※この作品はR-18です。

催眠生活に必要なものは   作:はつのとうこ

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三十四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起こってるんだ……」

 

 俺の部屋では、三人の美少女達が所狭しと荷物の整理を行っていた。

 みんなそれぞれ休日の装いで、夏らしい半袖を身につけた巨乳達が、お尻をフリフリとしながら俺のタンスをガサガサと漁っている。

 月並みな言い方だが、女性が三人揃えばかしましいというか……

 

「ねぇ、まなかさん。これ……♡♡」

 

「わぁ♡♡ ご主人様のパンツですか!♡♡ すんすん、すん……あぁ、これだけで何杯もご飯が行けます……良い臭い……♡♡ たまりませんねぇ……♡♡」

 

「分かる。むわっとした雄臭さがたまらないわよね……♡♡ はぁー、すんすん……♡♡ あんっ、濡れてきちゃう……♡♡♡」

 

「ちょっと貴方達、ずるいわよ! わたしにも……すんすん、よこしなさいよ……すー、はー……♡ ……くっさ、なにこれ……すー、すー、あむっ♡♡ ああ、味も酸っぱくて……ん、すんすん……ぅ、ぁっ、あん……♡ す、好き、さ、真田ぁ……♡♡♡」

 

「こら加奈子、何処に指入れてるのよ……そんなの加奈子の家で幾らでも出来るのに──それと、ごめんね、真田君♡ 下着一枚もらうね?♡ ちょっと自宅用のマスクにする……♡♡」

 

「ええ!?♡ 美津子さんIQ高い♡♡ まなかも被って生活しますぅ♡♡」

 

 ええっと……

 君たち、何を人のパンツで盛り上がってるかね。

 そんな取り合いするような価値ないから、いやほんとマジで。

 だから、花城はちょっと黄ばんでる部分を熱心に舐めながらオナニーするのをやめなさい。あと残り二人は馬鹿みたいにボクサーパンツを頭に被るな。それIQ高くねぇから。考えうる中で最悪のど底辺だから、いやほんとマジで。

 繰り広げられる軽い地獄に、目眩がしそうになる。

 誰か最初から説明してくれ。

 

「ふふ、おいで、真田君♡」

 

 所在なさげに立ち尽くしていると、櫻井が頭からパンツを取って手招きしてくる。さっきまで俺のパンツを被っていたとは思えないほどの美少女スマイルだ。

 よく分からないままそれに従い、隣に立つ。

 一体何が起こってるんだ櫻井。ちゃんと説明してくれるんだろうな。

 そんな目で彼女を見ると、やはりというか彼女は察してくれたらしく、口を開いた。

 

「この部屋、三人でもギリギリだったけど、四人で暮らすとなると手狭でしょう? だから加奈子の家にみんなで住む事にしたのよ」

 

 事もなげに彼女は言った。四人で暮らすと。

 俺は展開の速さについていけない。

 

「あー……あー……?」

 

 究極の生返事を返しつつ、さっぱり意味が分からんと櫻井に目を向けた。彼女はくすりと笑って、それから未だに俺のパンツでオナニーを続ける花城を指さした。

 

「真田ぁ、真田ぁ♡♡ 好き、好き、真田のおしっこの臭いも大好きぃ♡♡ おしっこ掛けてぇ、おしっこいっぱい掛けてぇ♡♡ はぁんっ、あんっ……♡♡♡」

 

 つーかあいつもうなりふり構ってねーじゃねーか。

 爆乳をこれでもかと揉みしだき、ぶしゅぶしゅと股下から体液を溢していた。非常に股間に悪い光景が広がっている。

 あいつが何? と改めて櫻井を見る。

 

「やっと真田君が加奈子の事を催眠してくれたお陰で、真田君が抱けるおまんこが増えただけじゃなくて、同時にとっても良い金づるが手に入ったの。これを利用しない手はないと思って……」

 

「思って……?」

 

