※この作品はR-18です。

ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん   作:芥目たぬき

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BまでならR-15で(なお成人済みになりました)

 

 

 自身の持ち物ではないものをなぜか持っていたとき、人は大いに焦るものだ。

 対処法はさまざまであるものの、「返さない方がいい」なんて時も、ごく稀にあるわけで。

 

 つまり、何が起きたかと言うと。

 

 

 

 

 ———オレの手には、催(・)眠(・)ア(・)プ(・)リ(・)の起動した端末が握られていた。

 

「ダ、ズ……? おい、本当に意識ないのか? なぁっ……?」

 

 

 

 持ち主に返すといっても、その持ち主はこれを使って世界を混乱させるような良からぬ事を企む大悪党なわけで。警察に届け出ると言っても、こんなところでそんな手続きができるわけもなく。

 

 ———いや、言い訳はよそう。

 

 

 

 率直に、よこしまな気持ちが勝ってしまったのだ。

 

 

 

 何故かオレのポケットに入っていたそれは、世紀の大悪党であり大発明家である男が作った正真正銘の催眠アプリである。これは本当にそれ通りに機能するものなのだろう。

 アプリ起動時の説明には、操作されている人間はその最中の事を忘れると記載されていた。

 

 だから、つまり、オレはこれからよ(・)か(・)ら(・)ぬ(・)事をしても誰にもバレないわけで……

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 ———話は、遡る。

 

 オレたちは都心へと向かうべく、貨物輸送車に乗り込んでいた。そしてたまたま上京しようとしている魔法使いの青年・メロンと再会する。暇を持て余していたらしい彼とオレたちは、ともに食事の席についていた。

 

 そして、そこで知った衝撃の事実がふたつ。

 ひとつはメロンの探している人物が、世紀の指名手配犯であり極悪人と有名な人物であるということ。

 

 そして、もうひとつは……

 

 

 

 

「いや、まさか……」

 

 

 

 その世紀の極悪人、オレン・D・ジュースが、何故か車内にいたのだ。

 

 窓を背に、逆光の中に佇む男こそが———麻薬王。

 

 

 

「あぁ……オレン、会いた、かった」

「メロンちゃんよう……おまっ、なんでこんなとこにいるの?」

「お前を、追って……」

 

 そんな男に、メロンは立ち上がって走り寄っていく。待て、とダズが口に出そうとして、あわててその口に手を当て閉じさせた。

 下手に関わり合いになりたくはない。

 

 ニュースで幾度と見た顔。それと仲良くしている男だったなんて、聞いていない。

 この男のせいでどれだけの被害が出た事だろうか。たくさんの人が死んだり、今も苦しんでいることだけは知っている。

 

 ダズを隠すように前に立ったオレは、緊張しながらも2人の様子を観察するにとどめる。

 

 周りにいる人間は、特に誰も気にしていないようだ。比較的人が空いている時間だった事もあり、オレとダズ以外には穏やかな空気が流れている。

 

 おそらく、ここにいる人々の大半は———麻薬王の悪の所業を、知らないのだ。

 なにせ、科学都市からの情報がほぼ届かない辺境地なのだから。

 

「アニキィ……どうしやすかい?」

「いや、どうするもこうするも……」

 

 本当ならば今すぐ通報するべきなのだろうが、ここはまだ通信の類が一切できない圏外の場所だ。こんなところで騒いでも、闇雲に車内を混乱させてしまうだけだろう。

 

 見た目にも、一目でヤバいやつだということがよくわかる男。身体中イレズミばかりで、その服の着こなしや髪型からも、正直近寄りたくない人間だ。

 

 麻薬のブローカー……どころか、製造者(プログラマー)だとニュースでは言っていたか。人を壊すことを目的とした悪質すぎるプログラムを作った張本人。

 

 ニュースを鵜呑みにするわけではないが、その被害者の末路を先入観として持っているオレからすれば、かなり恐ろしい人間である。

 

 

 

 ———メロンに気を取られているこのうちに、さっさと逃げてしまうべきだろう。

 

 

 

「……今のうちに逃げるぞ」

 

 君子危うきになんとやら、である。

 

 こんな危険人物なんかと知り合いだなんて聞いてないのだ。オレとダズはそそくさとその場から逃げ去ろうとして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダァズちゃぁぁ──ーんッ♡」

 

 

 

 ———その声は、あの忌々しいジジイの声であった。

 

 

 

 声の聞こえた方向は、オレたちが見ていたメロンとオレンとは真逆。

 つまり、オレたちの背後から聞こえたわけで。

 

