ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
ダズが、オレに、しがみついている。
「ひっ……ひっ……」
柔らかくてムチムチとした巨乳が、身体に密着している。薄布越しだからこそ、突起の硬さもよくわかる。なんで下着つけてないんだ畜生。
暗くした部屋、安く売り出されていた小さいモニターと外付けDVDに、レンタルビデオを入れている。科学都市ではほぼ見かけないような古臭いセットではあるものの、長い
窓の外は雨がごうごうと降り注いでいて、家全体が軋んでいるような風の音も聞こえてくる。まだ昼間だというのに、外は重たい雲のせいで暗くなっていた。
今見ているのはホラー映画だ。
オレはわりとホラーというジャンルに対して平気なのだが、ダズはそうでもないらしくかなり怖がっている。昔から怖がっているくせに、見たがるのはなぜだろうか? このDVDを選んだのはダズである。
「……ダズ、くっつきすぎだ」
「や、あ、すいやせんアニキィ……」
プルプルと震えながらも、少しだけオレから距離を取る。
デカブツだった頃もたしかにこんな反応はしていたものの、小柄な女がやっているとまるで小動物のようだ。
「見るのやめるか?」
「い、いえ……この程度いい加減克服しねぇと、もしアニキにオバケが襲いかかるような事があったときに……」
「いや、ねぇから」
———オバケなんているわけないだろう。
なんて思っていると、唐突に画面が切り替わる。
海の底から現れたのは、8つの足に吸盤を備えて、透明感がありどこか深い赤色の皮を全身に纏い、黄色のまなこをギョロつかせる、見るも悍ましいこの世のものとは思えない生き物である。それが8本足それぞれに長細いピックをもって人をクルンクルンと回していくのだ。
確かにおどろおどろしいが、それが怖いかと言われると……
「ひいィィィイイっ!?」
「……怖いか?」
「こ、こわっ……怖く、ねぇですッ!」
必死に恐怖を耐えようとするダズだが、オレは性欲を耐えるのに必死だ。くっついて離れてを繰り返されるせいで、映画に意識が一切向かないのである。
いっそ石化させて好きなだけ揉んでやろうか……いやいやいや、落ち着け。落ち着けオレの股間。無防備な乳だからといって好き放題していいという免罪符ではない。
いい加減、オレも大人になるべきだろう。
乳が当たった程度でいちいちそんなこと考えてるなんて中学生じゃあるまいし、オレもいい歳したオッサンに片足突っ込ん———
「ぴぎゃああっ!?」
「もぷっ」
———オレの顔面半分が、乳に埋もれる。
あっ無理だこれ。チンコが完全に反応した。
しかしそれも仕方がないのだ。
だってオレの頬に、ぷるんと硬くて柔らかい頂点が当たっている。このうっすい布越しに、あのプリプリの桃色が存在しているのだ。
ただでさえこの柔らかくてクソでかい乳肉が押し当てられてるというのに、そこに乳首も強調されているのである。無理だろこんなのふざけるな。
全力でヤルキマンマンになってくれた股間と、オレの身体にぴっとりと密着しながらも画面を注視しているダズ。
……なんでオレはホラー映画を見ながら勃起してるんだ。
「…………あの、ダズ?」
「ひっ! あ……アニキィ……しゅいましぇん……」
謝りながらも、ずるずるとオレの身体に抱きつくことはやめない。オレの身体に身を預けるように上半身をくっつけて、ブルブルと震えている。
映画は最後のフィナーレを迎えていた。
その恐ろしい架空の海洋生物は人々をそれぞれ鉄板の中に入れて、そこに溶液を入れていく。たっぷりの透明な液体にねぶり殺されながら、その溶液に包まれるせいでどんなに苦しくても死ねないのだ。海洋生物はピックを使用しくるくると人々を回して、そして透明な液体をどんどん入れて人々に苦しみを与えていく。溶液よりも透明な液体の方が強くなった頃合いで人々は死に絶えて……
———これ、そんなに怖いか?
