「ふぁ、ふぁぁぁぁ……眠い……」
俺はベッドから身体を起こしながら、洗面器に向かった。
寝ぼけ半分で歯ブラシをしゃこしゃこ動かしながら、記憶を手繰り寄せる。
昨日は確か、両親が心配する時間だと言っていたので、櫻井を家に帰したのだ。
櫻井はかなり俺のそばにいれないことを申し訳なさそうにしていたが、俺としてもあのまま童貞卒業と同時に一夜を過ごす、なんてしたら幸せすぎて死ぬかも知らんかった。危ないところだった。
今日は日曜日。時計を見れば十時と少しを過ぎたあたりだ……さて、詰んでるゲームでも消化するか。
「……いや、ここは櫻井のご主人様的に無理にでも電話で呼び出すべきなのでは?」
ついつい櫻井に気を使ってあいつも自分の生活があるだろう、なんて考えていつも通りの日常を過ごそうとしていたが、俺は今あいつになんでも命令出来るんだ。
使いこなして今からでもスーパーセックスタイムになるべきなのではなかろうか。大人の階段三段飛ばしで登るべきなんじゃなかろうか。
いや、絶対そうだわ。俺昨日あいつの事奴隷にする時に、一切櫻井に容赦しないって決めたもん。ゲームなんてしてる場合じゃないわ。
……今更だけど幸せすぎて死ぬってなんだよ。その幸せのために奴隷にしたというのに。
「……そうとなれば電話か」
スマホを手に取ると、友達一覧から櫻井を探す。ちょっびり躊躇った後、別に怖がる必要なんてないんだと思いながら通話ボタンをタップした
そうだ、こっちに来る途中に朝飯でもついでに買ってきてもらおう。
『もしもし、真田君?』
「お、おう、おはよう櫻井」
少し動揺しているのは、やっぱ昨日の色々が一晩経って時間が空いた事で自分でも全然整理出来てなかった。
……いやいや、当初の目的を忘れるな。どうしてこんな朝から女の子に電話した? 決まっている、エッチなご奉仕してもらうためだ。
「さ、櫻井、今からウチに来れるか……?」
いつもより上ずった声で、櫻井に尋ねる。昨日のことが全部夢だったとは思っていないが、普段から人に命令することなんて滅多にした事ないんだ。いきなり命令口調で話すなんて無理だった。
電話越しにクスクスと笑い声聞こえる。何笑ってんだよ。
『……ふふ、安心して、真田君。今来た所よ』
「……は!?」
顔色を変えて玄関に走る。鍵を開けて扉を開けると、そこには櫻井の姿があった。
「来ちゃった……♡」
俺は手に持ったスマホを取り落として、困惑した。櫻井は笑みを深めると、俺のスマホを拾い上げてくれる。白いワンピースの胸元を、むっちりとした谷間を俺に見せつけてくる。
とりあえず櫻井を家にあげる。昨日と違って櫻井の服装は簡素なワンピース姿だったが、むしろ彼女の美しさを引き立たせるような装いは俺を緊張させるには十分だった。
櫻井は部屋に入ると俺に抱きついてきた。
「会いたかったよ、真田君……」
俺はまともに返答も出来ず、人形のように固まって櫻井に抱きつかれた。
石鹸のいい匂いと、外を歩いてきたからかホカホカした体温が感じ取れた。
俺は鼻の下が伸びるのを自覚しながら、櫻井を引き剥がす。
「ず、ずいぶん大荷物だな……?」
合宿でも行くのか、というくらい、櫻井は荷物を持ってきていた。リュックサックを背負い、その上に大きめのショルダーバッグをかけていた。手にはどこぞのスーパーで買ってきたのか、食い物が少々って感じだ。
櫻井はなんてことないように「泊まっていいよね?」と聞いてきた。
「……両親にはなんて?」
「加奈子……花城さんの家に泊まるって。あの子も話を合わせてくれるの」
そうやって俺にスマホの画面を見せる。トークの履歴は「花城加奈子」なる人物との、櫻井の両親を騙す会話が繰り広げられていた。
聞き覚えのある名前に、俺は首をかしげる。
「学長の娘か? 櫻井、仲良いのか……?」
「うん、よくお茶するよ……真田君も、あの子は嫌い?」
俺の表情を見て、櫻井はリュックを下ろしながら不安げにしていた。すぐに首を振って、「いいや、そうじゃない」と答える。
「あいつみんなに嫌われてるから、友達いるのが意外だっただけ。クラスも変わったし、今更興味もないから気にしたことはない」
「そうだよね、真田君はそういう人じゃないものね」
あからさまに安堵する櫻井を見て、どうやら仲は良いらしいとアタリをつける。花城加奈子と言えば、学校の中でも悪い噂しか聞かないような女だ。
二人の関係性について気にはなったが、それよりも目の前でたぷたぷおっぱいを揺らしながら荷解きをする櫻井に釘付けだった。え、揺れすぎじゃない?
