ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
大胆になる、とはどういう事なのか。
オレはそれをすぐに理解する。
「あの、だな。とりあえずそれを脱いだらどうだ……?」
「
思わず、オレは手元の本を指からすりおとしてしまった。それだけ、その言葉は衝撃的だったのだ。
普段のダズならオレの意見をとりあえず丸呑みにするが、
それは良いことだ、とオレは新鮮な気持ちになる。ただのイエスマンなだけではなく、自分で考えて行動できるというのは、ある意味成長と言えるだろう。
———だが、その服は脱いだ方がいい。
「その、服として機能がねぇし……風邪、ひくだろ?」
「アニキィ、オレァこの程度で風邪ひくほどなまっちろい鍛え方してませんぜ!」
胸を張ったダズ。乳がぷるんと揺れる。
「だが、女が普段着にする服でもねぇしな……」
「夜の正装がコレらしいですぜ。今はもう夜ですし、これは正しい服でさぁ!」
「機能性がないだろ?」
「そんなことありやせんぜ? 動きやすいし、なにより
「……いやだが、女が着るにしては露出度が高すぎやしねぇか?」
そんなことありませんぜ! と、ダズはニコニコと笑いながら力説する。
「確かに普通の野郎どもなら、ちっとばかし露出度の高い服着てる女の身体にコーフンしちまうんでしょうが、アニキはそんなヤワな男じゃねぇでしょう! 外に出る時にゃあ着替えやすぜ!」
オレは比較的ヤワな男なので、できれば自宅でも普通の服を着て欲しい。
「……いや、しかしだな……」
「なにか、問題があるんですかい?」
オレは必死になって服を脱がす理由を探す。
そんな格好は恥ずかしいだとか言っても、どうせ「アニキが元気になるなら恥ずかしくなんてねぇでさァ!」とか言うんだろう。
元気の方向性を間違えているのである。
というかコイツ、本当に性欲ってものがないのか? 察せないのか? いや、オレが性欲を持ってないとかって神聖視して勘違いしているんだろう。勘弁して欲しい。
……だが、今更それを否定するのもなんとなくカッコ悪い気がして……
「とりあえず、24時間は外出禁止だ」
「そんなっ!?」
「当たり前だろバカ。徐々にってことは、このあともっと酷くなるんだろ?」
「しかしアニキィ、オレは特になにも変わってませんぜ?」
「酔ってるやつは酔ってないって言うだろ? それと同じだ」
むぅ、と聞き分けないダズだが、オレは地面に散乱する本に指を刺した。
「これの整理をしなきゃいけねぇだろ? ちょうどいいよな?」
「それも……そうですね。うっす、わかりやした!」
ちゃんと、理由に納得すれば言うことを聞いてくれるらしい。ダズは早速そのエロい格好のままで本の片付けを始めてしまったのであった。
オレはもう、とりあえず考えるのをやめることにした。ダズのことは、後で考えよう。
* * * *
「アニキィ、もうそろそろ休憩にしませんかぃ?」
中身を全て読まずに、とりあえずカバーのあるものとないものを分別する様にダズに頼んで、オレは本の精査に移っていた。
あれからそこそこの時間が経ったのか、グッと背を伸ばすと骨が小気味よくポキポキと鳴る。
「んっ……そうだな、少し休むか……」
「コーヒー淹れやすね、アニキィ」
オレは意識から排除していたダズを視界に入れた。
張り切って動き回っているダズの、柔らかい尻に視線が吸い寄せられてしまう。後ろから見ると、尻の割れ目上部を隠すように丸々のしっぽモドキがついていた。
歩くたびに尻肉と太ももがムチっムチっと揺れ動くのと同時に、その白いしっぽがふさふさと視線を集めようとしてくる。
率直に言って、
「あ〜〜〜ダズ? お前は座ってていいぞ。オレが淹れる」
「そんな、アニキは座っててくだせぇ」
ぷりんっ!
