゃんもいるしね。
注文は適当にして。
猫ちゃんは御坂さんに懐いたみたいだ。席に着いたら膝に乗って丸くなった。
「わ、わあぁ・・・」
御坂さんは何とも言えない嬉しそうな声を出した。頭をなでなでしてご満悦だ。
「ね、ねぇ名前とかあるの?」
「名前はー、野良だし無いんじゃないかな」
「そっかー・・・じゃ・・・」
御坂さんはちょっと考える仕草をして、
「君の名前はニャン太!」
「にゃん!?」
「よろしくねーニャン太~」
「にゃ~ん・・・」
ニャン太?は不服そうな声を出したが御坂さんは気付いてないようだ。
「動物とか好きなん?」
「うん・・・でも能力で中々触れなくてねー」
さっきも似たような話しをしたが、今回はそれほど悲壮感はなかった。
「能力って電気系って言ってたよね」
「そうよー、これでも結構すごいほうなんだから♪」
「おー。いいなー、能力だったら電気系がいいなーってオレずっと憧れてたんよー」
「そ、そう?憧れてるだなんて///」
結局能力開発は受けなかったが・・・
「それに、君って電気系でもかなり高位のほうだよね。レベル5くらいあるんじゃない?」
「! ふふ、私、そのレベル5よ。レールガンって呼ばれてるの」
「レールガンって、あの研究中の兵器ってヤツ?」
月詠先生が教えてくれたヤツだ。
「! そうよ、理屈はリニアモーターカーと一緒で、超強力な電磁石を使って金属の砲弾を撃ち出すの」
「それを能力として使えるの?」
「!!」
御坂さんはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情で。
「ふふ、そう。能力でレールを作ってこういうコインにローレンツ力を通して発射するの。音速の3倍以上は出るし、全力で撃つと施設も壊しちゃうからやらないけど」
「何それカッコいい・・・」
「カッコいいだなんて・・・///」
御坂さんはポッケからゲーセンのコインを取り出して説明してくれた。御坂さんの説明はギリギリ理解できた。
「ねぇアンタ、能力は身体強化系って言ってたけど何で私のレベルが分かったの?」
「ああ・・オレは身体強化と生物透視とAIM観測だから見ただけで大体の能力とレベルが分かるんよ」
「能力が3つあるの!?」
「元の能力は1つなんだけど、感覚強化っていう。これで色んなことができるんよ」
「へぇー・・・」
御坂さんはなんか感心したみたいだ。ただ、オレは実際のとこ能力者ではない。ほぼ能力みたいなことができるだけで、学校には感覚強化って申告してただけ。
「ねぇ、身体強化ってどれくらいまで出来るの?」
「どれくらい、か・・・」
そう言われると伝えづらいが。
「ちょっとコイン貸して」
「え? はう//」
御坂さんに手が触れたとき、ちょっと変な声が出た。
「コイン当てしよう」
「へ?」
右手に入ってるコインを超スピードで左手に投げ渡す。同じく左手のコインを右手に渡す。右手のコインを左手に渡す。これを普通じゃ絶対に見えないくらいのスピードで繰り返す。
「どーっちだ?」
正解は右手。ちょっと速すぎたかな?これじゃどっちか・・・
「んー・・・こっち!」
御坂さんはオレの右手をパチンと叩いた。
「何でわかったん?」
「へへー、内緒♪」
「むぅ・・・次はもうちょっと速くしよう」
今度はかなりムキになって、本気出す。自分でも引くくらいの速さで速すぎて風が起こるくらい。横目で御坂さんを見ると完全に目が追いついていないようだ。ついでにちょっと意地悪する。
「どーっちだ?」
正解は左手の袖の中。これはいくら何でも・・・
「これでしょ♪」
「なぜ・・・」
御坂さんは左袖をペチンと叩いた。なんでわかったんだろう?
「次は私ね!」
御坂さんはコインを引っ手繰って、いや御坂さんのなんだけど。
ピンッ!
