坂本さんとお竜さんが事務所で仲直りHする話。 作:FGO太郎
原作:Fate/
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坂本さんの優しいフェミニストさやお竜さんの無垢と健気さが伝わると嬉しいです。
机の上に溜まっていた書類をようやく片すと、万年筆のキャップに蓋をした。
「はあ...これで、なんとか明日までには間に合いそうだ」
そうして深い溜息を吐くと、カップの中に残っていた冷え切った紅茶を啜った。
「いやぁ参った。まさか締め切りが明日までだったなんて。すっかり忘れてたよ。ははーーー」
探偵業を頼んできた依頼人に渡す報告書や経費のまとめ、その他諸々の書類の山。それを、まとめて片付けていたのだった。
「リョーマ。だからお竜さんは、そういうのはこまめににやっておけと言ったんだぞ」
「はいはい、分かってますよ。でもね、こういうのは気が乗らない時は乗らないんだよ」
「ふん。そんなんだから、リョーマは稼ぎが悪いんだ」
嫌味を言われ、言い返せないまま言葉に詰まる。
「ま、まあ...これでやることは片付いたから当分は気が楽だ。おかげで今晩はゆっくり休めそうだ。はは......」
「なら、お竜さんは別に良いけどな」
掛け時計が鳴るので見てみれば、もう少しで夜の8時になるところだった。
「お竜さん、先にシャワーでも浴びて休んだらどうだい?流石にもう、今夜はお客さんは来ないだろうし」
「...ああ、そうする」
そうは言ったものの、ソファで寝そべったまま動かない相手に声をかける。
「...お竜さん、どうかしたのかい?」
「なあ、リョーマ。その...」
「なんだい?」
「もう...今日は何もやることとか無いんだよな?」
ちらりと、上目遣いでこちらを見てくる。
「うん、そうだね。何もないけど...それがどうかしたいかい?」
「なあ、リョーマ...」
「うん?」
「お竜さんな、その...たまにはリョーマに甘えたい......んだが、どうだ?」
「...え?」
思わぬ言葉に、龍馬は目を丸くする。
「リョーマ、最近は忙しそうだったからな。お竜さんは、お前の邪魔にならないように大人しくしてずっと待ってたんだ」
「え、ああ.....?そうだったのかい?」
黙ったまま頷く。
「でも、昨日も一昨日もその前も前の前も。先に寝てろとか、風呂入れとかしかリョーマは言わないから」
「そう、そうかぁ。それは、ぜんぜん気付かなかったなぁ...はは...」
ひどく間の抜けた声で返しながら頭をかく。
「リョーマがイヤなら、別に良い...」
あからさまにぷいと顔を背けて拗ねるのを見て、龍馬はようやく慌て始めた。
「いや、ちょっと待ってよ。ちょっと....いやぁ僕ね、本当に気が付かなかったんだ。だからごめん、謝るよ」
席を立つと、お竜の座るソファの横に座った。
「僕はね、お竜さんが退屈してるし疲れてると思ってたから。だからね、」
「だから、別に良いって言ってるだろ...」
顔を背けたまま拗ねる様子を見る。
「お竜さん、そうやって露骨に拗ねないでおくれよ。ねぇ?」
「...拗ねてない。ただ、眠いだけだ」
そうして無言のまま、時計の針の音だけが虚しく響く。
「...あのさぁ、お竜さん。僕が悪かったよ」
そう語りかけても何の反応もない。
「だからさぁ...機嫌直しておくれよ、ねえ」
「...今日のお竜さん屋さんはもう閉店した。また明日どうぞ」
頑なに背を向け続ける相手にどうしたら良いか分からず、龍馬は頭を掻く。
「ごめん。本当にごめんよ。謝るから、許しておくれよ。この通り、お願いだから...」
「...もう、閉店したって言ってるだろ」
「僕は何も用事は無いから。だから...こっち、おいでよ。ねえ?」
そう言うと、ちらりと様子を伺う。
「ね?」
「むう...」
「ほら、おいでよ」
若干不満さを顕にしながら、嬉しさを隠しきれない顔で側に寄ってきた。その様を見て、龍馬はまんざら悪い気はしなかった。
「ごめんよ。寂しい思いさせたね」
「別に。お竜さんは寂しいとかないぞ。お前の側に、居られれば良いしな」
そうは言いながらも、身体はぴったり張り付いている。
その様は、主人の不在中に寂しさを募らせた猫の様だ。猫にしては気位が高過ぎるし、下手をすれば引っ掛かれるだけでは済まない相手だ。長い髪を手梳いてやれば、気持ち良さそうに身体を伸ばす。
「ねぇ。今の僕はちょっと汗臭いだろうから、そんなとこ嗅ぐのはやめた方が良いんじゃないかな...」
季節は初夏。肌がうっすら汗ばんでいるのを思い出すと苦笑いする。
「そうか?リョーマの匂い、お竜さんは好きだぞ」
「え、ああ...そう?」
「なんか落ち着くぞ。お竜さんは好きだ」
「うーん、そうかぁ。有難うね?」
そうして匂いを嗅いで確認しては、自分の匂いを擦り付けるのが好きなようだった。
「もしかして、マーキングでもしてるのかい?」
