俺が上の空だからか、言葉数も少なく家の中に入り、とりあえずミネラルウォーターを出す。
完全に心の準備に失敗してるなコレ。
「あー……どうする? 先にお風呂沸かそうか?」
「うん、頼む」
「はーい……」
前と同じように、お風呂を沸かす間二人でテレビを見ているが、楽郎との会話はほとんどなく、番組の内容もあまり頭に入ってこない。
いつもよりお湯の溜まりが遅い気がして、ちゃんと栓をしたか不安になってきたころ、給湯器のメロディが鳴った。
「あ。お風呂沸いた」
「今日は一緒に風呂入ろうぜ」
「え……」
楽郎は言うだけ言って、洗面所に行ってしまう。戸惑いながらも後を追うと、楽郎が洗面台を見ながら嬉しそうに言った。
「俺の歯ブラシスタンド、用意してくれたんだ」
「あ、うん」
「さんきゅー」
「うん……てか、ホントに一緒に入るの?」
「なんで? 前も入っただろ」
「……まあそうなんだけど」
言われてみれば、何気に初めてそういうことをした日も、一緒にシャワーしたんだよね。でも、あの時は楽郎がなにか変なことでも企んでいるんじゃないかと警戒しまくっていたから、別の緊張でそれどころじゃなかった。
……結局なにも無かったんだけど。
「ん」
「あ、ありがと」
楽郎が歯を磨きながら歯みがき粉を渡してきたので、流れで俺も自分の歯ブラシを手に取った。洗面台の前に立ち、並んで歯を磨いていると、鏡越しに何度も視線が合う。その度にすぐ目を逸らしていたら、楽郎が片眉を上げて隣の俺を見てきたので、素知らぬふりをした。
歯を磨き終わった楽郎が、さっさと服を脱ぎ出す。俺が歯磨きにモタついていると、楽郎は先に浴室に入っていった。中からシャワーの音が聞こえてくる。
タオルや着替えの準備を終わらせてから、やっと服を脱いで浴室に入ると、すでに全身を洗い終えた楽郎が湯船で寛いでいた。俺も体を洗おうとするが、浴槽のふちに腕を乗せてこちらを眺める楽郎の視線が、気になって仕方ない。
「……がっつり見てくるじゃん」
「そらそうよ」
「洗いにくいんだけど」
「だろうね」
「こ、こいつ……」
「穴の中も洗っといて」
「はっ!? 中は無理だよ!?」
「チンコは入れないから安心しろ」
「チンコ〝は〟ってのが気になるんだけど……」
「いいから洗う」
「うぅ……」
羞恥プレイに耐えながらもなんとか洗い終え、シャワーを止めて振り返る。
「……ど、どうやって入ればいい?」
「んーじゃあ、そっち向きで」
「…………こう?」
「そそ。おー、ケツ」
「ケツって言うな」
二人で入るにはやや狭い湯船に、背後から楽郎に抱きしめられるような格好で入る。
……やばいやばい。めっちゃ照れる。
無意識に前髪を撫でつけて顔を隠そうとする。絶対隠れないから意味ないのに。
「なんでそんな顔赤くなってんの?」
「……なってない!」
「……たまらんな……」
楽郎が俺の顎を掴んで振り向かせ、キスをしてきた。
「……ン…………ねえ」
「……なに」
「〝たまらんな〟ってなんかオヤジくさい」
「おい」
「あはは」
「じゃあどう言えばいいんだよ?」
「んー……〝たまんねーな〟……とか?」
「なんだよその微妙なニュアンスの違い」
さっきまでの緊張も忘れて、つい笑ってしまう。
「本当にクスクス笑うやつ初めて見たわ」
「うそ、楽郎もたまにクスクス笑ってるよ」
「は? いや絶対ないね」
「あるよ! クスクスやってるよ!」
「やってねー」
横を向いてそう言いながら、楽郎は微かに笑い声を出した。
「あ、ほら! 今クスクスって笑った!」
「ええ? これクスクスって聞こえてんの?」
「そうだよ」
「じゃあ結構やってるわ」
「あはははは!」
「笑いすぎ、ハハハ」
「あはは、そっちも笑ってんじゃん」
「これはつられ笑い……こら、笑うな!」
「あはははやめろ! それ逆効果だから! あはははは!」
「ははは!」
脇腹をくすぐられ、身を捩った時にバシャバシャとはねたお湯が楽郎の顔にかかった。
「ぅわ! ちょ、暴れすぎ!」
「ハァ、ハァ、楽郎のせいじゃん……」
「お、今のセリフいいね」
「………………」
「おい! うははは! あ、足の裏は、あはははは……やめろ、この!」
「ちょ、あはははひぃぃ、やだやだやはははは!」
その後もしばらく騒いでふざけあい、浴室から出て脱衣所で体を拭く。
「あー、笑いすぎてお腹痛い」
「そろそろ腹筋割れるんじゃね?」