御坂さんは親指で弾いてキャッチするときに手を合わせてどっちか分からなくした。
「どーっちだ♪」
やっべ、わかんねえ。いや、御坂さんの手からAIM観測力場(磁力)が見えてる。これは・・・
「机の下か」
「もう!そっか磁場も見えるのね!」
何とか正解したみたいだ。
「よしもう一回!」
なんか、アレだな・・・御坂さんと話してると・・・
「こらー!そこのカップル!そろそろ完全下校時刻じゃん!?帰った帰った!」
「カ、カップルぅ!?///」
見回りのアンチスキルの先生に怒られてしまった。もうこんな時間か・・・
「そろそろ出よっか」
「う、うん・・・///」
「にゃ~ん」
「あ、ニャン太が・・・」
ニャン太は気分が済んだのかどっかへ行ってしまった。野良猫だしね・・・
「またいつか会えるよ」
「そ、そうね///」
御坂さんと話してると楽しいな・・・
「そうだ、寮まで送ってくよ」
「へぇあ!?りょ、寮まで!?///」
「そうそう」
しばらく歩きながらもうちょっとおしゃべりする。
「へー常盤台かー」
とか。
「じゃ学舎の園までかー」
とか。
「常盤台の寮は内側と外側の二つあるのよ」
とか。
あとオレの髪とか痣(イレズミと思われてた)とか。ピアスのこととか。
「こっちが近道なのよ」
「ほえー」
途中、変な飲み物が多い自販機を見つけた。
「さっき奢ってもらったし私も奢るわ。何がいい?」
「おー、じゃヤシのみサイダーかな」
「オッケー!ヤシのみサイダーが出るかわからないけど!」
「え、それどういう」
「ちぇいさーっ!」
バキッ
「うええええええぇええええ!?」
御坂さんは唐突に、自販機にハイキックを叩き込んだ。ガタゴトと音が鳴り、ジュースが2本現れた。
「はいっ、ちょうどやしのみサイダーが2本出たわ。今日はツいてるわねー」
「い、いや、えええええ!?」
「大丈夫よー、いつもやってるし」
「いつも、いつもなら大丈夫か・・・」
「そうよ!」
じゃ大丈夫か。ありがたく、やしのみサイダーを受け取る。
『ピピピピピピ』
「「!?」」
『ケイコクケイコクハンザイシャガイマスイマスグタイホイタシマス』
「逃げるわよ!」
「ちょ、ま、ええええぇぇえええ!?」
「ここまで来れば大丈夫ねー」
結構な距離を走った。なんか疲れた・・・精神的に。
でも
「ぷふっ」
「え?どうし・・・」
笑っちゃだめだ。堪えるんだ・・・ダメだ・・・笑っちゃう・・・
・・・・・
堪えられなかった。大笑いしてしまった。しばらくの間。
オレが笑ってる間、御坂さんも大笑いしてた。ずっと
「はーオッカしー笑っちゃったわー」
「オレも、何年かぶりに笑っちゃったー」
チラリと、御坂さんの横顔を見る。御坂さんもチラリとオレの顔を見て、すぐに目を逸らした。
なんだこれ・・・
胸の高鳴りが抑えられない・・・
どきどきする・・・
体温が上がるのを感じる・・・
多分、顔も赤くなってるんだろう。
これが・・・
これが多分・・・
・・・・・
連絡先聞いてみた。
いけるか分からなかったけど。
結果は、
結果は・・・!
教えてくれた!
あとついでに、
「美琴って呼んでいい?」って聞いたら、
(コクン)/////て頷いてくれた
やっふううううう!!!
その日は常盤台の寮の前で別れた。
別れるとき、
「またね美琴!」と言ったら。
「うん・・また///」
と返してくれた。
次の日、また飾利と修行。黒子はジャッジメントの仕事らしいので修行は見に来ない。
その代わり修行が終わったらお茶しよう、という話しになった。
「よろしくお願いします!」
「うん、今日もがんばろうな」
飾利ってひょっとして熱血系?
