【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼物語を終わらせたくないという理由で呪術の単行本29・30巻1年放置してたんですが、そろそろ呪専生利守がまた書きたくなってきたのでけじめをつけるために読んできました
pixivより転載
家入から預かった、五条の手紙だという。
それに露骨に顔を顰めたのは釘崎と伏黒だった。釘崎など吐かんばかりだ。
「手紙……」
「分かる、らしくなさすぎる。書いてるとこを想像すると若干キモい」
「ひっでえな」
「はは」
虎杖が苦言を呈す中、利守も笑う。そして、ふと思う。
釘崎や伏黒への手紙の内容は、それなりに想定できるものがある。しかし、自身へわざわざ手紙を遺す意味がわからない。利守は本気でそう思っていたし、あるとすれば面識があったという利守の母の守美子についてだろうか。利守はそう考えながらも、封筒を矯めつ眇めつ眺めた。「としもり」という簡素な宛名に、自画像らしきイラストが描かれている。ヘタウマというやつだろうか、味があるな、と利守は思った。
伏黒が言う。
「……3通しかねぇぞ」
「俺の分はないよ」
虎杖は言った。
「俺は直接話したから」
「……そうか」
「さっさと開けましょ」
釘崎に促され、伏黒と利守は封筒を開いた。
「げ」
釘崎が口を開ける。
「五条先生、なんて?」
「手紙じゃないわよ、ただの情報。うちの母親が今どこで何してるか」
「ふーん、知りたかったの?」
「別に興味ないわよ」
そう言いながら、釘崎は便箋を握り潰す。
彼女は頬杖を突きながらぼやく。
「でも流石っちゃ流石ね。よくもまあ、あんな女の居所を……」
「ぷふ、くっ」
「特級権限かしら……」
──漏れ聞こえてきたそれに、3人はいきり立つ。
「恵!?」
「笑ってる!! 伏黒が!!」
「気になる!! 見して!! 見ていい!?」
「釘崎と似たようなことしか書いてねぇよ」
そう言いながら便箋を3人に渡す。
……利守はドン引きした。それは他の2人も同様だった。
「………えードン引きなんだけど」
「なんで笑ってんの?」
「恵、笑いのツボ変わった?」
手紙には、伏黒の父親は五条が殺した旨が気軽につづられていた。
その中で、伏黒は笑っていた。
笑いながら、利守に尋ねて来る。
「そう言うお前の手紙は?」
「んー」
そう言いながら、利守は3人にぺろりと便箋を渡した。
「僕の想像通りのことしか書いてなかった」
『利守~! 君のお母さんの居場所結局わかんなかったんだけど!?』
「人妻に執着するアラサー男怖」
釘崎の言葉が端的に状況を表していた。
──利守は、封筒の中に入っていたもう1通の手紙を隠し持っていた。
『拝啓 墨村守美子様
憶えておいででしょうか。僕は嘗てあなたに助けられた子どもでした。
あれから時が過ぎ、僕は人を大勢助けられるようになりました。
けれど、あなたが消えた先のことを僕は知りません。
あなたのご家族、特に僕の生徒になった末息子が頑なに秘すので、きっと僕はそれを知らないまま死ぬのでしょう。
でも、それでもいいと思えたのです。
僕の永遠はあなたに助けられたあのときの一瞬でした。
切り取られたあの瞬間を僕は胸にして死にます。
想い出を有難うございました』
「これをどうしろって言うんだろうねぇ……」
利守は、丁寧に書かれたその手紙を再び封筒に仕舞いながら、寮の一室でそれをひらめかせた。
「覇久魔に埋めに行くかなぁ。燃やしたってどうせ届かないんだし」
ひとり呟いて、利守はベッドに転がる。
利守は、母の想い出を共有する人をひとり喪った事実を噛み締めるのだった。
(お母さん。あなたが助けた子が世界を救ったよ)
了