「ひっ……ひっ……そんな……っ」
しかしダズはしっかりとオレの懐の中で縮こまっていた。胸元に頭を預けて、視線はしっかりとテレビに向けつつも腕がオレの身体に巻き付いている。
そういえば、コイツがまだ子供の頃もこんな反応をしていた気がする。あの頃はとてもちみっこいガキだったから、そんなもんかと思っていたが……
大人になってからはこんなものをゆっくり見る余裕もなかったし、つまり、コイツは成長してないということだろうか。
男だった時に見てたらどうなってたんだ……? いや、深く考えない方がいいかもしれない。
「あー、ダズ? 怖くねぇよ、こんなの。所詮作り物だろ?」
「……お、おれぁ……まだ、あにきみてぇなおとこには、なれませんぜっ……」
そりゃお前いま女だもんな。
「落ち着けよ。な?」
「あにきぃ……」
オレはダズの肩を抱えるように抱き寄せた。
少しだけ震えが止まるあたり、それだけオレのことを信用してくれているのだろう……多分。
「あんなのがいるわけないだろ? それに、いるとしたってお前の怪力があれば勝てるだろ」
「で、でも……」
「仮にお前の怪力が効かなくったって、オレの目があれば石化するだろ? あんだけしっかり目が付いてるんだから問題ないだろうが」
と、オレはそんなふうにダズを説き伏せながらも抱き寄せたダズの肩を撫でる。なんだか、こうしているとカップルのような気がして……いや、いやいや落ち着けオレ。違うだろう。これは違う。
とても小さくてすっぽりと腕の中におさまってしまうダズは、こうして抱きしめていると普通の女の子だと勘違いしてしまいそうになるが……いや、オレのこの行動は男のダズ相手でもやるのだ。うん。別に普通の行為である……はずだ。
オレのキョドリをよそに、物語はバッドエンドで終わってエンドロールが流れていた。
「えぇ……アニキがあんなのに負けるワケがねぇ」
「おう」
「アニキならあのタコスケだって倒しちまえやすよね!」
「おう」
「じゃあ、その……やっぱり怖いんで今日同衾させてくれませんかね?」
「おう。………………ん?」
ん?
* * * *
「……ダズ、どうしても一人で寝てくれねぇのか?」
「……っ!」
しっかりとパジャマを着込んでいるダズは、自分の枕を持って……どころか自分のベッドを抱えてオレの部屋にやってきた。
以前と違ってエロコスプレしていない点は評価できるものの、それでも一緒に寝るというのは、やっぱり間違っているだろう。
しかし外の風が強く吹いて、外の窓が大きな音を立てるたびにびくりとそちらを気にするダズ。明らかに、先ほど見た映画が悪影響を出している。
「ひ、ひとり……でっ……あ、あにきがっ……そう、いうならっおれはっ……」
「泣くなよ」
「にゃいてっ……ないでさぁっ……」
じゃあなんでホラー映画なんて選んだんだよお前。
「あ、あんなに、怖いなんてっ思ってなくてっ……」
「一人で眠れるって思ってたってことか?」
「はいっ……」
コイツがオレの部屋に来て一緒に眠るとなったら、そりゃコイツはぐっすりと気持ちよく眠れるだろう。コイツだけは。
……オレの安眠は失われることになるだろうが。
———しかし、ダズは申し訳なさそうにしながらもどうにも引きそうにない。まぁ、こんなにも怯えているのに一人で寝かせるというのも……大の大人に言うことではないが、かわいそうである。
こんなことばかりしているから、いつまで経ってもダズはオレから離れないのかもしれない。いい加減親離れならぬ、兄離れさせなくてはならないのかもしれないが……
「……………………明日はダメだぞ」
「はいっ、すいやせんアニキィ!」
尻尾が生えていたら、千切れるほど振っていただろう。ダズはとても嬉しそうに、抱えていたベッドをオレの部屋にドスンと置いたのであった。
そしてあっという間に深夜。
