※この作品はR-18です。

亡国機業は壊滅しました。   作:張三李四

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文字数が少し増えてしまいまして、休日1日だけでは書き終わりませんでした。



セシリア・オルコット《5》【布仏本音】

 

 

「おーい、来てやったぞー。先輩を敬えー」

 

 学食へ向かおうとマキが席を立つと、扉がひとりでに開いて、元気の良い声が響いた。

 リボンを外してしまっている少女、ダリル・ケイシー。もうひとりは小柄で黄色のリボンを身に着けている。ブルネットを三つ編みにした、少し目つきが鋭い女子だった。

 

「行くぞ」

 

 マキを含めたクラスメイトたちが目を瞬かせているうちに、篠ノ之箒が一夏の腕をつかんで引っぱっていく。

 

「…………行っちゃった」

 

 マドカが側に寄ってきた。彼女も箒の交友関係に興味津々らしく、少し興奮した様子だった。

 

「…………問題です。ちっちゃい方の先輩は誰でしょう」

「え…………誰?」

「フォルテ・サファイア、です。ギリシャ人の代表候補生だよ?」

 

 マドカが呆れたような表情(かお)になる。

 もう少し勉強したほうが良いよ、と言われたような気がした。

 

「頭を使ったらお腹すいた。御印マキは燃料を欲しています」

 

 マキは腹をさすりながら学食へ向かった。

 食事中、会話の合間に箒の様子を窺ったが、彼女は隙を見せない。それどころか、放課後、織斑一夏を訓練すると言い出すのが聞こえた。

 

(放課後は手続きに行きたい。……………………戻ったら考えよう)

 

 マキはうずく下半身をスカートの上から押さえつけた。

 五限目。傾聴して集中する。授業が終わり、燃え尽き、机に突っ伏していた。HRは抜け殻になっていて、疲労のあまり夢の中にいた。

 

「御印さん」

 

 少女が言って、ロングの黒髪を揺らす。

 

「むにゃ…………?」マキが顔をあげる。

 

 国津玲美だった。「大丈夫?」と心配そうに見ている。

 国津はカバンから一枚の紙を取り出した。マキは机の中から同じ紙を取りだして置いた。

 

「ちゃんと書いてあるね」

「もちろん、そのつもりだったし」

 

 弓道部への入部申込書である。席を立ち、マドカへと顔を向け、ひと言断っておく。

 

「んじゃ、あとで」

「ん!」マドカは高級シャープペンシル(メカニカルペンシル)を持ち上げて同意を示した。

 国津と連れだって弓道場へ向かう。練習しているであろう部長か、もし顧問の先生がいれば渡してしまおうと思った。

 弓道場には顧問の先生がいた。部員が先生を前まで連れてきた。

 

「国津玲美、御印マキ、二名の入部届をしかと預かりました」

 

 マキは国津と互いに目を見合わせる。袴姿の女性は淡い金髪碧眼だった。

 

(え、日本人じゃない?)

 

「驚いてますね。私はルーシー・エンズ。スコットランド人です。洋弓部と弓道部の顧問を兼任し、授業では射撃術教導員を務めています。歓迎します。ようこそ、弓道部へ」

「よ、よろしくお願いします」「お願いしまーす」

「早速、ふたりには更衣室や設備の説明をします。ついてきてください」

 

 ルーシー・エンズは更衣室や道場の施設、ルールを説明して回った。ルーシーは新しいロッカーを発注する、と言い、倉庫に向かい貸し出せそうな弓具を見繕った。

 

「部員として練習を始めるのは来週からです。それまでは仮入部扱いです。来週の火曜日に弓具店が来ます。発注したいものがあれば、そのときまでに考えておいてください」

 

 マキと国津は彼女に礼を言って、弓道部を辞した。

 帰寮する道中、国津がカバンをまさぐる。目を丸くして、「あっ」と声を上げた。

 

「教科書置きっぱなし…………」

 

 明日の授業に使うものだ。国津は一般入試を突破した才媛だが、IS学園の授業は予復習を怠ると、あっという間に置いて行かれる。明日授業前に…………と軽く考えることはできなかった。

 

「わたしも行くよ」マキが言う。

「ごめんねっ」

 

 目的の教科書は机のなかにあった。安堵する国津と共に廊下を歩く。部屋の名称を示す表札を通り過ぎていくうちに、ある部屋の前で足を止めた。

 

「特別相談室…………?」

 

 マキは後ろを振り返った。生徒指導室とは別だ。

 よく見れば、表札の隅に小さく「生徒会」と書かれている。視線を下ろせば、引き戸の横に立て看板があって、LED電飾によって悪目立ちしていた。

 

「見るからに怪しいっ…………」マキは電飾から目をそらす。

「……だよねっ」

 