「今日は剣の型と、ウチの流派で反復動作と呼ばれてるものを教えます」
「はい!」
反復動作。自分の限界に挑戦するときに決まった何かをする。これを何度も繰り返すと、決まった何かをするだけで自分の限界が出せるようになる。
「パブロフの犬、を武道に応用するんですね」
「そうそう、仕組みは簡単だけど剣術にも能力開発にも使えるし。教えておこうと思って」
「なるほど・・・」
パブロフの犬が何なのかは知らないけど。
「ジャッジメントになりたいと思った理由とか、自分を変えたいと思った理由とか。あと単純に、強くなりたいと思った理由とか。そういうのを思い浮かべながら修行すると、そういうのを忘れない限り自分は常に限界を超え続けられる。というわけ」
「強くなりたい、理由・・・」
飾利は目を閉じて、何やら考え込み始めた。
これ、飾利にピッタリだと思うんだよね。オレの見立てだと飾利は切欠さえあれば化けるタイプだと思う。ただ切欠が来ないだけで。
飾利は目を開けて、
「私、なんだか分かった気がします・・・」
これが切欠になるといいんだけど。
飾利には水の剣技を教えることにした。水の剣技は万人にオススメできる使い安い剣技なので。
「とりあえず一通り見せるから、よーく見ててね♪」
「はい!」
『水の呼吸』
『壱ノ型 水面斬り』
『弐ノ型 水車』
『参ノ型 流流舞い』
『肆ノ型 打ち潮』
『伍ノ型 干天の慈雨』
『陸ノ型 ねじれ渦』
『漆ノ型 雫波紋突き』
『捌ノ型 滝壷』
『玖ノ型 水流飛沫・乱』
『拾ノ型 生生流転』
ちなみに干天の慈雨は竹刀や木刀で放つと外傷を与えることなく気絶させる技になる。
「あの、これ人間に出来るんですか?」
「もちろん!」
「・・・・・・・・やります!私、やってやります!!やってやりますともおおぁああああ!!!!」
半ばやけっぱちになってる気がするが、きっと大丈夫だろう。
飾利は感覚より理論的な話しや、具体的にどこの筋肉を重視するといいとか。そういう方が理解しやすいだろうと思われるのでそっち方面から重点的に教えることにした。
「ぅおうぉぁあああっ生生流転んんぁあああ!!!!」
そろそろ夕方の4時。飾利は、
「やったーっ!本当に10個完走できました!できましたーーーーっ!!!」
みんな才能すごくない?どうなってんの・・・とりあえず。
「おつかれ、おめでとう飾利。本当に、よくがんばったね・・・」
「えへへ~///」
頭を撫でてあげたらにぱあーとした笑顔になった。
飾利と話してると癒されるなー
・・・・・
とにかく、成功体験は能力開発にもいい影響を与えるはず。これできっと飾利は今よりずっと強くなれるだろう。
「今日はここまでにしよっか」
「はい!ありがとうございました!!」
明日から月曜日で学校なので、修行する時間はちょっと減ることになってしまうが。
確かジャッジメントの公募は12月だったはずなので、このペースなら合格できるだろう。
このあとは黒子とデート。待ち合わせは昨日と同じ第七学区の駅前。また下見に行きたいようだ。
駅前に着いたらきょろきょろと何かを探している?美琴を見かけた。
「美琴ー、なにやってんのー?」
「へぁ!?」
「美琴も誰かと待ち合わせー?」
「あ、ああ・・・あの・・・//////」
・・・・
まさか
昨日と同じ時間、同じ場所で。
「ひょっとして・・・オレを探してた?」
「や・・・そんなんじゃぁ、ないもん////」
顔を覗きながら聞いてみたら、美琴はもじもじとしながら答えた。
・・・・・
またナンパしてみようかな?美琴もヒマそうだし。
あれ
これちょっとまずいんじゃない?