案の定ダズはぐっすりと眠っていて、そんなダズに腕枕をしているオレはムラついて眠れなかった。わかりきった話である。
無防備なダズはオレの腕の中で、すやすやと静かな寝息を立てていた。すこしだけ開いた胸元から、そのたわわな胸の谷間がチラリと見えている。
———何度みても、やっぱりこの乳には慣れない。
ダメだと思っているからこそ引き寄せられてしまうのか、それが男のサガだから仕方ないのか……とにかくオレはその魅惑的な空間に、目が吸い寄せられてしまう。
特に、今はどんなに見てもダズは眠っているのだ。……堂々と見たって、バレない。普段は視線を意図的に避けているところだが、今だけは無遠慮にそれをジロジロと見つめてしまう。
しかし見てるだけならと、どんどんと
———いや、いやいや……ダメだろ。
そっと腕を引き抜いて、眠るダズの胸元に手を伸ばす。ゆっくりとボタンを外して、下着を身につけていない無防備な乳を空気にさらす。
眠っているダズを相手にしているという罪悪感が襲いかかってくるが、そもそもこんなに無防備でいるのが悪いのだ。
止めなくては、止めなくては、やめなくてはいけない……
———だけど。
「……ッ」
ボタンをすっかり開ききって、仰向けに寝ているダズのたわやかでふかふかの柔乳が重力に沿ってふんわりと広がっている。
ハリのある柔らかなおっぱいが、そこにあらわれた。
———別に、この前ダズも何故かオレの朝勃ちに顔寄せてたし、このくらい仕返しの範疇なのだから構わないだろう。
———無防備に寝てるんだから、このくらい仕方がないだろ。
———万が一今起きたとしても、オレを認識する前に
コイツを男として見るんじゃなかったのか? と自問自答するものの、そんなことより目の前のおっぱいにオレはすっかり負けていた。
だってこんなに美味しそうな柔らかい乳が目の前にあって、コイツが本当は男だなんて、あり得ないだろ。
すやすやと眠るダズの顔を見る。そっと前髪に手を伸ばして、伸びきったそれを横に流すとあどけなくて幼い少女の顔がそこにあった。
顔立ちは可愛らしくて幼くて、オレのことをこんなに信頼しきってくれている。
信頼を裏切っている背徳感が、背中をぞわぞわと駆け巡っていく。
少しだけ、本当に少しだけだから……
「あ"〜……ごめん、な……?」
オレは、その柔らかくてふくよかな胸に顔を寄せる。そして———
「(うっ……めぇ)」
味なんてしないはずなのに、何故か味蕾が悦んでいる。舌先に味わう感触が、あまりにも股間に興奮を伝えていく。口を窄めて、それを吸い上げる。
夢中になってむしゃぶりついていると、口の奥から唾液が溢れてくる。脳味噌が馬鹿になったのか、この異常な行為に興奮しているからなのか、飲んでも飲んでも止まることがなかった。
口を離すと、廊下からほんの少しだけ差し込んでくる光が唾液を反射している。
先程まではふんわりと柔らかかった先っちょは、舐められた方だけはしっかりと硬度をもっている。悪戯にほんの少しだけ歯を立てて、その感触を口でたっぷりと堪能するのだ。
顔をあげると、
すっかり夢中になったオレは、交互の乳を好きなように弄ぶ。手で揉みしだきながら歯を立てたり、吸い付いたり……ダメだとわかっていても、ダメだと思うからこそ止められなくなってしまう。
———と、その時である。
「んっ……あっ……」
寝言というにはあまりにも色気が強すぎる声が微かに聞こえてきて、オレは取り繕うように急いで顔を上げた。
ダズの顔を覗き込み、眠っているかどうかをじっと息を潜めて確認する。
先程まで抑え切れないほどの熱に浮かされていたというのに、さぁっとその熱は逃げていったかのように体は冷たく、緊張から心臓の音だけがドクドクと聞こえてくる。
部屋には、叩きつけるような外の風と雨音だけが響いていた。
———寝てる、よな?
