亡国機業は壊滅しました。 作:張三李四
「もう、耐えられませんわ………………」
マキが見守るなか、HR中、うつらうつらとしていたセシリアは、一限目が始まるや否や机に突っ伏して意識を手放したのだ。
織斑千冬がセシリア・オルコットの横で立ち止まり、鋭く言い放つ。
「オルコット! 起きろ、オルコット!」
名簿を振りおろす代わりに肩を揺する。胡乱な目つきで頭をあげたセシリアは、コクリ、コクリ、と授業が終わるまで船を漕ぎ続けた。
「マドカちゃん。彼女、どうしちゃったの?」
席に寄ってきたマドカに訊ねる。
マドカはセシリアの寝姿を一瞥してから首をひねった。
「夜遊びで夜更かし、とか? わかんない」
「…………それとも、決闘の準備で忙しいとか」
「決闘? …………ああ、そんな話、あったね。…………関係ないんじゃない?」
「どうしてそう思うの?」
「夜、コンビニに行ったら、彼女見たし」
「へえコンビニにねぇ………………え、コンビニあんの!?」
突然大声をあげて立ち上がると、マドカが一歩飛び退いた。
「公園の外れで見つけました。ちょっとわかりにくいかも、だけど、みんな行ってるよ?」
マキは昨晩の情事を思い出して、チラッと談笑する本音を見やる。マキの視線に気づくことなく、仲良くなったクラスメイトと身振り手振りを交えていた。
「あとで行こうっと」
「ん」
予鈴が鳴り、二時限目が始まった。セシリアは完全に眠っており、山田先生が戸惑いながら遠慮がちに起こそうと試みる。だが、セシリアは微動だにしなかった。三限目、四限目も同じだ。昼休みの始まりを告げる鐘が鳴って、ようやく彼女が身体を起こした。
背伸びしてから立ち上がり、「よく寝ましたわ」と口にしてから、すっきりした顔つきで悠々と立ち去った。
セシリアとすれ違うようにダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアが姿を現した。
「おーい! 今日も来てやったぞー! 先輩を敬えー!!」
ダリルがよく通る声を響かせた。マキが背筋を伸ばし終えてから、周囲を観察する。
「一夏、一緒に食堂へ行こうか」
(あれ?)
心なしか、箒の口調が優しかった。一夏は戸惑った様子で席を立ち、目を泳がせている。
「昨日、剣道場で約束しただろう」
「本当にここでも……?」一夏は明らかに困惑顔だ。
「もちろん。そういう約束だぞ」
と、箒は一夏と手を繋ぐ。手のひらの温もりにはにかみながら、爽やかな笑みを一夏へと向ける。一夏は目を丸くして、俯きがちに頬を赤らめ、感情を言葉にするのに困っている。
「さあ、先輩たちが待っている」
ふたりは手を繋いだまま、連れだって教室から消えていった。
(…………え!?)
何が起きたのかよく分からない。鷺ノ宮がニヤけ顔で口笛を吹くのが聞こえたのを皮切りに、教室内が騒然となった。
「えええええっ!!?」「見た見た見た!?」「見たっ! ナニがあったかまったく理解できないんだけど、でもっ、あのふたり!!」「くそーっ! 幼なじみかー!」「篠ノ之さん狙ってたのにー」「え、あんた……?」
マキは呆けたように口を開けていた。
(え? 男? すぐさま作ったってこと? 高校で再会した幼なじみとあっという間に…………)
自分がしでかしたことを棚にあげ、眼前の出来事を反芻したのだ。マキはぼんやりとしたまま、マドカと共に食堂へ向かった。
気がついたときには席についていて、目の前にランチの皿が並んでいる。
マドカが呆れたような顔つきで、目の前で手のひらを上下に振った。
「そうですか。何とか印さんも織斑一夏を狙っていたのですか」
「……マドカちゃん。それは違うよ」
「篠ノ之箒を狙ってる、なんて、もし言い出しなんかしたら、本気で犯罪者ですよ?」
マキはブルルッと背筋を震わせた。「や、やだなーっ、冗談のつもりだよ。もちろん、織斑くん狙いだったよ?」
マドカが目を細めた。
「………………やりましたね?」
「あう…………マドカちゃんが想像しているようなことはやってない」
とっさに嘘をついた。衝動的な行動が、箒と一夏の関係を進めてしまったのだと思うと、複雑な気分になった。
明らかに進展した雰囲気に、食堂中で悲喜こもごもとしたうめき声が伝染していく。