 だが、好奇心が勝って少しだけ引き戸を開ける。室内をのぞき見ようと顔を近づけた時、ニュッ、と白い布が伸びてマキの腕を掴んでいた。

 

「ヒイイイっ!!」マキは恐怖におののく。

 

 引き戸が全開になり、丸み帯びた物体に引きずりこまれる。マキの制服の裾をつかんで助けようとした国津も、手を掴まれて無理矢理引き入れられてしまった。

 マキは前のめりになって転びそうになる。来客者用と思しき黒いソファーの背につかまって事なきを得た。

 引き戸がピシャリと閉まった。

 

「お客さん、ご入場おーーーーんんん!!」

 

 少女の声である。犬耳つきのカチューシャをつけた怪しい人物で、眼鏡を掛けた女主人の前にマキたちを押し出す。

 

「生徒会特設相談室にようこそ! お姉ちゃんっ♪ 生け贄(いけにえ)の子羊ちゃんたちだよっ♪」

 

 怪しい人物に「姉」と呼ばれた女はこめかみを押さえた。

 

「本音。もう少し、やり方というものを考えなさい」

「ええ~~~~手段は問わないって、お姉ちゃん、さっき、言ったよね~~~~」

 

 怪しい人物は犬耳カチューシャを取って、山羊角カチューシャに付け替えて角度を調整している。

 

(い、生け贄って今、言ったよね???)

 

 マキはふたりのやりとりを凝視する。胸がドキドキした。

 

「へへへ…………お困りのことはありませんか? 何でもご相談ください、生徒会が治(・)外(・)法(・)権(・)を発揮して強引に解決しちゃうよ~~~~」

 

 怪しい人物の目がヤバイ。いけないハーブをキメているのか、グルグルしていた。

 

「相談してくんないと、入会ノルマがこなせなくて困っちゃうんだっ♪ さもないと、クゥッッキイイイイ…………ハァーブゥゥゥゥ…………トリックアンドトリートォォォォ…………って呪っちゃうぞ~~~~♪」

 

 マキと国津は後ずさる。眼鏡の女主人の背後に後光が差していて表情が見えず、正直怖い。

 女主人が席を立ち、陰に入るとようやく全貌がわかる。制服を身に着け、カチューシャで前髪を上げた、優しそうな顔つきのお姉さんだった。

 

「あなたたち一年生? 寮で困ってることはない? 電灯が切れてる。とか、ルームメイトのいびきがうるさい、とかそんな話でいいの」

「そ、それくらいなら…………」国津が震えながら言った。

 

 再び顔を見合わせる。

 

(困ってること。確かにある。だけど、………………理由を話さなくちゃいけなくなる……………………)

 

 マキは国津を見つめ、彼女が前を向いて話し出す。

 

「あ、あの、いびきじゃ、ないんだけど、いいですか?」

 

 女主人が微笑む。

 

「いいですよ。ささ、ソファーに座ってください。…………本音。お茶を」

 

 お茶が出されるのを待ちながら、ソファーに座る。

 女主人が自己紹介する。

 

「申し遅れました。私は布仏(のほとけ)虚(うつほ)と申します。生徒会の会計です。そこの丸っこいモンスターはサバトで召喚した悪魔ではなく、妹の本音です」

「あ、どうも、私は一年の国津玲美です…………のほとけ?」「同じクラスの御印マキと言います…………のほとけって?」国津とマキが顔を見合わせる。

「そだよ。同じクラスだよ」本音が頬を膨らませた。

 

 国津が深呼吸をしてから話し出した。

 

「あの、私、一昨日の入学式前日から寮に入りました。せ、先輩はルームメイトと共同生活で困ったことってありますよね」

「いびきがうるさいとか? 一時、私も睡眠不足に陥って困り果てた経験がありますね」

「私の部屋は四人部屋で、私と、鷺ノ宮アユム、セシリア・オルコットと彼女のメイド?で生活しているのですが、そのオルコットさんが」

「お茶でーす。昆布茶の粉末があったので使っちゃったけどいーですよね~~~~♪」本音が引っ込む。

「国津さん、続けて」

「その、セシリア・オルコットさんが、ひとりで部屋の半分以上を占拠しちゃってるんです。鷺ノ宮さんと私、困ってて」

 

 マキは目を瞬かせた。鷺ノ宮は今まで国津と同室だと口にしたことはなかった。確かに、少し親しげに話していたので、そういうことかと納得する。

 

「占拠。セシリア・オルコットさんにその話をしたのですか?」

「彼女のメイドさんに言いました。オルコットさんはベッドを持ち込んでいて、『ベッドの体積が大きいのは仕方の無いことですわ』と取り合ってくれません」

「ふむ…………寮は備え付けのベッドを使う前提ですから…………一度、どういう状況か見ておく必要がありますね」

「やったーーー! 現地調査だーーー!!」

 

