※この作品はR-18です。

聖剣ほったらかし伝説   作:一条和馬

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アンジェラ王女はえっちがしたい!~1~
【1】【2】


【これまでのあらすじ】

 

 魔力の源【マナ】が溢れる世界で魔法王国と呼ばれる程に魔法文明が栄えた雪国【アルテナ】

 

 しかしそのマナが衰え始めた時、アルテナは他国への武力侵攻を画策。魔法が使えなくなれば国として機能しなくなるという危惧からである。無謀とも言える宣戦布告だったが、作戦を提唱した【紅蓮の魔導師】曰く、各国の領地に存在する魔石【マナストーン】の力を解放し【マナの聖域】という場所に収められた伝説の剣【マナの剣】を手に入れれば、全てが解決するという。

 

 そして、マナストーンの解放の為には禁断の古代呪法を使用しないといけないのだが、アルテナのトップの魔法使いであり統治者でもある【理の女王】が人柱として選んだのは何と、一人娘である【アンジェラ】だった。アルテナ随一の魔法使いたる王族の血を引きながら魔法が一切使えなかった彼女を「一族の汚点」と言い切った理の女王はアンジェラの命と引き換えにマナストーンを解放するように迫るが、直後にアンジェラは内なる魔力を暴走させて発動した転移魔法でアルテナを脱出する。

 

一国の王女が一夜にして反逆者として追われる身になったのだが、旅の途中で謎の【フェアリー】に取りつかれる。時を同じくして国を焼かれ、連れ去られた弟を探す風の国【ローラント】の王女【リース】と出会い、アンジェラは同道する事になるのだが、教えを乞う為に訪れた【聖都ウェンデル】にて、フェアリーに憑りつかれた者……即ち【選ばれし者】としてマナの剣を抜き、世界を救う使命を言い渡されるのだった。

 

 最初は渋るアンジェラだったが「アルテナの女王もマナの剣を狙っているなら、出し抜くことが出来れば見返せるかも?」というフェアリーの言葉に半ばヤケクソに乗り、手始めに【聖域へのトビラ】を開く為、各地の八つのマナストーンを守護する精霊達の力を借りるための旅を始めるアンジェラとリース。

 

 早速光の精霊を見つけるものの、ウェンデルへと侵攻しようとしていた獣人の国【ビーストキングダム】のビースト兵に捕まった二人。だが、隣の牢に捕まっていた戦士【デュラン】の助けもあって脱出に成功し、二人の経緯を聞いたデュランも同道を願い出る。彼の出身国は草原の国【フォルセナ】と呼ばれる平和な国であったが、アルテナの紅蓮の魔導師により大打撃を受けたのだという。デュランはフォルセナ国内の若者の中では一番腕の立つ戦士であったが、紅蓮の魔導師に手も足も出なかった事を悔やみ、限界を超えた力を手にする事が出来る【クラスチェンジ】を求めて武者修行に出たばかりだという。

 

 旅の中で第二の精霊、土の精霊を仲間にした一行はフォルセナの【英雄王】の提案で海を渡る為に港のある商業都市【バイゼル】へと立ち寄ったのだが、そこで事件は起こった。

 

 ここまで長々と説明するのに尺を使ったので端的に話そう。

 

 路銀が尽きたのだ。

 

 

【1】

 

 

「ちょっと! お金が無いってどういう事よ!?」

「おかしいですね……。フォルセナを出た時には十二分にあった筈なんですけど……」

 

 

 バイゼルの宿屋で借りた個室。その中央に置かれた丸テーブルを囲みながら頭を悩ませていたのはアンジェラとリースの二人だった。

 

 しかし、ここで美女二人に物申す男が一人。

 

 

「どう考えてもお前らの金遣いが荒い」

 

 

 デュランだった。額に血管を浮かばせた彼の後ろには、今にもはじけ飛びそうな程に膨れ上がった大きなリュックが見える。

 

 

「俺達は世界を救う旅の途中な訳だ、アンジェラ王女」

「そうね」

 

 

 普段は『王女』と呼ばないのに、わざわざ王女呼びを強調するデュラン。彼は続ける。

 

 

「リース王女も、この広い世界から弟さんを探すという目的があるよな?」

「勿論、片時も忘れた事はありません」

「オーケー。皆の想いが一つなのは分かった。だが一つだけ言わせてくれアンジェラ、リース…………そんな旅をするのに大量の化粧品や衣服はいらねぇよなぁ!?」

 

 

 商業都市という名を冠するだけあって、東西様々な国から物品が届くバイゼルは、物を売る側にとっても激戦区だ。当然、自分の商品を買ってもらおうとあの手この手の謳い文句で購買意欲を掻き立てる訳で。

 

 

「この化粧水、【灼熱の砂漠】の日差しからもお肌を守ってくれるっていうのよ!? 乙女にとって日焼けがどれ程天敵なのかアンタには分からないでしょうけど!」

「長旅になるのですから着替えは重要だと思いますが、やっぱり一か月分は多かったですか……?」

「一か月分!! これが! お前等にとっては一か月分の着替えなのか!?」

 

 

