【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
年を追う毎にかわいげのなさが加速していった利守のことだったから、単身東京に出ていくと聴いたときは心配したものだった。しかし、それは杞憂だったらしい。こうして夏休みに「課外授業」に来た彼ら1年生は、とても仲が良さそうだった。特に、伏黒恵という少年と――
(いや近くね?)
影宮は思った。
それは夜行の面子との稽古の最中。伏黒と利守はどうやら作戦会議をしているらしい。耳打ちをし合っている、それはいい。それはいいのだ。
問題は、近すぎることだ。
この暑いのに長袖の黒ずくめの制服なのもそうだが――あとから聴いたところだとこれでも薄手素材らしい――、それにしたって暑苦しいほどに近い。近すぎる。
(呪術高専ってこれが普通なのか?)
影宮が顎に手を添えた、そのとき、隣に少女が立った。茶髪の彼女は、確か同じ1年の釘崎野薔薇と言ったか。彼女は影宮を見もせずに言う。
「言っておきますけど、あいつらの距離感はバグってますからね」
心を読まれたかと思った。否、多分彼らの距離感を疑問に思う人間が他にいたに違いない。現に、巻緒が絡みに行っている。
「なぁなぁ、君たちやたら距離感近いけどどれだけ近づけるの?」
「は? 近くないでしょ」
「同意」
「いや近いよ? だいぶ近いよ?」
利守も伏黒も怪訝そうだ。しかし巻緒は挫けない。彼は手を広げながら重ねて言った。
「そこまで顔が近いならどこまで近づけられるのか見てみたいんだけど」
「まぁ別に良いけど」
と言いながら、利守は顔をゆっくりと伏黒に近寄せる。利守の方が上背があるので彼が屈む形だ。それに対し伏黒も顔を近寄せた。
結果。周りから悲鳴が上がった。
「近い近い近い!」
「ここで後ろから押したらキスできちゃうぞお前ら」
「寧ろこれガンつけあってない? メンチきってない?」
「近づけろって言ったのあんたらでしょ」
顔を近寄せたまま2人は文句を垂れる。
それらの光景を眺めていた正守が、五条の前でにこやかに言った。
「これで利守が女の子だったら、伏黒くんになら任せられそうだなぁ。どこかの誰かと違って誠実そうだし」
「へー誰の話でしょうね」
五条は目隠し越しに笑った。目が笑ってないことだけは、傍に控えていた刃鳥にもありありとわかった。
「ははははは」
「ははははははは」
――一連の流れを見ていた幼い兄妹。6年前に夜行に保護された彼ら。妹の方が怯えた。
「お兄ちゃん、頭領とあのお客さん……五条さん? 怖い」
「見るな遥」
遠はそっと妹の目を塞いだ。
了