(味がしない…………)
ショックではあったのだ。大きな獲物を逃した気分だった。
マキは食堂を後にし、職員室に行くというマドカと別れて教室へ戻った。廊下で本音が誰かと親しげに話している。華奢な体つきだ。眼鏡をかけて理知的な雰囲気を漂わせ、高校デビューのつもりか髪を水色に染めていた。
(見たことがあるような気がするけど、誰だったっけ…………)
入学式のときに見かけ、かすかに記憶に残っているのだろうか。
近づいて、声をかけた。
「布仏さん。その子は?」
「?」本音の友人が振り返って目を細めてきた。
「カンチャンだよー! 更識簪だからカンチャン!」
「…………本音。この人は?」
「同じクラスのマッキマキ」昨日と呼び名が違う。
「………………
「よろしく。あなた、雷撃社のソリッド、の、人?」
「…………そうでーす」
訓練機とはいえ《ソリッド》シリーズは有名らしい。
「ん…………
「カンちゃん。…………そういうこと言ったらだめだよ~~~~」
「いやいや大丈夫。鷺ノ宮アユムが超強いのは事実だし、わたしがおまけっていうのも事実だからさぁ」
《
マキは更識簪が自分のことを良く思っていないように感じていた。第六感というやつで、彼女の直感はおそらく正しい。
簪が俯いたとき、マキと本音は目配せしあった。
「カンちゃん。マッキマキと話があるから、ごめんねっ?」
簪の視線が戻るや本音がそう言い出した。簪は胡乱な顔つきだ。
「この人と?」
「お姉ちゃん絡みだよ~~相談室~~~~」
「………………そう」
残念そうな表情を浮かべた簪。本音は手を合わせながら「ごめんね~~~~」と言った。
ふたりでお手洗いに行き、空いていた個室に入る。鍵をかけ、エチケット音楽のスイッチを入れ、マキが便座の上に座った。
よく磨かれた大理石の床で膝をついた本音は、マキを見つめて物欲しそうに目を潤ませた。
「布仏さん。本当に相談?」
マキはポケットからスマートフォンを取り出して、新着通知を確かめる。すぐに確認すべきものはなく、再び本音へと目を移した。
「マッキマキとお話がしたいんだよ~~」
本音はそう言って口を大きく開けて見せた。舌を露わにし、喉奥へ向けて指差す。
「………………あぁ、そういうっ………………」
マキは声のトーンを下げた。下半身はすでに硬く反り返っていて、昨晩の情交の疲れは一夜にして回復していた。
スマートフォンのカメラを起動し、録画ボタンを押す。胸ポケットに差し、レンズが本音に向くようにした。
「癖になっちゃった…………?」
本音は答えることなく、マキの股間へ顔を近づけていく。太股に手をかけ、口を開け、涎を垂らしながら舌先を硬い一物の先端に触れさせた。
「あうぅ…………」
マキは、下半身が熱くヌメヌメとしたものに包まれ、快感に呻いた。深々と呑みこんでいく本音に手を伸ばし、彼女の頭を撫でた。
「ぁあ………………あぅぅ…………」
本音の体温と熱い吐息がマキの恥毛に触れてくすぐる。亀頭を呑み込み、口をすぼめながら締め付ける。ズ、ズ、ズ、と吸い付き、唾液に濡れた口で幹を
ジュププププ……と濃厚な舌奉仕をする本音に、密やかな罪悪感と征服感が同時に去来する。
頭を撫でながらサワサワと艶やかな髪の感触を愉しんだ。本音が顔を上げる。見つめ合ったとき、マキは彼女の片瞳に気づいた。
(小さな、グルグル……)
白く濁った筋がらせん状に伸びている。もう片方と見比べると違いは顕著だ。
「…………布仏、さんっ、いやらしく、もっと音を立てて…………唾でドロドロにしてよぅ…………」
「…………ふぁぃ…………んんん」
ジュポッジュポッ、と頬の内側に含んだ唾液を絡みつかせる。マキは摩擦される快感に呑まれ、本音の口中に白濁液を放っていた。腰を痙攣させながら本音の頭が動かないよう押しつける。喉奥がすぼまると、駄目押しの快感に仰け反る。
「ぁ………………はぁ、……はぁ、…………はぁ」
「…………こんなに、たくさん、はむぅ…………」
脱力した手でトイレットペーパーをちぎり取る。口を離し、呑みきれなかった汁を手酌で受け止めている本音に差し出した。
次話、『セシリア・オルコット《7》』投稿まで少々お待ちください。