「……ダズ?」
「すぅ……」
「寝てるのか……?」
そして、ここでやめればいいものを。
———もう少しだけなら、少しだけだから。
「……ダズも、この前やってたんだからっ……
きっと、今のオレはとても悪い顔をしているのだろう。
そうっと、むき出しになっている柔らかい腹に手を乗せる。すべすべでつるつる、そして手に吸い付くようなむっちりさを持っているそこから、ゆっくりと
だって先にやったのはダズだろう。
これはただの仕返しだ。
オレは何も悪くない。
ダズの顔をじっと見ながら、手はいよいよズボンの中に入っていく。ゆるいゴムは手の侵入を簡単に許して、下着のすこしだけ硬い感触が指先をくすぐってくる。最近はちゃんと女物の下着を履くようになったのだ。肝心のブラジャーはつけないというのに……いや、それはもういい。
大切なところを、布越しに指で触る。
「っ……」
「ダズ……?」
少しだけピクリと反応を返したダズが愛おしくて、しごくように布越しに触っていく。眠っているというのに、感じているのだろうか? ほんの少しだけ下着が湿っている気がして、それがまた興奮を駆り立ててくるのだ。
もっとそこを触りたいという気持ちと、はやく先に進みたいという気持ちがぶつかりあって……頭がすっかり沸いてしまったオレは、早々に下着を少しずらし中に指を這わせた。
入り口も入り口だというのに、ぬるりとした粘液が、たっぷりとそこに存在している。
———感じてたんだよな? そうに違いない。
ぬるぬるの入り口付近だけを、指をゆっくりとかき回すように一本だけ、第一関節くらいまで入れていく。ゆっくりと挿れて、そして抜くと———確かに、静かに動かしているのにくちゅりと淫靡な音が耳に届いた。
自分の下半身が興奮しすぎてあまりにも痛くて、慰めるように手を伸ばす。
「んっ……ぅ……」
「ダズ……すげぇ……熱いな……」
そこだけ、温度が馬鹿みたいに高い。
左右に蓋をされているところを開いて、指先だけでその形をなぞっていく。特に敏感な先端部分に指の腹を置いて優しくこすると、少し刺激的だったらしくて小さな声が漏れ出ていた。
以前は風呂場でたまたま石化してしまったダズに思わず手が出てしまって……あの後、もう二度とやらないと強く誓ったのにこのていたらく。
もうやめなくてはと理性では叫ぶものの、どうせ2回目なんだからイイだろうと開き直る自分がいる。
———指、一本だけだ。そこまでだから……
オレはダズの中にゆっくりと指を沈めていく。ずぷずぷと、狭いのに抵抗なく奥の方まで入っていって……
———あれ?
なんか、前よりも……すこし柔らかい?
* * * *
時は少し巻き戻る。
夜寝る前のダズは一人布団の中で、そういえばとその内容を思い出していた。
———それは、セックスについて、である。
本にはしっかりと、性行為について描かれていた。
男だった時は淡白だったダズだが、そのひとつの要因に……おそらく、女嫌いというものがあったのだろう。
ダズ自身無意識ではあったが、幼い頃母親から虐待を受けていた経験から、どうにも女というものに苦手意識を抱いていたのだ。
だからダズは、そこまで女の身体に興味はなかった。
定期的に抜くものだと理解してからはそのようにしていたものの、『オカズ』という概念がなかったので随分と淡白ではあった。義務感でやっていたと言ってもいい。
性行為のまともなやり方すら興味がなく、それを知るのはいつかそんな機会があったらだと思っていた。
自慰にも女にも興味はなかったのだ……が。
しかし、女の身体に変わってからはどうだろうか?