「ダズッ……!」

 

 オレは振り返るよりも先に、体を動かしていた。なんてことはない、ジジイの行動パターンは読めているからだ。

 

 唐突に現れたそのジジイは、オレの横にいるダズに目掛けて弾丸のように飛んできていた。きりもみ旋回、風を携えている男は一直線にものすごい勢いを押し殺そうともしない。

 

 その直線上に、ダズを庇うようにオレは身体を滑り込ませる。

 そして、弾丸のような勢いでタックルしてきたジジイに吹き飛ばされ———

 

「アニキィ!?」

 

 

 

 オレの身体は吹き飛ばされて。

 これまた直線上にいた男に、ぶち当たる。

 

 

 

 つまり、この場で最も関わり合いになりたくない男……オレン・D・ジュースだ。

 

 

 

 ダズならばかろうじて踏ん張って威力を相殺できる程度の速度———すなわち、オレ程度では全く相殺できていない剛速は、少しも威力を落とす事なく、オレン・D・ジュースに与えられる。

 

 2人の男の身体は、ジジイの仕業により壁に吹き飛ばされていた。

 

「なっ……ぁああ!?」

「グゥッううう」

 

 突然の負荷に身体が悲鳴を上げるものの、オレはなんとか受け身の体制に移る。これも、幾度となく危機に陥った事からの経験だ。自分が認識するよりも先に、訓練した動きへと身体が反応していく。

 

 ———衝撃が、身体を襲った。

 

 

 

「あっヤッベ」

 

 ジジイの間抜けな声が、耳に届く。

 

 

 

 そしてオレは運良く食堂に備え付けてあるソファに身体を打ち付けられた。柔らかいが、この速さで飛んでくる男を受け止めるには少しだけ役不足で……

 

「いっ……でぇええええッ!?」

「アニキィ、アニキィ! すいやせん、アニキィ……!」

「いい、クソいてぇけど、無事だ!」

 

 ソファの中からはぶつかった瞬間にべきっと音が聞こえてきた。古そうなソファだし、おそらくどこかが壊れてしまったかもしれない。

 

 だが、オレ自身は打身だけで骨とかはやっていないだろう。駆け寄ってきたダズに大丈夫だからと声をかけながら、あわてて顔を上げる。

 

 痛いと思う暇があったら、なんとかジジイからダズを守らねばという頭が働いていたのだ。痛みを耐えて、オレは顔を上げてジジイがどこにいるのかと目視する。

 

 しかし……その考えは、それ以上にとんでもないことになってしまった光景に、吸い込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 ———窓が、大きく割れている。

 

「……ッ! オレン……!」

「はひゅっ……はっ……!? め、めろん、ちゃっ……」

 

 

 

 彼は、オレに比べてとても運が悪かったのだろう。

 

 

 

 彼の背後には窓があった。そして、その方向にものすごい勢いでタックルかまされたのである。

 つまり何が起きたかというと……

 

 ———オレンの身体は、窓の外に投げ飛ばされていた。

 

 移動する車から放り出されたのだから、最悪の事態がオレの頭をよぎる。しかし。

 

「……だい、じょうぶだっ……! 手を、伸ばしてっ……」

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 それをかろうじて止めているのは、魔法使いのメロンだ。彼の足元から伸びている氷が、オレンの片足を捕らえている。オレン自身の身体は、ガラス片が刺さって血を垂らしていた。

 

 高さ、地上からおよそ6mくらい。車の速度は、およそ時速50km程度だろう。落ちたら、間違いなく大怪我では済まされない。

 

「パソコン、パソコンがッ……!」

「オレン、手をっ……」

 

 パキパキと、身体をどんどんと凍らせて、酷くても落ちないようにとメロンは魔法を行使しているらしい。自身の身体も前に乗り出して、必死にオレンの手を掴もうと伸ばしている。

 

 だが、オレンの視線はメロンに向いていなかった。

 

 

 

 彼は、先ほどまで持っていた荷物を全て———落としてしまったのである。

 

 

 

「クソいてぇっ……ダズ、メロンの手助けしてこいッ……」

「アニキは……?」

「緊急停止くらいどっかにあんだろっ……この事伝えてくるから、ダズははやくあの男助けてこい」

 

 オレは打ち付けた方の体を庇いながらも、食堂カウンターの方に歩いていく。多分、そういうところならばこの車の車長あたりに繋がる内線もあるはずだ。

 