 本音がマキを押し退け、国津の隣に強引に座った。

 

「お姉ちゃん。現地調査行きたい! 国津さんは同じクラスなんだし、私が調査するのは必然だよ! じゃあ、行ってくるね! ばいばーーーい!!」

「ちょ、ちょっと…………」

 

 本音が国津を急かしたて、手をにぎって生徒会特設相談室から姿を消してしまった。

 残されたマキはソファーに座り直し、昆布茶をすすった。

 

「辛っ」

 

 茶を見れば、溶けきらぬ粉末が大量に底に沈んでいた。

 湯のみを置き、前を向く。布仏虚が申し訳なさそうに微笑んでいる。

 

「ごめんなさいね。あの子、聞かないから」

「いいえ、そんなことは」

「一年一組、御印マキさん、だっけ?」

 

 髪をかきあげ、身を乗り出す。下着で固定した大きな膨らみが近づいてきて、マキの視線が釘付けになる。虚は手を伸ばして、マキの片目蓋に触れた。

 

「瞳(め)、どうしたの?」

「瞳(め)、ですか………………!?」

 

 マキは咄嗟に手鏡を取り出す。

 

(早すぎる!! コンタクトは………………!)

 

 鏡に白く濁った瞳が映っていた。

 

「ここに来たときは、黒かったのに、今は、濁りが見えてる。それが気になって、…………ね」

 

 心臓が脈打つ。驚いたときのドキドキを妙な感覚だと勘違いしたのか。マキは子宮からせり上がる感覚に戸惑った。

 

(ダメダメダメ………………ぁ………………やばぁ…………)

 

 瞳をトロンとさせて、スカートを押さえつける。ドクンドクン、と精が漏れ出し、下着を汚してしまった。

 

(うそっ…………なんにもしてないのに、出ちゃったよぅ………………)

 

 下を向いて頬を赤らめる。下半身は射精(だ)してもなお、元気だ。

 

「………………顔が赤い。熱でもあるの?」

「ち、…………違いますっ…………うぁ」虚が顔を近づけ、額同士を触れあわせた。

 

 コツン、という音が響いたとき、虚の豊かな胸元がマキのささやかな胸部と触れあった。

 

(ひぃっ………………!!)

 

 またしても射精(だ)してしまった。興奮しすぎて、肌の接触だけで射精(イ)ってしまう。虚(うつほ)の身体からマキを発情させ、射精させてしまうほどのフェロモン(生理活性物質)が分泌されているのだろう。

 

(ヤバっ、…………逝き死ぬ! これ以上、この人に触れられたら、死んじゃうっ、ホントに!!)

 

「? 大丈夫ですか」

 

 吐息が頬にかかる。ビクッ、ビクッ、と背筋が痙攣した。

 

(下着ベトベトぉ…………うぅぅ…………ここにいちゃだめだ…………)

 

「…………すみません。帰ります」

「そう? ゆっくりしていってもいいのよ。放課後、私はここにいることが多いから、何かあったらまた来てね」

「はい………………ありがとうございます…………」

 

 逃げるように生徒会特設相談室を後にした。

 

 

↓

↓

↓

 

 夕食後、マキは学習室にいた。

 空席を探していると、四人掛けの席に一人だけ座っている場所が合った。

 

「相席、失礼します」

「ああ」

 

 女のはす向かいに座る。席にいたのは、鷺ノ宮だった。彼女は難しそうな書物、タブレット端末を二枚、ラップトップ(ノートPC)と計算紙を広げている。

 計算紙には鷺ノ宮の母国語と思しき文字が殴り書かれていた。

 鷺ノ宮が視線を上げる。

 

「勉強に来たのか。偉いな」

「意外そうに言うっ…………」

 

 マキが持ってきた教科書とノートを広げる。一日の予習と復習だ。

 

「アユムの、量多くない?」

「仕事。重装騎馬(カタクラフト)から固有装備を取り外すための、設定値を決めてるところ」

「ふうん…………社会人って面倒そう」

「レールに乗ってるうちは、案外学校より楽だよ」鷺ノ宮がラップトップに視線を移す。

「レール、かぁ…………」

 

 マキのレールは外れて、どんどん暴走してしまっている。

 シャープペンシルを走らせ、自分の片瞳の下目蓋をなぞる。IS学園に来てから濁りが活性化している。

 

「御印。片瞳の状態は?」

「………………良くない。…………したくて、したくて、したくて」

 

 鷺ノ宮はマキの身体がどうなっているか、把握している。予防する術と鎮め方、取り除き方を探っているのだ。

 

「明後日、ソリッドⅢを動かす。悪いが、部活には行けないものと思ってくれ」

「アレを?」

 

