【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼この時点ではクソな連中がたくさんいる禪院家に君臨することになる伏黒と、そんな彼と結婚することの意味をよく知った上で「ずっと一緒にいるよ」という利守 というのがミソです
pixivより転載
――真希と恵の話は聞いていた。
彼らは聞かせるつもりはなかっただろう。しかし、病院の待合室。そこで3人分のジュースを買ってきた自分は、静まり返ったそこで話し合う2人の言葉を聞いていた。
それで、あぁ、恵の自由はなくなったんだな。そう察した。
……妹のことを出されれば……きょうだいの絆に弱い恵には、応えないわけにいかないだろう。
そこが、好きだった。
真希がいなくなったあと。
「ジュース、1本余っちゃったね」
自身は、はっと振り返る恵に笑ってみせた。そして「僕が2本もらうね」と言いながら、缶コーヒーを投げ渡す。危なげなく受け取った恵に再び笑いながらプルタブを起こすと、恵は逡巡しているようだった。
理由はわかっている。先ほどの話を聞いていたから。
『分かりました』
僕はその言葉を聞いて、あぁ、彼らしいなと思った。
理性で考えて感情で判断する。そういうところが、恵にはある。
そういうところが、好きだった。
――恵は覚悟がついたらしい。オレンジジュースを飲む僕に、彼は言う。
「ごめんな、利守」
まずは謝罪。
「なにが?」
僕は答える。
「俺、禪院家を継ぐことになった。だから、お前とは」
「? 何言ってるの」
「えっ」
俯き加減だった恵が顔を上げる。僕はジュースを一気に呷ったのち、2本目のジュースに手を付けた。今度は桃味だ。そして僕は言った。
「そりゃ僕は家を継ぐ必要があるけどね。それも絶対ってわけじゃないから、何とでもなるよ。3人も兄弟がいるんだもん」
「でも」
「わかってないな、恵」
僕は言った。小首をかしげて。
「お前なら、どんな場所にだって嫁に行っても吝かじゃないって言ってるんだよ」
「――わかってるのか。あの、禪院家だぞ」
恵は言葉を募らせる。
「あそこは間違いなく女のお前を不幸にする。苛む。当主という立場上、お前を守ってやれないこともあると思う。なのにお前は」
「何度も言わせないでよ、恵」
僕は缶を片手に笑った。苦笑の類だったかも知れない。
「それでもお前の傍にいたいんだよ」
「――」
「で、返事は?」
空き缶を恵の分まで結界で潰す。小さくなったそれらを屑籠に放りながら、僕は問うた。
恵は、……今まで見たことのない顔をしていた。
「……じゃあ、えぇと。どちらにせよ。結婚してください」
「喜んで」
僕は恵から伸ばされた手を、両手で包んだ。冷たくて硬い手だった。
それを、柱の向こうで聞いていた真希は、頭を掻きながら思う。
(……若い2人の門出に、あの家は相応しくないよな)
そんなことを思いながら、今度こそ病院を後にした。
このあと起きる惨劇など、誰も思いもしなかったのだ。
了