「お前は色々な意味で質が良いからな。他の化生に目をつけられては困る」
「はは、僕は大丈夫だよ」
「大丈夫なものか。当のお前と来たら、自覚が無いから困るんだ」
れろ、と首筋を舐める。
「それに...あんまりお竜さんを放っておくと、愛想を尽かして本当に居なくなってしまうからな」
見据える目は爛々として、獲物を捕らえているようだった。普通の人間ならば震え上がるところを平気な顔をして口を開く。
「いや、それは困るよ」
「なんでだ?」
「僕は弱いからね。お竜さんが居ないと困るよ」
まるで、何でもないことのような笑いながら言った。そういうところが好ましくあるし、一番困ったところだと思いながら相手を見つめる。
「じゃあ、せいぜいしっかり手綱を握っておけよ。神様は気まぐれだからな。目を離したら、すぐ何処かに行ってしまうぞ」
「じゃあ、そうならないように努力するよ」
そう言いながら頭を撫でると、じいと見つめ合う。
人ならざる赤い目は、縦長の瞳孔がよく分かるほど開いている。
「ーーーお竜さんの瞳は、綺麗だね」
「そうか?」
「爛々として、曇りがなくて、まるで子供みたいだ」
「...リョーマの瞳の方が、澄んでいてずっと綺麗だぞ」
「そうかな?」
顔を覗き込んで、じいと見る。
「ヒトの子の目は、年を経るごとにあっという間にすぐ濁ってしまう。だのに、お前には未だにそれが無い」
「濁る?」
「そうだ。生まれたての赤子は等しく澱みない瞳をしているのに、肉が古くなる毎に濁る」
「へえ、そうなんだ」
「お前は、ずうっと赤ん坊のまんまだ」
「あんまり言われた事無いから、褒められると照れるね」
「別に褒めてないぞ」
そうして黙って見つめ合ったまま顔を近づけると、互いの鼻の頭をこつんと当てる。軽く擦り付けるようにすると、深く瞬きをした。
それが、二人だけの暗黙のルールだった。
「お竜さん。僕もさぁ...甘えたいんだけど良い?」
黙ったまま頷くのを確認すると、どちらともなく唇を重ねた。
※
膝の上に抱き寄せると、細い肩を手繰り寄せた。静かな室内に、微かに軋む音がする。
「ん、あっ...はぁ...っ」
互いの唇を啄むように、ゆっくりと口づけをする。無意識のうちに気が急いているのか、心なしか息が荒い。酸素を取り込む為に口を離すと、唾液が糸を引いてソファの上につうと垂れた。それを見ながら、口を開く。
「お竜さん、その...ここじゃソファが硬いし...ほら、寝室に行こうか?」
その言葉を遮るように、また唇を塞ぐ。一分一秒も待てないし離れたくない。そう言うかのように求め続ける。抱きしめれば折れてしまいそうにか細い腰を捩らせながら、必死に自分を求める姿に龍馬は思わず劣情を覚える。
「...駄目だよ。もしも誰か来たら、今の僕らが何してるか丸見えだ」
「どうして?見られたら、何かマズいのか?」
「それは...まあ、」
「なんでだ?」
「それは...」
答えられない質問に躊躇する相手の手を奪うと、ぐいと胸に押し当てる。ぐにゃりとした、柔らかな感触が手袋越しに伝わる。否が応でも、服の下にあるものを想像せざるおえない。
「...リョーマ」
「な、なんだい?」
「お竜さんはな、お前のものなんだ。だからな、もっとお前の好きにして良いんだ」
「へ?」
「メチャクチャにして、良いんだからな?」
小声で耳元で囁かれ、頭に熱が篭る。
「お竜さん。女の子が...そういうこと言っちゃいけないよ?」
「なんでだ?」
「確かに、お竜さんは僕の宝具だけど...別にそれだけじゃあないからね?」
「リョーマだって、可愛いお竜さんとイチャイチャしたくないのか」
「えっ、あのねぇ...でも、そりゃあ...」
「じゃあ、良いだろ?別に、誰に見られたって」
「いや、まずいよ。困るよ、その...」
スラックスの下でうっすらと張り詰めたものが、早く中に挿入りたいと硬くなり始めるのを感じる。
「お竜さんはな、早くお前が欲しい」
「え?」
「お前が好きなんだ、リョーマ。なあ、良いだろ?リョーマ...」
まるで、子猫が出すような甘ったるい声。だが獲物を舐る捕食者のようでもある。それらが入り混じった声色は、怪しく耳と身体に響く。
「あのさぁ...一体どこで、そういう台詞を覚えてくるんだい」
ニヤニヤと笑いながら、お竜は龍馬の耳を舌先で舐る。ここが弱いことは、もうとっくに知られている。
「リョーマの耳たぶは、柔っこくて可愛いな。このまま食ってしまいたい」
「や、駄目だよ、困るって」
「良いじゃないか一つくらい。せっかく二つもあるんだ。お竜さんに、一個くれ」
「駄目だよ、いかんって。それ...」
はむ、と甘噛みされうっかり声が漏れる。快楽に弱いわけではないが、感覚には人一倍鋭敏だ。
「お竜さん、悪ふざけしないで。僕の言うこと、ちゃんと聞いておくれよ...」
「ん?ちゃんと聞いてるぞ?」
そう言いながら、細い舌で丁寧に丁寧に舐る。その度に、背骨に走るものがある。必死に抗うにも限度がある。もう隅々まで知ってしまった、彼女の肌の感触が脳に蘇る。