「俺が筋肉バッキバキになったらどうする?」
「んー、いいんじゃない?」
「マジ? じゃあ楽郎もバッキバキにしてよ」
「ええ……でも本気で鍛えようかな……」
「今運動とかって何してんの?」
「基本走ってるだけだな」
「ふーん。確かに筋肉質ってわけではないけど、引き締まってはいるよね」
「……改めて自分の体見ると、もうちょい筋肉欲しいところだな……」
「健康的だし、鍛えるのは賛成だけど」
「だよなー。……頑張るわ」
「がんばれー」
「腹筋バキバキなったら何かご褒美ちょうだい」
「えー……考えとく」
「エロいのよろしく」
「もう、すぐそういうこと言う!」
「……そんな言ってる? 俺」
「……タブン」
「自信ないのかよ」
「いや! 言ってる!」
「ホントかよ。お前の頭の中がピンクなだけなんじゃねーの」
「…………否定はできない」
「ハハハ!」
すっかりリラックスした状態で服を着ようとすると、楽郎から待ったがかかった。
「上はいいだろ、どうせ脱ぐし。それよりさ、汚してもいいタオルとかない?」
「んー古いタオルは処分しちゃってるけど、これなら使っていいよ」
「ん、ありがと」
「何に使うの?」
「いや、ベッド汚したくないだろ?」
「あー、確かに! じゃあ厚手のバスタオルも持って行こ」
「先行ってるぞ」
「うん」
ダイニングテーブルにミネラルウォーターが無かったので、そのまま寝室に行くと、楽郎がサイドテーブルの上にボトルを置いてくれていた。
「俺のどっち?」
「ラベルある方。剥がしてあるのが俺の」
「了~」
俺が水を飲んでいる間に、楽郎がベッドの上にバスタオルを敷いてくれる。
「なんか、楽郎って女子と付き合っても普通にモテそうだよね」
「……なんだそれ」
「だって半端なく気が利くし、俺の考えてることすぐ察するし」
「…………いや、俺女子がなに考えてんのかなんて、さっぱり分かんねーぞ」
「そうなの?」
「お前が分かりやす過ぎんだよ」
「ええ、まさかぁー……そうなのか?」
「そうなの。つまんねーことばっか言ってると押し倒すぞ!」
楽郎が俺の腰にガバッと抱き着き、そのまま二人でベッドに倒れ込んだ。
「キャーッ! あはは!」
「あれっ、俺いつの間に女子と付き合ってたんだっけ?」
「おい! どういう意味だよ」
「可愛いって意味だよ。ほら口開けろ」
「!!!!」
あんぐりと開いた俺の口の中に、楽郎の舌が入ってくる。
……って違う違う、そうじゃない!
「んん~っ……ンンッ!」
口内を味わい尽くすような濃厚なキスをしながらも、じっと俺の目を見る楽郎に、抗議の身振りをする。
こいつ、絶対面白がってる!
体を押し返そうとする俺の両腕を楽郎が掴んで頭の上で押さえつけ、舌を絡ませ続けながら、下半身に硬くなったものを擦り付けてくる。
「ハァ……、ふ……ンンッ……ハァッ……ん……うぅん……」
俺の理性すぐ楽郎に寝返るじゃん……。
体を這う楽郎の手の温度と俺の体温が融け合う。楽郎の舌が、唇が、丁寧に刺激を与えながらゆっくり下の方へと落ちていく。
「……興奮してきた?」
「…………してない」
「成る程……チェックしてみるか」
「だめっ…………うぅ」
「こっちは大興奮みたいだな?」
「……息子とは縁を切りました」
「へえ。じゃ、息子くんにナニやっても親が文句言うことはないな」
「鬼! 悪魔!」
「何とでも言え」
「ふあッ!!」
俺のスウェットパンツと下着を剥ぎ取った楽郎は遠慮なく俺のを咥え込んだ。舌がうねるように絡みついてくる。
「ハァッ……ハァッ……うぅ……」
タマを触りながら口腔を密着させてひねるように上下に動かれ、一気に限界へと近づく。
「……はあッ、あぁっ……」
出そう……!
その瞬間、楽郎がパッと離れた。
「あ……な、なんで……」
楽郎は俺の両足を開かせると、イク寸前だったものを手で優しくしごきながら、下の穴を舐めだす。
「んは……っ! ちょ、ダメだって……」
丁寧に洗っているとはいえ、そんなとこ舐めさせられない……と、微妙に抵抗を示してみるものの。
ごめんなさい、やっぱ気持ちいいです……。
楽郎は執拗に穴を舐めては舌を挿し込んでくる。快感が頂点に達して頭が真っ白になった瞬間、痛みが走った。
穴に指が捩じ込まれている。
「おいっ……はあッ、あっ、ンアア゛ッ! 待っ、てっ、ハァ……ッ」
痛いのにチンコしゃぶりながらクッソいやらしい音立てんな逆に興奮するだろうが!