 マキが実(・)質(・)占有している訓練機だ。量産機にも拘わらず乗り手を選ぶ。ソリッドⅢには乗るのをためらわせる大きな問題があって誰も乗りたがらない。

 

「わかった。予定をあける」

「明後日放課後、一緒にアリーナへ」

 

 拳を作ってコツン、と拳同士を触れあわせる。

 三十分ほど経過したとき、声を掛けてくる者がいた。

 

「相席いーですかー」「鷺ノ宮さん、御印さん。一緒していい?」

 

 布仏本音と国津玲美だ。本音はオーバーサイズのビッグスウェットを着ている。国津はパジャマだが、可愛らしい感じだった。

 

「いーよー」「どうぞ」マキと鷺ノ宮が答えた。

 

 本音が鷺ノ宮の隣に、国津がマキの隣に座った。

 

「………………あの後、調査したの?」マキが本音に話しかけた。

「そ。聞いて、聞いて」本音は小声で喋った。

 

 スマートフォンを置き、画面を点灯する。天蓋付きベッドが映し出された。

 

「調査結果だよ。セシリア・オルコットさんはクイーンサイズのベッドを使ってましたー。豪華な調度品つき。ベッドはふかふかでバインバインしてたよー♪」

「バインバイン?」画面が上下に揺れていて、国津の慌てた声が録音されていた。

「メイドさんの許可を取ったから大丈夫ー」

「メイドさん?」

「そ。セシリア・オルコットさんは特例で侍従(メイド)つきで入学したVIPさんでーす。何でも寄付がなんとかかんとか」

「VIP…………。授業寝てたよ?」マキが目撃証言を口にする。

 

 本音がニヤッと笑った。

 

「VIPだからね~~~~」

 

 とはいうものの、騒がしさで先生が気づかなかった可能性のほうが濃厚だ。

 

「ふぅん……で、本人には会ったの?」

 

 本音が首を振った。

 

「オルコットさんはジョギングに行ったらしくって、会えなかった~~」

「オルコットさん。いつも外で走ってるよ」

 

 鷺ノ宮もよく走っている。鷺ノ宮がIS搭乗者は基礎体力も重要だと説いていたから、セシリア・オルコットも体力増強に務めているのだろう。

 

(授業で寝てたのは、走って興奮して眠れなかった、とか?)

 

 しかし、走っていることと、部屋の面積を半分以上占拠しているのは別だ。

 鷺ノ宮に話を振ろうとしたが、彼女はスマートフォンをいじっていた。呼び出しのようだ。立ち上がって荷物をまとめだした。

 

「重装騎馬(カタクラフト)の件だ。二時間ほどで戻れるはず」

「わかった。適当にキリがついたら帰る」

「がんばれー」「がんばってねー」

 

 鷺ノ宮がいなくなってから三十分ほど勉強した。

 マキは集中力が切れ、国津や本音の様子を眺める。

 国津はまじめに勉強している。本音は腕を組んでうんうん唸るだけで進んでいなかった。そのうちに、唸るのに飽きて妄想に浸りだし、表情を緩めた。

 

(彼女は虚さんの妹ってことだよね……。触れたら、さっきみたいにイっちゃうのかなぁーー…………)

 

 気になって手を伸ばした。グニュゥ、と頬の形が変わる。

 

(やわらかーーい。ふわふわーー)

 

 両手で頬を引っぱって離す。プルンッ、と元の形に戻った。

 

「マキにゃん。悪戯はだめだよー」困ったように頬をさすっている。

「ごめんごめん。お姉さんと同じなのかなーって、気になってね」

 

 マキは懐からトローチを取り出して口に運ぶ。今回はアタリの味だった。

 

「ぁー。アメもってるーー。私にもちょーだい」

「いいよー」マキは軽い雰囲気のままトローチを渡していた。

 

 本音が袋を破って口に運ぶ。マキは唇が開き、トローチが口内に収まる瞬間を穴があくほど凝視していた。

 

「変わった味~~。何味だろ~~~~」

「いろいろあるよー」

 

 トローチは片瞳(め)の白濁予防のために服用し(舐め)ているものだ。用法は薬に近い。マキにとっては薬だが、他の者には毒になりうる。実際、鷺ノ宮はトローチを口にしない。副作用が強すぎることを身を以て体験しているからだ。

 

「フルーツミックス、かな~~~~」

 

 マキはトローチが小さくなるか、噛み砕かれるのを待った。布仏本音は後者だった。ガリガリゴクン。「ふぅーおいしかった~~」という声が響く。

 横では国津がコクリ、コクリ、と船を漕ぎだした。

 

「ちょっと休憩……」

 

 国津が机に伏し、スー、スー、と眠りにつく。

 マキの視線は本音に向かった。

 

「…………っ、…………んん……………ぁ………」

 

 本音は机に伏して膝をモジモジさせ、腰をよじっている。

 小用を我慢しているようにも見えるが、マキは理由をよく知っている。

 

