『櫻井美津子と別れなさい』
「……はい?」
そんな電話が来たのは、翌日の夜だった。
今日は昨日と同じく櫻井を家に連れ込み、セックスしまくった。相変わらず彼女の肉体は魅力的で、俺は散々帰り際に身体をまさぐりまくり、なんとか気を落ち着かせた後である。
そのまま時間になった櫻井を家に帰し、夕飯を済ませ、ベッドで横になっていた最中、唐突に電話が鳴った、
開口一番、櫻井と別れろとの事。
「えーと、どちら様ですか?」
俺は警戒心全開で、知らない番号の相手に問いかけた。
『気にしないで頂戴。私は貴方が美津子と別れてくれれば二度と関わらないから』
「いや、だから誰だよ……」
俺は妙な緊張感を感じながら、相手のことを探る。
女の声だった。ひどく大人びた声質だが、話し方は高校生にも感じる。
それと、通話が繋がってすぐの「櫻井美津子と別れろ」。これくらいがこっちに流れてきた情報だろう。
『で、別れてくれるわね?』
「……断る。てか、どこで俺と櫻井が付き合ってるって知ったんだ?」
まずもってそこがおかしい。学校では努めていつも通りに振る舞っている。クラスメイトにも俺と彼女が恋人同士だとはバレてないのだ。そもそも櫻井が俺の恋人なのかはこの際置いておいて。
櫻井の知り合いだろうか。そうだとしても、どうしてこんなことを。訳がわからん。こんな行き過ぎたアイドルの追っかけみたいな知り合い、櫻井に居るんだろか。
或いは──
「……お前、櫻井のストーカー?」
『……どうしてその結論に辿り着いたのかは知りたくもないけれど、違うとは言っておくわ。ただの親友よ』
親友。
その言葉にハッとする。
「お前、花城加奈子か!!」
櫻井が度々口にする親友、花城加奈子。俺らが通う高校の学長の娘で、俺や櫻井と同学年。一年の時はクラスも一緒だった。
何度か喋った事もあるが、今の今まで全くピンと来なかった。そういえばこんな感じだったな。
『美津子……そんな事まで……』
向こうは向こうで何かショックを受けたように声を震わせていた。
相手の正体が分かったので俺は大きく安堵の息を吐いた。
けど、じゃあなんであんな事言ってきたんだ。再び俺は大きな謎に首をかしげた。
櫻井から俺の話を聞いたんだろう。もしかしたら、電話番号だって彼女から仕入れたのかもしれない。
そこまでは理解できる。櫻井も花城の事を親友と呼んでいたわけだし、そもそも公欠の恩とかもあるので俺の事を話したのかも。
じゃあなんで別れてなんて言ってきたんだ。言葉では否定していたけど、やっぱり根っからのストーカー体質で、生まれついてのレズビアンなんじゃなかろうか。
確かに俺たちはセックスばかりの不完全な異性交遊をしているが、そんなの高校生ならどいつもこいつも同じようなもんだろ。特別やばい事をしてるわけでもないし。
そうだよ、俺は何一つ悪いこと……
「待て待て待て。まさか、アイツ催眠の事喋ったのか……!?」
『彼女に強要しといて、よく言うわね。貴方の腐りきった性癖なんて毛ほども興味ないけど、お願いだからこれ以上あの子を汚さないで』
「性癖……? よく分からんが、催眠の事まで聞いてるなら、櫻井が俺から離れられないことは分かるだろ?」
『ああもう、私にまでその気持ちの悪い設定を押し付けないで。頭の中でどれだけ自分が特別なのか妄想し続けるのは勝手だけど、生憎と現実は真逆よこのクズ』
「……」
設定。設定ね。
どうやらコイツは櫻井に掛けた催眠の内容まで知らないらしい。というか催眠自体信じていないのだろう。
「なるほど」
読めてきたぞ。幾ら俺が催眠を使えるとはいえ、催眠が世間一般の認識で眉唾物の類なのは理解できる。俺も信じてなかったし。
そんな危ない奴が、親友の彼氏になった。花城は櫻井をその頭のおかしい彼氏から守ろうと、今日電話してきたのだろう。
「……うーん」
そこまで分かったは良いが、ここから先どうすれば良いのだろう。
まさか俺には本当に催眠能力があるんだと言っても信じてもらえないだろうし、「じゃあはい、分かりました別れます」と言っても同じく信じてもらえないだろう。
所謂、オチが見えない。コイツ、お嬢様だけあって口約束でもしたら本当にその約束を守ってくれるとでも思ってるのか?
