亡国機業は壊滅しました。 作:張三李四
篠ノ之束とクロエ《1》【クロエ】
(正面に一人、左右に四人、後方に二人、蜘蛛が一匹……隣の部屋にたくさん)
クロエ・クロニクルは小さく舌打ちした。全盲ゆえ、目蓋は閉じられ光を灯してはいなかったが、微細な気流の揺らぎを感知するだけの肌感覚を持っている。
クロエは数日前から雇用主である篠ノ之束とともに長期の慰安旅行目的で逗留していた。
束は数寄屋造りの離れを一棟、まるごと借り上げた。実の妹である箒を呼び寄せ、ささやかな再会を祝うつもりでいた。クロエは雇用主に恩義を感じていたがゆえに、束の思いつきを支持して準備をしてきたのだ。
チ、チ、チ、と舌打ちを繰り返す。
カーテンの隙間から夏の陽射しが射しこみ、流れるような銀髪を煌めかせた。エアコンの風で白と青のサマードレスがフワッと舞い上がった。
クロエの手には
舌打ちを止め、狼藉者たちを睨みつける。
心を研ぎ澄ませば、隣室から断続的に漏れ聞こえる声音への動揺を抑え込めた。
「
束の取引先のひとつ、亡国機業からの使者が離れを訪れたのは数刻前のことだ。用件はソリッドⅣ、Ⅴ、Ⅵの購買交渉だったが、そもそもソリッドシリーズはオーストラリア企業の日本法人が開発製造したものだ。束は依頼に基づき、機体を借りて試験していたにすぎない。ただ、少しばかり問題が生じたがために、ソリッドシリーズを長期にわたって手許に置かざるを得なかったのである。
使者は巻紙礼子と通り名を名乗った。株式会社
ゆえに、端から嘘と見抜き、警戒していたにも拘わらず後手に回り、一個小隊の突入を許してしまったのには
「あなたもアレに混ざりたいの? あーくーしゅーみーィ、クロエ・クロニクルさん♪」
正面で九七式手槍を構えていた女は微かな侮蔑を交えて皮肉る。赤茶色の髪を揺らして目を細めた。
隣室は束が専ら寝室として使っていた。広さ十畳の和室で、部屋の中央に布団を敷き、枕元には一台のラップトップが置かれていたはずだ。
隣室とクロエの部屋を仕切る襖は、五センチほど開かれ、人影が代わる代わる動いている。
「シギュン、あなたは、混ざらないの」
シギュン、と呼び名呼ばれた女はあからさまな嫌悪感を表に出す。舌を出して「げぇぇぇ」と呻いた。
「ちゃっちゃと渡せばいいじゃん。来るときにⅢを見たわよ。貴重なISを物置に放り込んで埃を被らせるくらいなら、必要とする人間に渡すのが筋ってものじゃない? 隣でアンアン喘いでるご主人様にそう習わなかった?」
返事をせず、チ、チ、チ、と舌打つ。
(……
用心深い束が警戒を解いて『巻紙』を離れに招き入れた理由。
それは、彼女が『篠ノ之箒と懇意にしている』と口にしたからだ。確かに、篠ノ之箒が通信販売で雑貨を取り寄せたのは事実である。疎遠だった姉妹間のわだかまりを解きほぐそうと、クロエが骨を折った事実があったから判断が遅れてしまった。
だが、篠ノ之束の身体能力をもってすれば、窮地を脱することは容易だったはず。クロエが殿を務め、時間を稼ぎさえすれば、束はいとも簡単に追っ手を撒くだろう。
束の身に起きた問題。ソリッドⅢに搭載された
束は、仮称ハッピー粒子なる物質を過剰に吸い込み、身も心もハッピーになってしまっていたらしい。何度か実験に立ち会ったクロエでさえも、
起動さえしなければ危険はない。そう判断したのだが……。
(まともに動くISは
正面にはシギュン。九七式手槍を構えているが、真に警戒すべきは乗機である
「あなたがたの目的は……」
「ISコア。ちょうだい」
シギュンは瞳を輝かせる。だが、手槍の照準はクロエを捉えて放さない。
緊張状態は長くは続かず、襖が開いた時に途切れた。
