【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼リアル書き手が3年半ぶりの生理で苦しんだ結果生まれたネタです
▼にょ利ってお母さんの守美子さんが子ども3人もぽんぽん生んでるし生理痛とも無縁そうな感じっぽいですが、にょ利は普通に生理痛重そうだなって……
pixivより転載
ナプキンの予備は昼用も夜用も多い日用も買いだめしておいたから大丈夫だ。生理用ショーツもある。そちらの心配は要らない。
問題は、付随する症状にあった。
釘崎の部屋。雑誌のページを繰っていた彼女の部屋に、やけに陰に籠もったノックの音。「どちら様?」と顔を上げると、ギィィ……とやけに雰囲気のある扉の開け方。
果たして、そこには墨村利守その人がいた。顔色は真っ青だし、眉間は極限まで顰められている。何より腹が痛そうだ。それにすわ呪いか、と立ち上がったところで、利守は掠れた声で言った。
「野薔薇、イ○かバ○ァリン持ってない……? 切らしてて……医務室にまで行くのしんどくて……」
「あぁ、成る程。生理ね。ナプキンは大丈夫?」
釘崎は忽ち了解して、手に持ったままだった雑誌を床に放り出す。よろよろと部屋に入ってくる利守を出迎えた。
「それはばっちり……この間買いだめしといた……」
「薬ならあるから、今水持ってきてあげるから私のベッドで寝てなさい。相当辛いでしょそれ」
「うん……悪いね……」
釘崎の言葉に甘え、ベッドに倒れ込む。枕からは釘崎の染色料とシャンプーの香りがした。腹を抱えて蹲る。
利守の生理痛はひたすら下腹部が痛むものだ。しかしこれが中々厄介で、月によっては月経が終わるまで笑って話していられるときもあれば、1日中寝込んでいたいときもある。区々なのだ。今回は重いパターンだったらしい。うーんうーんと唸っていると、思ったより早く釘崎は帰ってきた。手には盆が載せられている。なんとか起き上がると、机にそれを置いた彼女はマグカップを持ってきた。握り替えすとほんのり温かい。目を瞬いていると、
「お腹減ってるんじゃない? せめて飲み物でも入れておいた方がいいんじゃないかって。ホットはちみつミルクにしたんだけど」
「有難う……温かいミルクが身に沁みる……」
「私はイ○派だからイ○しかないけど、効かないようだったら硝子さんのところに行きなさいね」
「うん……有難う……有難う……」
月に1度の恒例行事とはいえ、精神が弱る時期に優しくされると嬉しい。ホットミルクを飲み終えて、出された薬を飲むと、部屋を出ようとする。
その手を引き留められた。
「? 野薔薇、どうしたの」
「あんた、今飲んだばかりで薬が直ぐ効くわけじゃないでしょ。もう少しここで休んでいきなさい」
「悪いよ……」
「何言ってんの。どうせ女子寮でこうして過ごす以上あんたに世話になることもあるでしょ。そのための貸しよ」
「はは、そっか」
精神的に若干余裕が出て、笑みがこぼれる。そしてお言葉に甘えて、再び釘崎のベッドに倒れ込んだ。釘崎はベッドを背もたれにすると、クッションに座って雑誌を繰りはじめた。その音をBGMに、うつらうつらとしてくる。
心地よい部屋。心地よいベッド。心地よい友人。まだ腹は痛かったが、多幸感というべきものが心を占めていた。
そろそろ寒くなってくる季節だ。来るべき冬の生理のためにもホッカイロを買っておかないとな。ほっかぽか将軍は高いけど良いホッカイロなんだよな……
「あら、寝た」
釘崎が見ると、利守は健やかな寝息を立てていた。それに嘆息しつつ、そっと蒲団をかけてやった。そして、利守の代わりに鎮痛剤を取りに医務室に向かった。
そんな、涙の温度をした記憶を思い出す。
「術式で状態を保護しているが、これは……」
渋谷、家入の救護所。同じ班の2人が重傷を負ったことで治療を受けに来たとき、そこに見知らぬ青年――あとから訊いたところ京都高専の生徒だという――が駆け込んできた。曰く、「たぶんもう死んでいるけど、できる限りのことをして欲しい」。
抱えられてきたのは、釘崎だった。
左目が抉られている。目とは脳に近い。重傷を通り越して重体だ。家入が慌てて治療を施す中、自身は手当てを受けている同じ班の人たちに声をかけられていた。
「墨村さん、大丈夫?」
「墨村、無理するなとは言えないけど、今は無理を押し通して欲しい。だから」
「わかってますよ」
言いながら、自身は、顔の治療を施している家入の横。釘崎の脚に触れた。
ひどく、硬く、冷たかった。
涙の温度とは、程遠かった。
了