「(ここに……? 挿れ、るんだよな?)」
性行為指南書に描かれていた内容では、自身の
思い出すのは、先日見たアニキの
……普通は自分の慣れたものを思い出すだろうが、その違和感にダズは気が付いておらず、指摘する人もいなかった。
男だった時の延長として、少しだけだと思い手を伸ばしたダズは、今までとは少しだけ違う快感が走るのに驚く。
こんなに、男と女は違うモノなのか?
「(なんだ……これっ……)」
自身の竿をシゴくのとは違う、深いところから脳みそにバチバチと刺激が走る感覚。脳裏には何故か、あの男の顔ばかりがよぎる。
彼の事を考えるとさらにぬるぬるが増えていき、狭くて痛そうなところなのに、思わず指が沈んでいく。ギチギチで痛くて、なのに気持ちよくて……目の前に彼が、彼の姿を思わず幻視してしまう。
丸く爪が整えられた中指は、もう根本の方まで入っていた。そして。
「(アニキ、あにきあにきっ……なんでっ、どうしておれっ……)」
———オレは男なのに
———なんでアニキのことばっかり考えるんだ?
彼の事を考えてしまい、指が勝手に深いところを目指していく。自分の脳裏に、彼の顔と先日脱がしたあの身体が思い出されてしまう。
おかしいおかしいおかしい。だってそんな、今までそんなことなかったのに。オレは男でアニキも男で、なんで。おかしい、こんなの間違ってる……!
男だった時、アニキにこんな感情抱いたことはなかったのに。なんで、どうして?
「はっ……あっ……んぅ……!」
挿れた中指を擦るように折ると、それまで以上の強い刺激が身体を走り抜けていく。
自分が一体何をしているのかがわからない。
こんなことは間違っているんだ。男に戻った時に、自分はどうするというのか。
だけど———
もしも一生自分が女の子にならざるを得なくて。
もしもアニキが、
もとから選択肢になかった、ありえないと無意識に断じていた、見えていなかった未来が浮かび上がる。
だって、そんな、夢を見るだけ辛い思いをしてしまう。それくらいならいっそ知らない方が幸せだろうに。
彼に抱かれる自分を想像して、指を抜き差しする。本には、ココに挿入して打ち付けると書いてあった。こんなに細い指ではあの怒張にとても間に合っていないが、先日見た勃起を思い出して、ゆっくりゆっくりと……深く差し込んだ指を引き抜いて、それからまたもう一度深くまでゆっくり挿れていく。
こんなこと、いけないのに。
身体が、自身の身体が、彼を思い出して悦んでいる。彼に女にされたくて、たまらない。
———勘違い、しそうになる。
アニキのことが、好きだなんて……あってはならないことなのに。
女の子になって、アニキの『
男だった時は、
彼が綺麗な女に目を惹かれているのは知っていたし、いつか彼に見合うようなとても綺麗な女を横に侍らせて結婚するのだろうと思っていた。
美しい女を横に携えた彼は、きっと誰もが納得するだろう。ダズは本当に、心の底からそれを望んでいた。
自分の大好きな彼が、誰もが納得する女と結婚する、その幸せを。
自分の1番大切な人が、誰もが祝福するような幸福と安寧を手に入れる事を。
彼が本当に幸せになるというなら、ダズはいくらでもその努力が出来る。彼のことが大好きだから。心の底から尊敬していて、自分を唯一必要としてくれた男だったから。その背中に惚れてしまった。かっこよかった。
だから、ダズは彼の幸せを1番に考える。
自分の感情なんて、最初から見ることはなかった。
それに仮に彼が誰と結婚しようが、ダズの1番が彼であることに変わりはない。
だから、
いつか自分の知らない女を彼が連れてきてもいいように。その時に心の底から祝福できるように……そうやって諦めていたのに。
———なのに、なのになのに。
今の自分は一体、なんなのだ。
「んっ……あにきぃ……あ、あ、あっ……」
なんで
「ひぃっ、あ、あぁっ……とまらなっ……や、ぁ」
いつの間にか、動かす指は激しくなっていた。下半身からはぐちょぐちょと激しい音が鳴っていて、自分の浅ましさが嫌になる。狭くて痛いのに、彼の事を考えると指が止まらない。脳味噌が蕩けさせられるような快楽に負けて、熱くて柔らかくてキツくてぬるぬるのそこを自分自身で慰めてしまうのだ。
瞑った瞼の裏には、彼の姿があった。眼帯をした男が、こちらを見下ろす。自分を押し倒している。
……愛されたいと思うのは、女になったから。
身体に引きずられて、彼に対する感情がどんどんおかしくなっている。
だが……たとえ性別が変わろうが、その程度で
とんだ勘違いも甚だしい。その考えは今すぐ訂正しなくてはならない。
———ありえないことを考えるな。
———アニキが
だって自分は、男なのだから。
そして、指はついに
「あぁぁぁっ……! いっ……あっ……はぁっ……」
———イった、のか?