ーーー早く、挿入したい。
しかし、まだ有り余る理性がそうはさせなかった。執拗な愛撫に耐えると急に立ち上がり、玄関の方に向かった。事務所のドアにかけてある「営業中」の札を下げ、ガチャンと鍵をかける。そうして戻ってくると、ソファに取り残されたお竜をひょいと担ぐ。
「いいから、こっちおいで」
かつかつと足早に歩くと廊下の奥にある寝室のドアを開いた。寝る時と同じ様に、固く施錠した。
そうして、担いでいた相手をベッドの端に座らせると、はあと溜息を吐いた。
「お前にしては、珍しく手荒いな」
「...お竜さん、ああいうのはね。本当に困るよ。その...ちゃんと、僕の言うこと聞いてくれなきゃね?」
「何でだ?交合いなんか、どこでしたって同じだろう?」
「ま...!?いや、同じじゃないろう?その、あそこじゃあ、匂いとか色々篭るから後が困るし、その」
「なら、窓を開けてすれば良い。風が涼しくて気持ち良いぞ」
「は...?いやいや、誰かに声を聞かれたら嫌だし困る。頼むからね、もう少し僕の言うことをだね、って聞いてる?」
そんな話しを全く聞かずに、さっさとスカーフを外そうとしている手を止める。
「リョーマ、何遍も言うがな。お前の話はつまらない上に長いんだ」
「ま、待ってよ。お竜さん」
「ん?なんだ?」
「その...たまには僕が脱がせたいから。だから...」
「だから、なんだ?早く言え、リョーマ」
ぎろりと睨まれると、ようやく口を開く。
「それ、解くの...僕にやらせてよ」
そう言うと、セーラー服のスカーフを丁寧に紐解いていく。
「ふぅ...」
「なんだか、今日のリョーマの手つきはやらしいな」
「そんなことないよ」
「でも、脱いでしまって良いのか?人間は、服を来たまま交尾するのが興奮するんだろ?」
「そういう人も、まあ、世の中には居るんじゃないかな...」
苦笑いしながら答える。
「じゃあ、リョーマは?これ、興奮するのか?」
プリーツのスカートの端を、軽く摘まみ上げる。
「どうだ?興奮するか?」
「あのねぇ、お竜さんにこれを着させてるのは...表向き探偵をやってる便宜上便利だからであって」
「ベンギジョー?」
「そう。だから、別に僕はそういう趣味じゃないからね?」
「じゃあお前はこれ、興奮しないのか?」
そう言われ、言葉に詰まる。
興奮しない、と言えば嘘になる。質素な黒いセーラー服の下に収まっているのは、自分しか知らない素肌。艶めかしく真っ白い肢体だ。
「どうなんだ?なあ?」
スカートをたくし上げると、長い足が露わになる。
「そうやって、無闇に煽らないでくれるかな。今の僕は、あまり余裕がないんだ」
下着の中で、痛い程に張り詰めているものを自分で自覚する。その部分を服の上からつうとなぞりながら、お竜は意地悪く微笑む。
「こら、女の子がそういうことしたらいかんって」
「余裕が無い時のリョーマの顔、お竜さんは割と好きだぞ」
触るたびにびくびくとするそれを、愛おしそうに撫でる。
「まるで蛇に睨まれた蛙だ。可愛い、食ってしまいたくなる」
「駄目だって...」
「すごい、熱くなってるな。それに、ちょっと臭う」
既に先走ったものが先端から出て、下着の中を汚している感覚はある。それに気付いて、かあと顔が熱くなる。
「しょうがないだろう、僕だって男なんだ...」
「ふうん」
意味深そうに言う。
「...リョーマはちゃんと、お竜さんで興奮してくれるんだな」
「そりゃあ、当たり前だよ」
「...ふぅん」
そうして首にぎゅうと抱きつかれる。
「え、ああ...もう、なんだい?」
「お竜さん、嬉しいぞ。苦労して、良い女に化けてる甲斐がある」
「...うん、そいつは良かった」
ぎゅうと抱き返せば、柔らかな胸がしっかりと身体に当たる。いよいよ我慢が効かなくなる。甘えてくれるのは嬉しい。だが、紳士的に振る舞えるのにも限度がある。首に絡まった腕を優しく引き剥がすと、自分の膝の上に座らせるように促す。
「お竜さん。ここ、座って」
プリーツスカートの中に隠されていた長い足がよ露わになる。そうして鮮やかな紅色をしたタイツを下にずらすと、下着が露わになる。
後ろから抱きかかえるようにすると、浅い溝になったあたりを軽く指で撫でる。すると、うっすらと湿り気を帯びているのが手袋越しにも分かる。
(濡れてる。ちゃんと、感じてるんだ...)
些細なことだが、一抹の安堵を覚えた。
手袋の先を口で咥えると、乱雑に一気に外した。一枚は床に落ちたが、後で拾えば良いと気にも止めなかった。そうして剥き出しになった指で、既に濡れ始めた裂け目に沿ってゆっくり愛撫していく。
つうと撫でたり、突起のあたりをとんとんと軽く突く。その度に、腕の中に収まった細い身体をびくりとさせるのが分かった。後ろからでは表情は読み取れないが、小さく漏れる声はひどくか弱く、吐息は今にも消えそうに儚げだった。
(息、荒くなってきたな...)