「真田君にとびっきり私達を楽しんでもらおうと思ったの♡♡ 広い家でところ構わずデカパイのタダマン三人とパコパコ出来るよ、やったね♡♡♡」

 

「……」

 

 わからん、意味がわからん。

 いや、言ってる事は理解しているのだが、理解したそばから脳が拒絶した。櫻井の高度すぎる言語がについていけなかった。否、単純についていけなかった。

 なんだか妙にハイテンションな櫻井は、まるで全てが計画通りとばかりにニコニコ笑って、笑顔で俺の下着やら必要そうな衣服をまとめてカバンに詰めている。言葉遣いもいつもよりちょっぴり変な感じで、違和感を感じる気もする。

 俺は、さっきまでの暗い感情を取り戻すこともできず、かと言って彼女達のように浮かれる事もできず、まるで心に薄いモヤがかかったようにそれ以上何も感じる事はなかった。

 これも一種の拒否反応なのかもしれない。とにかく俺は、考えなかった──いや、考えられなくなった。

 だから、黙って櫻井に従った。そうして、何かから逃避しようとしていた。

 

 俺たちの横では、いつの間にか絶頂から復活した花城が堂々と俺のパソコンをいじっていた。

 「美津子みたいなAV女優のエロ動画しかブックマークしてない!」とキレ散らかす花城に、まなかさんは「まなかの流出ビデオもお気に入りしてありますね♡」と火に油を注いだ。

 

「金髪は! 金髪でロングの巨乳はないの!」

 

「無さそうですねぇ……」

 

「なんっ、でよっ!! この際洋モノだったら構わないわ! ワンカウントとみなす!」

 

「あっ、またまなかの流出ものだ♡ よく見つけますね、全然広まってないのに……あ、えへへ、ご主人様なら言ってくれたらいつでも無修正どころか抱き放題ですよ〜♡」

 

「真田ァ!」

 

 みんなテンションが高い。花城に至っては、もはやぶっ壊れているくらいだ。誰だこいつ。

 なんでだろうと思いながらふとカレンダーを見上げると、もう夏休みは目前に迫っていた。

 

 

 

 

「真田君、今年の夏は、とっても『気持ちいい』夏になるよ……♡♡」

 

 

 

 

 櫻井は、深く微笑んだ。

 そうか、それで夏の間、広い花城の家でとんでもない生活……いや、性活をしようということか。

 ようやく話の飲み込めた俺だが、肝心の俺の問題は何一つ解決していなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「飲み物買ってくる」

 

 そう言って、俺は結局家を出た。

 別に飲み物になんてこだわりは無い。ないなら水でいい。

 つまりあの空間から逃げ出したかっただけだ。

 

「……」

 

 とぼとぼとコンビニまでの道を歩く。今日はなかなか気温が高く、少し歩いただけでも微妙に汗ばんできた。

 まぁ、さっきの話にもあったけど、もう夏休みだからな。そりゃ暑いさ。

 

「……」

 

 ……一週間、逃避し続けて。ようやく気持ちに区切りをつけられそうになって、それで櫻井にまず謝りに行こうとして。

 そんなタイミングで、三人は現れた。

 当然、あんな空気では櫻井に花城とセックスしたと謝ることも、ましてや泣き喚いて慰めてもらうことも出来なかった。いや、あの空気を壊してまでするべきでは無いと、『いつもの俺』が判断した。

 

 結局、俺は変われないのかもしれない。今までだって、成り行きで生きてきた。自分の意思を押し通し続けるなんて、到底俺には無理なんだ。

 

 ……てゆーか多分、あの感じだと櫻井は花城から直接聞いてるよな、ヤッた事。

 

 いやもうなんか、なおさら謝りづらいわ。そもそも女の人って鋭いし、避け始めた一日目で察してそう。それがあの頭脳派の櫻井ともなると輪をかけてそう思ってしまう。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息が漏れる。

