【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼ご教示頂けて呪術廻戦電子書籍で2巻から4巻まで手に入れました 5巻は紙で入手できたのでそれが来るのを待つ予定
pixivより転載
入学して2ヶ月。すっかり勝手知ったる伏黒の部屋で寛いで本を読んでいた様子の利守を見ても、既に彼は気にも留めない。代わりにと言わんばかりに、鞄に荷物を詰めていく。それを見た利守は、「どこか出掛けるの?」と起き上がる。それに構わず伏黒は着々と荷物を詰めていった。
「任務が入った」
「あ、そうなの」
それに対する利守の反応は簡素なものだ。この2ヶ月の付き合いでこういう奴だと既に把握していた。なので作業を進めていると、利守は珍しく追及してきた。
「それって僕が詳しく訊いていいやつ?」
「いいぞ」
「どこ行くの?」
「仙台」
「お土g」
「土産は買わない」
「えーケチーケチーケチ黒恵ー」
「人に珍妙なあだ名をつけるな」
唇を尖らせる利守。180cm以上の大柄な男がしているのであまりかわいくはない。それに構わず利守は拳を固めて振る。
「仙台って言ったら美味しいものいっぱいあるじゃん!」
「それどころの任務じゃないんだよ」
洗面道具を詰めながら、そう言えばTシャツは余分に入れておこうと思う。返り血がつくこともある。そんなことを思いながら、利守に訥々と説明をする。
「特級呪物を取ってこいって任務なんだよ」
「そりゃやばいね。でもお前二級じゃなかった?」
「まだ呪術師界隈に詳しくないなお前。よくあるんだよこういうことは」
「ふーん、大変だね」
「他人事か」
簡素な応えに呆れる。しかし、利守は存外真剣そうに答えた。
「それは冗談として、死なないように頑張ってね」
その言葉に、自身は肯くしかなかった。
そして今、伏黒は大層面白くない気持ちで呪術高専に帰り着いた。出迎えた利守は――空間支配系能力者らしく空間の変化に敏感だから遅れてくるといつも出迎えに来る――、自身の姿を見て、思わず噴き出しそうになった。
「恵お帰rうっわボッコボコ。笑う」
「笑うな」
「任務は無事済んだの?」
それに、伏黒は答えない。首を傾げる利守に、彼は続けた。
「……そのことでお前の家に話が行くかも知れない。封印関係で」
「へ?」
「それじゃあ俺はこれから術師の治療を受けてくる」
「ちょっとどういうこと? ねぇ?!」
かくして伏黒の言葉は現実となった。
五条悟が、次の日の授業ののち、利守を呼び出したのだ。伏黒と共に。そして尋ねる。
「ぶっちゃけさ、両面宿儺の封印ってできる? 君んちの技術で」
「は?」
利守は解せなかった。たしかに両面宿儺は史上最悪最強の特級呪霊だ。しかしそれと自分たちの家の技術に何の関係があるのだろう。まだまだ呪術師界隈に詳しくない利守は途惑いつつも、真面目に答えることにした。伏黒は黙っている。顎に手を添えた。
「うーん、僕から言わせてもらうと……まず魂蔵持ちを用意します」
「初手から難易度ルナティックかな?」
「あの……話の腰を折るんですけど魂蔵持ちって、確か呪力の塊みたいな存在のことですよね」
「お、さすが恵。よく知ってたね」
五条が言う。
「魔術界隈だと『聖杯』『夜の愛し仔』とも呼ばれる存在だね。膨大なパワータンク。魂蔵持ちは任意の相手に力を与えることができるというけど……」
「はい。その前提で話すと、その魂蔵持ちを用意したら、次にその魂蔵持ちに最高に愛された結界師を用意します。ね、簡単でしょう」
「もうそれ駄目だよね。つまり不可能って言ってるよね」
伏黒の耳にもそれは「不可能」と同義語に聞こえた。しかし、利守はうっすらと笑みを刷いた。
「……まぁ、まるっきり不可能というわけじゃないですよ」
それはごく小さな声だった。
「それじゃ俺はこれで」と立ち去る伏黒。彼が先に辞したので、自身もそれに倣おうとした利守は、「あぁ、そういえば利守」と呼び止められる。ドアノブを掴んだ手で振り向かずにいらえを返すと、五条は飽くまでいつもの調子の声で言う。
「墨村家にそういう方法が伝わっているってことは、つまり『そういうこと』を嘗てやったということかな?」
「――」
「それと6年前に、烏森が弱体化したこと。同時期に『墨村守美子』の失踪届が出されたこと。これらは、果たして偶然かな?」
利守は取り繕って、平板な声で答えた。扉を開ける。
「さぁ、どうでしょうね」
後ろ手に扉を閉めた。
そして扉を背に、内心で呟く。
(だから嫌いなんだよな、あの人)
あの目隠し越しの双眸が見透かしてくる。自分たちが「良し」とした行いを。自分たちが全員――全員というわけではない、次兄だけはどこまでも悪足掻きしたという――納得した行いを。
家族ひとりを犠牲にして成り立った平穏を、あの男は見透かしてくる――
(……来年は、母さんが「失踪」して7年だな)
そのときは忙しくなるだろう。そう思いながら、利守は廊下を歩いていった。
End.