雨上がり。有栖川おとめは噴水の虹を眺めていた。
虹をぼーっと眺めていたが、唐突に耳元からささやき声が聞こえてきた気がした。
「あれれ、おかしいのです」
その声を聴いているとだんだん視界がぼやけてきて、目をこすっても目にゴミが入ったわけでもなかった。
耳があった場所に顔を向けるが、そこには何もなく、やはり耳元から声がしてくる。
その声はなぜかとても心地よく、声による命令は彼女の思考を上書きしていった。
彼女の瞳から光が失われる。
言う通りにすればもっと気持ちよくなれる。耳元で甘い誘惑が彼女をふらふらと立ち上がらせる。
「もっとらぶゆーしたいのです。だから、言うとおりにするのです」
向かう先は藤堂ユリカの寮。
扉を叩くと眠そうに出てくるユリカの姿。いつものツインテールではなく、今は眼鏡にストレートで部屋着の状態。なんでも最近は深夜のドラマ撮影のため、吸血鬼らしく日が昇っているうちは寝ていることが多い。
「ちょっとー、用事があるのですー」
おとめは少しだけ開いている扉に体を滑り込ませ、遠慮なくユリカの部屋へずかずかと入っていった。ユリカが止める暇もない。彼女が行動が予測できないのはいつものことなので部屋から追い返すことはあきらめていた。
「で、用事って?」
おとめはふふーんと得意げにしながら、自分の顔をユリカへ近づけた。
「ユリカたんが吸血鬼としてもっと完璧になる方法を思いついたのです」
その言葉にユリカは吸血鬼として未熟であると言われたような気がして、プライドを傷つけられたことに怒った。
「このユリカ様が吸血鬼として未熟だと言うの? それが用事なら帰って」
おとめはユリカの口元をくんくんと匂う。
「今日にんにくラーメン食べましたね」
ぎくっとなるユリカ。おとめの目は焦点が定まっておらず、どことなく怖い。
「えっと、それは、そのう」
しどろもどろになるユリカ。人間としての彼女はにんにくラーメンが食べたいという欲求に弱い。食べた日と食べない日では気合の入り方が段違いだからである。
「にんにくラーメン食べてるのが吸血鬼として完璧なんでしょうか」
痛いところを突かれている。おとめと目と目が合う。
(あれ、なんだか頭がぼーとして)
強気に突き返そうとしていたユリカの思考が鈍くなっていき、どんどん彼女の瞳から輝きが失われていく。
「その、吸血鬼としてしてはいけないなって思わなくはないですけど」
それに伴って自分の欲望が口から漏れ出てくる。
「じゃあ、我慢できるようにおとめが協力してあげるです」
「いい、ですね」と確認の言葉。
「は、はい」
ユリカは同意するしかなく、彼女の目は虚ろでそこに彼女の意思は存在していなかった。
「こんなので本当に大丈夫なの」
ユリカはベッドである棺に服を全部脱ぎ横たわっていた。
「ふふん、全て任せるのです」
同じように服を全て脱いだおとめがユリカの背中へ手を回す。
すると、その瞬間ゾクゾクとユリカに快感が訪れた。
「ひゃっ! なんで。こんなの初めて」
恥じらいつつもおとめの背中に手を回すユリカの姿におとめはニコニコする。互いに正気を失った目で肌を重ね合わせていく。
「この快感に身を任せれば完璧な吸血鬼になれますよ~」
「そ、そんなわけじゃない」
ユリカの残ったプライドという理性が快感と吸血鬼という全く関係のない因果関係を否定する。
「いいえ、必要なんです。そうでしょう」
おとめはその抵抗の芽を潰すべく、ユリカの目を見つめた。
「は、はい…… うん、そうですよね」
ユリカの惚けていた表情は一瞬無表情になり、ちょっと考え込むように目を逸らしてから今の状況を受け入れた。というより受け入れさせられた。
おとめが局部同士をこすり合わせる。
おとめにはっきりと刻まれている淫紋はユリカにもうっすらと浮かび上がって来ていた。
「仕上げに入るのです。準備はいいですか、ユリカたん」
「は、はい」
力のない返事。ユリカはこの快感に身を任せることが吸血鬼への近道。そう信じ切っていた。
「いち…… くっ……」
「あ…… 来る」
互いに快感がせりあがってくるのを感じた。
「に、ちゅう」
「……ん」
おとめはユリカを見つめてから再び唇を重ねる。
「さん、はっ、はっ、はん、らぶゆーなのです」
「や、だめ、もっと」
おとめは突き上げる快感に身を任せる。
その快感があの声が言っていたことは本当なのだと確信する。
だから、淫紋をユリカに刻む。そうすればもっと気持ちよくなれる。
「よん! あ、あん!」
「あ、だめ、だめ、もうイク!」
ユリカはおとめを抱きしめる手を強めた。
「ごおおおおお!」
「ん、んんん!」
お互いに快感が最高潮に達する。2人とも息を切らせながら互いに目を見つめていた。
「気持ちよかったですね。これでらぶゆーな吸血鬼ですね」
ユリカは不敵に笑う。
「そうね、最高に生まれ変わった気分だわ」
おとめがベッドから降りて、ユリカも起き上がる。
ユリカは虚ろな目で虚空を見つめる。局部にはっきりと淫紋が刻まれていた。
「さっそく新しい眷属を探すわ」
ユリカは服を着替えると電話をかける。
もっとこの快感が欲しい。それはにんにくラーメンを食べるよりもいいことだと知ることができた。
「もしもし、かえで。今どこ? アメリカ?」
さあ、あなたもおいで。私の眷属にしてあげる。
「あー、楽しかった」
おとめはそんなユリカを見て満足げに部屋から出た。
背中をドアに預け息をつく。虚ろな瞳が光を取り戻していき、おとめは先ほどまでの記憶を失う。
「あ、あれ? ここはどこなのですー? あ、いけない。ぽわぷりの集会の時間なのです~」
時計を見て彼女はかけだした。
遅くなりました。すみません。次回は1月16日土曜日22時です。
次回のターゲットは一ノ瀬かえで。お楽しみに。
追記
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