 アンジェラは完全に無視してリースの言葉に反応するデュラン。彼が指さした先にあったのは高級な生地をふんだんに使用した、旅装束の中でも最も高級なそれだっだ。一着でも半年は着続けられるし、二着用意して洗い変えながら使用すれば数年は保つというそれを、合計十五着。

 

 

「お前達は毎日違う服を着るつもりなのか!?」

「これでも妥協したんですけど……」

「何よ、アンタは違う訳? っていうか、そもそも英雄王様もケチよね。一万ルクしかくれないなんて、フォルセナってそんなに切羽詰まった状況なの?」

 

 

 王女二人と庶民一人。

 

 生活様式から金銭感覚に至るまで、何もかもに雲泥の差が開いていたのだ。

 

 そしてその細かい説明をするのに一晩かかり、不幸な事に定期便を逃してしまう。

 

 次の目的地である風の国ローラント行きの船が出るのは一週間後。それまで一週間宿を借りれば、それこそ所持金は底を突き、船にすら乗れないだろう。

 

 

「悪かったわね、お城暮らしのボンボンで。私だって本当は出たくなかったわよ」

「分かってくれればそれでいいんだ。……それに幸いにもこのバイゼルには【ブラックマーケット】がある。必要最低限……本当に最低限な物を残して売りに出せば、元通りとは行かずとも旅を続けられるだけの軍資金は確保できるだろ」

「ブラックマーケットですか……閃きました」

 

 

 今後の為の資金繰りを考えていたデュランだが、それを制したのはリースだった。

 

 

「私が身体で稼いできます」

「はぁ……はぁ!?」

「?」

 

 

 意気揚々と何を言いだすのかと思えば、本当に何を言いだすのだろうかこの王女様は?

 

 しかし、いやらしい妄想が一瞬過ったデュランの思考はすぐに冷静になる。

 

 リースは確かに王女だが、同時にローラントが最強の王国と謳われる理由の一つであるアマゾネス軍のリーダーでもあるのだ。当然、槍の腕前であれば彼女の右に出るものはそうそういないだろう。

 

 幸いと言えばいいのか、アンジェラはデュランが驚いた理由に見当がついていない様子だった。邪な思考を振り払い、彼は頷きながら会話を進める。

 

 

「なるほど。モンスター退治の依頼を受けるんだな」

「えぇ。私の槍捌きを以てすれば、男性の股間のモンスターなんて数秒でマナの聖域送りですよ」

「ごめん聞き間違えたかも。もう一回聞いていい???」

「他にマナの聖域に行く方法があるの!?」

 

 

 『人間社会って大変なのね』と会議の初っ端から抜け出してベッドで一人寝息を立てていたフェアリーがその言葉に反応し飛び起きる。彼女は今、盛大に間違っているとデュランは指摘しようとしたがリースの言葉によって遮られた。

 

 

「今のは言葉の綾なので聖域へは行けませんが、短期間で効率的にお金を稼ぐ方法があるんです。……そうだ! フェアリーさんが協力してくれれば私一人よりいっぱいお金を集められるかもしれません!」

「私は戦闘ではからっきしで皆には迷惑かけっぱなしだからね……私に出来る事ならなんでもするよリース!」

「では早速ブラックマーケットに行きましょう。それではアンジェラさん、デュランさん。次の船が出る一週間後には最高級ホテルに一年宿泊しても困らない程度には稼いでくるので、その間ここでゆっくりしていてください」

「ねぇ? それって私も行った方が良いんじゃ」

 

 ない? と聞こうとしたアンジェラだが、その言葉が出る前にリースはアンジェラの口を手で塞いだ。

 

 

「もがもが……」

「……アンジェラさん。穢れるのは、私一人だけでいいんですよ……」

「ちょっと待ってリースなんで私は勘定されてないのっていうか穢れるってまさか待って待ってタンマストップ私やっぱり遠慮するよこれでも神聖な存在なので純潔を守らないといけないというかあっあああ羽を引っ張らないで! 嫌だ! 無理無理無理よ絶対無理なんだから!」

「大丈夫です。すぐ気持ち良くなります」

「いやあああああぁあぁあああ助けてえええええ!」

 

 

 世界一精強な部隊のトップの怪力で掴まれたフェアリーは必死に抗うも、結局成す術なく夜のブラックマーケットへと消えていった。

 

【2】

 

「ちぇ。つまんないの」

 

 

 宿屋に取り残される形となったアンジェラとデュランの二人。リース(とフェアリー)の出陣から一時間も経たずにアンジェラは部屋に籠るのが飽きたようで、異性であるデュランが目の前だというのも気にせずベッドの上でうつ伏せに寝転び、両足をパタパタと動かしながら読書に興じていた。アンジェラは現在母国アルテナから追い出された際に来ていた赤いドレスを身にまとっているのだが、まるでハイレグの様な衣装から伸びる生足と時折見えるお尻が、年頃のデュランにとっては正しく目の毒だった。

 

 

「ねぇ? リースがどんな方法でお金稼ぎしてるのか、気にならない?」

「ならないな」

 

 

 嘘である。

 