「布仏さん。寝ちゃだめだよ…………」

 

 学習室では眠っている人を誰かが起こそうとはしない。二四時間使えることもあり、仮眠室代わりに使う生徒もいるくらいなのだ。試験勉強中は学習室に籠もる者さえいる、と聞く。

 基本的に騒ぎさえしなければ他人には無関心だった。

 マキは音を立てないよう、慎重に机の下へ潜った。

 

(布仏さん………………触ってる、ね…………)

 

 スウェットの上から股間へ刺激を与えているようだ。マキは机の下から顔を近づける。おそるおそる手を伸ばし、スウェットパンツに手を掛けた。

 

「…………え? ………………!」

 

 本音が見下ろす。ズボンに手を掛けるマキを見つけた。口を開閉させるうちに、マキはシーッ、という仕草をした。

 

「いいこと、したげる…………」

 

 スウェットパンツを少しずつ下ろしていく。本音は困惑しながら上半身のビッグスウェットで尻や膝を隠す。

 

(ああ…………これが、布仏さんの…………)

 

 そっと指を当て、足を開かせる。股間の奥は可愛らしいショーツではなく、スウェットと同じグレーのボクサーパンツに包まれていた。指でコショコショ弄ってやると、本音はくすぐったそうに身をよじる。

 マキはボクサーパンツの縁に手をかけ、これも下げていった。

 

「ん…………っん…………」

 

 本音が椅子を浅く腰掛けなおす。太ももを広げるのを見て、マキは茂みに顔を近づけ吐息を当てた。

 汗ではなく、ボディソープの香りがした。鼻が茂みに触れる。舌を伸ばし、ぽってりとした陰唇の外側をねぶった。柔肉を味わいながら、陰唇の内側へと進んだ。

 下腹がピクリと動いた。

 

(気持ちいいんだね、…………いつも、指で遊戯(あそ)んでいるのかなぁ…………)

 

 マキは音を立てぬよう、細心の注意を払いながら、舌で膣口を濡らしていく。丸く尖った核を唾液で潤わせ、膣口に戻ると、先ほどよりも滑っている。

 分泌された愛液を味わいながら、舌先を硬くすぼめて内部を探った。

 

「…………んっ…………ァ…………はぅ…………」

 

 本音が小声で喘ぎ、熱っぽい吐息を繰り返す。ギュッと内股を閉じてマキの頭を締め付けてきた。

 マキは蜜汁を舐めとり、細かな襞(ひだ)を摩擦(こ)する。

 膣奥が震え、熱い潤いがあふれ出る。本音はマキを蹴りだすどころか、さらなる快楽を求めてきた。

 

「ぁあ…………、はぅぅ…………んぁ…………」

 

 マキは本音の腰をつかんで押さえ込み、硬く屹立した淫核(クリトリス)をこねくりまわす。吸って、吸って、舌先で激しく摩擦(こ)する。

 

「…………ぅ、くっ…………」

 

 ビクビクと下腹部が脈打つ。激しく舌先で淫核(クリトリス)を弾くと、本音は太ももを固く閉じ、細かく震え続け、しばらくして力を抜いた。

 

(………………イっちゃった、みたい、だね…………)

 

 マキはトローチを一粒含み、唾液を絡めて本音の膣内に埋めこむ。

 ボクサーパンツとスウェットパンツを元に戻す。机の下から這いだし、国津の肩を揺する。

 

「国津さん。国津さん」

「…………んぅ。………………あぁ、寝てたのか」

 

 寝ぼけ眼を擦った国津は、本調子ではない様子で荷物をまとめだした。

 

「布仏さん、送ってこうか?」国津が提案した。

「夜風に当たりたいって言ってたから、ちょっと一緒に外に出てから戻るよ。だから、荷物はここに置いてく」

「りょーかい。じゃ、また明日」

「おやすみ」

 

 大きなあくびをする国津。覚束ない足取りの背中を見送ってから、マキは本音の腰を抱いた。

 

「ちょっと火照ってるから、涼しいところに行こう。ね?」

「…………ぅん」

 

 コクコク、と本音が頷く。

 膣内に埋めたにトローチが彼女の熱と潤いで溶け出し、粘膜から浸透していく。蠱惑的な感情を奮い立たせ、感じたことのない感覚に戸惑っているはずだ。

 学習室を出てから勝手口に向かう。共用のスリッポンが履いて、外に出ると、少し冷える。マキは褞袍(どてら)を羽織り直し、夜のベンチに腰掛けた。

 

(ちょっと昏(くら)いな…………)

 

 LEDの街灯が煌々と灯っていたが、茂った樹木が葉を広げて影になってしまっている。

 

「ぁ………………はぁ、……はぁ、…………はぁ」

 