今日は黒子に誘われてここに来たのに。
こんなとこ黒子に見られたら・・・
「煌平さまー!お待たせしましたのー!!」
『あなたの欠点はすぐ考えがブレるところです』
母上に小さい頃から何度も言われたことなのに・・・
オレは何をやってるんだろう・・・
黒子がバチバチとした視線を美琴に送っている。今なら視線で人が感電しそうだ。美琴はしないだろうけど。
美琴は・・・全く気にしないでニコニコしてる。すごい胆力だな・・・
「コホン。わたくし、白井黒子と申しますの。で、あなたはどこのどちらさまですの?」
「私?私は・・・」
御坂美琴。
美琴がそう名乗った瞬間、黒子の敵意がさらに上昇した。
やっちまった。どうしよう・・・
正直、杞憂だったかもしれない。二人はすぐに打ち解けてしまった。
というか黒子が皮肉とか嫌味を言っても美琴が笑顔で返すし、美琴はそれにわざわざ黒子を立てるような返しをするし。
そもそも美琴は話しやすいっていうか、人懐っこいオーラが出てるし。カリスマ?っていうんだろうか。
「へー来年からウチ来るんだー」
「えぇ、ふふ。お会いしたらどうぞよしなにして下さいませ、御坂様♪」
なんていうか、懐いてる?っていうんだろうか、黒子は。
よかった・・・ホントによかった・・・
「わたくし、正直レベル5のこと誤解してましたの・・・人格破綻者ばかりだと伺ってたので」
「え・・・あー、でも精神系レベル5だけは近づいちゃダメよ?本当にとんでもないヤツなんだから!!」
精神系レベル5、こんな出来た性格の美琴がとんでもないヤツ!!という人はどんな人なんだろうか・・・
「学舎の園?あーあそこは男の子と一緒だと入れなかったハズだけど」
いつの間にか会話が変わってた。アレ?会話に混ざれてない・・・
「え!?そうなんですの・・・今日はそこを見に行こうかと思ってましたのに・・・」
「よければ私が案内するわよー今日はヒマだし」
「あら、よろしいんですの?んふふ、じゃお言葉に甘えてしまいますの♪」
アレ?
「煌平さま!明日こそは、明日こそは一緒にお話ししましょう!」
「ゴメンねー、アンタの友達取っちゃって」
「いや、いいんだよ。行っといで黒子」
「明日こそは絶対ですのよー!」
二人は行ってしまった。
アレ?
次の日。黒子が、
『すみませんですの・・・今日はジャッジメントの急な仕事が入ってしまったのですの・・・』
と、お断りメールが。
とりあえず励ましの言葉を送ったけど。
さみしい・・・泣きそう・・・泣かなかったけど。
何日か経った。たまに飾利と修行したり。
そして、
また黒子から連絡が!
よかった。うれしい・・・
『また第七学区で見に行きたい場所があるんですの!』
というので適当に待ち合わせて。
「煌平さまー!お久しぶりですのー!」
「おー久しぶり、黒子」
やっぱ黒子かわいい・・・
「今日はどこ行きたいん?」
「え、えっと・・・ちょっと本屋に・・・」
? 珍しい本が売ってる本屋とかだろうか。
「ここですの!」
黒子が行きたいって言った本屋は極普通の店だった。なんだ?どういうメッセージがあるんだろうか。
「えっと・・・」
黒子はきょろきょろと店内を散策して、漫画コーナーに目をつけた。そこで・・・
「あ、あらーお姉さま奇遇ですのねー」
「おー黒子じゃ・・・な、ななな何で//////」
美琴が立ち読みしてた。お姉さま、という呼び方は突っ込まないことにした。
「久しぶりー、美琴ー」
「う、うん・・・久しぶり・・・///」
「何読んでるのー?」
「あう・・・何でもないのよ!///」
美琴は読んでた本を後ろに隠してしまった。でもここは少女マンガの棚なので、何となく予想はつくけど。
「えー気になるなー」
「何でもないったら何でもないのよぅ///」
美琴かわいい・・・顔が真っ赤だ。またもじもじして。まるで天使みたい。
「これもういけるのでは・・・」
黒子がぼそりと呟いた。
「? どっか行きたい場所でもあるん?」
「はにゃ!?い、いえ何でも・・・あ、そうですの!3人でお茶でもしませんの?」
「おーいいねー、美琴もどうー?」
「ふぇ?う、うん・・・///」
これ、黒子は結局何しに本屋へ来たんだ?