彼は数分前に用を足しに部屋を出た際、うっかり聞いてしまったのだ。『ブラックマーケットの真ん中でお触りOKストリップショーを開いて荒稼ぎする痴女がいる』と。珍しい妖精も一緒だと聞いて、デュランは半裸のリースが妖艶な笑みを浮かべながら男達を誘惑する姿を想像した。何故容易に想像出来たかは定かではないが、なんというか、彼女にはそれを容易に想像させる貫禄の様なものがあったのだ。

 

 

「ちょっと覗くだけでもダメかしら」

「ダメだ。絶対ダメ」

「ぶー。……後で一人で行こうとしてもダメだかんね?」

「そんな訳ないだろ」

 

 

 嘘である。

 

内心めっちゃ見たいと思っているデュランだった。アンジェラが飽きて寝てくれれば一目散にブラックマーケットに向かうつもりなのだが、文句を垂れるばかりで一向に寝る気配はない。

 

 

「明日も早いぞ」

「どうせ一週間やる事ないんでしょ?」

「子どもみたいに駄々をこねるな」

「私の方がお姉さんなんですけど?」

「……」

 

 

 生まれてこの方剣術のみで生きて来たデュランにとって、勉強の機会に恵まれたアンジェラに口で勝てる道理がなかった。こうなれば根気で勝負だと無言でアンジェラを見つめる作戦に出るデュランだが、そうするとどうしても魅惑の生足に目線がいってしまう。

 

 

「……エッチ」

「ちがっ、違う!」

 

 

 流石にバレたので慌てて視線を外すデュラン。しかし上ずった声で反応してしまったのが原因で、更にアンジェラに付け入る隙を与えてしまう。読みかけの本をベッド脇の棚に置き、上半身を捻ってデュランの方に向き直るアンジェラ。

 

 

「あらあら~? ムッツリスケベなデュラン君は何が気になるのかしら~?」

「ムッツリじゃないし!」

「じゃあ、こんな事しても問題ないわよね?」

 

 

 そう言いながら立ち上がったアンジェラはわざとらしく下半身を左右に揺らしながら歩み寄ると、そのままデュランが腰かけていたベッドの隣に座った。

 

 

「ち、近いぞアンジェラっ」

「こんな事で動揺してたら、紅蓮の魔導師と戦ういざって時に冷静になれないんじゃない?」

「ぐっ……!」

 

 

 その名前を出されては、デュランとしては意地を見せるしかなかった。そんな彼の心中を知ってか知らずか、アンジェラは更に両足を組んで見せる。肉付きのよいむっちりとした太ももがベッドともう片方の太ももに挟まれ、ぐにゃりとその形を変えた。

 

 

「……」

「……」

 

 

 ニヤニヤ顔のアンジェラに見つめられ段々と焦りを隠せなくなるデュラン。今は世界滅亡の危機を回避するべく志を同じくした仲間。しかし国外追放の身といえどアンジェラは王族だ。その王族にホイホイ手を出してしまえばどうなるか等、恐ろしくて考えたくもない。何か気を紛らわせるいい方法はないかと視線と思考を高速回転させていたデュランは、先程までアンジェラが読んでいた本という助け舟と邂逅する。

 

 

「なぁ、アンジェラ」

「なにかしら?」

「さっきまで読んでた本、借りていいか?」

「あぁ、あれ? 私のじゃなくてリースのだけど、汚さなきゃ大丈夫じゃない?」

「そうさせてもらおうかな」

 

 

 普段本なんて絶対読まないデュランだが、今回ばかりは読書に逃げる事になんの抵抗もなかった。

この本はデュランが合流した時からリースが大事に抱えていたモノだ。随分読み込まれているらしく、革の装丁の題名は掠れており辛うじて『アマゾネス』『108』『指南書』の文字が読み取れるのみだった。

 

 

「アマゾネス……108……指南書……ローラントの戦闘指南書か?」

 

 

 流石王女兼武人であるリースは普段からの心が前も違うな、と感心したデュランはボロボロになるほど読み返された形跡のある装丁をめくる。そこにはすり切れていたタイトルの全文が掲載されていた。

 

 

『アマゾネス必見! 男をメロメロにする108のエッチなテクニック指南書/著・ミネルバ』

 

 

「なんじゃこりゃ!?」

「あっ! こら投げちゃダメじゃない!!」

 

 

 思っていたのと180度違うタイトルに仰天したデュランが思わず本を投げ捨てるが、アンジェラが慌ててキャッチする。

 

 

「この本、リースのお母様の著書で大事な宝物の一つらしいのよ!? もし破れでもしたら殺されかねないわ!!」

「そんな本破れた方がマシだ! っていうかリースはいつも涼しい顔してこんなの読んでたのか!?」

 

 

 これからはリースの挙動に気を付けないとなと思ったデュランだが、そこではたと気が付く。

 

 ついさっきまで、アンジェラはこの本を読んでいたのでは?

 

 

「……何か言いたい事でもあるのかしら?」

「……アンジェラ。お前さっきまでこれを読んでおぅわぁ!?」

 

 

 言い終わるより先に、デュランはアンジェラの突進を受けてベッドに倒れ込んでしまった。

 

 

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