 本音は心臓のうえに手を置いた。トクントクントクン……と早鐘を打っていて、額から玉のような汗が浮かんでいる。

 

「はぁ、…………はぁ、……はぁ、……」

(驚いてる…………でも、大丈夫だよ………………)

 

 マキの片瞳はすでに白濁しきっていて、理性が淡雪のように溶けて消えていった。

 

「は、は、は、…………はぁ、は、は、は…………」

「…………熱いよね。胸が、熱いよね…………」

 

 本音は両眼を見開いて、何度も首を縦に振る。

 

「ハ、ハ、ハ、…………ハァ、ハ、ハ、ハ、…………」

 

 本音の身体の奥に熱が拡(ひろ)がっていく。手足の力が入らなくなり、かろうじて首から上だけを動かせるにすぎない。ぼぅーーっと意識が霞み、身体がふわふわと宙に浮いているような気がした。

 

「…………鎮めて、あげよう、か…………」マキが囁く。

「ヒハ、ひは、ヒハ、ひは……」

 

 呼吸が苦しくなるはずだ。水の中で溺れ死んでしまうような感覚になる。もう首を縦に動かすのも難しくなっているだろう。

 マキは本音の瞳の動きをじっと観察する。薄暗くても、街灯でわずかに照らし出され、彼女の表情がわかった。

 

「ヒハ、ヒハ、ヒハヒハヒハ……」

「………………でも、条件があるんだなぁ…………」

「ァガ、ァガ、ァガ…………」

 

 脳への酸素供給量が少なくなってきていた。

 

「…………わたしの言うことを聞く。…………どう? ………………」

「………………ハ」

 

 本音に選択肢はない。酸素を求めて本能で頷く。

 マキは心底うれしそうに微笑み、本音の唇を吸って唾液を流し込んだ。

 

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……」

 

 本音は急に呼吸できるようになって、何度も咳き込んだ。

 

「わたしの言うことを聞く」マキは本音を見下ろしながら告げる。

「え? 私、そんなこと」本音は明らかに戸惑った。

「わたしの言うことを聞く。………………なんでもね」

 

 マキが顔を近づけると、本音は手を差し入れ、抵抗の意思を示す。

 だが、マキは余裕の笑みを浮かべたままだ。

 白濁した瞳を左から右へ動かし、今度は下に向ける。本音は心臓の上を押さえて苦しみだした。

 

「え、痛い、え? えええ? 痛いッ」

「あなたは、わたしの言うことを聞く」

「痛い、痛いよ…………痛い……え、え、え??? 痛っ痛いッ」

「あなたは、わたしの言うことを聞く」

「痛い痛い、痛い、うううううう………………痛ッ、ううう、うん、聞く、痛いっ、聞くよっ、痛い、痛いの、やだ、やだ、痛いっ、うううううう………………」

「あなたは、布仏本音はわたしの言うことを、聞いた」

 

 痛みがピタリと治まる。

 本音が大きく深呼吸をした。やはり痛みはない。マキは落ち着くのを待って、再び顔を近づける。

 今度は抵抗しなかった。

 

「…………ふぁ………………んんん、はふぅ………………」

(柔らかいよぅ………………やっぱり、キスは、いいなぁ…………)

 

 舌を差し入れると、本音は嫌がることなく受け入れ、激しく舌を絡ませた。

 

「んんんっ!! ん、ん、ん、…………!!」

「ふぁ、ぁ…………はふ、はふぅ…………」

 

 マキは貪るように本音の舌をしごいた。絡めて舌を硬くさせ、締め付ける。身悶える本音の腰を抱き、手をビッグスウェットの中へと差し入れる。

 豊かな胸部はスポーツブラでしっかりと抑え込まれている。固定部に指を差し入れ、上にあげる。たわわな肉が零れ落ちる。乳房は張りがあって硬い。

 乳首を弾く。

 

「ひゃんっ…………ふぁあああ…………」

(感度いい、………………やっぱり自分で弄(いじ)ってるぅ……………………)

 

 ビッグスウェットをたくし上げ、乳首を露わにした。指で乳房の形を変えながら、唇を近づけて吸った。硬くなった乳首を唇で挟み、「はむはむ……」と味わう。

 白い肌が薄暗がりに映えて、豊満な膨らみがマキの弄ぶのに合わせて形を変えた。

 

(おっぱい、おっきいよぅ…………吸ってると、すんごい、落ち着くぅ…………あーーーーー、幸せだよぅ………………)

「んっ、………………ふぅ、ぁん、ぁん、ンンン…………」

 

 甘い匂いが鼻腔いっぱいに広がる。

 子宮がゾクゾクうずき、下半身がキツくてしょうがなかった。一物が屹立し、ショーツを突き破らんばかりになっている。夜風があたり、誰かに見られるかも知れない、という興奮がマキを昂ぶらせた。