「その、泊まるのは、えっと……」
「駄目なの?」
「いやいや、大歓迎なんだが……その、分かってるよな?」
俺は意味ありげに腰を突き出して股間を見せつける。櫻井は目をとろけさせて頷いた。
「でもその前に朝ごはんにしよう? 今作るね」
櫻井は手に持った食材を持ち上げると、キッチンに運んだ。ワンルーム故、キッチンというより玄関前の通路だが。
お前が作ってくれるのかと聞けば、櫻井は嬉しそうに頷いた。どうしてこいつ俺が朝飯頼む事を察知していたのか不思議だったが、以前俺が休みの日に誰か朝飯作ってくれないかなとボヤいていたのを覚えていたらしい。すげぇ記憶力。
ついでにブラジャーもしてないのかと聞いたら、それにも頷かれた。理由を聞いたら、どんな時でも俺に身体に触っていて欲しいからだそうだ。
「……どういうことだ?」
「真田君、男の子だからあんまりベタベタされるの嫌かなって。でもおっぱいあるならそっちからベタベタしてくるでしょ? ウィンウィンだと思って」
「お前の身体なら乳小さくても触りまくったと思うが……まぁそういう事なら」
自分の家のようにキッチンで動き回る櫻井の後ろに立つと、俺は遠慮なく手を回して双乳を揉みしだいた。おまけに狭いキッチンなので、必然的に俺はもっこりした股間を櫻井のケツに押し付ける形になった。
「あんっ……♡♡」
ワンピース越しとはいえブラジャー無しである。圧倒的な柔らかさに俺は鼻息を荒くしながら、時折思い出したかのように腰を擦り付ける。
櫻井は満足げに微笑むと、冷蔵庫を漁り始めた。
「……食材はある程度買ってきたけど、後で買い足さなきゃ駄目かなぁ、これ」
「最近ろくに買い物してないからな……荷物持ちなら手伝うぞ」
「うん、お願いしようかな……えへへ、夫婦みたいだね、私達」
「……まぁ、冷静に考えると櫻井とはこの後ずっと一緒に居る必要があるし、その内結婚するかぁ」
その瞬間、櫻井がズッコけた。左右に足を開いて、強かに顔をぶつけていた。
まだ火を使ってなかったので最悪の事態にはならなかったが、色々床に散らかしながら櫻井はそのまま呻きながらうつ伏せになっていて、かなり冷や汗ものだ。
幸いすぐに起き上がったが、それでも両手で顔を隠して肩を震わす櫻井に、俺は思わず素で心配する。
「だ、大丈夫か櫻井! 怪我してないか!?」
「……うん。うん、大丈夫……ちょっと、乙女心に刺さっただけだから……」
櫻井は生まれたての子鹿みたいにプルプルしながら立ち上がると、震える手で包丁を持った。
「はぁ……貸せよ、やるわ」
流石に見てられなかったので包丁を奪い取ると、そのまま適当に調理を始める。
「えへ、結婚……確定……ふへぇ」とか気持ち悪い事をぶつぶつ呟いてる櫻井をよそに、手持ちの食材で形になりそうな食材を手に取り、まとめて切り揃える。
櫻井には悪いが、この一人暮らし男子高校生が作り上げた残飯処理真拳奥義で我慢してもらおう。切って火を通して塩胡椒振って終わりって奴だ。
いい加減俺だってヤンキーに乳揉まされて以降催眠に集中しすぎてまともなモノを食べていないのだ。腹が減って仕方ない。ちょっと買ってきたばかりの食材がもったいない気もするが、手の込んだものを作るのは今の空腹度的に論外だ。櫻井には食材代は払うし、後で一緒にまた食材買いに行くっぽいから、まぁ良いだろうと勝手に納得する。