『ねぇ、そんなに別れるのが嫌なら取引しましょう』
花城も会話が膠着状態に陥ったと感じたのか、或いはこうなる事を見越してきたのか次の一手を打ってきた。
先程の嫌悪感に満ちた声とは違う。明確に自分が勝つと確信している声で。
『あなたは巨乳の女の子。それも道具のように使える子がいればそれで良いんでしょう?』
「……」
『だから、代わりを上げるわ。その子には何をしても良いから、美津子を返して』
タイミング良く、ピンポーン、と家のチャイムが鳴らされた。
『出なさい』と電話越しに命令される。嫌な予感がしながら、それでも無視する訳にもいかず、スマホ片手に玄関の扉を開けた。
「どうも、神崎まなかです」
玄関を開けると、外に居たのは見たことない制服に身を包んだ女の子だった。
思わず絶句する。
「か、神崎まなかだ……」
「はい、そうですよ♪ まなかって呼んでください♡」
小さく結った茶髪のサイドテールに、垂れ目がちなおっとりとした顔立ち。癒し系とでもいえば良いのか、人形みたいな整然と整った容貌だが、見ているだけで不思議とムラムラしてくる小悪魔的とも呼べる雰囲気だ。
そして大人しそうな顔とは裏腹に、胸にはドカンと大きな膨らみが付いていた。爆乳。そう形容するのが最も適切な、驚異のHカップ。制服がはちきれそうになるほど膨らんで、呼吸するだけでも重そうに揺れ動く。
そんな、今をときめくグラビアアイドルの神崎まなかがそこに居た。
『貴方、その子好きでしょう? これから、その子のこと、自由にして良いわ』
「えーと……よろしくお願いしますね?」
ーーーーーーー
どうして俺が「神崎まなか」を好きだと知っているんだろう。彼女の事を知ったのもつい最近だし、昨日だって櫻井が帰った後仕方なくオカズを探して「神崎まなか」の写真集をコンビニで買った訳だが、花城にバレている意味がわからない。
「お邪魔しますね……」
彼女はそう言うと少し離れた場所に高価そうなカバンを置き、夕飯の洗い物を置きっぱなしにしたテーブルの横に座った。
俺はと言うと突然のグラビアアイドル襲来にてんやわんやしていた。素人訪問のアダルトビデオなんてあるが、まさしくそんな感じだ。
「ど、どういうことなんだ……!?」
『さっきも言ったでしょ。その子の事は好きにして良いから、美津子とは別れて。それじゃ』
花城は言いたいことだけ言うと、ブツリと電話を切ってしまう。
俺はほとほと困り果てて、とりあえず失礼にならないように神崎まなかの前に座る。
「あの、えっと、初めまして……真田ショウジって言います……」
「あ、はい、よろしくお願いしますね。神崎まなかは本名ですので、気軽にまなかとお呼びください」
彼女はにっこりと微笑むと、「何でもご命令ください♪」とわざとらしく胸を揺らした。デカすぎるおっぱいが、制服をぶちぶちと弾け飛ばすような錯覚を覚えた。
なにこれ。どうすりゃええの。助けて櫻井。
好きにしろっつったって、気まずいよ。気まずすぎるよ、花城。代わりになんねーよ。櫻井とだったらこの玄関からのわずか数秒でもチンポは触るし胸は揉むしで色々ヤリまくりだよ。
「……」
どうすんだ、どうすんだ。この子、本当に俺の好きにして良いのか。罠なんじゃないか。いや、罠って言ってもこれ確実にファンの俺を喜ばせてるサプライズなだけじゃん。しかも俺この子の事好きになったのつい先日だし、理由も乳のデカさだけだよ。なんだよこれ、まじでどうすりゃ良いんだ。
「その、真田様はわたくしのファンだと伺っているのですが……」
流石に空気に耐えきれなかったのか、向こうから話題を提供してくれた。
ホッとした俺は、なんだこの人、コミュニケーション出来るんじゃんと思いながら、大袈裟に頷いた。
「ええ、その、まなか、さんはとっても綺麗で……えっと……あ、サインとかってオーケーですか?」
立ち上がってタンスから買ったばかりの写真集を取り出す。彼女は優しく頷くと、「でもわたくし、サインなんて全くした事がなくて……」と恥ずかしそうに口元を隠した。
「ああ、いや、そんな、全然……そっか、まなかさん、グラビアですもんね……」
言われてみると確かに、グラビアってあんまり普通のアイドルとかと違ってサインしてるイメージないな。アイドルもあんまりサインするイメージないけど。
……ん、いやこれ俺がアイドル知らないだけだ。
まぁいいか。
俺は「そうですか」と写真集を引っ込めると、再び無言になった。
いーや、これマジで、なに喋って良いのかわかんねー。何、アイドルってどんな話題なら普通に会話出来るの。アイドルの知り合いなんて居ないから分からん。
そもそもなんて言われて俺の家に来たのか超知りたい。それが分からないと、もうこれ以上対応のしようがない。
……ん、待てよ?
「……あ」
「あら、どうかしましたか……?」
「あ、いや、すいません。この状況を打開する方法を見つけたもので」
「はぁ……?」とよく分からなそうな顔をするまなかさんに、俺はすいませんともう一度頭を下げた。
しかしあれだな。実際のところ興奮は彼女ならしやすいから構わないけど、櫻井に命令した後から全く使ってなかったせいで、すっかり催眠できるってのを忘れてたな。直前に花城と話したから、何とか思い出せたぞ、今。
この能力があれば町中で見かけた美人さんと即パコとか可能なんだが、何度も言うがここ数日は櫻井に夢中で他の女なんて心底どうでも良かった。
こういう場面でも使えるなぁと、つくづく催眠の力に脅かされながら、俺は彼女のHカップをガン見した。
「まなかさん」
ビクンと彼女は震えると、そのまま一言も喋らなくなった。
「もしもーし、起きてますかー?」
念のため声を掛け、肩を揺さぶってみるが、反応は一切ない。
さて、なんて命令しよう。いやもちろん決まっているのだが、いざご自由にどうぞと言われると男なら迷うもんさ。
「……いや、その前に男としてやるべき事があった」
俺は手を伸ばすと、まなかさんのおっきなおっぱいに触った。服の上からでもわかる、でっぷりとした質量に頬を緩めながら、わしっと両手で揉む。
「お、おお……!」
俺は思わず声を漏らして、何度も何度も揉んだ。柔らかすぎるマシュマロパイに、意識ごと溶かされていく。
でけぇ、これがHカップかよ。