 周りにいた人々も、突然起きた事故に驚いている様子でざわつきが激しくなっている。食堂にいたおばちゃんは、呆然としていてなにも考えられないと言った様子であった。

 

「ぐぅぅっ……おいおばちゃん、……上の人にすぐこの事伝えてくれ」

「へ、は、あぁ! そ、そうだっ……はわわ」

 

 手をもたつかせながらも、食堂のおばちゃんは壁に取り付けられていた受話器から内線を繋げる。それを見届けてから、オレはオレンの方を見ようとして———

 

 

 

 

 

 

 

 

 不愉快なソ(・)レ(・)が、視界に入った。

 

「な、な、何するんじゃぁ!? おま、おまおまワシはダズちゃんに抱きつくつもりだったのにーィ!?」

「ジジイ、テメェ……」

 

 股間を押さえつけて床に転がりもんどりうっているのを、オレは睨みつける。一歩間違えばダズの身体が車の外に投げ出されてたかもしれないのだ。

 

 つうか、こいつなんでここにいるんだよ。

 

「ダズちゃんなら絶妙に踏ん張れる角度と速度と威力じゃったの! お前が変なとこで入ってくるからっ……お前マジ大っ嫌いッ!」

「あ"ッ!? 言い訳なんざいいんだよいい加減殺すぞ!?」

「お前のせいじゃぞ!? ワシはモノを壊すとキンタマがフェルトぬいぐるみになる神託持っとるのにぃ……」

 

 そしてジジイは……おもむろに下(・)半(・)身(・)を(・)露(・)出(・)した。

 

 

 ———ボロンとまろびでる、粗末なふにゃふにゃ。

 

 

「見ろよワシのキンタマッ……フェルトぬいぐるみ(PUIPUIモルカー)になっちまっただろうがよォ〜〜〜ッ!」

 

 ジジイのキンタマは、確かにフェルトで出来たけむくじゃらの丸い玉であった。

 

「汚ねッ……」

「うわ────んあんまりじゃあんまりじゃ! これあと3日間はフェルト確定じゃよ〜〜ッ!」

 

 あまりにも醜い老人のよぼよぼちんこを見せられたオレは、すぐさま視線を他にずらす。とてもとても嫌なものを見せられてしまったが……

 

 いや、そんなことよりメロンたちの方が問題だろう。

 

 オレはそちらを向くと、どうやらダズや他の乗車客の手伝いもあり、無事にオレンは車内へと戻されていた。氷はすっかり溶けて、床に向かって倒れ込んでいるオレンに対して周りの人間が水やタオルを持ってきている。

 ……この辺りは、まだ魔法に対して都心ほどの差別意識がないようで、オレは少しだけ安堵の息を吐いた。人助けのためなら問題ないという事だろう。

 

 そうしている間に、バタバタとここのスタッフらしき人達が走ってやってきて……

 

「車長! 車長! このおじいさんがね、壊したのよッ! 犯人ッ、なのよォーっ!」

 

 食堂のおばちゃんは大きな声でアピールをしていた。指を指すのは、床に転がっているジジイである。まぁ、このおばちゃんは事の始終をしっかり目撃していてくれたのだろう。

 

 そして車長、と呼ばれた人物が振り返る。

 同じ服装に身を包んだ集団の中で、1人だけ少しデザインの違う後ろ姿。その人物は———

 

「お、お、女ァーッ!?」

 

 それは、美人な女だった。

 

「そういやジジイ、女嫌いだっけ?」

「まじ無理まじで無理ッ! ぎゃー近寄るなやだやだやだ!」

 

 つり目がちな強気な目元に、真っ赤なルージュが強さを感じる。髪の毛は染めているのか、金髪と黒髪が混じり合った色。左手の薬指には、指輪がはまっている。

 

 そんな女は、オレの足元で転がっていたジジイを冷ややかな目で見下ろす。

 

「アイヤー、器物破損と……下半身露出、ネー?」

 

 

 

 

 

 ……さっさとズボン履けよジジイ。

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 紆余曲折あり、無事に部屋に戻っていたオレはふとポケットの中にある異(・)物(・)に気がついた。

 

 四角く板状のそれに、心当たりはない。

 

 それを取り出してみると、よくある端末であったが……しかし、オレのものでもダズのものでもないのは一眼でわかる。こういった機器をダズがオレに何も言わずに買うわけもないしと、疑問を浮かべながらもそれを見聞していく。

 

 試しにロックもかかっていないそれをワンタップで開けると、アプリがひとつだけ入っていた。

 