ズバズバと雑に食材を切っていく横で、櫻井が「真田君、料理も出来るんだ……素敵」とかアホみたいな事を言っていた。どんだけチョロいんだこいつ、昨日まで学年トップの頭いい女だったのに、今完全に馬鹿になってないか。不安だ、こいつ家で監禁した方がいいんじゃないか。外で問題起こされても困るし。
とはいえそんな事をすれば両親が必死になって探すだろうし、学校だって色々動くだろう。警察になんか知らされたらすぐ俺だってバレるだろう。
……それに、人の両親とはいえ、子供を誘拐して泣かせるってのは、今の俺にはキツイものがある。ようやく母さんと父さんが死んで一年って時だからな。
「真田君、申し訳ないからおっぱいだけでも味わって……♡」
「おお、背中におっぱいが……いやこれ邪魔だな。うざってぇ。俺はやっても良いけどお前は禁止。怪我するぞ」
「私のこと心配してくれるんだ……真田君、優しい……♡」
「いや、俺が怪我するぞって話だったんだが……まあいい。それより催眠で無理やり性格を変えたせいか、いまいちキャラが不安定だなお前」
皿に盛り付けながら、いっそのこと櫻井に協力してもらって設定を作り直すかと考え始めた俺だった。
ーーーーーーー
櫻井の手料理とかならまだしも、適当に炒めた男子料理に関しては味わう必要もないので適当にかき込んだ。櫻井のお世辞にもならない料理への褒め言葉を流しながら、これからどうするかと思案する。
いやもう、正直良心の呵責とかそういう類の罪悪感は無かった。俺は今、特にためらいもなく櫻井をレイプ出来る。
櫻井的にも……もちろん俺が催眠した櫻井だが、多分俺の事は受け入れてくれるだろう。そう命令したわけだし。
でも櫻井は怖くないのだろうか。櫻井は俺が催眠で何でもかんでも人に命令出来る事を知っているのだ。そんな男に好意を抱いている自分に、疑問は感じないのだろうか。
俺だったら変だなとか考えると思う。それともそんな思考が生まれないほど俺の事を好きになっているのか。
「そこら辺、どうなんだ櫻井?」
「……えっと、モノローグ聞いてる前提で聞かれても分からないよ?」
「だから、お前が考えてる事が実は俺の催眠のせいかも、とは考えないのかって聞いてるんだ」
「例えば?」
「そりゃ、その……俺の事が、好き、とか……?」
そんな恥ずかしそうに言われても、と流石の櫻井も苦笑していた。うるせぇ、犯すぞ。
「そうやって催眠したの、聞いてるよ。それでも私、真田君の事信じてるから。優しい人だって……今だって、私の事気遣って命令してるよね?」
「はぁ? お前俺がお前に何を命令したか全部教えたよな? それ聞いてもそう思うのか?」
裏切らない。
好きになる。
俺のやりたいことには協力する。
本人の意思とは関係なしにこの思考回路を埋めつけられて、忌避感を感じない人間はいないと思う。
だが、櫻井はそんな俺の考えに同意出来ないらしかった。
「だってそれ、殆ど私だよ。真田君の事、裏切ろうなんて思った事ないし、真田君がやりたい事に私が協力出来るならしてあげたい……それに私、真田君の事が大好きだもの♡」
「それはそういう命令をしたからだろ」
「そうかな……でも今はそういう事にしておいても良いけど、真田君はやっぱり優しいよ」
「何でだよ」
ここまでされて俺の事を優しいと評価できる櫻井の気が知れなかった。
櫻井美津子とは、つまるところ超人だ。美人だし、頭もいいし、コミュ力だってある。現にこんなにルックスに差がある俺とも何ら問題ないコミュニケーションを成立させている程だからだ。
そんな彼女が、俺を信用してくれる意味が分からなかった……いや、これも命令のせいか?
