今年で7才。幼稚園は卒業だ。何だかんだ言って楽しかった。
そして遂に小学生になった。小学校もちょっと楽しい。友達も結構できた。
ヒノカミ神楽もサマになってきた。何と!全集中の呼吸も短時間だが出来るようになった。
全集中の呼吸とは肺に大量の酸素を送り込み爆発的に身体能力を引き上げる鬼殺の奥義。
将来的には、これを24時間持続させる全集中・常中も出来るようになりたいなあ。
剣の修行も素振りだけでなく父上に直接稽古をつけてもらえるようになった。父上がヒマな時だけだけど。
何だけど。
父上メッチャ強い。何となくそんな気がしてたけど。どれだけ打ち込んでも一本も取れない。あっという間にブッとばされてしまった。
でも、ボコボコにされながらでも何か掴めた気がする。
「煌平は剣の才能もあるなあ、他の呼吸も習ってみるかい?」
他の呼吸?炎とか水もあるの?確かに日の呼吸があるんだから他もあるのか・・・。ちょっと興味あるかも。
「ぜひ習いたいです父上!」
父上は他の呼吸の先生も紹介してくれた。
炎、水、風、雷と、順々に挨拶していく。炎の呼吸の先生は記憶の中の煉獄さんと似た髪型をしていたのですぐにわかった。
というか何人かは家に仕事で来ていた人だった。今後、先生達の時間がある時にちょっとずつ教えてくれるらしい。
「よろしくお願いします!」
ペコりとお辞儀をしたらちょっと和やかなムードが流れた。
8才になった。
ついに、ついに・・・!全集中・常中が出来るようになった!
これが出来るようになれば加速度的に身体能力が上がっていく。強くなるための第一歩だ。
・・・別に強くなりたいわけじゃないんだけど、何となくご先祖様の技は受け継ぎたいし。
他の呼吸も教えてもらった。
岩の呼吸は失伝してしまったらしい。あれって剣技なのかな?
炎の呼吸、
水の呼吸、
風の呼吸、
雷の呼吸、
と先生達に教えてもらった。
たまに先生達の仕事の愚痴を聞きながら。
「煌平なら、ひょっとしてアレも修得出来るかもしれない・・・」
「アレって何ですか?」
何だろう?わかんないや。
「我が家に伝わる、失われた秘剣だよ」
渡されたのは月の呼吸の指南書だった。
これって、
これってアレだ。漫画内で黒死牟が使ってたアレだ。指南書?どゆこと?
父上が言うには、難しすぎて誰も再現出来なかったマボロシの呼吸らしい。
「それと、書庫にある本も読んでいいよ。怪我したり壊したりしないようにね」
我が家には、戦国時代からあるという書物がしまってある部屋がある。
鍵がかかってたから入らなかったけど、入っていいなら入ってみたいな。
書庫の中には古い本や巻物が沢山あった。ちょっとカビ臭い。
目立つ場所に置いてある本を手にとって表紙を見てみる。手記?日記だろうか。
著者名は、
継国巌勝。
おおお・・ビッグネームじゃないか。
巌勝は黒死牟の本名。黒死牟は最強の鬼、上弦の壱であり月の呼吸の剣士。
確かに、ウチは継国家なんだから巌勝の私物が残ってても不思議じゃないが・・・。
気になる・・・。日記なんだから勝手に読んじゃダメだよね。いやでも月の呼吸の重要な情報とか書いてあるかもしれないし。
ごめんなさい、巌勝様。勝手ながら読ませて頂きます。どうしても気になるんです。わかりやすくて目立つ場所にあるんだもん。
日記にはこの家の謎?疑問の答えが大体書いてあった。
鬼舞辻無惨は戦国時代に死んでいた。巌勝様と縁壱様が力を合わせて打ち倒したらしい。
その後、鬼狩りは解散することになったが巌勝様の「また無惨のような怪物が現れるかもしれないから存続しといた方がいい」という進言を受けて剣技だけでも残していくことになったと。
そして巌勝様は実家に戻り、余生を全うしたという。
でも残りの人生で後継を探し続けたが結局見つからなかった、という愚痴が延々と書いてある。
うおお・・無惨死んでた。よかった。てかこの世界の継国巌勝は鬼にならなかったのか・・・。
あと継国姓と家が残った理由もわかった。当主が戻ったから潰れなかったんだな。
「その本、読んだのか?」
「あ、父上」
「ウチのご先祖様らしいんだが興味あるかい?家計図ならちょうどこの部屋にあるけど」
父上に家計図を見せてもらえることになった。ちょっと気になってたんだよね。
「ほら、この人が手記のご先祖様な。戦国時代の人だ」
衝撃的事実が判明した。オレは巌勝様の子孫だったらしい。確かに、縁壱様は妻子が亡くなってたしそうなるか・・・。
そしてさらに衝撃的事実。なんと、なんとオレは、
竈門炭治朗の子孫でした~やったあぁぁぁぁ!!