指一本で果てた先には何もなかった。
そして、気持ちよさと虚しさが襲いかかってくる。
いつのまにか汗だくになっていた自分の身体と汚れた右手が、やけに気持ち悪い。
———オレは今、何をしていた?
「あ、ぁ、ぁ……いやだ……」
なんで女になったからといって、自分が選ばれるなんて思ってしまったんだろうか。そんなこと、ありえないのに。
———自分は男で。
———生まれもよくないし、頭も悪い。
———唯一の取り柄といったらこの怪力くらいだろうか。
女になったとはいえ、メディアで取り上げられるような美人とはかけ離れた見た目をしている。
身長が高くて全身がほっそりとしていて、すらりとした美人こそがアニキの横に立つのにふさわしいと思っていたが……今の自分は身長も低ければ、なんだかムチムチしている。たしかに乳は大きいだろうが、雑誌やテレビでよく露出するような美人とはかけ離れているのではないだろうか?
ダズ自身が女に興味がなかったので、今の自分の見た目を客観的に測ることができないものの……世間一般でいう美人の特徴からは、ことごとく離れている気がする。
———選ばれるはずがない。
「なんで……オレァ……違うんです、あにきぃ……」
こんなこと、男だった時には自覚も何もなかったのに。もしかしたらと考えが生まれた時点で、引き返すことはできなくなってしまった。
———男に……戻りたくない。
男に戻った時に、こんな感情を持ち合わせている自分が怖かった。
こんな思いを知らなければよかったのだ。
一生見て見ぬ振りをして、彼の幸せを後押しする、良き友人でありたかったのに。
今の自分では、男に戻った時にきっと絶望してしまうだろう。
———でも、自分以外の女を選ぶアニキを見るくらいなら、男に戻って諦めがつくようにしたい。
もしも女としてずっとこのままで。
そしてアニキが自分以外の女を選んだら、自分はどうなってしまうのだろうか。
自分はアニキを、心の底から祝福出来るのだろうか?