 

 

 ———催眠アプリ。

 

 

 ふと、その単語にオレは聞き覚えがあった。

 先ほど、パソコンがないと嘆いていたオレンが叫んでいた単語と、同じものである。「オレのがんばってつくった催眠アプリがー!」だとか、「ジジイ今すぐとってこいくそ野郎がー!」だとか叫んでいた。

 

 きっと吹き飛ばされた際に、オレのポケットの中に入ってしまったのかもしれない。

 

 ジジイを蹴り飛ばしながら探してこいと威圧していたあの男の姿を思い出す。きっと、これもまたないとまずいシロモノなのだろう。

 

 返してあげるべきである……と、オレは立ち上がったが、ふと冷静に考えてみる。

 

 

 

 

 ……いや、本当に返(・)す(・)べ(・)き(・)なのか? 

 

「(返す……のか? あの危険人物に?)」

 

 本来ならば、オレのポケットになぜか入っていたと今からあの男の元に訪れるのが正解だろう。しかし、相手はあの極悪人で有名な男である。

 

 しかも、催(・)眠(・)ア(・)プ(・)リ(・)だなんて……きっと危険なものに違いない。

 

「(……返さない方がいいんじゃないか?)」

 

 試しにそのアプリを開くと、簡単な説明が流れる。全4ページで絵の解説付きのわかりやすいソレは、まるでゲームのチュートリアルのようだ。

 

 しかし、書いてある内容はかなりえげつない。対象者1人を、アプリを使用している最中は自由意志を無くして言いなりにすることができると書いてある。

 操作方法もシンプルで、口頭での命令を対象者が自身で認識してその通りに動くらしいのだ。

 

 

 

 ———つまり、1人の人間を自由自在に操ることが出来てしまうらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと。

 

 

 

 よこしまな感情が芽生える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ダズにこれ使ったら、あの身体を好き勝手出来るってことか? 

 あんな事やこんな事を、させることができるというのか? 

 

 

 

 

 

「(って、いや、バカだろ!? なに考えた!?)」

 

 オレは慌てて、想像してしまったダズの痴態を振り払う。まさかあのおっぱい使わせてスケベな事だとか、あのムチムチな太ももでエッチな事なんて考えてはいけないだろう。

 

 船に乗って2日目。昨日は致(・)し(・)て(・)いない。

 確かに少しだけ……いやそこそこ溜まっているのは事実だが、だからといって今思い浮かんだことは絶対に間違いである。

 

 説明書きには「催眠にかかっている間の出来事は記憶に残らない」と書かれているし、「どんなことでも思いのままに常識を改変できる」とも書かれている。

 

 ———仮にこれを使っても誰にもバレることはないのだろう。

 

 だけど、人としてやっちゃいけないことが世の中にはごまんとあるのだ。ダメだ。絶対にダメ。あのクソデカおっぱいでズリズリさせたりとか、太ももでスマタだとか尻コキとか腹とか口とか、そんなの、考えるなんてもってのほか……

 

 考えないようにとすればするほど、思い描いてしまう。

 

「(命令遵守に、常識改変か……これ使えばダズに恋人だと思いこませて……いや、いやいやいや。待て待て……)」

 

 

 

 

 

 と、その瞬間に部屋のドアが開く。

 

 

「アニキィ、ただいま戻りやしたァ!」

「うわぁぁぁ!?」

 

 オレは慌てて、持っていた端末を後ろ手に隠していた。

 

「お、おかえりっ……」

「? いま……なにか持ってやしたか?」

「いや何も持ってない、ぜ?」

 

 シャワーから帰ってきたダズが、きょとんとこちらを見て首を傾げている。

 

 少しだけ蒸気した顔と、ちゃんと乾かしきっていない濡れた髪の毛で、部屋に入った瞬間にふわりとシャンプーの甘い匂いが立ち込める。身につけた寝巻きは、ふわふわもこもこで足がむき出しのショートパンツだ。

 

 とてもかわいいが……ムチムチとした柔らかい太ももに視線を向けると、先ほどまでの妄想がやけにリアルに感じられる。

 あの柔らかい肉でチンコキしたら、絶対に気持ちいいに決まっているだろう。

 

 

 ———いや、何考えてるんだよ。

 

 

「(あ〜〜〜……クソ、いい加減にしろよオレ……)」

 

 しかしダズは、そんなオレの様子なんてさほど気にしていないようで……

 

「そうだアニキィ、売店で酒とツマミ買ってきやしたぜェ」

「ん? ……おう」

 