 本音を膝のうえに乗せ、後ろから抱き抱える。彼女の重さを感じながら乳房をまさぐる。乳首が硬くなっていて、唇でスウェットの裾をかむ。本音の太ももが開いていく。胸を揉みし抱いていた手がゆっくり下りていき、白い腹を伝ってスウェットパンツの中へと潜り込む。

 

「…………ぁあ……んぅ………………ああぁん………………」

 

 ボクサーパンツの上から股の間に触れる。しっとりと濡れていて、湿り気を帯びた布上で指を踊らせる。

 

「…………ふぁあああ…………」

 

 本音は心地よさのあまり声をあげる。

 腰をくねらせるのに合わせ、布地のあいだに指を差し込む。コシのある恥毛をかき分けて、ふっくらとした陰唇にたどりつく。

 マキは本音の火照った肌に鼻をおしつけた。汗のにおいをかぐと、本音がくすぐったがった。

 陰唇に触れる指を震わせる。「はぁぁ……」本音が鼻声で喘いだ。

 クチュクチュ、と音を立てて淫核(クリトリス)を弄ぶ。

 

「布仏さん、…………ねぇ、腰を浮かせて、…………」

「んんっ、…………ぅん…………」

 

 マキの意図を察したのか、言われたとおり腰を浮かせた本音は、自分からスウェットパンツを太股まで下げた。ビッグスウェットを下げて露わになった尻を隠す。

 マキも腰を浮かせ、少しだけ寝間着を下げる。一物の根元を握りしめて外気に晒す。

 

「それ……おとこのこ…………?」

 

 本音は目にした光景が本当かどうかよくわかっていなかった。

 

「違うよ…………、でも、することは、いっしょ…………」

 

 マキは本音の腰を支えながら急角度にそそり立つ一物の位置を調整する。

 

「そう、そこ。自分で手を添えて」

「え? …………こう、…………ぁ、変な感触……」

 

 マキと本音の手が触れあった。頷きあって、本音が前屈みになって一物の先端をあてがい、愛液を擦りつけながら位置を定める。

 

「いいよ、…………腰をゆっくり下ろしていって…………」

「…………ん」

 

 本音が息を止める。少しのあいだ躊躇してから腰を沈みこませた。

 

「んんんぅううぅぅぅ…………」

 

 本音は宙(そら)を見上げながら何度も目を瞬かせる。初めて受け入れる異物感に、ただ驚いた。

 膣内(なか)が拡がっていく。恐れていた痛みは少なく、ただ、こんなものかと拍子抜けていた。痛みの代わりに腹を潰されるような圧迫感があって動けない。

 

「大丈夫…………痛い……?」「んんんっ…………たぶん、だ…………だいじょぶ、なんだけどぉ…………」

 

 背もたれに体重を預け、ピッタリと股間を密着させたまま本音が慣れるのを待った。

 

(誰も通りませんように…………)

 

 マキの願いが通じたのか、誰の足音も聞こえない。サワサワと風が木の葉を揺らした。

 本音が息を整える。

 

「ぅあ…………膣内(なか)が、うねるよぅ………………」

 

 呼吸をするだけで襞(ひだ)が蠢(うごめ)く。本音の柔らかい肌を抱いているだけで幸せな気持ちになった。

 心地よい温もりと締め付け。昨日、味わった箒の膣内(なか)よりも入口の締まりが弱いが、分厚い膣肉が幹全体を包み込んで別の生き物のように絡みついてくる。

 

「ぅううぅぅぅ、ゾクゾクするぅうう」

 

 入れているだけなのに腰を使って動いているような感触だ。幹と肉襞を密着させるだけで性感がどんどん高まっていく。

 腰が震えて、細かな振動が背筋を上っていく。子宮のあたりがじんわりと熱くなった。

 

「え? なに、お腹が熱いよぅううっ」

「うぁああ…………まだ、動いていないのに、ご、ごめんねぇ…………射精(だ)しちゃったぁ…………」

「え? つけて、ないよ、…………!」

「大丈夫、おとこのこじゃないよ、膣内射精(だ)しても大丈夫なやつだから…………」

「…………できない、の?」

「できない、おとこのこの精液じゃ、ないからっ…………うぁああっ」挿入しながら話をするだけで膣肉の圧迫が強くなった。

「…………そう、なんだっ…………」

 

 感触になれてきたのだろう。本音が身体を揺すり始めた。気持ちいいところを探して腰を前後左右に動かしている。

 

「んんっ、んんんっ…………、ん、ん、んぅうううううううう………………」

 

 マキは一物が抜けないよう尻を支える。柔らかな感触と温もりを味わいながら、愛液でヌラヌラとした一物を見やった。

 