憧れの主人公の子孫だった!嬉しい、泣きそう。泣かないけど。
あと母上の旧姓は産屋敷だった。オレはお館さまの子孫でもあったのか、すごいな。
そっか巌勝様がオレのご先祖か・・・。
漫画内のあの散々な回想はよく覚えてる。
『頼むから死んでくれ』
『気味の悪さと苛立ちで吐き気がした』
『お前になりたかった』
『私は一体何の為に生まれてきたのだ』
・・・オレなんかに後継が務まるだろうか。でも、ご先祖様の想いをなかったことにしたくない。継ぎたい。
がんばろう。それ以外に出来ないけど、日の呼吸も月の呼吸もマスターしたい。
それはそれとして、この部屋にはまだたくさんの本がある。これは何の本なんだろう?
「父上、他の本は何なのですか?」
「ああ・・これは、現代では魔術とか魔法とか呼んでるそうなんだけどね。俺にはさっぱりわからないんだ」
・・・え?魔術?この世界の名前にもなってるアレのこと?
「超能力があったんだから魔法があっても不思議じゃないと思うけどね。俺には教えられないから、知りたかったら自分で勉強しなさい」
父上はオレの頭を撫でると上機嫌で部屋から出ていった。
とある魔術のインデックス。魔術。魔術かぁ・・・・内心、ちょっと気になってたんだよね。誰にでも使えるモノなんだろうか?どうせなら勉強してみようかな。
でも何でこの部屋に魔術の本があるんだろう?
とりあえず月の呼吸から試してみよう。指南書しかないけど、漫画で何となく見たことあるし。
次の日、早速外に出て月の呼吸を試してみることにした。
月の呼吸
『壱ノ型 闇月』
『弐ノ型 弄月』
『参ノ型 忌月』
『肆ノ型 幻月』
『伍ノ型 月魄』
『陸ノ型 孤月』
ここまでしか載ってなかった。何だろう?記憶と型名が違う。鬼になってから改名したんだろうか。
それに漫画では披露しなかった肆ノ型が載ってる。内容は『日の呼吸 幻日光』と大体同じ、高速移動で攪乱する技だった。
・・・ふと思ったんだけど月魄、月魄災禍はどうすればいいんだろう?剣を振らずに斬撃を放つ技なんだが、物理的に無理だと思うんだが。
指南書には、
「先ず呼吸を実体化させます」
としか書いてない。意味不明だ・・・。
呼吸による剣技には、見える人にしか見えないエフェクトがついてる。炎の呼吸にも、水の呼吸にもついてる。
これは単なるエフェクトでしかないので実際に炎や水が出るわけではない。
月の呼吸を修得するには、このエフェクトを実体化させる必要があるらしい。どうやるんだろう?
漫画だとこの剣技は血鬼術と一緒に使ってた。ひょっとして血鬼術がないと使えないんだろうか。
「鬼にできることは人間にもできる」とも、悲鳴嶼さんは言ってた。ひょっとして人間にも使えるものなんだろうか・・・。
わかんないや。後回しにしよう。それより魔術もちょっと気になるんだ。魔術をやってみよう。
魔術ちょっと楽しいかも・・・。
紙や地面に文字とか図形とかいっぱい書いて、呪文とかハンドサイン?(印を組むっていうらしい)で何かが起こる。
試しに庭で火柱を起こしたら母上に怒られてしまった。
他に、水を出す、草を生やす、土や金属を作るなど色々。
身体能力を上げる術とかもあった。これはちょっと難しいからまた今度。
仕組みがさっぱりわからないけど結構楽しい。
・・・そうか呼吸を実体化させる方法がわかった。
魔術を使うんだ。きっとそうだ。そうに違いない。だからこの家の書庫に魔術の本があるんだ。ひょっとして巌勝様は魔術師だったんだろうか。
でも今日はもう遅いし明日がんばろう。そうしよう。
9才になった。呼吸の修行はがんばってる。でもそれ以上に、
魔術が楽しい。
仕組み?もちょっとずつわかってきた。
魔術の種類もたくさん覚えた。試す相手がいない魔術もあるけど。
身体強化、治癒、解毒、人払い、結界、封印、探知、忘却、隠蔽、空間移動、暗示、幻術と色々。
他人の掛けた魔術を解除する解呪術とかも書いてあった。
呼吸を実体化させる方法も載ってた。今日はこれを試そうと思う。ずっと勉強してたんだ。
といっても内容は簡単だけど。
体内運動を調節して謎エネルギー(魔力?)を準備する。呼吸名、型番、型名を宣言して技を放つ。それだけ。
剣を構えて、意識を集中して、
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」
高速の踏み込みと共に居合いを放つ。すると、ドン!!と轟音が鳴り響き雷光がほとばしった。
うおお・・できた。これが出来れば月の呼吸もあと一歩。
月の呼吸は剣から三日月模様の斬撃を飛ばす技。普通にしてても使うことは出来ず魔術込みで初めて使えるようになる。
というわけで次は空き缶を標的にして、
意識を集中して、
「月の呼吸 壱の型 闇月」
抜刀して横に一閃するだけのシンプルな技。居合い切りにちょっと似てる。今度は剣から放たれた三日月の刃が空き缶を切り裂いた。
・・・・・いいぃやったああぁ!!出来たああぁぁあ!!!まだちょっとしか三日月が出ないけど!ちょっとだけだけど!!