空いた方の手を服の中に入れると、うっすら汗ばんだ柔らかな肌に触れる。服の上からもよく分かる、形の良い胸が自分の手に揉まれて歪む。先端部分を指で軽く摘むと、びくりと小さく跳ねた。
「...お竜さん、気持ち良いかい?」
耳元で囁いても、お竜は腕の中で身を委ねたまま何も答えはしない。
そこで薄布の中で撫でるだけだった指を、ゆっくりと一本だけ入れる。
「んっ...」
「痛かったら、言ってね?」
いつもならば肌はひんやり冷たいのに、こういう時の肌は少しだけ熱を帯びる。足の付け根の奥にある裂け目は、熱くびくびくと動いている。指を軽く出し入れするだけで、あっという間に湿り気を帯びていく。くちゅくちゅと淫らな音を立てながら丁寧に、かき混ぜるように指を出し入れする。
「ふぅ...んっ......」
中を愛撫する度に、漏らす声が次第に甘ったるく卑猥なものになっていく。なんだかそれがいじらしくて、更に指を入れる。
「あっ...リョーマ、それ...駄目だ...やっ...」
まるで、赦しを乞うように甘い声を出す。
いよいよ我慢が出来なくなり、相手の腰のあたりに己をの硬くなったものを無意識に擦り付けていることに気付く。まるで犬か何かだなと自嘲しながら、次第に柔くなった中の奥へ奥へと指を掻き入れる。弄っている中の様子と同じように、蕩けていく相手につい意地悪もしたくなる。
「お竜さん...何が駄目なのか、ちゃんと教えてよ」
「リョーマの指が...奥に当たると、体が跳ねる」
「うん」
「それで...なんだか、頭がぐるぐるしてくる」
「うん...」
そうして龍馬の長い中指はあっという間に奥に辿り着き、お竜を哭かせるのに一番良い場所を探り当てる。
「あっ...そこは...ダメだ...気が、変になる」
「お竜さん、ここが一番気持ち良いんだよね」
「違うぞ、なんか...怖い...」
押し寄せる快楽の波が怖いのか、浮かせた腰をぐいと押さえつける。
そうして、大丈夫だからと優しくなだめる。微かに震える身体を指でかき混ぜる度に吐息は次第に早く、荒くなり、細い身体を微かに捩らせる。
「ふぅっ...ん...やっ...」
口元を手で押さえているからか、ひどくくぐもった声がする。その仕草が、なんだかひどくいじらしく思え、つい虐めてしまいたい程可愛らしく見えた。先程の仕返しに、お竜の耳を軽く食んだ。
「ひぅっ...!な、何するんだ、リョーマ...!」
びくりとしながら中がきゅうとなり、指を締め付けたのが分かる。
「ふ..あ...ぁあ...っ!」
自分がされたように溝に沿って丁寧に舌先に嬲れば、どんどんと甘ったるい声を出し、指を入れた裂け目の締め付けを更にきつくした。
「リョーマ!あんまり...それ、やるな...!本当に...変になる...!」
「さっきの仕返しじゃ」
「馬鹿、やめろって...!」
「お竜さんも、耳弱いんだね。知らなかったよ」
「違う、お竜さんは...!弱くない...弱くなんか、ないぞ...」
徐々に小さく震える声を聞いて、少しだけ意地悪をしたくなってしまう。
「じゃあ、これは?」
「っ...!やっ...ひゃう...っ!」
強めに耳の端を噛むと、お竜は達してしまったようだった。
可愛いらしい口を半開きにして、びくびくと足を痙攣させている。
中から生温い水が滴って、手をぐっしょり濡らしているのが分かる。
「あ...あぁ...」
「...気持ち、良かった?」
そう尋ねるが、答えはない。
「ねぇ、お竜さん。どうだった?」
「...馬鹿、お前、何するんだ...馬鹿、馬鹿リョーマ!」
「え?」
「お竜さん、こんな...おしっこ漏らすなんて。恥ずかしくて、死んでしまいたい」
「いや、おしっこじゃないし。死んじゃ駄目だよ」
挿れていた指についたものを、ぺろりと軽く舐めとる。
「馬鹿、舐めるな!そんなの...汚いだろ!」
「え?汚くないよ。全然が
「リョーマがそんなヘンタイなんて、お竜さんは割とショックだぞ...」
「僕は変態じゃないよ。それに、好きな女の子のものを汚いなんて思わないよ」
「あ...あぁ...もう、馬鹿だな。本当に...」
顔を赤くしながら、恥ずかしそうにして震えている。上着を脱ぎながら言う。
「良いじゃないか。僕たち、耳が弱いなんてお揃いだね」
お竜が自分の手で達したのが嬉しいのか、龍馬はいつになく機嫌が良かった。
「リョーマ、お前...変なことで喜ぶな...本当に...人間は、よく分からないな...」
呆れながら、まだ痙攣している身体のままで吐き捨てるように呟いた。
※
達したばかりの身体を気遣って横に寝転ばせると、すっかり紅潮して潤んだ目をしたお竜に口づけをする。桜色の唇は仄かに甘く、いつまでも吸い付いていたくなるように柔らかい。こじ開けた口の中は熱く、舌が蕩けそうになる。
部屋の中は、互いの息の漏れ出す音しか聞こえない。ちらりと時計を見る。日付が変わるまで、まだ時間はありそうだった。その横顔を、不満そうに軽く叩く。
「リョーマ、よそ見なんかするな。こういう時くらい、お竜さんだけをちゃんと見ろ」
「え、ああ、ごめんよ...」
「もう仕事は片付いたんだ。今夜くらい、時間は気にしなくって良いだろ?」
関心を取られて悔しいのか、身を乗り出して唇を塞ぐ。
「ん...はぁ...」
「ごめん...そう、怒らないでよ」
お竜は龍馬に乗りかかるようにして上に重なった。いつも感じない重さを感じて嬉しくなる。
いつもはふわふわと漂うこの身体を、早く自分に繋ぎ止めてしまいたくなる。
「リョーマ...」