「真田君は多分、優しいから命令が下手なんだよね」
「何処がだよ……?」
「おまけに命令全部相手に教えちゃうし」と笑いながら、櫻井は近くにあった俺のノートを手に取ると、新しいページに箇条書きでごそごそと何やら書き始めた。
「私だったら、まずはねいつも一緒に居たいから真田君が家から出られないようにするかな」
櫻井は微笑みながら、ノートに「・家から出れなくする」と書いた。
「いやいや、初手から問題ありまくりだろ……」
「そうかな? 普通だよ。多分皆真田君の力を手に入れたら誰だってそうするよ?」
「そんな訳ないだろ……大体、学校とかどうするんだよ? 俺だって一応保護者はいるんだぜ?」
「みんな催眠しちゃえば良いのよ」
櫻井はなんて事ないように言い切った。
俺はあまりに淡々と被害者を増やそうとする櫻井に、背筋が凍った。
あっさりと恐ろしい事を言いやがる。
「それで、次に私に関する記憶以外の記憶を全部消すの」
「・記憶消去」の文字がノートに追加される。
「そんなヤンデレみたいな事するのか?」
「今の私はそんな事考えないけど、もし逆の立場なら間違いなく真田君を独占したいわね」
櫻井の言い方に引っかかった俺は、思わず口を挟む。
「その、今の私ってのは、つまり俺が他の女に手を出しても怒らないって事か……?」
「もちろん。真田君がしたい事なら手伝わせて♡ ……あ、誰かモノにしたい人でもいるの? 手伝う?」
「……いや、考えたこともなかった。櫻井だけで、良いかなって……」
「はうっ♡」とか呻いてジタバタし始めた櫻井を無視しながら、俺はそういう考え方もあるかと感心していた。学校にはまだまだ美人がいる訳だし、そういう奴らを片っ端から命令していくのもアリなのか。
……とそこまで考えて、仰向けになって恥ずかしそうに顔を隠す櫻井を見る。
Gカップ。黒髪ショート。美人。スタイル抜群。俺の事大好き。
こんだけの女が目の前にいて、目移りするなんてあるのだろうか。
「……もしかして、俺がこいつに催眠されてないか?」
そのくらい、俺は今こいつの身体に夢中だった。他の女なんか蚊ほども興味がわかない。
試しにスマホでグラビアでも検索してみる。適当に調べると「驚異のHカップ少女! 神崎まなか!!」の文字が目に入った。
特に惹かれたのでもないが、とりあえずクリックして画像を見てみると、そこには妖艶な笑みをたたえた美女が、爆乳を両手で押さえながらカメラ目線でポーズを決めていた。全然手が細くて、おっぱいが溢れそうだ。
こんなものを見ても、今の俺は……
「いや、普通に揉みてぇよ。なんだこいつ、乳でっか……」
櫻井のさっきの言葉を聞く感じ、俺が催眠された訳じゃないだろ。というかそんな事を考えていてもキリがない。
……しかしこれで高校一年生か。後で写真集でも探してみよう。
「……じーっ」
スマホから目線をあげると、胡散臭そうな目で櫻井が仰向けに俺を見上げていた。