ピストンする口の隙間から溢れ出た唾液が穴に突っ込まれた指に纏わりつき、そっちからも音が……。
徐々に痛みが和らいでくると、少し思考にも余裕が生まれる。
……なんだ? 妙な指の動きだな……。
俺のを咥える楽郎と、何度も目が合う。なにか探っているらしい。
「────ァアッ!!」
えっ、なに……あっ、そこ! ヤバイ! そこ、そこ、
「アッ、アッ、あんッ、あんっ、あぁんっ、ああ~! あ゛あ゛~~!」
「………………」
「あ゛~~~~、イック……! イクイクイクぅ────ッッ!!!! はぁあっ……! あっあっあっ……! ハァッハァッハァ……アッ……アッ……」
あ~~、射精後も快感が持続してる……なにこれ……まだ痙攣してるし……てかイク時ヤバいくらい腰ハネた…………。
「すげぇ……声やらしすぎ。メチャクチャえっちだな……」
「──ッ!!」
やらしいのはそっちだよ! ていうか、マジでなにあれ。あれが前立腺ってやつ? こいつ最初から狙ってやがったな……。
「………………」
「あっ、おい……」
俺は、精液を拭っていた楽郎の体勢を崩して押し倒すと、楽郎の下半身を露出させ、腹の上に馬乗りになって強引にキスをしてから、容赦なく下唇を噛んだ。
「いッ……!」
馬乗りになったまま上体を起こして、後ろ手に楽郎のものを強く握る。
「ねえ、すっごい硬くなってるよ? 先っぽから我慢汁出まくって、もうびちゃびちゃだね。俺の喘ぎ声でそんなに興奮した?」
「お、おい……」
「男の喘ぎ声でこんなにお漏らししちゃうなんて、変態だね。ほら、変態さんはこの勃起チンコを男の俺にどうして欲しいの? 言ってみなよ」
「う、くっ……」
「言わないと俺、何もしないで寝ちゃうよ?」
「………………舐めて」
「何を?」
「……俺のチンコ舐めて……」
「舐めて下さい、だろ?」
「…………舐めて下さい……」
「イヤだね」
後ろ手で握ったまま、手を上下に動かしてしごく。
「俺の手マンコに犯されてイケよ」
「ハッ……ハァ……ハァ……ハァ……」
「こんな雑な手コキで感じちゃってるの? 家畜みたいだね?」
左手で楽郎の乳首をひねり上げた。
「あ゛っ……ハッ、ハッ、ハァッ、ハァッ」
手を動かす速度をあげていく。
「……あれ? もうイっちゃうの? ここでやめたらどうなるかなぁ? がっかりしちゃうかなぁ……ねえ?」
「ハァッ、ハァッ、や、やめないで……」
「え? ごめん、聞こえなかった」
「………………」
手を止めると、楽郎は泣きそうな顔で俺を睨んだ。
あは、やば……勃ってきた……。
「どうして欲しいの?」
「…………イかせて欲しい……」
「下さい」
「イかせて下さい……!」
楽郎の顔を眺めながら再び手を動かす。
「これがお仕置きだってこと、分かってる? 痛いことをするなら、事前に告知するべきだよね? こっちにも心の準備ってのが必要なんだよ。ねえ、分かる?」
「ハァ、ハァ、ご、ごめ……」
「聞こえないなあ? またやめちゃおうかな?」
「ハァ、ハァ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい……ハァ、ハァ、あぁ、ハァ、」
「仕方ないなぁ。ほら、俺の顔見ながらザーメンぶちまけなよ。ほら、ほら!」
「うっ──!!」
楽郎の腰が痙攣し、俺の手が大量の精液にまみれた。
「…………すごい。いっぱい出たね?」
「……ハァ……ハァ……ハァ……」
俺はタオルで白濁液を処理すると、腕で瞼を覆う楽郎の唇に軽いくちづけをした。楽郎が、腕を少し上げて片目で俺を見る。
と、急に俺の脇の下に両腕を差し込んで体を引き上げ、そのまま抱き着いてきた。
「わっ! ちょっと、なに!?」
「………………」
「なに……もしかして、イジメすぎちゃった?」
「……なんかペンシルゴンみたいだった……」
「はあ? あんな外道と一緒にしないでくれる?」
「
「ふ~ん……どうやらお仕置きが足りなかったみたいだね?」
「ウソですごめんなさい」
楽郎が媚びるようにキスをしてくる。
「…………もう寝る」
「ふふふ。りょーかい」
タオルを床に落とし、二人でベッドに潜り込む。
「おやすみ、楽郎」
「……おやすみ、慧……」
最後にもう一度、おやすみのキスをした。