 今日は色々あったので奮発でさぁ! とにこやかに笑うダズ。オレがさっきまでイヤらしい事を考えてたなんて、微塵も思っていなさそうな顔をしている。

 

 その手には、オレが好んで飲んでいる、甘くて飲みやすいシードルの瓶が握られていた。ツマミに買ってきたのは、ドライフルーツ各種詰め合わせである。

 

 オレの趣味がよくわかっているチョイスだ。辛い酒あまり好きじゃないんだよな。

 

「アニキィ、飲みませんか?」

「……あぁ、そうだな」

 

 こんな不埒な考えも、酒と一緒ならばきっと洗い流されるだろう。

 そうして、手渡される瓶を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———そして、冒頭に至る。

 

 

 

 

「ほ、本物なのかやっぱり……」

 

 この催眠アプリをあの男に返すのはやめよう、とオレは心に決めた。

 

 ダズはかかったフリをするようなふざけた冗談はまずしないし、あの男のこういった精神系プログラムの技術はとんでもなく高いのだ。アプリは本物で、これをあの男は悪用しようとしていたに違いない。

 

 いまのダズは、オレのいう事を全てなんでもその通りにするよう、催眠がかけられた状態になっていた。

 

 

 ———もう、解除しなくては。

 

 本物だとわかったのだから、いつまでもダズをこのままにしておいてはいけないだろう。知るべき事を知ったのだから、あとはコレを壊すなり捨てるなりしなくてはならない。

 

 催眠解除の項目を探して、それにタップを……

 

「(……もったいないな)」

 

 

 

 

 

 

 

 ———今、何を考えた? 

 

 もったいないってなんだよ。

 

「ダズ、本当にいま……催眠にかかってんのか?」

「はい」

 

 オレの喉がごくりと鳴る。知らないうちに、口の中に唾液が溜まっていたらしい。やけに甘ったるいリンゴ味が舌上にベタついている。

 

 今のダズは、オレが何をしても記憶に残らない。

 

「なんでも、いう事……聞くのか?」

「はい」

 

 質問を投げかけると、シンプルな解答が返ってくる。命令遵守の状態なのだから、それは嘘偽りない答えなのだろう。

 

「じゃあ、その……」

 

 洗脳解除のボタンを押そうと思っても、それを押すに至らない。何度も画面の上までいっては、それをタップすることが憚られる。

 

 目の前には虚空を見つめているダズがいる。呆然とベッドの上で座っていて、無防備な太ももがとても柔らかそうで……思わず視線を逸らした。これ以上見つめると、もっと頭が悪い方向に考えてしまいそうだ。

 

 もしここで服を脱げと命令すればその通りになるだろうし、もっとふしだらな事を命令すればその通りにダズは動くのだろう。

 

 あまりにも人権を無視した行為。

 頭ではいけない事だと、わかっているのだ。

 

「(でも、もったいないよな……)」

 

 せっかくなんでもいう事聞くなんてとんでもないアイテムを手に持っているというのに、ただで解除するのはあまりにも惜しくないか? 

 理性と悪魔の囁きが、頭の中でぐるぐると回り続けている。たったすこし指を動かせばいいだけなのに、それをするのが何故か惜しいと感じてしまう。

 

 せめてなにか……少しだけなら、きっとダズも許してくれるかもしれない。別に酷いことさえしなければいいだろう。

 

 

 

 ———そういえば、聞きたかったことがあるじゃないか。

 

「……なぁダズ、なんであの時……オレのちんこみてたんだよ?」

 

 朝起きた時に、何故かダズがオレの服を剥いで朝勃ちをガン見してた時。あれ以来特に気にしないように努めていたが、これもいい機会だ。

 

 そして、聞くのはこの質問だけにしよう。

 今まで疑問だったことだけ解決し、それで洗脳を解除して……

 

「アニキの匂いで我慢できなくなりまして」

「はぁ?」

「心は男でも、体が女なので我慢ができず……」

 

 理解が追いつかない

 

「えぇと……その、恥ずかしいんだが……身体が女だから、ちんこの匂い嗅いで我慢できなかったってことかよ?」

「はい」

 

 はい、じゃないんだよな。

 

 我慢できないってなんだ? 

 臭いのか? そんなに臭かったのか? 