そのあとは適当にみつけた茶店で駄弁ることにした。
黒子のシステムスキャンの結果とか、
呼吸法の練習頑張ってるって話しとか、
ジャッジメントで解決した事件とか、
ジャッジメントの先輩の話しとか、
ジャッジメント見習いの友達の話しとか。
黒子しか喋ってない・・・美琴は嬉しそうに話しを聞いてるけど。オレも黒子の話しを聞けて嬉しいけど。
ふと気付いたんだけど、今日の黒子ってオレを理由にして美琴と話したかっただけなのでは・・・
今日はそれほど時間が無かったのでここいらで切り上げることになった。黒子と美琴は帰る方向が同じらしいので途中まで一緒に帰るみたい。
「煌平さま!また今度ですのー!」
「またね」
「うん、また・・・///」
アレ?今日のオレって一体・・・
何日か経った。
また黒子からお誘い・・・今度は。
「ゲーセンかー」
「はいですのー!」
ゲーセンはたまに来るのでオレもちょっと嬉しかったり。
このゲーセンはちょっと薄暗いダークな雰囲気が魅力の店だ。
で、案の定エンカウントしたんだけど。
「お姉さま・・・中学生で脱衣マージャンはどうかと思いますの・・・」
「いやァァァああああ!!!!!違うの違うの違うのぉぉおおおっっっ!!!!」
美琴は脱衣マージャンをやっていたとこを見られて半狂乱気味だけど・・・
「違うの・・・本当に違うのよぉ・・・」
もう半泣きになっている。
「ほらこの店、マージャンできるのこれしかないし。たまたまだよね!」
「! そうよ!たまたま、今日はたまたまなのよお!」
ちょっと卑猥な言葉に聞こえたり・・・
黒子はちょっと嬉しそうにしてた。
ちょっと時間が経って美琴はやっと落ち着いたみたいだ。
「ね、ねぇゲーセンとかってよく来るの?」
「来るよーUFOキャッチャーが好きでねー。ド下手なんだけど」
ちょうど近くにあった1/3ピカチュウのぬいぐるみが入ったヤツをプレイしてみる。
アームがピカチュウを掴んで持ち上げたが・・・ポロリとアームが外れて落下してしまった。
「あーダメだぁ・・・」
ちょっとシュンとしてしまう。
「・・・! 私に任せて!」
チャリンと手馴れた手つきでコインを入れる。
「こういうのはアームの強さが決まってるの。最初から取りずらい設定になってるのよ!」
「この場合、直接掴むんじゃなく爪で紐を引っ掛けるようにして持ち上げれば・・・!」
ガシャコンと音がしてピカチュウが出口に落ちてきた。
「うおおおすごーい!」
「ほら、簡単でしょ!」
美琴はピカチュウを抱き上げて一瞬逡巡して、
「あ、あの、これ・・///」
「くれるの?」
「う、うん・・・」
「わぁ、ありがとう!」
「えへへ・・・///」
美琴すごい・・・オレが何度やってもダメで涙を呑んだピカチュウを、なんと一発で・・・
「普通、逆じゃありませんのこれ・・・」
黒子から痛いツッコミが入ったけど気にしなーい♪
「あ、あのよろしければこれ取りませんの・・・?」
黒子から提案されたもの・・・それは!
「プリ・・・クラ!」
美琴はちょっと感動したように呟いた。
オレは、ちょっと恥ずかしい・・・
「ささ、煌平さまも!」
「うおお・・・マジかぁ・・・」
美琴は超嬉しそうにもうスタンバっていた。そんなに嬉しかったのか・・・
「えっと・・・これでフレーム選んで、これかな?」
「あん。お姉さま、そっちはエフェクトですの。こっちが・・・」
オレはこういう機械の操作がからっきしダメなので後ろで見てるだけ。
二人の間から身を乗り出して操作画面を覗いてみると、ちょっとだけいい匂いがした。
「できたわー!」
「さぁさ。お姉さま、煌平さま、3人でくっついて下さいまし♪」
『トリマスヨー』
「ちょっと待、心の準備が」
パシャリ
・・・・・・・
・・・・
貰ったプリクラには何とも言えない表情のオレと、オレの腕にくっつく黒子と、オレにちょっとだけくっついた美琴が写っていた。
「コレがプリクラ・・・」
美琴は感動したように呟いて、
「煌平さま、コレをケータイのバッテリーカバーの内側に貼るんですのよ♪」
だいぶ恥ずかしかったけど、二人が楽しんでくれたならいいか。
それ以降、黒子とデートに行く度に何故か美琴と遭遇する。多分、何らかの方法で美琴の行き先を調べて、それでオレを誘ってるんだろうけど・・・
これに一体どんな目的があるんだろう?楽しいからいいんだけど。
11月下旬、そろそろ12月にもなろうかというこの日。また黒子からお誘いがあった。ただし、駅前のような分かりやすい場所ではなく一度も行ったことがない寂れた公園だった。
「煌平さまー、こっちですのー!」