「あ、血………………」寝間着に赤い血が付着していた。

「…………ぅん、そ、そう、なんだよ~…………えっち、初、めて、なんだからぁ…………」

 

 本音の吐息は熱く湿り気を帯びていた。

 マキは腰を密着させたまま囁きかける。

 

「今度は、わたしが、動きたい…………ヨっと」

 

 本音の膝下に腕を差し入れ、力で浮かせて姿勢を入れ替える。

 

「ッッッふぅぅ」

「………………こっちのほうが楽ぅ~~~~」

 

 本音はベンチにもたれかかり、足を引きよせた。M字に脚を曲げ、マキに尻を見せつける。

 

「こんな感じぃ…………?」

「ん。いい、それで………………」

 

 マキは立ったまま、少し膝を折る。先端の位置を微調整しながら近づき、息を吐きながらゆっくり膣口へと押しこんでいく。

 

「はふぅ…………んんん…………ふぁ…………ンンンッ……」

「…………奥まで、いくね…………!」

 

 膣内がほぐれてきたのか、ヌルヌルッと滑らかに呑みこまれていく。

 

「アアっ…………ぁ…………」

 

 本音が身体を丸めて熱く喘いだ。ギュウウッと膣肉全体で幹を味わっているようだ。

 マキは背筋がゾクゾクして、熱っぽい視線を本音と絡め合わせながら顔を近づける。

 

「ンンンッ……はふはふっう……」

「んぅ…………ふぁあああ、布仏、さんの唇、いぃ…………大好きぃ…………」

 

 マキが身体を密着させる。本音もマキの背中に両手を回した。互いの熱が融け合い、うっとりと喘ぎながら、小刻みに腰を動かし始める。

 グチュ、グチュ、と滑りが音を重ねていく。

 

「気持ちぃ、いいいい…………。ねえ、布仏さんっ……」

 

 マキは熱っぽい吐息を漏らしながら目を潤ませる。

 

「なぁに…………んんっ」

「…………気持ちいい…………また、また、また、イキそうっ…………」

「んっ…………私の膣内(なか)、そんなに、いいの、…………?」

 

 マキがコクコクと頷く。余裕がなくなっていて、快楽のあまり涎を垂らしている。

 

「いいよ、…………膣内(なか)に射精(だ)しても、いいよっ…………」

「…………え、いいのっ? …………いいんだよね…………」

 

 愛液があふれ出て頭のなかはぐちゃぐちゃだ。本音は妊娠リスクがないと安心しきっていて、好奇心だけで膣内射精(なかだし)をせがんでいた。両脚でマキの身体を挟み込み、全身で未知の快感を貪った。

 互いに蕩け合って舌を絡め合う。口の中にあるのは、どちらの唾液か判断がつかなくなるほど吸い合った。

 マキが全身が溶けていくような快感に酔いしれながら腰の動きを早めていく。

 

「ンンン……!」

 

 本音が両脚に力を込めた。マキの身体を強く挟み込んで収縮を強めていく。

 マキは圧迫されるのも構わず腰をぶつけ続けた。肉襞の摩擦と締め付けが病みつきになり、子宮の熱が高まって一気に弾けた。

 

「ぁ………………い、イク……、布仏さんの、奥(子宮)にっ噴き出てるっ…………!!」

「ぅうううううううう……………!!」

 

 本音が力の限りしがみついてくる。マキも本音を強く抱きしめ、腰を痙攣させながら最後の一滴まで送り込む。

 脱力し、全身で息をしながら熱っぽく見つめ合う。

 

「えへへ…………やっちゃったぁ………………」本音が悪戯っぽく笑う。

「ぅん………………んぁ」

 

 腰を引いていくと、にゅるにゅるっ、という膣感覚が敏感な先端に伝って、残っていた白濁液が飛び出た。

 

「………………うぁ、…………マキにゃんの、まだ、出てるよぅ~~~~」

 

 余韻に浸りながら恥丘を汚す白濁液を指で嬲(なぶ)った。

 

「ぁあ………………すごかったぁ………………」マキは息も絶え絶えになって呟いた。

 

 股間を引き離し、寝間着のなかに一物をしまう。さすがに射精(だ)しすぎてグッタリとしていた。

 

「えへへ…………汗、かいちゃったねえ…………」

「うん。汗ベトベト…………大浴場、行く…………?」マキが訊いた。

 

 本音はコクリと頷いて立ち上がり、スウェットパンツを腰まで上げた。

 スリッポンを下駄箱に戻そうとした時、ブルルルッ……と背筋をふるわせ、頬を赤らめた。

 

「どうしたの?」

 

 マキが声を潜めて聞く。

 本音は舌を出してから耳許で囁いた。「膣内(なか)のが、溢れてきちゃった……」

 

 

 

 




次話、『セシリア・オルコット《6》』投稿まで少々お待ちください。
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