そうして馬乗りになったまま、また互いの口を求め合った。
とろとろとした生温い唾液が互いの口内で混ざり合う。ぬめぬめとした舌を絡める度に、張り詰めたものが早く出たいと急かすように痛む。
繋いだ手に、ぎゅうと力が入る。
「はぁ...、熱いな...身体が溶けそうだ」
「お竜さん...」
「リョーマ。なあ...そろそろ、その...お前のものが欲しい」
待ち切れないのか、赤らんだ顔で求めてくる姿が愛おしい。
「もう孕まないのに、欲しくなるのかい?」
「だって、リョーマが教えてくれたんだろう?」
何も知らなかった彼女に、一つ一つ身体に刻むように行為を重ねていったのは他ならぬ自分だった。
「リョーマに繋がると、すごく気持ち良いんだ...早く、お竜さんは気持ち良くなりたい....」
「リョーマも、お竜さんが欲しくなるのか?」
「うん。僕も...お竜さんが欲しいよ」
珍しく、恥ずかしげもなく口にした欲望に我ながら驚く。
一枚一枚、丁寧に衣服を剥いでいく。こんなに露わになった肌を見られるのは、きっと自分だけの特権だと龍馬は思う。
剥き出しになった胸をそっと触る。
乳房を包むように手のひらに収めると、つんと上を向いた先端を弄る。
「リョーマ、やっぱり触り方やらしい...」
「今日のお竜さんだって、まさか僕としたくて拗ねるなんて...随分といやらしくなっちゃったから驚いたよ」
「リョーマはやらしいお竜さん、嫌いか....?」
「いいや、可愛いよ。すごく」
「そ、そうか....なら、良かった...」
最初は恥じらいなどまるで無かったというのに。
再び口づけをすると、そこから下を丁寧に口で愛撫する。シミ一つない白い肌は普段はひんやりとしているが、仄かに熱を帯びた今はやや紅潮して薄桃色をしていた。先程まで、指で丁寧に愛撫していた裂け目を舌で舐る。唾液で潤す必要も無いほどに潤っているのを確認すると、おもむろにベルトを外した。
「ふぅ...」
張り詰めていたものは、履いていた下着の中をしっかり汚していた。ねっとりとした不快感に眉を顰める。硬くなったものを下着から取り出すが、中に入れるにはまだ足りない。
このままでは、上手く中に入らないかもしれない。
蕩けた様にこちらを見る表情と紅潮した肌を見ながら手で軽くしごく度に、無意識に口元から「はぁ...」と息が漏れた。
「リョーマ。あんまり、ジロジロ見るな...恥ずかしい」
「綺麗だよ、すごく」
お竜は、龍馬の手の中で扱かれているものをじいっと見る。既に先端からは透明なものがつうと垂れており、卑猥な臭いをさせていた。
「すごい、ニオイするな...」
「ごめん。お竜さん、鼻が良いからね...我慢して。もうちょっと...まってて...」
早く勃たせようと焦る。が、久しぶりの行為を前にして緊張でもしているのか。なかなか思うようにいかないことに焦り始める。
「...なあ、リョーマ」
「な、なんだい?」
「それ...だらだら垂れてばかりで勿体ないから、舐めたい。良いか?」
「...え!?」
しかめ面をしながら、思わず大きな声をあげてしまう。
「...だ、駄目だよ。こんなの」
「何でだ?リョーマだってお竜さんのを舐めただろ?お竜さんだって...リョーマのを舐めたい」
見れば、珍しく真面目な顔をしている。
いつもならば「何言ってるんだい」と切り返す口が、熱に浮かされた頭で上手く働かない。
「なあ、良いだろ?ちょっとくらい。なあ?」
「だ、駄目だよ。汚いし、こんなの」
「じゃあ、お竜さんのは汚くないのか?」
「お竜さんは...汚くなんかないよ」
嘘ではないが、今はあまり声高に言うことではない。気を取り直すと頭を撫でて諭す。
「...今度ね、そういうのは...また今度」
口元が、引き攣るように歪む。今の敏感な状態で口に含まれたら、達するには数分と持たない。それを回避する為に口から出たのは、牽制するものではなくよりにもよって無意識に期待している言葉だった。
(お竜さんが...僕のものを口に?そんなの...冗談じゃない)
そうは言っても、つい頭で想像してしまう。
白く細細い指が、浅黒い性器の血管の浮いたところに優しく触れる。彼女の柔らかな唇が、敏感になっている先端に触れる。ちろちろと細い舌で丁寧に鈴口のあたりを舐る。溢れてくるものを、愛おしそうにちゅうちゅうと吸い取る。そうして暖かい口の中に入れ、舌の先で一生懸命に舐るーーー。ひどくたどたどしい拙い仕草だ。覚えたての動作で自分を悦ばせようとする相手の頭を撫でると、目を細めて嬉しそうに笑う。硬くなったものの根元を手で摩りながら、舌先で根元から舐る。小さな口でだらだらと垂れてくるものを飲み込みながら「早く、お前の精が欲しい」と、ひどく艶のある声で強請る。本当は、こんなことさせたくない。だが快楽は正直だ。浮かせた腰は喉奥に当たる度にびくりと反応する。あわてて抜こうとするが、よりにもよって出してしまう。苦しそうにして、咳き込みながら涙目になる。口から垂れた白濁液を、健気に必死に飲みこもうとする。嗜虐心からではなく、罪悪感からぞわりとする。
それを思ううちに、手の中に収めていた性器がようやく硬度を増す。
「そろそろ、良いかな...」
そうしてその先端を持つと、お竜の足の間の裂け目にぴたりと充てがう。その入り口は愛しい男を受け入れようとし、早く早くと急かすように、ひくひくとしているのを感じる。
「リョーマ...早く、なあ...?」
「うん、分かってる」
「早く、お前が欲しいんだ...リョーマ...」
