【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼呪術24巻でショックのあまりとうとう手を付けていなかった転生ネタをしこしこと書きました
審神者名
転生利守:千歳
転生伏黒:桂冠
pixivより転載
僕はこの世界の存在ではないことは、幼いうちにわかったことだ。前世と同じ墨村家に生まれ育ったけれど、それが「結界師」であることが僕に疑問を抱かせたのだ。
前世の僕は家督のお鉢が回って来た際に呪術師を志し、色々あったけれどなんとか生き延びた僕は墨村家を呪術師の家にしたはずだ。なのに、それから200年経った墨村家は結界師の家柄だった。調べたところ、呪術師と言うものがそもそも存在しない。
紆余曲折の末、僕は恐らく並行世界の未来に転生したのだろうと結論付けた。そして同時に寂しさも覚えた。
(嘗ての僕を知っている人はいないんだな)
家族や友人は優しい。ただ、僕が5歳の時に生まれた妹は最上位の空間支配系能力者で、その後彼女が4歳のときに政府に連れて行かれた。――僕が審神者になろうと決めたのは、このときだ。
今生でも結界師としてミソッカスで、でも霊力はあったから審神者になるには十分だった。両親とは色々もめたけど、政府からもスカウトが来ていたから僕が中学卒業と同時に審神者になるには十分だった。
――けれど、僕はそこで郷愁に暮れることになる。
前世では、僕の人生が変わった2度目の転機が呪術高専に入学したときだった(1度目は言わずもがな、烏森の封印後だ)。僕は、そこで黒髪ウニ頭の少年と出会ったのだ。
彼とは、2人きりだった2か月間で親しい友人になった。本の貸し借りをし、寮の彼の部屋に入り浸る。戦闘では互いにサポートし合った。中学までの友人とはまた違う、自分の異能者としての一面を見せられる業界でのはじめての友人だった。
本当に親しい友人だったのだ。それは、彼の介錯を務めたほどに。
――伏黒恵と言うその少年は、両面宿儺と言う特級呪霊の器にされてしまったのだ。
宿主となった彼の全力の抵抗で、僕は彼を殺せた。仲間の中で、僕が最も攻撃が通っていたのだ。友人の生首が転がるのを、僕は見下ろしていた……。
本丸と言う戦場の最前線では、負傷した刀剣男士の血の匂いを嗅ぐたびに思い出してしまうのだ。友人の死体を。死に顔を。宿儺の驚愕の顔が刻まれてしまった、大事な友人の死に顔を……。
「主ー」
不意に呼ばれて顔を上げる。そこは本丸の執務室で、開け放っていた障子の向こうから顔を出したのは初期刀兼近侍の加州だった。
「何?」
「なんかさ、政府から演練場の結界を修復して欲しいって」
「またか……」
――さて、この世界線の墨村・雪村両家は政府に食い込んでいる。特に本丸を主とした空間の結界を組み込んだ。間流は術の簡便さに重きを置いている。ゆえに素人にも扱いやすいようになっているが、その基礎はそもそもその間流ゆえに、修復にはこの流派の結界師が呼ばれる。僕はまだ新人だが、結界師としては修行を積んでいるので呼ばれることは多かった。僕はよっこらせと腰を上げる。背筋を伸ばしながら「ついでにウチの部隊も演練に行こう」と加州に声をかけた。
このときの僕は、前世の追想をしてばかりで、今生に気付いていなかった。
「これでよし、と」
「お疲れ様でした、千歳様。会場を解放します」
演練場の前には「関係者以外立ち入り禁止」という立札があって、演練場の控室には人がごった返していた。僕が演練場に入って結界の修復を終えると、政府のこんのすけが挨拶をして去っていく。僕はそのあとをのんびりと歩いて行った。ウチの本丸の部隊も向こうで待っているはずだった。
案の定そうで、大きな出入り口からウチの部隊が駆け寄って来る。審神者や刀剣男士の大勢とすれ違う中、僕は先頭の加州に声をかけようとした。
「――」
ビー、と警告音が鳴る。それははじめて聞いたが、審神者研修生時代に習った音だ。
真名秘匿システム――審神者が真名で呼ばれたときに、それが周囲に漏れることのないように周囲には警告音に掻き消えて聞こえるようにするものだ。なお、名を呼んだものと呼ばれたものはそれがなんなのかがわかる。
今の僕は、名前を呼ばれた。真名だ。前世と変わらぬ名前。
声にも聞き覚えがあったのだ。
(そんなのありえない)
僕は期待を自分で押し潰そうとする。けれど、声が、僕の真名を呼ばれたことが、僕の期待を膨らませる。
僕は振り返った。すれ違いざまの、面布の少年。黒髪の諸所が飛び跳ねている――彼が、陸奥守を連れて立っていた。「どうしたんじゃ主」ときょとんとしていた。
僕は恐る恐る、その名を呼んだ。
「―」
再びけたたましい警告音。それで、僕は、1歩、2歩、3歩。彼の元に歩み寄った。
半径1m以内に入ったところで、彼は、面布を上げた。
――あれほど夢に見た友人の顔が、そこにあった。
僕の目から涙が溢れた。
「――ごめんね……!」
僕の口を突いて出たのは、そんな言葉で。面布を上げたままの友人は――伏黒恵その人は、頭を振った。
「……俺こそ、お前に手をかけさせて、悪かった」
僕は、――彼に縋り付いた。
おいおいと泣きながら恵にしがみつく。僕らは衆目を集めたしそれぞれの刀剣男士に事情を尋ねられたけど、僕も恵もそれどころではなかった。
前世でからからに乾いていた涙腺が、決壊してしまった。――僕の背中に手を回した恵は、何も言わなかった。
それはただひとつの奇跡。
世界線を越えた2つの魂が再び相見えた。ただそれだけの。
「めg……桂冠、遊びに来たよ~~」
「とs……千歳、お前仕事はいいのか」
「ちゃんとやったもん! ね! 加州!!」
了
転生利守
・並行世界の未来の墨村家に長男として転生
・前世で伏黒宿儺を討伐したあとから、今生で伏黒に再会するまで感情が死んでた。なので過去の彼と現在の彼を知る者からすると「あれ? 笑うようになった?」と驚かれる。
転生伏黒
・並行世界の伏黒家に転生
・今生では一般人のはずだが審神者適性があったため審神者になった
・利守にはずっと悪いことしたなと罪悪感で押し潰れそうだったので再会後はちょっと笑うようになった