 コンビニまでは3分くらいで着く距離だが、何故だか俺はめちゃくちゃ遠回りして町をぐるぐる回っていた。

 とにかくあそこに戻りたくない一心だった。

 こんな力を持っているのに、結局俺はこんな人間臭い悩みで悩んでいた……いや、もとはと言えばこんな力を持ってしまったからこそ、こうなったのだけれども。

 うーん、便利だけど、便利だけど、なんかなぁ、もっと、上手く人生生きていきたいなぁ……

 

「真田」

 

 気がつくと、花城が隣にいた。

 彼女は自分の魅力を全面に出す真っ赤な意匠が入ったワンピースを着て、ちょっぴり頬を染めながら俺の腕を抱き寄せた。

 彼女は、赤色がよく似合う。日本人離れした顔立ちや雰囲気がそうさせるのか、なにかと派手な色が似合う。美しい人だった。

 あと、おっぱいが大きい。お陰で俺の腕は半分以上谷間に飲み込まれた。

 俺は軽く目を逸らした。相変わらず股間に悪い女である。今はそんな気分でもないが。

 

「どうしたの? 元気ないじゃない」

 

 彼女は俺が外で時間を潰している事を咎める事はしなかった。

 ただ、不安そうな面持ちで俺を見ていた。

 

「……そう見えるか?」

 

「まぁ美津子からいつも二人の話を聞いてるし……それに普段の貴方達を見たことある私からすると、今の真田はちょっとおかしいわ」

 

 中々俺のことをよく見ている花城に眉を上げた。なんというか、こんな容姿を持ちながらも更に聡いというのが、神様は幾つ贈りもの上げちゃったんですかという気になる。

 もちろんこの一言だけでそう判断しているわけじゃ無い。あの日のデートの時、俺は花城の気遣いに、知的さに、驚いた。素晴らしい女性だ。

 そんな相手を、俺は大胆にも振った訳だが……今はどうしてこうなっているのやら。

 花城は尚も続ける。

 

「大方、私とエッチした事を気にしてるんでしょ」

 

 ズバリ言い当てられて、俺は露骨に返答が遅れた。

 

「……なぜ分かった」

 

「いや顔に書いてあるし」

 

「そんなわかりやすい顔はしていないと思うが」

 

「他の二人にも聞いてみる?」

 

「……」

 

 そんなに俺ってわかりやすいのかな。自分ではそんなつもりはないんだけど。

 花城はわざとらしくため息をついた。

 

「恋人である美津子が気にしてないどころか、大好きな恋人に捧げるメスが増えたって喜んでるくらいなのに、どうして真田が落ち込む必要があるの?」

 

 そう言う花城は、その言葉を言ってる最中にどんどんと頬を赤く染めると、俺の顔を直視できなくなってプイ、とそっぽを向いた。

 

 俺は何もしてないが……?

 

「……優しすぎでしょ、馬鹿♡」

 

「あ? 何?」

 

「なんでも無いわよ! てかこの距離なら聞こえてたでしょ!」

 

「いや、一応聞こえないふりしとかないと……」

 

「……貴方は鈍感を気取るのは向いていないわ。人の顔色ばっかり伺ってる人が、そんな事できる訳ないでしょう」

 

 グッと両腕に力を入れて花城は更に俺の右手を抱きしめてくる。俺にそれ以上何も言わせまいと、エロスの暴力を使ってきやがった。これ以上この口論はしたくないらしい。

 俺もこれ以上その話はしたくなかったので口を閉ざした。

 そうなると少し沈黙気味になって、歩くのに集中した。いい加減歩きづらい。まぁ、多分ここで言葉にしないのが男というものだという事を最近何となく分かってきた。

 暫くすると、花城が憐れむような目つきで俺を見た。

 

「貴方が優しすぎて傷つくのは勝手だけど、真田が悲しい顔してると嫌なのよ。だからもう気にするのやめなさい」

 

「そう簡単に言われてもな……」

 

「もう、私だって逃げられて傷ついたんだからね!」

 