濡れた瞳と、赤らんだ顔で乞う。それに応える為に口を開く。
「僕も...お竜さんが欲しい。だから、入れて良いかい?」
先端を軽く入り口に押し当てながら、相手の許可を乞う。紅潮した顔と瞳は潤んでいて、今にも泣きそうな顔をしている。そうして黙ったまま頷くのを確認すると、ぴたりと当てた先端をゆっくりと中に沈めていく。
「んっ......」
ずぶり、ずぶりと、内部を裂くように入っていく。丁寧に中を指でほぐしたとは言え、疲れた身で久しぶりの情事はかなり身に堪える。お竜の中は蕩けるように暖かく、びくびくと動いては龍馬の陰茎の射精を早く早くと促すようだった。
「は...入ったの、分かる...?」
恐る恐る尋ねながら腰を動かす。
久しぶりの中はきつく、少し動いただけで出てしまいそうになる。
「ああ...んっ...分かる...リョーマァ...」
「そう、なら良かった...」
「リョーマの、中でびくびくしてる...」
はあはあと、小さく息を荒げながら答える。
「うん...お竜さんの中、気持ちえいから...」
「リョーマのは、すごく...熱いな...んっ...」
そうして、軽く二、三度出し入れしただけで思わず出してしまいそうになるのを必死に堪える。
「リョーマ、お前...苦しいのか?」
「いや、大丈夫だよ...」
「そうか、なら...良いけどな...んっ...」
そう言って、そっと頰を撫でる手を啄むように口付けをする。彼女のこういうところが、愛おしくてたまらないのだ。さっきまで強気な女王様のように自分を弄んでいたというのに、今はまるで無力な乙女のように身を委ねて己が身を優しく案じる。こんな表情と声を、きっと他の誰も知りようがない。龍馬の中に、普段抑えている独占欲と奇妙な優越感が湧き上がる。
今にも出してしまいそうな敏感なものを、先っぽだけ浅く出し入れする。
ぬちゃぬちゃと、音が響く。
「んっ...」
「...お竜さん、確か入り口が弱いんだよね」
「やぁっ...だ、だめだ...」
入れたばかりの痛みと気持ち良さの間で、泣きそうになっている顔を見る。
「お竜さん、気持ち良い?」
「う、あぁ...ん...」
「お竜さん、僕の上に乗れる?」
「ん、ああ。分かった...」
腰にかけての曲線のラインに見惚れる。そうして細い腰を掴むと、一気に下から打ち付けた。
それを何回も何回も繰り返す。いつもと違う、荒々しい抱き方にお竜はやや困惑する。
「あっ、あっ、あっ...」
「ごめん、今日は、こう...したい気分なんだ...」
「んっ...あぁっ...構わない...お前の好きに、して...あっ」
奥までぎっちりと入れると、先端が子宮の入り口にこつんと当たるのが分かる。
例え今抱いている身体が魔力で編まれた作り物だとしても、確かな感触をして存在しているこのまま、こじ開けてしまいたい。そうして中に注いで精を満たしてやっても、決して何も孕まないのは龍馬はよく分かっている。それでも、真っさらで無垢な彼女の中身を自分の精で白く汚してしまいたかった。汚して犯していっぱいにしてしまいたかった。
その行為に意味は無くとも、彼女を中から自分で満たすことに意義はあった。そうすればーーー多少なりとも報われると思った。
「リョーマ...それ、もっと...欲しい...」
「え?」
「お前が...こんなに求めてくれて...嬉しい...だから...んっ...」
感じているのか、もっともっとと急かすように身体を押し付けてくる。
「リョーマの、もっと欲しい...お前と繋がると、ふわふわしてなんだか気持ち良いし...お竜さん、すごく幸せだ...」
蕩けた声で言われ、顔が熱くなる。
「もっと、お前の...好きにして良いんだぞ。遠慮、なんかするな...お竜さんは頑丈だから...乱暴に扱っても、全然...平気だ...」
突く度に、苦しそうにする顔を見る。
「そいたぁことは、出来んがよ...」
「...リョーマ、リョーマ、」
「なんだい?」
「リョーマ、なあ...人間がよく言う『愛してる』って、どういう気分なんだ?」
「...そうだな。胸が苦しくって、切なくてたまらなくて...今にも死にそう、みたいな感じかな。どうして?」
「じゃあ、お竜さんは...今がきっと愛してるなんだろうな...」
出したい、早く彼女の中に出したい。
口には出せない下卑たこと思いながら、強く腰を打ち付ける。次第に息も荒くなり、下腹部が痛んでくる。射精が近いのを感じる。中できゅうきゅうと締め付けられ、これ以上耐えくるのは無理だと限界を悟る。
「ふぁ...あっ...はぁっ...!」
「お竜さん、ごめ、ん...もう、出すよ...。でも、良い、よね?」
消え入りそうな声で囁く。
意味は無いとは分かっていても、なるべく奥の方で一気に精を放った。
「んっ...あぁっ、やぁ...っ!」
「はぁっ...はぁ...」
流石に出したばかりは息が上がり、鼓動も早くなる。
ゆっくりと抜いた裂け目からは、自分が吐き出したものと血が入り混じったものが足伝いにつう流れていく。その様を、ぼうっとしながら見つめるしかなかった。
少し休んだ後、ぐったりしたお竜に覆い被さるようにして口づけをする。
「リョーマ...これ、好きだな...」
「なんだか...してる時はすごくしたくなっちゃうんだよね...」
「お竜さんも、嫌いじゃない。でも、なんかくすぐったいな」
「そいつは...良かったよ...」
普段抑えている反動だろうか。
一度求め始めるとスイッチが入るのか、際限なく相手を舐ってしまう癖があった。空いた手で胸を揉みしだきながら、相手の気持ち良い場所を探った。