 いや確かにそこそこいい歳にはなったけど……つうか、風呂入ってるっつの。

 

 ……いや、そうじゃなくて

 

「それはつまり、オレで興奮したっていう……こと、なのか?」

「はい」

 

 だから、はい、じゃないんだよな。

 

「……こ、興奮ってことはその……お、オレのこと、その……ど、う思って……」

「とても、恋愛感情も含めてかっこよくて素晴らしい男性だと思っています」

「……れ、れんッ!? 恋愛って、つまりその付き合いたいなーとか、そういう?」

「はい」

 

 ……いつから? 

 

「女になってから……いけないこととはわかっていますが、そういう対象として見ています」

 

 女になってからかぁ。

 よかった、いやよくない。

 

 軽い気持ちで聞いたらとんでもないパンドラの箱だった。もはや告白も同然の、衝撃の真実である。

 

 ———そうか、オレの事好きなのかこいつ。

 めちゃくちゃ嬉しいな、おい。

 

 ニヤける顔をなんとか戻そうと、オレは枕に顔を押しつけて悶絶してしまう。純粋に、こんな美少女に好きだなんて言われて嬉しくない男がいるだろうか? 

 

 オレもダズの事好きだもん。健気だしかわいいし、中身が男ではあるものの身体は女だし、かわいいし。

 

 好きになっちゃうだろこんなの……

 そっか、ダズはオレの事好きかぁ……

 

 いやしかし、まだそうと決まったわけじゃない。

 

 ダズの事だ、なにかこう……落とし穴があっても不思議ではないのだ。恋愛感情履き違えてるとか、そういうのあるかもしれない。

 恋愛感情(尊敬)とか、そういうよくわからない世間一般と少し違う恋愛感情かもしれないのだ。

 

 1人で舞い上がってもし勘違いでしたなんて、流石に憤死してしまう。

 

「一応確認だが、その好きっていうのは……どういう、好きなんだ?」

「えっちなこととか、したいなっていう好きです」

「はふぅ!?」

 

 えっちなことがしたいのか。

 

「ダズ……そ、そのえっちなことってさ、つまりその、セックスとか、そういう……」

「はい。夜な夜な、アニキのことを思いながら自慰をしています」

「はわわ……そっか、ソウダヨナ、ウン……」

 

 オレの事考えて1人でオナってんのかよこいつ。

 ……こんなスケベな身体して、オレの部屋と薄壁一枚越しにそんな事してたのか。

 

 ———ムラムラとした、よくない感情が鎌首をもたげる。

 だってそんなの聞いて我慢できるほど、オレは出来た人間ではないのだ。

 

 もうすっかり、オレは催眠解除するつもりがなくなっていた。スマホから指を離して、枕元に置いておく。

 

「その……どういう風にヤってんの? 何考えてオナってんだよ……?」

「はい、このように……」

 

 ダズは、オレの目の前でするすると服を脱ぎ始めた。下半身に手を持っていき、露出度の高いショートパンツと下着を一気にずりおろす。無毛でつるつる柔らかなそれが、オレの目前に現れた。

 何度も見ても、正直慣れない。オレのちんこがそれを見た瞬間に一気に硬くなっていく。

 

 そしてダズは無感情に恥じらいもなく、ベッドに仰向けに倒れ込んでその足の間に手を伸ばした。

 

 くぷ、と閉じられていた縦割れの唇を指で開いて……オレの座っているところから見ると、もう全て丸見えになっている。ぬるぬるとした液が恥部全体をコーティングしているようで、室内の電気を反射しててらてらと光っているのだ。

 

 ピンク色の柔らかな肉が、空気にさらされる。

 オレの視線が、どうしてもそこに釘付けとなる。

 

「……ダズ、いつも通りに」

「はい。……は、ァんッ……」

 

 ちゅぷ、ちゅ、ちゅぷんっ———

 

「く、ひぃっ……あ、にきっ……」

 

 目の前で繰り広げられる痴態に、目が離せない。

 甘ったるいボディーソープの香りが部屋に充満している気がするのは、ダズが服を脱いだからだろうか? やわらかな肢体が強張って、小さな中指の先だけで柔らかな弱点をぐちぐちと触り続けている。

 

 オレはダズのはしたなく開脚された太ももに指を這わせる。その間に身体を入れて、だらだらと汁がこぼれ出ているところに顔を寄せた。

 

「あ〜〜〜……そっかぁ……お前いっつもこんなやらしーことしてたのかよ……」

 

 太ももが汗ばんでいる。柔らかな肉の上に、うっすらと湿り気が感じられるのだ。

 

「どんなこと考えながらやってんだよ……?」

「は、ふぅっ……アニキに、ここをッ……」

 

