【呪術×結界】成長した利守が呪術高専に入学する話 作:駒由李
▼最後本当にどうしようかと思ったんだけど、二次創作なんだからこういう捏造もありだよな! ってことでこうなりました 来栖さんには強く生きて欲しいです
pixivより転載
夢を見た気がする。けれど、それは微睡の中で消えた。
伏黒がベッドから体を起こすと、そこはどうやら寮の自室ではないようだった。内装が豪華だ。呪術高専の中であろうことは察しがついた。日が差し込む。恐らく朝ではなく昼は過ぎているだろうことも察しがついた。
──自分は、随分と眠っていたようだ。
それは暗喩であり直喩だった。
宿儺に身体を乗っ取られ、姉をこの手で殺し、沈められた魂。それでもなお沈み切らなかったのは、利守の生存を信じていたからだ。
その利守は、なんと傍にいた。
伏黒が視線をやった先。彼の横たわっていたベッドの枕元のすぐそば。そこに置かれた椅子に、制服姿の利守は座っていた。こっくりこっくり、舟を漕いでいる。その目元に隈が見え、伏黒は居た堪れなくなる。
──彼女は、いつからここにいるのだろう。
すぅ、すぅ、と健やかな寝息が、しかし不安定な姿勢で繰り返される。ゆらゆらと身体が揺れる。伏黒は、しばし彼女を見つめた。
(生きていてくれて、よかった)
新宿にて、彼女もまた戦闘に参加していたはずだ。そのときのことを具体的に憶えていないということは、宿儺に接敵したわけではないだろう。恐らく皆がわかっていた。墨村利守と言う少女を宿儺が──ひいては伏黒が殺せば、伏黒は2度と立ち直れない。しかし結界術という戦力は惜しい。ゆえに後方支援をしていたのだろうと伏黒は考える。実際のところそれは半ば真実で、半ば間違いだった。利守は確かに空間支配能力で全体像を把握する後方支援で、結界術で足場を作っていた。しかし、彼女は最終兵器だった。どうしようもなくなったときは──彼女の出力の関係上、宿儺に抱きつく形で真界を発動することになっていた。そのとき彼女の命はないだろうと、皆も、利守自身ですら承知の上だった。
そのことは、少なくとも寝起きの伏黒は知らない。
伏黒は、利守の顔に手を伸ばす。頬に触れると、温かかった。それに一層安堵する。する、と撫でる。まろい頬の線。
伏黒は、利守の顔に唇を寄せ──
「……なんだ、起きてたのか」
「……今、何したの」
真っ赤な顔をした利守から、唇を離した。刹那の口づけだった。
伏黒は彼女の頬を撫でたまま笑う。
「なにも」
「嘘吐け! ばか!」
利守は両手を振り上げる。伏黒は思わず防御の姿勢を取った。
その彼に、利守は抱きつく。
思ったより強い力に伏黒は呻き声を上げそうになるが、すすり泣く声が聞こえてきたのでその声を何とか引っ込める。
「……起きてくれてよかった。本当に、よかった」
涙声のそれに、伏黒は一瞬どうしていいかわからなかった。
ただ、不器用に彼女の背中を撫でる。漏れる嗚咽。静かな部屋でしばし響くそれ。
「悪かった」
伏黒はぽつりと呟いた。
「お前を殺さずに済んで、本当によかった」
「──……」
利守は、言葉もない。ただ、抱き締める力をより一層強くした。
──しばしの静寂ののち、伏黒は再び言った。
「前にお前、俺に言ってくれたよな。『お前は幸せになっていい』って」
彼は、言った。
「『お前の幸せを望む人間がここにいる』って」
「……」
「なぁ、利守」
伏黒は、彼女の耳元で囁いた。
「お前と2人なら、幸せになれると思うんだ」
利守は、小さく「……僕も」と呟いた。
「式はいつにしますか?」
「あ、すまん。そっちは予約入ってる。でも右腕になるのは本当だから」
「思わせぶりなこと言いやがってェ!」
「(甘んじて殴られる)」
了