公園には時間よりちょっと早く着いたんだけど黒子は先に着いてたみたいだ。それに、今日はいつもと違って美琴もいた。
「お待たせー、どしたん二人とも」
「うふふ、今日はわたくし共から煌平様に大切なお話しがありますの」
え
「煌平さま」
「わたくし達、煌平さまを慕っておりますの」
「わたくしを選ぶか」
「お姉さまを選ぶか」
「それとも・・・両方選ぶか」
「今この場で決めてほしいんですの」
まじかよ・・・
美琴の方を見ると真っ赤になって俯いたままだった。顔から湯気が出そうなくらい。
「さ、お姉さまも」
黒子が小声で呟きながら美琴を小突いた。
「・・・わ、わた・・・わたしは・・・・うぅっ・・・」
美琴は言葉が出てこないみたいだ。黒子はちょっと焦ったような表情になって、ひょっとして黒子って・・・
・・・・・・・
「オレ、君達のこと好きだよ」
「!?」
美琴が驚いて顔を上げた。
「黒子と一緒にいると、矮小なオレでも勇気を貰える気がするし」
「美琴と一緒にいると楽しいし、自然に笑える気がする」
「どっちかなんて選べない」
「二人と一緒にいたい」
「オレと付き合ってほしい」
結果は
「はい、ですのー!」
「うん///」
二人ともOK!
まさかこんなことになるとは、ブレ続けたらむしろ安定するのか・・・
なんていうか
男として大変嬉しい!
両手に花!しかも超かわいい!大好き!
やっふうううううう!!!!!
次の日、また改めてデート。
今回はオレから誘った。付き合ってるんだしね!
今日は学校があったので遊ぶのは放課後から、
駅前で適当に待ち合わせて、
「煌平さまー!」
黒子が手をぶんぶん振っている。隣に美琴もいた。
「お待たせー」
「うふふ、時間通りですのー♪」
「美琴もお待たせー」
「う、うん・・・全然、待ってないよぅ・・・?///」
美琴ったら顔真っ赤ー
付き合ってるんだし、
もっと、こう・・・スキンシップとか、してもいいよね?
美琴にそっと近づいて、不意打ちで片手で腰を掴んで抱き寄せた。
「ふみゃあ!?////」
変な声を無視して空いた片手で頭を掴んで、抱き寄せて胸に埋める。
「ふみゅ、みゅうぅ・・・////」
暴れるのをより強い力で押さえつけて、ぎゅーって抱きしめる。
「////////」
美琴はちょっと大人しくなった。美琴の鼓動と体温が服越しに伝わってくる。
頭を掴んでいる左手で髪の毛のさらさらとした触感を楽しみながら、耳元でささやく。
「美琴はかわいいね、まるで天使みたい」
美琴はオレの腕の中でもじもじし始めた。今度は押さえつけないで自由にさせる。
この勢いなら次の段階も・・・
「お二人とも・・・周りの人が見てますのよぉ?」
「あ、ごめん」
慌てて美琴を解放すると、
「・・・・・////////」
惚けたような瞳とさっき以上に赤くなった顔でぽーっとしてた。
黒子の方を見ると、黒子も顔が赤くなってた。ちょっともじもじして。
黒子にも・・・
「黒子、おいで」
「へぅ・・・ダメですの・・・周りに、人が」
「いいから、おいで」
「・・・・////」
黒子はふらふらと歩きながらオレの体に抱きついてきた。オレも黒子の肩に手をまわして、ぎゅーって抱きしめる。
「んぅ・・・すぅー・・・はぁー・・・」
黒子はオレの腕の中で深呼吸し始めた。黒子の抱きつく力が強くなって。
オレも負けじと黒子の髪に鼻を押し付けてくんくん匂いを嗅いで見ると、汗の匂いはせずシャンプーの匂いがした。ひょっとしてシャワーを浴びてきたんだろうか。
「んにゃ・・・それ、恥ずかひいれすのぉ・・・」
黒子はいやいやするみたいに体をよじって逃げようとしたけど、ぎゅって抱きしめて阻止する。
「黒子っていい匂いするね」
「ゃぁ・・・」
かわいい・・・もっと、いっぱい。色んな事を・・・
「チッ・・・」「クソが」「死ねよ・・・」
呪詛の声が聞こえたので周りを見てみると、オレを呪い殺せそうな目で睨む男共がいた。・・・ふふふ、優越感がすごい。
黒子を解放すると、もじもじしながらそっと離れた。
「じゃ、いこっか」
黒子の手を握って、
まだぼーっとしてる美琴の手も握って。
しばらく話しながら歩いてたら、人気の少ない公園があった。鯛焼き屋の屋台と、何組かのカップルがいた。
「ちょっと休んでかない?」
「はいですのー」
「そうねー」
適当に空いてるベンチに座って、
「ちょっとお腹が空いちゃったわねー」
鯛焼き屋を見て美琴は小腹が空いちゃったみたいだ。
「ふふ、はしたないですわよーお姉さま」
「いいのよ別に♪」
「買ってくるから待っててね、何がいい?」
「! わ、私が買ってくるわ!」
「いえここはわたくしが・・・!」
「いやここは彼氏としてオレが」
アレ?
