亡国機業は壊滅しました。 作:張三李四
「昨日はとんでもないことをしてくれたな」「そうだ、そうだ!」
朝のHR前、マキと鷺ノ宮は登校して席についたセシリアに向けて言い放った。
セシリアは麗しげに髪を払い、マキたちを見上げる。
「わたくし、何か粗相でもいたしましたか?」
「その粗相だよ」「そうだ、そうだ!」
「あらあら、まあまあ。ああいったことは、まず最初にアリーナに行く前に教えるべきことですわ。鷺ノ宮さんの監督不行き届きではありませんか?」
「ああいったことは専用機限定ルールなんだよ。御印の機体は、訓練機だ。そういった機能はないし、使えない」
セシリアと鷺ノ宮がマキを見た。拳を振り上げ、「そうだ、そうだ…………?」と首を傾げる姿を目にして顔を戻す。
「でしたら、昼休みに屋上でお話しましょう。学食でテイクアウトしてから来てくださいまし。お待ちしていますわ」
「お持ち帰りできんの? オルコットさんは?」マキが訊ねた。
「使用人がランチを届けますので不要ですわ」
「あ、そういうこと……」
山田先生と織斑先生が来たのでみんな席に就く。HRが終わり、一限目の授業も終えた。休憩になって、マキはスマートフォンを取り出し、学食のページを開く。
(本当だ! テイクアウトできるぅうう!! 学食にいない人たち、どこで食べてるかと思ったら、こういうカラクリだったのかぁ)
今日の昼ご飯を物色するうちに休憩時間が終わった。四限目まで、昼食に何を食べるかを考えていた。そして、四限目の終礼が鳴った。山田先生が教室から去ると、クラスメイトたちが動きだす。
マキは席に就いたまま箒たちの動向をうかがった。
箒が一夏の席に向かう。昨日と同じ流れだが、今日は違った。
「いち…………」
「織斑一夏さん」セシリアが一夏の前に立つ。
「んぁ…………お、オルコット? 俺に何か、用か?」
「あなた、来週の月曜にわたくしと決闘すること、お忘れになっていませんか?」
「わ、忘れてなんか、いねーよ…………」一夏は身震いした。
「そういう癖に、アリーナに一度も来ないではありませんか。ISが無くとも場所の下見くらいできますでしょうに………………わたくしのことを侮っていますの?」
「は、はぁ? そ、そ、そんなこと思って、ねーよっ!!」
一夏は言い返したが、調子悪そうに荒い息を吐いている。
見かねた箒が割って入った。
「オルコット。今、一夏を性根からたたき直しているところだ。決して、貴様を侮ってはいない」
「そうでしょうか?」
セシリアは疑念の眼差しを向け、踵を返して教室から出て行った。
「一夏、大丈夫か」箒が一夏の手を握る。
「…………だだだ大丈、ぶ。………………ンンン……! ぅぅぅぅ…………」
一夏は両手で膝を掴みながら額を机につけ、うめき声をあげた。
「…………保健室に行くぞ。肩を貸してやる…………」
「いや、いい…………ぅ…………ぅあ…………やっぱり、頼、む…………」
時折顔をしかめながら一夏と箒が教室からいなくなった。
「マドカちゃん。今日はテイクアウトするから。一人にしてごめんねぇ」
「ん。だったら今日は、鷹月さんと摂ります。じゃあ、ここで別れましょう」
「…………え?? 学食で別れるんじゃ!?」
「テイクアウトするならどうぞ」
「…………マドカちゃんが冷たいよぉ~~~~」
マキは泣き言を口にしながら鷺ノ宮に抱きつこうとしたが、軽くあしらわれた。
「つれない…………いいよっ、布仏さんっ! 入口まで一緒にぃ…………!!」
マキは本音の背後に迫り、豊かなバストを脇の下からすくいあげるようにつかんだ。
「やわやわ~~~~」「やわやわ~~~~!」谷本癒子がマキの真似をして本音に抱きついた。鏡ナギは手を広げ、すぐに思いとどまる。
「おいっ…………」
鷺ノ宮がマキを引き剥がす。
名残惜しげに手を伸ばすマキを無理矢理学食の入口へと引き立てた。
定食のテイクアウトを頼むと、作り置きが出てきた。受け取って、屋上へと向かう。屋上には学年をまたいで何名か生徒がいた。中心部でセシリア・オルコットが腕を組んで立っていた。
「お待ちしましたわ。おふたりとも」
美しい金髪が風にたなびき、青空に浮かんだ雲が流れ去っていく。
セシリア・オルコットは自信に満ちた笑みを浮かべ、その後ろにヴィクトリア様式のメイド服を身に着けた侍従が控えていた。
「チェルシー。おふたりに温かいお茶を」
茶飲み場は野点の影響を受けている、と思われた。マキたちは恐縮した様子で座った。
テイクアウトした定食を広げ、手を合わせる。「いっただきまーす」
食事を摂りながら、出された茶を飲む。談笑するうちに食べ終え、セシリアが真剣な面持ちになった。
「さて、一息ついたところで、本題に入りましょうか」
「やっとか」「………………??」
セシリアが立ち上がり、茶飲み場から下りる。両手をあたかも長い棒を保持しているかのように構えた。
「御印マキさん。今から披露する動きをよく見て目に焼き付けてください」
一歩を踏み込む。青眼に構え、続いて上段、振り下ろして、前に出て突く。蹴り入れ、脇に構える。
「…………今のって?」マキは鷺ノ宮に確かめる。
「一種の符号だ」
「符号?」
セシリアは姿勢を正して進み、マキの隣に腰掛ける。
「オルコットのISマナー講座にようこそ」
微笑みを浮かべながら上目使いにマキの瞳をのぞき込む。とっさに片瞳を隠したが、セシリアは目を細めたにすぎなかった。
「マナー講座を開くにあたり、ISの世代について簡単におさらいしましょう」
セシリアは第一世代から第三世代までの特徴を並べた。マキが目を瞬かせるのを確認してから、マキの名を呼んだ。
「御印マキさん。あなたの《ソリッドⅢ》の世代は?」
「第二世代、って聞いてます」
『鷺ノ宮さん。《ソリッドⅢ》は《打鉄》以前ですか、《打鉄》以後でしょうか」
「以後だ」
「でしたら、なおさら知っておくべきですわ」
「知っておく…………べき?」
鷺ノ宮は言いにくそうに目を左右に動かした。
「どういうこと?」
マキが首を動かしてセシリアを見つめ、訊ねた。
「こういうことですわ」「うわわわわっ!!! オルコットさん、どこ触って!!」
セシリアの手はマキの股間に突っ込んでいた。マキは突然の出来事に反応できず、ただ傍観するしかできなかった。
(やばやばやば…………オルコットさんが、触ってる!! 触られてるぅううう!!!)