振り返ったタイミングで乳が揺れ動く。オレの目は思わずそちらに吸い寄せられ……ない。耐え切った。
下手にちょこまか動き回させて乳やら尻やらがブルンブルンしているのはオレの精神衛生の上で誠に良くないため、ダズを椅子に座らせておくことにする。
「はぁ……いや、座れ。いいか? オレはずっと座りっぱなしだったから動きたい気分なんだ、座ってろ。あと……」
オレは着ていた上着を脱ぎ、そのままダズに押しつけた。
「いや〜部屋熱いなァ〜? 上着を脱いでおきたいけど、寒くなったときに冷え切った服着るのいやだなァ〜?」
「熱いですかい? 部屋温度変えやすか?」
「そこまでするほどじゃねェんだがよぉ、例えば……
さっき考えていた作戦、その名も『
「……? へい、わかりやした!」
「よし。温め方としてはこれに袖を通して着て温めておいてくれよ? 頼むぞ? 着るんだぞ?」
オレはそうしてキッチンへと向かった。だいぶ低いところに場所が移動となったヤカンを取り出して、水に火をかけてからインスタントコーヒーを取り出す。
コップに粉を入れてから少しだけ湯を注いで、混ぜ溶かしてからもう一度たっぷりと湯を注いでいく。こうすると比較的粉っぽくならないで済む。
マグを2つ持ってテーブルの方を振り向、くと……
「すんっすんっ……はぁっ……んっ……」
ダズが、オレの服を抱えて顔を埋めて深呼吸をしている。
渡した服、着てねぇじゃねぇか。
「ふぅーっ……ん、あ、アニキィ」
「えぇと、なにしてんだ……?」
「んー……なんでしょうか、こう、服を渡された瞬間にふわっと、においが……」
オレが服を渡してから、ずっと匂いを嗅ぎ続けてたというわけか。そんなに臭かったか?
「いえ、違いまさぁ。臭いんじゃなくて……その、すごくいい匂いだなっていうか……」
「……お、おう?」
「別に男の時は気にしませんでしたが……すぅっ……その、この身体だからでしょうか? アニキの匂い、すっごく落ち着く……」
あわててその服をぶんどり奪る。これ以上好き勝手させるわけにはいかない。
……臭かったわけじゃないんだよな? いいにおいって……どういう意味だろうか? それはその、もしかして男の匂いというかフェロモン的な……? まさかとは思うが、ダズは女としてオレに興奮……いやいやいやいやまさか。まさか!
「そんなぁっ、アニキィ……」
「お前、普段のオレの洗濯物ではやってねぇだろうな?」
「……確かに、普段やっていねぇです……も、もしかしてオレはかなり大胆なことをしていたってぇワケですかい!?」
「今更だな」
なるほど、自覚なしか。
「そうですかい……まぁでも、別に洗濯物のにおいを嗅ぐのは悪いことではないのでは? 別に減るものでもありませんし」
「今度それやったら絶交な」
「そんなぁ!?」
ダズはかなりショックを受けたような顔をしている。
性的なことにクソ鈍感なダズは、そういった変態行為に関する観念もかなり希薄だ。
そのくせオレの匂いに興味を持ったってのは……まさか男だったときに、女性に対してなにか変なことやらかしてないよな? 不安になってきた……
「一応聞いておくが、そういった類のことは女相手にやったことねぇよな? 好きな女の体操服盗むとかそういう……」
「ありやせんぜ」
即答か。
「そもそも恋だとか愛だとかがよくわからねぇんで…… 女なんざ視界に入れる暇もなくて、アニキの背中追いかけるのでオレァ精一杯でさぁ」
と、ダズはニッコリと笑う。そういえばコイツはこういう男だった。
勉強は苦手なのに必死に勉強していたし、天性の肉体を伸ばすために激しい筋トレによる作り込みも行なっていた。オレはそれを間近で見ていたし、その最中に色恋が挟まる余裕は……確かになかったのだ。
興味ゼロではなくて、他ごとに気を取られた結果だというのか? オレはダズの人生の責任なんて取れねぇのに……
「オレにそんな価値ねぇっつの」
「そんなことねぇや! オレはアニキのおかげで
そんなに乳をブルンブルンさせて、下腹や股間周りのたっぷりツルテカなエロ肉を見せつけながら力説されても。
「お前、オレがいつか結婚したらどーすんだよ」
「……アニキに見合う女なんざ、そうそう現れませんが……ま、そんな女が現れようがオレがアニキの一番に変わりありやせん!」
それならいっそコイツを嫁にするくらいの方が……
いやいや、いやいやいやいや待てオレ。
ダズだぞ? ダズは男、嫁にはならない。男に戻さなきゃいけないだろう。それとこれとは別問題で……あれ、じゃあオレダズが男に戻ったら一生独身確定なのでは?
それはともかくとして。
「まぁ……人の服の匂いなんて嗅ぐんじゃねぇぞ?」
「へい、わかりやした。じゃあ
と、言ってダズはオレの正面からガバッと首元に倒れ込んできた。
は? え……?
「???」
「すんすん……あ、これ落ち着く……」
落ち着くな。
「あの、あのダズさん? 待って?」
「へい、何でしょう?」
今、オレは椅子に腰掛けていた。
そしてダズは遠慮なしにそのオレにまたがって、首元に鼻を近づけているのだ。
柔っこい太ももがオレの足の上に乗っている。大きく開脚しているから、ぶっちゃけマン肉が思いっきりハミ出ている。柔らかくて重厚感ある体重がオレに乗ってきているのだ。うっわなんか無駄にいい匂いする?!