結局じゃんけんで負けた人が買ってくることになった。
負けたのは・・・
「私かー」
「オレつぶあん♪」
「わ、わたくしもつぶあんで!」
「ええいいわよー、つぶあん3個ね」
美琴もつぶあんにしたみたいだ。
鯛焼き屋に歩いていく美琴の後ろ姿を見ていると、
「煌平さま♪」
「? どうし・・・」
黒子に呼ばれたので振り向いたら、
キスされた。
「ふふ、さっきの仕返しですの♪」
・・・・・ファーストキスはレモン味って・・・わけじゃないんだなーって、思った。味は・・・とくにしなかった。
「黒子」
「・・・あ、あの、ふむゅ」
オレも仕返しにキスした。
さっきは不意打ちだったので感触は良くわからなかったけど、
唇って柔らかいんだなーとか、鼻息がかかるなーとか、黒子ってやっぱいい匂いするなーとか、
この感触を手放したくなくて、ちょっと長くキスしてしまった。
黒子から唇を解放すると、
「ぁ・・・」
黒子から吐息が漏れて。無意識か、上唇をぺろりと舐めた。
黒子がうっとりとした目でこちらを見つめてきて。
・・・・・
「あの・・・買ってきたわよぅ・・・///」
3人で並んで座って鯛焼きを食べる。
「おいしいねーこれ」
「/////」
「/////」
二人とも何も答えない・・・真っ赤になって俯いたままだ。
もう鯛焼きも食べ終わってしまった。
「あの・・・ゴミ、捨ててきますの・・・」
「あ、うん。ありがとう」
黒子が鯛焼きの包み紙を捨てに行ってくれた。
「/////」
美琴の横顔を見ると、
耳まで赤くなって、吐息が漏れて、
・・・・・
「ねぇ美琴」
美琴の腰を掴んでこちらに、ぐいっと抱き寄せる。
「ひゃぅ・・・///」
美琴のあごを人差し指でくいっと持ち上げると、潤った視線でこっちを見つめてきて。
「目、閉じて」
「待っへぇ・・・」
美琴とキスした。
美琴の唇は鯛焼きの味がちょっと残ってて、唇の感触も黒子とちょっと違ってて、
「あ、ふぅ・・・」
美琴の吐息がオレの唇にかかって、それがちょっと生温かいのにすごく心地よくて。
唇を解放したら、美琴もうっとりした目でオレを見つめてきた。
もっとしたい・・・
「煌平さま♪」
戻ってきた黒子が、オレの体にしなだれかかってきた。黒子の体温と体重が伝わってきてすっごく心地よい。
「出来ればわたくしとも、もっとお遊び下さいませ♪」
黒子が目を閉じて、オレを誘ってきて。
キス、もっとしたい。出来ればこの先も、もっと深く・・・
今度は黒子とキスしようとして・・・
『こらー!そこのクソハーレム野郎!!もう時間だからさっさと帰るじゃーん!!!』
「「「!?」」」
怒られてしまった。もう時間か・・・
「そろそろ帰ろっか」
「うん・・・」
「もう・・・ここからでしたのに」
ここから、そう。ここからだったんだよな・・・
出来れば、次は邪魔の入らない場所で。時間のある日に・・・