「ん? 硬い物が……まあ、いいですわね」
セシリアは股間から手を引き抜いた。
「コホン。《打鉄》より前に製造されたISには大きな問題がありました。問題とは、人間の生理現象に起因するものでした。ここで生理現象とは、老廃物の排出ですわ」
「小と大…………」
「訓練機の場合、ISの搭乗時間が比較的短時間です。しかし、軍用ISや専用機の場合、パイロットの搭乗時間が数十分から数日に及ぶことがあります」
「す、数日…………」マキは鷺ノ宮を一瞥した。
「有人での宇宙利用を考慮した場合、人間の生理は切っても切り離せません。御印さん。第一世代のISが用を足すとき、どのように処理していたかご存じ?」
「全然」マキが首を振った。
「チューブを挿すのですわ。前と後ろに」
「………………ぇえ!? ってことは、織斑先生は…………」
「考えている通りですわ」
「よかったぁ…………第二世代で」
「初期の第二世代機は第一世代機と同じ問題を抱えていました。搭乗者が限定されていることもあって、あまりこの話は公にはなりませんでした。そんなとき、《打鉄》が登場したのです」
「《打鉄》って学校にいっぱい置いてあるやつだよね…………」
「《打鉄》が名機と呼ばれる所以があるのですわ。半露出装甲だけでは、倉持技研が名を上げることはなかったでしょう。チューブは時に激痛を発します。しかも、後ろのはとんでもなく太く奥まで……正直身震いしますわ。そんなとき、彗星のごとく発表されたのが…………」
セシリアが腰を上げ、マキの正面に立った。
「倉持技研の大発明!!」「おい、止めろ!!」
「ウ○コスロットですわ!!」「違うぞーフィニッシュプラグーー」
セシリアが沈黙する。天を仰いで深呼吸し、再びマキを見据えた。
指を差しながら、肺を膨らませた。
「○ンコスロット、ですわよ!!」「信じるなー正式名称じゃないぞー」
セシリアが瞳を閉じて沈黙する。だが、その表情は自信満々だった。
カッと目を開け、言い放った。
「IS専用
「え?」
「この発明を機にISパイロットの悩みの多くが解消されたのです。倉持技研の発明を、物質をISの
セシリアは呆気にとられるマキに向かって、親指を立てた。
「これが何なのか、おわかりになりますか?」
「………………うぅん」
「フィニッシュプラグの大きさです。ISパイロットはこれをお尻に入れるのですわ」
「………………そっかぁ、だからお尻開発済だったんだぁ…………」
チラッと鷺ノ宮を見た。
「そういうことですわ。現在の専用機ISパイロットはフィニッシュプラグが問題なく入るよう、
「そういうことを臆面もなく…………」鷺ノ宮の表情に恥じらいが浮かび上がった。
「義務ですから当然ですわ。恥ずかしがる必要はありません。しかし、今、この機能にも大きな問題が生じています」
「問題? 何の?」
「織斑一夏さんですわ」再びセシリアが親指を立てる。
「大きな問題、それは『前立腺』ですわ!!」
セシリアは遠い目で宙を見上げた。
「織斑一夏さんも、フィニッシュプラグを装着するのでしょうね。プラグのサイズがちょうど前立腺にもぴったり当たってしまうのです。彼は、無事では済まないでしょう。色々な意味で」
鷺ノ宮が咳払いをする。
「で、さっきの動作。説明しろよ。時間がないぞ」
「さきほどの舞は、小用をいたす、という意味ですわ。通常、対戦相手の同意が必要です。ISの試合記録を見る機会があったら、よく観察するといいですわよ。激しく機動しながら、みなさん、結構派手に散布してますわね」
そう言って、セシリアと鷺ノ宮はマキを意味深に見つめる。親指をグッと立てて、うねうね動かして見せた。
「おい、御印。当然、お前もするんだぞ」鷺ノ宮がニヤリと笑みを作る。
「い、いやだっ…………」マキは顔を引きつらせた。
入れるのは好きだが、入れられるのは嫌だと本能的に思った。
「い、いやぁあああ、いやだぁあああっ!!!」
次話、『セシリア・オルコット《11》』投稿まで少々お待ちください。