「そ、それはごめんなさい……」

 

「そうよ、貴方が悪いの。──でももう十分私と同じくらい傷ついたって事にしてチャラにしてあげる……だから真田、笑って?」

 

 震える声音。

 思わず目線を合わせると、花城は今度こそ心配そうな顔で俺を見つめた。

 意志の強そうな瞳が、不安げに揺れていた。

 彼女は心の底から、俺を案じている様子だった。

 あんな拒絶をした相手である俺をだ。

 凄い女だ。

 

「……ありがとう」

 

 なぜか俺はそれで、少しだけ救われた気分になった。

 なんでだろう。

 もしかしたら、この悩みは櫻井に相談してもどうにもならなかったものだったのかもしれない。そう考え直してしまうほど、今の花城の言葉に俺は揺り動かされた。

 きっと櫻井に泣きついても、俺の罪悪感は晴れなかったかもしれない。

 

「あ……」

 

 ──ああ、ようやく分かった。

 

 俺の罪悪感は、何も櫻井に対するものだけじゃなかった。ましてや、自分の意思を貫けずに不貞腐れているだけでもない。

 俺は……花城に対しても、とても申し訳ない感情を持っていた。

 不幸な人生で、それでも強く生きていて、とても魅力的な花城。おまけに俺は、あんなデートみたいな素晴らしい時間を過ごさせてもらって……なのに俺はあの瞬間、確かに拒絶した。

 素晴らしい女性である、花城を。

 それもまた、俺の心を重くしていた要因だったのだ。今はっきりと分かった。

 そして、それを……花城自身が許してくれたのだ。

 

「……」

 

 知らないうちに、息を吐き出した。

 少しだけ気分が晴れた。まだ櫻井へのわだかまりも、自分に対する思いも特に解決していない。それでも他ならぬ花城のおかげで、俺はついさっきよりもだいぶ気分がマシになった。

 改めて思うが、やはりとても魅力的な女性だな。

 

「──うん、少し元気になったみたい」

 

 花城も俺の表情を見て感じ取ったらしく、にっこりと花のような笑みを浮かべた。

 もはや死語なのだろうが、彼女は冗談抜きで眩しい女性だった。

 俺は、もう自分でも誤魔化しきれないほど、彼女に惹かれているのを自覚した。だって、こんなの、意識するに決まってるだろ。

 綺麗で、優しくて、頭が良くて──俺のことが好きな女性。意識せざるを得ない。

 

「っ……」

 

 そう思うと、この至近距離で歩いているのが途端に緊張してくる。少なからず汗ばんだ爆乳に抱かれながら歩くのは、心臓に悪い。それに美貌もかなり近い。不意にキスしてしまうくらいの距離感だ。

 ドキドキと心臓が鳴って、股間がカッと熱くなる。これが櫻井やまなかさんだったら金玉袋を握らせて刺激を促すのだが、花城だと言葉にしようとすら考えなかった。

 てか、歩いてるだけで幸せだった。

 

「……」

 

 しかし、こんなにもっこりさせていたらいつか花城にも気が付かれてしまう。俺は気を逸らすために何か話題の種がないか脳内を探した。

 花城はそんな俺の様子を気づいたのか気が付かなかったのか、自然と話題を提供してきた。

 

「それにしても、真田は本当に真面目ね」

 

「真面目って、何が?」

 

 これ幸いと俺はそれに乗る。こういうところもストレスを感じさせない花城の魅力……というか、好きなところだ。

 ああ、ダメだなぁ……俺完全に花城の事好きになってるかも……今だったらこの間みたいに誘惑されたら、多分俺は断れないだろう……

 俺は自分のクズレベルが一段階上がったのを自覚した。

 

「美津子から聞いたわ、そういう感情面の問題とかもひっくるめて自己催眠でどうにか出来るんですって。さっさとやれば良いじゃない」

 

「催眠能力の事か? 自己催眠って……何?」

 