 そういって、ダズはさらに大きくオレに見せるように足を広げて持ち上げて、すけべな豆を見せつけるように具を開く。その下にある穴はまだ触っていないから蓋がされているものの、じゅわじゅわと透明でかなりの粘度を持つスケベ汁が溢れ出していた。

 

 ———こすこすこすこすっ

 

 ダズはそうして、中指で優しくクリをごしごしと擦り上げていく。

 

「こぉして、触っていただくことを……考え、てぇっ……はふっ」

「はは、オレの事考えながらこんなスケベなことしてやがんのかよ……」

 

 クソエロいな。あーくそ、ちんこいってぇ……

 

 オレも自分の服の前をくつろげて、ブルンッと硬くなっている怒勃起ちんこを取り出した。ガッチガチに硬くなっていて、亀頭からは、先走りがだらりと出始めている。目の前の女体に対して、期待して興奮しきっているソレ。

 

 たまらずに手を伸ばして、ゆっくりといつも通りに扱いていく。ダズの痴態をオカズに、目の前でヌくだなんて……

 

「はぁ〜〜〜……ダズぅ、中は? 中さわんねぇの?」

「中は、イったあとの敏感になってるところを、指で掻き回して……アニキに抱かれているように、考えながらッ……」

「そぉっかぁ……オレに? 犯されるの考えてえっちなことしてたんだな……かわいいなぁ?」

 

 あと少し腰を動かせば、もう少しだけ位置を変えれば、オレのちんこをダズのぐちゅぐちゅになっているところに当たるだろう。残り数センチでソコに挿入できると考えると、背筋がゾワゾワと逆立つ。オレのチン先はダズの穴に向いていた。

 

 自身のちんこを扱きながらも、オレはもう片手でダズの上の服をめくりあげる。ブラジャーごとぐいっと持ち上げれば、でかい乳がぼろりと重力に従い形をもったまま服からこぼれおちた。

 たまらずにそれを下から持ち上げて、手から溢れるほどの大きさのおっぱいをむっちりと揉み上げる。

 

 柔っけぇ……

 

「なぁダズ? キスしよう? したいよな?」

「したいです、ぁっ……」

 

 ダズの前髪を全て掻き上げてやると、ぼんやりとした表情がこちらを見上げていた。

 

 思わずオレはその唇にむしゃぶりつくように口をつける。酒臭いのに、柔らかくて甘酸っぱいのは先ほど飲んだシードルの味だろうか? 

 ぷにぷにでしっとりとしていて、柔らかなピンク色した唇を食らい、その口をこじ開けるように舌をねじ込んでいく。

 

 歯列を舌で舐めて、ダズのベロを掬い上げるように舌を伸ばして舐め回す。オレの唾液がダズの口にと流れていき、オレも負けじとダズの口の中を食べ尽くすようにキスをして……

 

 口を離せば、ツウと透明な糸が伝っていた。

 

「はぁぁあっ……頭爆発する……ちんこも爆発すんじゃねーの? あー、やっべぇクソ……」

「ぁあ、にきぃっ……」

「どうした? イくのか?」

 

 ダズはこくん、と小さく頷いた。

 ……かわいいなクソ。

 

「ダズぅ、イき顔見せてくれよ……隠すなよ」

「はいっ……ぁ、あ、あっ」

 

 そうしてダズは身体をビクつかせる。

 オレのいう通りに顔をこちらに向けたまま、そのまんまるな目をこちらに向けて、困ったように眉を寄せながらも口を半開きにして……

 

 そして。

 

「ひっ……はっ……はっ……」

「あーダズ、ダズダズぅっ……かわいいなっ? な、いい子だからっ……」

 

 ダズ自身の大切な女の子のところを弄り触っていた方の手を取って、自身の股間に誘導する。その代わりに、ダズのアッツアツに出来上がっているぐちゅぐちゅの股ぐらに、オレは自身の指を這わせて———

 

 

 

 

 

「んぅうっ、ぁあ"〜〜〜……ッ!?」

「ダズおまえさぁっ……ナカ、すっげぇ」

 

ぐちゅぐちゅぐちゅ、と部屋に音が響く。

ダズの膣肉がオレの指に絡み付いていて、その奥の方からスケベな汁がじゅるじゅると溢れてくる。

 

ダズの唇を何度も何度も啄みながら、右手はダズのまんこを好き放題に掻き混ぜて、左手はその巨大なおっぱいを好き放題に揉みしだいていた。ダズにはオレの肉竿を扱くように命令しているので、その柔らかくて小さな手で必死にシコシコと扱きあげてくれている。