「ほう、それが月の呼吸か」
「あ、父上」
「まさか俺の代で復活するとは思わなかったが・・・その調子で励みなさい」
父上は褒めるだけ褒めてまたどこかへ行ってしまった。褒められるとちょっと照れるな。
しかしついに月の呼吸が出来るようになった。あとは日月炎水風雷の呼吸をより使いこなせるように練習するだけ。『透き通る世界』の習得も夢じゃないかも!
あとふと思いついて魔術剣技(名前は適当につけた)をヒノカミ神楽で試してみたけどうまくいかなかった。残念・・・。
12才になった。小学生も今年で最後、長いようで短かった気がする。
魔術の勉強は書庫にある本は大体覚えた。人に見せたことはないんだけど、ていうか見せても手品と思われて信じてくれなかったけど。
呼吸の修行はついにアレが出来るようになった。
『透き通る世界』。至高の領域とか、無我の境地とも呼ばれる呼吸の到達点。
他者の肺や内臓の動き、骨の向きや筋肉の収縮、血の流れが感じとれるようになるというもの。つまり生物の肉体が透視できるようになる。
生物は体を動かすときに体内にその兆候が現れる。打ち込むときに肺が大きく動くなど、これらの兆候をよく見れば相手の攻撃、防御、回避を先読みできる。というわけである。
また他に、動きがゆっくり見える、殺気を放たずに攻撃できるなどの使い方がある。
・・・なんだけど、魔術の指南書には漫画にはなかった使い方が書いてあった。
『透き通る世界』の理屈は、五感を限界まで開き自身の肉体の変化を感じ取れれば他者の肉体の変化も感じ取れる、というもの。
これは応用すれば自分の感じ取れるものなら、普通は感じ取れないものも感じ取れるようになる・・・らしい。
本によると、世界は不可視の力で満たされていて水や空気、土と石などあらゆるものに力が宿っている。もちろん生物にも宿っているらしく、多分これが魂なんだろう。
そして自身の体に満ちる力の流れを感じ取れれば、世界に満ちる力の流れも感じ取れる。力の流れを感じ取れれば術の発動や仕組みを看破することが出来る。
・・・つまり他人が掛けた術のタイミングと内容がわかるらしい。すごい!
確かに空間に不思議エネルギーが満ちているのを視認できる。練習用に掛けた『騒音除けの術』の効果も視覚的に捉えることができるし、かなり便利だな。
でも、ちょっとだけ問題がある。一緒にやってくれる人がいないのだ。自分で掛けた術なんて自分で把握できて当たり前だし、人に勧誘しようにも手品とか遊びだと思われてしまう。
・・・・今は諦めよう。一生に一度くらいは他の魔術師にも出会えるだろう。そのときに試せばいいや。
9月になった。ちょっと困ったことが起きてしまった。4才くらいのとき学園都市への入学を断ったことがあったけど、
なんと小学校の同級生が全員学園都市へ行ってしまうというのだ!みんな超能力というものに憧れているらしい、なんで・・・
このままいけば中学校に一人で行くことになってしまう。いや下手したら中学校で同級生がいない、なんてことになりかねない。どうしよう?