「自分の中の嫌な感情とか、そういうのだって貴方の力なら容易に消せるって事なんでしょう。全く、羨ましい限りよ」

 

 いや、自分に催眠を使うなんて考えた事ないけど。てか感情をどうにかって何。ダブルでそんなおっかない事誰が思いつくねん。

 思い返すと櫻井が以前『俺自身がその能力を催眠能力として定義した』とか言っていたような。そして、俺が望んだから『心のハート』は発現したとも。

 ……相変わらず櫻井は、なんでそんな事を知ってるんだ。

 そんな事を思ったら、思わず口からも漏れた。

 

「なんでそんなこと知ってるんだ」

 

 対する花城は、首を傾げて降参のポーズだった。

 

「さぁ? なんでそんな事知ってるのかなんて知らないわよ。私としては、もはや美津子が催眠能力を持っていても驚かないわ」

 

「──」

 

 思わず声を失って、立ち止まった。

 何だって? 櫻井が、催眠能力を?

 直感的に、全ての辻褄が合う気がして。

 いや、そんな訳があるわけがないと思い直し、それを認めたくないばかりに首を横に振った。

 

「馬鹿な」

 

 自分でもびっくりするくらい硬い声が出た。

 花城は驚いた様子もなく、俺の隣に立ち止まってこう続けた。

 

「真田がその能力を持っている時点で、この世にはそんなご都合主義の超不思議催眠パワーか存在する事を証明しているじゃない? 存在が証明されている以上、他にもある可能性だって十分考えられるわ。だって目の前にあるんだもの」

 

「……そんな。そんな訳、ない、だろ」

 

「うーん……そうね。例えばなんだけど、貴方がもし、自分が一つの林檎を持っているからって、どうして貴方以外の人達──他人が林檎を持っていないと思うの? 真田の手にあるその能力(リンゴ)は、この世に一つだけしかないかどうかわからないのに」

 

 花城の話は、あまりに荒唐無稽で、突拍子もなくて、少しだけ回りくどかった。

 けれどもどこか現実にあり得そうで。違うだろと一蹴する事が、俺には出来なかった。

 

「世の中は案外そういう人達がうまく隠して生きているのかもしれないわね。美津子はそれを貴方に分け与えたのかも……なんてね♡」

 

 花城はそれ以上は言葉にすることはせず、俺の歩みを促した。

 さっきまで元気だった俺の股間は鳴りを潜め、狙いとしては大成功だ……

 

「……」

 

 ……が、花城の仮説が頭から離れず、俺はまた思考の海に飲まれていた。

 櫻井が、催眠能力者? そんな事、本当にあるのか?

 尚も考え込む俺に、花城は「この際だから」と付け足した。

 

「美津子から聞いたけど、貴方その能力を手に入れた時の記憶がないんでしょう?」

 

「あ、ああ、その通りだ……」

 

「それって、不思議なのよねぇ。どうしてピンポイントで催眠の力を得た瞬間を覚えていないの?」

 

 どうしてって聞かれても、覚えてないからとしか言いようがない。

 それこそ、宇宙人に連れ去られて改造された、とか……?

 自分で言っててあまりの非現実的な妄想に笑いが込み上げる。

 

 そうだな、そんなことは『ありえない』。

 

 しかし花城の言葉を借りるなら、俺の能力が存在していることがこの能力があると言うことの証明になるのだ。『ありえる』のだ。

 それってつまり──

 

「貴方はその力で一体今までどうやって人の記憶を弄ってきたのかしら。それって、そんなに難しい事だったの? 違うわよね、『名前を呼ぶだけ』で、『命令するだけで』記憶を消せた」

 

「……」

 

「貴方の状況をはたから見るとね、どうしても美津子としか思えないのよ。美津子はその能力にとても詳しいみたいだし……それに貴方は既に私に限定的とは言え、催眠能力を渡しているのよ? なら、美津子ならもっと上手く使いこなせると思わない?」

 

 俺は返す言葉が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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