アニキが自分を選ばない理由に納得は出来ても、夢を見てしまった自分にうちひしがれてしまうだろう。
そうなる未来が容易に想像ついて、いっそ、夢から早く醒めたいがために男に戻りたい。
ぐっちゃぐちゃの感情は、いままで認識しないようにしていた分だけ大きくて。静かに溢れた涙は、ダズの顔を伝って枕に溶けていった。
———だが。
この身体は『気持ちよさ』を覚えてしまったわけで。
好きな男を考えながらだと、そしてその感情がどこにも行き場がないのだと理解しているからこそ……身体が慰めを求めてしまう。
ダメだとわかっていても、その次の日も同じことを繰り返して……
* * * *
ところ変わって、ここは街外れの冷たく吹き荒ぶ荒れ果てた刑務所。その、独房。
———大雨、そして風。
それらを見上げた
「ディーテ、
やばいやばい、とそんなに焦ってないようにパリスは空を見上げている。
本当なら今すぐ
四方八方全てが
と、いうのも。
パリスには、かつて黄金の林檎を探しに旅に出ていた時にその当時の仲間から渡された神託があった。
———『器物損害した際には、キンタマがフェルトぬいぐるみ』になるものである。あれは大変恐ろしいものだ。
わざわざ罰を受けてまで脱獄する気にもなれず、そのために壁を壊せるほどのちからを持っていても建物は壊せない。だから脱走もできない。
これまで好き勝手し続けてきたしっぺ返しが来たようなものだが……対してパリスはそんなに困っていなかった。
というよりも、無気力になっていた。
「あー……いやだなぁ……いやいいけど……でもなぁ……」
久々の自由だった。
好き放題して楽しかった。
たまに目の前に女がやってくるのは不快でたまらなかったが、やっぱり下界は刺激的で面白いのだ。
数千年をアフロディーテの腕の中で飼い殺しにされていたようなものだったから、この数週間の自由があまりにも楽しくて、牢獄ですら刺激に満ち溢れたものに感じられる。
そしてここでの生活をもう終わらせなくてはならないという悲しさが、パリスに少しの寂しさを教えてくるのだ。
それは、日曜日のサザエさんのような哀愁。
楽しい時間は過ぎ去ってしまうあの虚しさが、パリスの胸に広がっていた。
毎日をアフロディーテの愛でドロドロに溶かされるのも楽しいが、でも、それはそれとしてここでの生活も悪くなかった。
例えば、そう———友達ができたこととか。
「へい、ジジイ。なんの話だ?」
独房の、隣の隣に閉じ込められている極悪人。
名をオーレン・D・ジュースという男が、パリスに話しかけてきた。
かつて科学都市にて、電子ドラッグを売り捌いて巨万の富を得ていた麻薬王。その男は今、この辺境の土地で———
かつて都市での大問題に発展していた電子ドラッグの元締め。彼はいよいよ足がつきそうになり、この辺境の土地までやってきたのである。
そして
彼の独房は、1人だけ特別にかなりの好待遇を許されている。さまざまな娯楽があり、部屋も広かった。
———そして、そんなオレン・D・ジュースに気に入られたのがパリスである。
そのぶっ飛んだ思考回路と、散歩感覚での脱獄。ひょろひょろの体では想像つかないほどの怪力が気に入られて、パリスは麻薬王の話し相手としてこの独房に閉じ込められていた。
なによりも麻薬王が気に入ったのは、まるで夢物語には聞こえない、神々の物語。
1人の男が失意の中で神に手を差し伸べられ、希望を持ち、そして絶望に堕ちていく悲しみの物語。
かつて吟遊詩人として金を稼いだこともあると豪語するパリスはそれを物語って、見事に麻薬王に気に入られていた。
「うぅ……オレンジちゃんや、ワシな、ディーテのとこに行かなきゃいけなくて……」
「そうかいブラザー……寂しくなるな……まぁ、あんたなら無事に生きていけるぜ」
「それはそれとして、ここから出なきゃいけないんじゃけど」
どうしようなぁ、とパリスはぼやく。
その言葉はあまり困っていないようにも聞こえるが、オレン・D・ジュースはその言葉にニヤリと笑みを浮かべた。
「出してやれるぜ?」
「え〜? まじぃ?」
「まぁ、でもちょっと手伝って欲しいこともあるわけで、なぁ?」
犯罪の片棒を担ぐ事になる。そう言いたげな様子はありありと伝わってくるが、パリスは全く気にせずに色の良い返事を返した。
彼にとって、人の善悪はわりと関係がない。
いや、どうでも良くなったというべきか。
「持つべきものはやっぱ友では〜? ワシ、嬉しみ〜!」
「よーし、じゃあ準備しておくから、ジジイもいく準備しとけよ〜?」
多少の時間オーバーくらいならディーテもきっと許してくれるじゃろー、なんて笑いながら、パリスはふうと安堵の息を吐いていた。