「まだ、やってんの?」ダリル・ケイシーが呆れ声を発した。
一瞥したシギュンが「うげぇぇぇ」と舌を出す。
金髪の女たち、スコール・ミューゼルとその姪、ダリル・ケイシーは一糸まとわぬ姿だった。ダリルは五〇〇ミリリットルのペットボトルを指の間に挟んで揺らしている。
「姉御、まだやってんですか、
スコールは冷水を飲み干してから、束の寝室へと流し目を送った。
「
「へえぇぇぇ」
ダリルが舌なめずりをしてみせた。
「顔立ちは整っていやがる。さすがは、《月の出来損ない》。あの、ラウラ・ボーデヴィッヒを彷彿とさせる容姿……へへへっ……たまんねえなァ」
クロエは敵意を感じ取り、銃口をダリルへと向ける。
直後、風を感じた。部分展開した
クロエが銃口を引くよりも速く、彼女を絶命させるには過剰な戦力でもあった。
ダリルは動けずにいるクロエの側に立ち、清楚なサマードレスの裾をつまんでみせた。夏らしく薄い布を持ち上げ、ショーツの模様を確かめる。
「ダリル・ケイシー……」クロエが侮蔑する。
「あ? 《出来損ない》、少しでも動いてみろよ。殺すぞ」ダリルが相応の返事をし、あからさまな殺意を放出する。
クロエが不服を申し立てるように、チ、チ、チ、と舌打ちした。
「シギュンっ! 見ろよっ!」
「断る」即答だ。
「…………チェ。おばさま、おばさま、これを見てくれませんか」
ダリルはサマードレスを持ち上げたまま手招きした。
スコールが屈み込むまでの間、ダリルはクロエをショーツへと手を伸ばし、愛撫するかのように生地の上から弄んだ。
「……まぁ」
スコールの感嘆を耳にしたダリルは、目を輝かせ、動けずにいるクロエの股間へと顔を近づける。
「すげえ……びっくりしたぜ、まさかクロエ・クロニクルが
股間に息をふきかける。
クロエの背筋が震え、慣れぬ優しい刺激に反応した。
たちまち硬く反り返ったそれは、男性器と何ら変わりなく、ダリルとスコールを感激させてしまった。
「女装が趣味? それとも心が女の子?」スコールが囁く。
「おばさまが訊いてくれているんだ。答えろよ」
「………………どちらでもない。女、だから」
口笛が聞こえる。
「……そーかい。でも、そんなのは、どっちでもいーや」
ダリルはクロエの肉棒を露わにすると、亀頭を指先で軽くつまみながら、裏側を慈しむようにゆっくり舐め下ろし始めた。無毛の陰部を探検し、根元に女性器あるのを確かめた。
「へえぇぇぇ、本当に女だったか……、処女? それとも童貞?」
パクリと亀頭を口に含む。クロエは突如として降り注いだ刺激に背筋を震わせる。
「……ち、違っ」
「………………へへ、じゃあ、オレが初めての女ってことか」
熱い鼻息で産毛をそよがせ、張りつめた肉棒を口に含む。
ダリルは久しぶりの肉棒がたまらなく愛おしくなり、幸福をクロエにもわけ与えるべく、唾液たっぷりと溜めてから亀頭へとむしゃぶりついた。
「へへっ……」
幹を丸く締め付けて吸い、口の中ではクチュクチュと満遍なく舌を絡める。肉棒全体を生温かな唾液にどっぷりと浸す。
「……やめ、やめてくれ……。いやだ、いや……」
「はふはふはふぅ、……うめえぇ、男のチンポなんて久々だぜぇ……オレの口マンコ……すげぇだろぉ……」
「やめ、やめ、やめて……」
クロエは刺激のあまり、膝を折る。
ジュププププ……卑猥な音を立てながら、ダリルは顔を小刻みに上下させた。クロエの亀頭がピクピク震えてきたのを察知し、徐々に摩擦を強めて刺激を増やしていった。
何往復か耐え抜いたのち、背筋が震え、風がそよぐ。身体の奥底から抜け出ていく喪失感、そして強烈な多幸感に包まれていった。