 

必死にキスに応えながら、何度も手マンでアクメを迎えているダズのそのかわいさといったら。

 

「あ"〜クソハメてぇ……でも、それはかわいそうだもんなっ? ダズも、ちゃんと告白して付き合ってからの方がいいよな?」

「はいっ……ふ、ぁ、ああ"ッ……んくぅっ」

「ははっ、かわいいなぁダズ? な、オレのこと好きなんだよな?」

 

ヒクヒクと軽く痙攣をしながらも、ダズはこくりと頷く。

 

「好き、ですぅ……ん、」

「ごめんなぁ気がつかなくって……夜ごとにこんな自分でまんこ弄ってやらしい事してたんだよな? 気が付かなかったなぁ……」

「ふぅ"うっ……はひっ、は」

 

オレの竿をしごいているダズの手が、とても心地いい。柔らかい手がオレを包んでいて、もう正直射精したくてたまらなかった。

 

先ほどからずっと弄くり回している膣内が、ひどく熱くなっている。身体も全体的に汗ばんでむわりとメス臭い匂いが部屋に充満していて、頭がおかしくなりそうだ。

 

「なぁ、ここにオレのちんこ挿れられるって思ってヤってたのかよ?」

「はい"ぃっ……! 子作りしたいなってェ"ッあ"っ、ぁあっ……!」

「子作り……?」

 

ぶわりと、さらに下半身に熱が溜まる。

孕みたがってるのか、コイツ。

 

こんなスケベな身体して、何ともない平気そうな顔で、いかにも性的なもの知りませんってオレに思わせといて……その実、オレと子作りセックス期待して1人でオナって慰めてたのかよ。

これまで散々ちんこイラつかされる度に、必死こいてダズから隠していたオレがあまりにも馬鹿馬鹿しいじゃないか。

 

やっぱり……セックスしたいな……

 

「いやダメだよなァ……あ"〜〜〜クソセックスしたい、ハメてぇなぁ? 絶対この穴挿入れたら、気持ちいいもんなァ?」

「はぎゅっ……!? ぉ、ほぉっ……んぅ"っ」

「でもよ、告白して付き合ってからハメたいもんなァ……ダズがオレのこと好きでも、いくらなんでも付き合ってからの方がいいよな?」

 

イキながらも頷いているダズの目元に、キスを落とす。

 

中指と薬指はダズのすけべ汁ですっかりとふやけているかもしれない。ほくほくにほぐれていて、しかし中のヒダヒダは指に求愛するようにきゅんきゅんと絡みついてきている。

 

絶対に、いまちんこ挿れたらすごく気持ちいいだろう。

 

「な、ダズっ……もう、男に戻る必要ない、よなっ? 結婚しようぜ。子供もいっぱい作ろう? 大切にするからっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「男に、戻りたい……です」

 

 

 

 

 

 

 

 

———は?

 

オレは冷水をぶっかけられたように、一気に身体の火照りが引いていく。

 

「な、なんで……?」

「結婚も、出来ないです」

「な、なんでっ? どうしてだ? なんでこの流れで、ダメなんだよ?」

 

 

ダズの心が、わからない。

 

 

だってダズは女の子になってからオレのことが好きで、じゃあ結ばれるなら女のままの方がいいだろうに。どうして、男に戻りたいのか?

オレとダズがラブラブで結ばれてハッピーエンドで、いいだろうに。

 

男に戻りたいなんて、建前だった……と、それでいいじゃないか。

オレにその淡い恋心がバレたくないから、隠していた。男に戻りたいと、カモフラージュで言っていたと……それじゃあダメなのか?

 

本当は女のままでオレと結ばれたかったと、それで終わりでいいじゃないか。

 

なにがイヤなのかがオレにはわからない。

今好きだと思っている相手と結婚して、幸せになることの何が不満だと言うのか?

 

「男に戻って、どうしたいんだよ? ……オレはホモじゃないし……女の子と、付き合いたいし……」

 

オレはどんどん言葉が尻つぼみになっていく。

命令遵守で正確に正しく答えるようになっているダズは、そして口を開いて……

 

「オレがアニキを好きなのは、間違っているので……元に、戻りたいです」

 

 

 

———元に戻って、この恋愛感情をなんとか捨てたいのです。

 

———オレなんかと、アニキが結婚してほしくないのです。

 

 

 

 

 

 

 

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