・・・・・
結局、オレも学園都市に入学することにした。一人なんて耐えられない、寂しい死んじゃう。
12月になった。冬の肌寒い日のこと、急に父上から呼び出された。
「どうしたんですか?父上」
「いや、煌平もそろそろ一人前かと思ってな」
そういって渡してきたのは・・・・耳飾り。縁壱様から炭吉様に贈られて以来、先祖代々受け継がれてきたとっても大切な思い出の品。
え、つまり、
「お前をヒノカミ神楽の後継者として認めようと思う。少し早い気もするが、実力も十分だしな。・・まぁ家業を継ぐのはまだだが」
・・・・・うおおぉおおああああぁあやったあぁああーー!!!!うおお嬉しすぎて泣きそう。泣いた。
「ハッハッハ、まさか泣くことはないだろう」
だって嬉しいんだもん・・グスッ、
「煌平、この神楽と耳飾りだけは、必ず途切れさせず継承していってくれ、約束なんだ」
「グスッ、はい・・・」
耳たぶに穴を開けるのは思ってたより痛かった。
1月。雪の降りしきる夜、ついにこのときが来た。
日没から夜明けまで延々とヒノカミ神楽を舞い続ける恒例行事。竈門家が代々絶やさず行ってきたとても大切なもの。
・・・ずっと考えてたんけど。ウチは継国家だよな、なんで竈門家の慣習が伝わってるんだろう。いやご先祖様達が結婚したかららしいんだが、どんなロマンスがあったんだろう?
「煌平、準備はいいかい?」
「はい」
「うん、立派に務めを果たしなさい」
「はい!」
・・・今は他の事を考えるのはやめとこう。
精神を深く、より深く集中させて、呼吸の形を正しいものへと変えていく。・・よし!
「いきます!」
『ヒノカミ神楽』
『円舞!』
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・。
・・。
・・・夜明けが来た。朝日が眩しい、鳥の鳴き声が聞こえる。・・不思議だ、全く寒さを感じないし疲れも感じない。
「おつかれ煌平、見事な神楽舞だったぞ」
父はタオルを貸してくれた。
「ありがとうございます・・・ふわ~あちょっと眠くなってきました・・・」
「何回かやれば慣れるさ」
父上はまた頭を撫でてくれた。
「本当に、よく頑張ったな・・」
うう・・ちょっと照れるな・・・。
でも、心の中は充足感でいっぱいだった。あの憧れのヒノカミ神楽の正統後継者になれたし、結局漫画内で見れなかった神楽イベントも体験できた。
そういえば、最終話の竈門炭彦ってどうなったんだろう?親戚にそれっぽい人はいないし。この世界のどこかにいるんだろうか。
まさかとは思うけど、オレが生まれたから炭彦が生まれてこなかったり?
・・・この考えはやめよう、何だか恐くなってきた。そんなことあるわけないよね・・・。
3月になった。ついに小学校も卒業。長かった・・・何といっても2回目だからね。でも楽しかったなあ。
周りの友達たちはみんな超能力の話しをしている。レベルファイブ?がどうとか、ダイハセイサイ?で見た何かがどうたら。
そんなに能力が欲しいのかよう・・はあ・・・。
「煌平はどんな能力がいいー?」「炎とか似合いそう!」「いやこいつは身体能力がもう能力って言っていいでしょ・・・」
・・・ん?
「炎を出す能力なんてあるの?」
「あるよー炎とか電気とか水とか氷とか!」
ほえー自然っぽい能力もあるのか。なら、
「じゃオレは電気タイプがいいなあ。10万ボルト!とかやりたい」
「えー」「似合わねー」「これ以上強くなりたいんか・・・」
うっ・・オレには似合わないかな・・・。
実はポケモンだと電気タイプが好きだったり。ピカチュウとか大好き、可愛いし。
あと手持ちの術だと電気が出せないんだ。雷の呼吸で出すのはなんか違うし。
4月。ついにこの時がやってきてしまった。地元を離れ学園都市へ行かなくてはならない。はぁ・・・
「煌平、しっかりやるのですよ」
「気楽に構えていなさい」
「はい、行ってきます!」
両親と離れてしまうのは寂しいけど。まぁ、一生会えないわけではないし。
今は学園都市へ向かうバスの中にいる。まるで出荷させられる家畜のような気分だ。自分から行くって言い出したんだけど。
能力開発かぁ、どんなことやるんだろう?魔術の練習とは違うものなんだろうか。・・・折角だから友達に聞いてみようかな。
「なぁー超能力ってどうやって使うん?」
「えー、んーとねー、おクスリ使ったりノーカイゾーしたりエンザンしたりするらしいよー?」
はぁ?お薬?脳改造?なんか不穏な単語が聞こえたんだけど・・え、怖ッ、そんなことするの?
うおお・・何かホントに行きたくなくなってきた。今からでも逃げちゃおっかな・・・いや、自分から行くって言い出したんだから行かないと・・・・。
学園都市。ヤだな・・本当に治安が悪かったらどうしよう。パンフレットには『最新・最高の信頼セキュリティで守られていますので何があっても安心です!』とか書いてあるけど。ホントかよ・・・。
でも中学校自体は楽しみ。何てったって前世は13歳くらいで死んじゃったからね!