同じシャンプー同じリンス、同じ飯を食ってるはずなのに何故か甘ったるくていい匂いがするのは何故なのだろうか?
……まさか、これが女なのか? 女ってのは見た目だけでなく五感全てで女を体現しているのか? 女ってのを知らないから理解できないが、ダズからめっちゃくちゃメスフェロモン出してるの許せねぇだろ。
「だ、ダズっ……お前、今何やってるかわかってんのか?!」
「別に変なことじゃあないでしょう? その……オレがガキの頃も、アニキは抱きしめてくれてましたし」
「今の年齢と性別と服装が問題なんだっつのこのッ……」
オレは引き剥がそうとするが———ダズの怪力に勝てるわけがない。こっちは全力で引き剥がしにかかってるのに、ピクリとも動かず平気な顔してやがる。
「その、大人だから甘えるなんざダメですが……でも、今はちょっとくらいいいかなって思ちまってて……魔法のせいではありやすが、酔っ払いのたわごとだと思って欲しいんでさぁ」
魔法だからと、酔ってるからと言っても、やっていいことと悪いことを弁えろとオレは叫びそうになるのをグッと堪えた。
どうせ今のダズには何を言っても聞き入れられないのだ。納得すれば良いのだろうが、「甘えたい」に対して納得させられる言葉が思い浮かばない。
ハグっていうのはつまり、人間の本能として1番簡単で濃厚な親愛のサインなのだ。言葉が通じなくてもハグができるなら親愛を表すことができる、シンプルかつ万国共通のジェスチャー。親から子に最初に与える愛が抱き締める行為なのだから、その行為以上に「甘えたい」という欲求を満たせるものはないだろう。
しかし
このアホはなんと、下半身はニーハイとミニチュアパンティのみ。上半身も腹は出てるは乳は強調してるわうさ耳だとかもうセックス専用コスチュームを着ているのである。
すなわち、セックス専用ボディをセックス専用コスチュームで梱包された状態。
それを人は据え膳というのだ。
そんなアホにハグなんてされたら、オレの股間がどう足掻いても臨戦状態待ったなしになる。仕方がない。
「ぐっ……くそッ……!」
鎮まれ鎮まれ鎮まれ鎮まれ1、3、5、7、11……あっ無理だ。
素数を数えても無駄、オレはデカクソ乳に敗北していた。
この無防備男女は人を苦痛のチンイラさせて何が楽しいのか。
絶景にして
オレは今、いかにこの下半身のグツグツをバレずに終われるかに集中させねばならないのだ。密着してるせいで、くそ、勃起バレるかもしれないじゃないか。
「すんっ……はぁっ……アニキィ、なんででしょうか、ずっとこうしていたい……アニキで満たされる……」
「やめっ……やめろ吐息がっあっ……あっ……耳元でんな甘ったるい声ッ……ひっ……」
コイツは男コイツは男コイツは男コイツは男……無理だ! どうしたってこんなの女だろ!
なにがいい匂いだよクソ、人の体臭で相性一致アピしやがってクソクソクソッ……ダズのにおいもすっげぇ甘くて優しくていい匂いだな……ふざけんなよ。
こちとら必死にこのエロい女を男だと思って、男として扱おうと必死になってるっていうのに、媚びメスアピールしやがって……風俗嬢でもこんなに大胆なセックスアピールしねぇよ風俗行ったことないけど!
まさしく大胆。行動も肉体もダイナミックがすぎる。
「その、アニキィ……今日、よかったら一緒に寝ませんか? オレぁ体温高いので、湯たんぽみたいにしていただけたらっ……」
「無理」
「あっう、そ、そうですよねっ……ベッド狭いですもんね……」
もしこれでダズが納得していなかったら、おそらくオレの童貞記録はここで途切れていただろう。とても危ないところだった。ベッドがシングルサイズで本当によかった。
「しかしアニキと久々に一緒に寝たいな……うぅん、じゃあベッド運ぶんで……それならいいですよね?」
「無理」
「お願いしまさぁ! きょ、今日だけですしっ……」
なるほど、時間が経つにつれて大胆になっていくと言うのはつまりこう言うことで……ん?
ということは、明日の朝には———
「運び入れましたぜアニキぃ!」
「おいオレまだいいなんて一言もッ……!」
こんな状況だってのに、少しだけ期待しているのが嫌になる。
オレはオレ自身に嫌悪感を募らせつつも、脳みそが下半身に引っ張られていたのであった。