「お竜さんも、これ好きだ...」
ちゅうと唇を吸えば同じように軽く啄ばみ返す。舌を入れれば、同じように舌を入れてくる。まるで鳥の雛が親の後を追うように同じことを繰り返す。それが、愛おしくて仕方がない。
「リョーマ、お竜さんが好きか?」
「そりゃあ、好いちゅうよ...」
普段ならば言えないようなことを、平気で口走る。熱に浮かされた頭と気持ち良さを知った身体は、食事に物足りない獣のように相手の唇を貪りあった。
「お竜さんも、リョーマが好きだ。大好きだからな?」
「うん、知っちゅうよ。よぉく分かっちょる...」
我ながら、傲慢な答え方だとは思う。だが、それ以外に答えようがなかった。
「世界で一番、いいや、世界なんかいっそ滅ぼしてもしまっても良い。それ位、リョーマが好きなんだ」
「うん...」
「だから、リョーマも...それ位お竜さんを好きになってくれたら嬉しい」
「ははぁ、そいたぁ...」
何を、口籠る必要があるのだろう。
愛してると囁いてて、優しく抱きしめれば良い。だが、それは出来なかった。相手は、文字通り身を捨てて自分に尽くしてくれる。こうして身体も重ねて、骨の髄まで愛してくれる。それの、一体何が不満なのか?いや、不満なのではない。ただただ、申し訳ないのだ。
「そうだね...僕は...」
自分には目の前の愛しい女よりも、例えそれを欲していたとしても何に変えても守らなくてはならないものがある。それだけは、どうしても嘘は付けない。理性は服と一緒に床に脱ぎ捨てられたが、生真面目さを剥ぐことは出来なかった。
「...だから、それは...」
龍馬は、その問いには答えられなかった。
「すまん...また、お前を困らせたな」
「違うよ、そうじゃなくて」
「言っただろう?お竜さんは...お前の側に居られれば、それで充分幸せなんだ...」
「...お竜さん」
ならば、どうしてそんな悲しそうな顔をしているのか。今にも泣きそうな顔をしているのか。決まっている。愛した男が身も心も捧げてしまったのは、途方もないものだと分かっているからだ。
「リョーマ、愛してるぞ」
ぎゅうと身体を抱きしめてくれる相手に、胸を痛める。そうして、痛める胸がまだあったことに驚く。自分なんぞを愛して居なければ、彼女は死ぬことなど無かっただろうに。
それを考えると、我が身の業の深さにただただ嘆くしかなかった。だから、今だけはそれを忘れたかった。浅はかな欲と熱に溺れてしまいたかった。
唇を塞ぐと行き場のない感情のまま舌で口の中を舐った。すると、同じように舐ってくる。まるで、食事のようだと思った。事実、本当に食われているようなものだから仕方ない。気持ちとは裏腹に、下半身はまた熱を持ち始めていく。
※
後ろから突く度に、形の良い胸が小さく揺れる。長さ的に、臍の少し上まで入っているのだろうか。熱に浮かされた頭で、ぼんやりと考えながらがつがつと突く。
お竜の方はもう余裕が無いのか、さっきから一言も話してはいない。
「お竜さん、大丈夫かい?」
「ん、ああ...お竜さんのことは...気にするな...んっ...!お前が、気持ち良いなら...お竜さんは嬉し...い...から」
いつもなら、もうとっくに行為をやめてしまっている。だが、今日に限っては何かもやもやした気持ちが晴れない。それを晴らすかのように、彼女の中に既に何度か精を吐き出している。それでも、何故かすっきりはしない。
硬いもので、ずっと内臓をかき乱されているようなものだ。気持ち良さなどとっくに過ぎて、快楽を長引かせたい自分の我儘に付き合わせいることにようやく気付く。
「...ごめん、今夜はもうやめよう。今、抜くから」
そうして身体をずらそうとすると拒まれる。
「お竜さん?」
「だ、だめ...リョーマがちゃんと、お竜さんで気持ち良くなってくれないと、その、困る...」
「駄目だよ。ここ、もう痛いんだろ?」
自分のものが中に入っている、白い腹を優しく撫でる。
「痛い、が...お前が気持ち良くなった方が嬉しい。それに」
「...それに?」
「痛いくらいの傷が無いと、身体だけでもお前に愛されたことを、きっと忘れてしまう...」
思わず、息を飲んだ。
「そんな悲しいこと、言わないでよ。僕は、君を、ちゃんと」
ちゃんと、何だと言うのかーーー。
言葉は、一向に出てこない。
「良いんだ...よく分かってる。お竜さんはな、そういう甘っちょろいリョーマが好きなんだ」
「分かってないよ、僕は、ちゃんと」
君を愛してると、どうして言えないのか。目の奥が、ひどく熱い。こみ上げるものがある。黙ったままそれに耐えていると、相手が口を開いた。
「お竜さんはーーーお前の全部が欲しい。お前の、血も肉も魂も、欠片すら誰にも渡したくない」
「ああ...」
「でも、お前の全部は、お竜さんには呉れられないだろう?」
それは、今にも消え入りそうな声だった。
「それは...」
「お前を食ってしまって、その業から解き放てられるなら喜んでそれをやる...」
「...う、うん」
「だがお前の全ては...もうお前のものですらない。 だから、せめて身体だけでも、お竜さんがいっぱい気持ち良くしてやりたい。だから...痛いのなんか全然平気だ」
そうして、ぎゅうと抱きしめられると涙が溢れそうになる。
「リョーマ、泣くな。お竜さん、お前が泣くと困る」
「ごめん、情けないないな。いよいよ、愛想を尽かされちゃうね」
「ーーー馬鹿だな。泣き虫でも、情けなくても、リョーマはいつだってお竜さんの一番だからな」
