【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼「伏黒の最後は決まっている」「(メインキャラの1年+五条が)1人死ぬか1人以外全員死ぬ」と聴いて浮かんだ話がこれです その流れだとこのコラボシリーズで高専にいる利守も危ないんじゃ……? となった結果
pixivより転載
当初、それはなんてことのない呪霊退治のはずだった。だからこそ、1級術師に昇格したとはいえまだ高専生の自分たち2人だけが派遣されたのだ。
そこに、呪詛師がいたのが計算外だった。
冷たくて熱い。そんな感触がした。
「あ……?」
腹から、何か出ている。尖った脚のようなもの。それが自分の背中から貫通した呪霊の脚だと気付いた瞬間、口から血が溢れた。
「がっ……」
「利守!」
それまで、この一帯を何らかの方法で呪霊で満たしていた呪詛師と対峙していた恵がこちらに駆け寄ってくる。馬鹿。来るんじゃない。目の前に集中しろ。そう言いたいが、灼熱のような痛みと声を出そうとする度に溢れてくる血でどうしようもない。目の前が暗くなってくる。冷めていく体。血で湿っていく体。そんな中で、確信に至る。
(これはもう駄目だな)
「利守! おい、しっかりしろ!」
僕の腕を掴んで引き立たせようとする恵。しかし僕の体は既に言うことを聴かない。こんなときに脳裏を過ぎるのは兄たち、父、祖父、故郷の幼馴染みたち、そして母のこと。あぁ、これが「走馬燈のように」というやつか。血を吐きながら初体験にして恐らく最後の体験であろうことに感心する。恵の声が遠くなってきた。呪詛師はどうしたのか。なんとか力を振り絞って見遣ると、向こうで呪詛師はにやにやとこちらを見ていた。なるほど、若い呪術師たちが悲劇に陥っているのを愉しんでいるわけか。いい趣味をしていることだ。そんな皮肉も口に乗せられない。黒鍵の1本でも投擲してやりたいところだが、あいにくと恵に腕を掴まれて立っているのがやっとだった。くやしいな、と思う。呪術師に悔いのない死に方はないと聴いていた。墨村家を呪術師の家系に切り替えるためにどんなことでもするつもりだった。そう言えば正兄のところの子どもはいつ産まれるんだっけ。夜未義姉さんは大丈夫かな。無痛分娩もありだと思うとか言っていたな。あぁ、思考がまとまらない。
ふと見ると、恵が見ていた。当たり前だ、ずっと腕を掴んでくれているのだから。でも、なんでそんな悲愴な顔をしているんだろう。言葉が血と共に溢れた。
「大丈夫、恵、大丈夫。僕は大丈夫だから」
「利守!」
ずるりと体が落ちる。膝から崩れ落ちて、恵が僕の体を抱えた。駄目だよ、血で汚れるよ。まぁ制服は黒いからわかりづらいだろうけど。そう思いながらも、自分の意識の限界が近いことを感じていた。だから、これだけは伝えなければ、と、声を絞った。
「恵」
「なに、」
「幸せになってね」
言い終え、満足した僕は、そのまま事切れた。
だから、僕は止めることができなかった。
「布瑠部由良由良――」
呪詛師が、下卑た声をかけてきた。それは認識していた。しかし言葉の内容までは把握してない。ただわかることは、この呪詛師が相当な実力を持っていること。この呪詛師がいる限り、この一帯から呪霊は消えないこと。
それと、この呪詛師は利守を殺したこと。
だから、迷いはなかった。
渋谷のときと違い、今は虎杖が、つまり宿儺はいない。だから、自分がどうなるかをわかっていて俺は「それ」を呼び出すことにした。
そして今、俺もまた死に瀕している。否、確実に死ぬだろう。あのときより丈夫になったらしく、殴り飛ばされて岩壁にめり込んでもまだ意識はわずかに残っていた。魔虚羅の意識は、必死で抵抗している呪詛師の方に向いているらしい。それを見たのち、奴らと俺の真ん中で倒れている死体を見る。利守だ。茫漠とした意識の中で、奴の死体を見ながら思う。
(だから友人とは呼びたくなかったんだ)
出会ってしばらく経った頃。虎杖も釘崎もいなくて2人きりだったあの頃。すっかり仲良くなってしまった利守に対して、好悪が入り交じった感情を抱いていた。一緒にいても沈黙が気まずくない相手。家族のような存在。けれどそれでも、利守を友人と呼びたくなかった。
津美紀に似ている。そう思ったから。
(津美紀にどこか似てた。不幸になる善人の匂いがした。そんなのを懐に入れて、いつか失う痛みに耐えられる気がしなかった。でも)
ふ、と笑みがこぼれる。
「もう、とっくの昔に懐に入れてたんだな」
ひとりごちたのち、がくりと俺の意識は落ちた。
そして2度と目覚めることはなかった。
記録――
20××年×月
●●県●市にて発生した複数の呪霊及びそれらを主導していた呪詛師の死亡が確認
及び、派遣された高専生2名が死亡
了