貧乳フリーターがコンプレックスを克服するお話 作:Reno-レノ-
【挿絵表示】
21歳のフリーター。
両親は他界しており遺産を頼りに一人暮らししているが、親の遺したものをただ使うことを良しとせず、常に職を転々としている中で新薬の試験の募集広告に出会う
スリーサイズ 72-55-77
細身でありながら筋肉質であり、脂肪のつきづらい身体。故に貧乳。
貧乳が原因で泣きを見たことが多々あり、自身の身体へ強いコンプレックスを抱いている。
なお、モデル体型ではあるが自身の身体に対するコンプレックスが強すぎるためにファッションモデルなどの芸能界への挑戦はしていなかったが、内心では憧れがある。
「むむむむ…」
鏡の前で自分の身体を見つめながら身体の肉を胸元へ寄せ集め、そしてそれを押さえつけるようにブラジャーに入れていく。
バランスが崩れた形になればまたやり直す。それを1時間近く試みる。
「おっ…おぉ…?いいんじゃないか…?」
ようやく形になった努力の結晶とも言える胸の谷間を見て、期待しながらあらゆる角度から寄せ集めた胸を眺める。これでいい、ようやく見栄を張れると安堵して息を吐き、再び鏡を見ると、さっきまであった谷間は消失し、そこにあったのは平坦でなだらかな胸元を包むパッド入りのブラジャーであった。
「はぁ…太りにくいのはいいけど私にだって女らしい身体与えてくれたっていいじゃん神様…」
筋肉質かつ細身の身体。脂肪のつきづらい体質ゆえ、よく言えばスマートな体型をしているのだが、私にとって胸が平坦なのは克服したいコンプレックスであり、そして失敗を生んでいたものであった。
過去に合コンでラブホ前まで連れて行かれるところまでいったのにも関わらず、ひょんなことから胸元が相手の腕に当たった時にパッド入りであることと貧相な体型であることがバレ、現地解散になった時は相手を罵倒したくもなったが、虚栄心が働いていたこともあり顔を赤くして涙目で敗走する羽目になった。
胸に貴賤なし、巨乳も貧乳も良いものとSNSの書き込みでは見かけるが、その手の書き込みをしている人のお気に入りの書き込みを見ると大概巨乳のイラストやグラビアアイドルの写真集発売告知ばかりであることを彼女は知ってしまっていたためにその手の発言は薄っぺらいものにしか見えなかった。
「…はー……おっぱい大きくしたいなぁ…」
豊胸手術も一時期は考えた。しかしかかる費用と自身の身体に異物を入れる恐怖から断念した。
検索エンジンを起動し、単語登録した「おっぱい 巨乳 なる方法」で検索をかける。既にそのリンクを読んだことを示す紫色の文字列がずらりと並ぶ中、彼女の目に留まった青色のリンクが現れる
「新薬、サプリメント治験、高給、高待遇保証、あなたの応募が未来への第一歩…?」
新薬治験モニターの募集広告だが、目についた理由はその広告が検索履歴や閲覧履歴からおすすめされたものであり、その治験の中に「膨乳薬」の三文字があったことだった。
「膨乳薬…?膨乳って…文字だけ見たら胸を大きくする薬なのかな…?」
普通、胸というものは時間をかけて大きくなっていくものだ。その時間をすっ飛ばすのか、短くするのかはわからないが、頭の中で想像する膨乳薬のイメージは胸が急成長して、豊かな双丘が生まれる姿だった。
「…募集に必須なものは…全身がわかる画像を印刷した写真と…」
気がつけば募集要項を読み耽っていた。あくまで開発中の薬やサプリメントであるがために副作用の予測はつかないが故その治験を行う場所に住み込みで働くことになる。治験の内容の一切は社外秘であるというのも普通なら当然。
うまくいけばその広告塔としてメディア露出もあり得るという夢のある話。
「……。応募してみよう」
スマートフォンを取り出し、募集要項の中にあった電話番号をコールする
自身のコンプレックスを克服できるチャンスなのかもしれない。私にだって大きなおっぱいがあってもいいじゃないか。なんて思いながらコール音を聞いた。
ドクン、ドクンと、興味と緊張を示すように強い心音が身体の中から響いている。
『お電話ありがとうございます、セヴァル製薬採用部門の木戸でございます』
「あ、あの…ネットの治験の募集の広告を見てお電話させていただいたのですがまだ募集はされていますか…?」
その電話から私の世界は日向から、いかなる無法も許されるアンダーグラウンドに落ちていくことになることをこの時の私は考えもしなかった。