「お竜さん...」
「ずっとずっと一番だし、ずっとずっと一緒にだし、ずっとずぅっと守ってやるからな」
無邪気に、まるで子供の願い事の言う。
「だから、頼むから泣くな」
舌で涙を拭うと、頬ずりした。
※
湯船にお湯を張りながら、ぼうっと水面を見る。大の大人が、よりにもよって閨で泣くなど恥ずかしいにも程がある。龍馬は気を取り直すと、口を開いた。
「お竜さん、お風呂にお湯を張ったからおいで」
すると、ベッドの上で布にくるまっていた身体を起こしてやってきた。浴室に入ってくるのを手を引くと、湯船の淵に座らせ足を開かせた。
開いた足の付け根からは、先程吐き出されたばかりの精液がどろりと溢れ出た。赤くなった裂け目にゆっくりと指を入れる。
「んっ...リョーマ。それ...ちょっと、痛い」
「ごめん、少しだけ我慢して」
彼女の中に吐き出した精を指で軽く掻き出すと、お湯をかけて丁寧に洗っていく。
「別に...もう孕まないんだから。こんなことしなくて良いのに」
「今日は、いっぱい出しちゃったからね。こんなのがお腹に入ったままじゃ、お竜さんも気持ち悪いだろ?」
指で掻き出す度に、中から止めどなく溢れてくる。どれだけ出したのか、我ながら呆れる。そうして、掻き出して指に付いたものを洗い、流れ落ちていくものを見る。
「これで、綺麗になったから大丈夫」
「お前の精なら、多少なりとも力になるのに.,」
「それなら、ちゃんと魔力を回してるから必要ないだろう?」
「そういうことじゃない」
不満そうにする相手をなだめる。
「お竜さんの中に、僕が吐き出したものが入ったままなのは嫌なんだよ...」
「じゃあ、中でなく外に出せば良いだろ。どうしてそうしないんだ?」
正論を言われ、思わず言葉に詰まる。中で出すのが気持ち良いから我慢出来なかったとは、口が裂けても言えない。熱に浮かされまま欲望のまま精液をびゅくびゅくと注ぐだけ注いで、正気になれば汚いから洗うと。我ながらひどく身勝手だと自嘲する。
「ごめん、次からは...そうするよ」
「別に良い。中に出されるの、お竜さんは嫌いじゃない」
「なんでだい?」
「身体の中から、お前を感じられるから」
そう言われて、耳まで熱くなるのを感じる。
「身体も、洗うからね」
汗と二人の体液が混じりあってしまってついた匂いを落とす。割れ物を扱うように、丁寧に隅々まで洗う。
「くすぐったい」
「我慢して」
「リョーマって、変なとこマメだよな...」
「僕はお竜さんが大切だし...ちゃんと大事にしたいんだよ」
今更好きとか愛してるとか、決まり切った言葉では表せないし言えなかった。自分の為に地獄の道行きを選んで着いて来たのだ。変わり果てた自分を生きていた頃と変わらず、それ以上に愛してくれる。
もうこれ以上、何も言うことはない。
湯船に入り、洗いたての身体を抱き寄せるとようやくため息を吐いた。
「はあ...」
「リョーマ、疲れたのか?」
「流石に、ちょっと眠いかな」
「なあ、リョーマ。今日は裸のまま寝よう」
「え?」
「それで、昼過ぎまで布団を被ったまま一緒にゴロゴロするんだ。野良猫みたいに。きっと、楽しいし気持ち良いぞ」
まるで、何も知らない無垢な子供のように言う。
「...それ位なら、良いよ」
「本当か?」
「ただし、昼過ぎまでは駄目だよ。午後には人に会う予定があるからね」
「...リョーマって、本当そういうとこつまんないよな」
「はいはい、つまらなくって結構ですよ」
呑気な声が、狭い浴室内にエコーした。
※
流石に素っ裸のまま寝かせるには抵抗があったので、仕方なく脱いだシャツを羽織らせるとその横に寝そべった。
「お竜さんーーーすごく、眠い」
「...今夜は、少し無理させたからね。ゆっくりおやすみよ」
申し訳なさから苦笑いをすると、ぎゅうと抱きついてくる。
「リョーマ。今日は...いっぱい交尾してくれて、お竜さん嬉しかったぞ」
「う、うん。なら、良かったよ」
猫の様に甘える頭を撫でながら、今夜の事を思い返して龍馬は照れ臭くなり口籠る。
「何回も言うが、お竜さんは...お前と一緒に居られるならなんだって幸せなんだからな?」
「うん、分かっちゅうよ」
「だから...あんまり小難しいことなんか、考えるな...お竜さんは、お前よりずっと単純なんだ...だから...」
「うん...」
「だからな...うん、だから......」
「うん?」
「だから...お竜さんは......」
徐々に言葉が小さくなり途切れて聞こえなくなり、やがて寝息に変わった。
「...お竜さん、寝ちゃった?」
すうすうと寝息を立てて、寝ているのを確認する。その寝顔はひどくあどけなく、年相応の少女に見える。いくら口調は蓮っ葉だろうと、中身は純粋で世間知らずなままだ。
何せ、こんな自分なんかついてきてしまうのだからーーー。
何一つ、出会った時から変わらない。
自分への愛も、何もかも。そんな彼女に、自分は一体何を与えられると言うのか。龍馬は深く溜息を吐くと、部屋の明かりを消した。そうして髪をかきあげると、お竜の額にキスをした。離れないようにきつく抱き寄せると、髪に顔を埋めた。
「僕はね、君に愛想を尽かされたらどうしようって...本当は怖くて堪らないんだよ。何があっても、僕にとっては君は一番大事な女の子なんだ。だから、その...これからも一緒に居ておくれ。好きだよ、お竜さん....」
こんな簡単なことが、普段は気恥ずかしくてとても言えない。
寝息を立てているのを確認して、龍馬はようやく瞼を閉じた。