ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
「もう話はいいか? 本官も忙しいのだが」
「……引き止めて悪かった。いってくれ」
「いやじゃ!!! やっと会えたのに! やっと! ワシがこれまで! くっそぉおおお!」
引き止められた時間は数分。話せた内容も満足とは言えなかった。
先程の老人から聞いた話から、大した情報は得られなかったのだ。いや、謎が残ったというか、きっとなんらかの事は知っているのだろうが……
「アニキィ、あのジジイは」
「また、帰って纏めてから話に行く。聞きたいことはまだ山ほどある」
性転換の理由はわからず、どういった原理なのかもわからない。なぜダズが性転換した元男だとわかったかというと、『神からの啓示』としか言わない。
しかし老人のイカれた話を聞く限りでは、やはり、魔法のような超常現象が鍵を握っていると見て間違い無いだろう。
しきりに『異世界トリップ』だとか『最近の流行り』だとか『でもTSして貧乳でもいいよね』だとか言っていた。
いや、オレは貧乳よりも、でかければでかいほど……貧乳が嫌というわけではないけど、でも大きければそれだけ嬉しいというか。うん。貧乳はそれはそれでって思う。
これはロマンの問題だ。もちろん現実性のある方が好きな堅実な男もいるだろうが、しかし、オレは大きければ大きいほどいいものだと思う。夢は大きく持つべきだ。
と、そんなことは置いておいて。
「……いくぞ」
「へい! ……ええと、どこに、ですかい?」
どこへなんて、決まっている。
「お前の着る服だ」
* * * *
今日しょっぴかれていったあのジジイと再度面会できる日は、酷くても2日くらいは後になるだろう。おそらく罰金か、もしくは体罰を食らってから出てくるんじゃないだろうか。
基本的にほぼ大抵の都市では人権的に禁止されている体罰も、こんな僻地では当たり前のようにある。おそらく、時代が数百年くらい追いついていないのだろう。
オレやダズの生まれた街だと体罰は禁止されていたのだが……そう考えると、このあたりはまだまだ
もう少し、もう少しと逃げるように科学都心からどんどん離れた僻地へ旅をしてきたオレたちだが、もしかしたら思っていた以上に遠いところまで来てしまっていたのかもしれない。
だが、まだだ。ここでもまだ足りない。
この街は比較的居心地が良くて長期滞在していたが、それでもオレは先に進みたいのだ。
「……長居、しすぎたな」
オレはぼんやりと、店員といろんな服を吟味しているダズを眺めながらつぶやいた。棚の横に都合よく置いてあった椅子に座って、それを眺めながら今後のことを考える。
「……なるほど。アニキがそういうなら、これは
「こちらとかいかがですか?」
「……少し短すぎるか? いや、短くて困るこたぁねえだろう。これを買っとくぜ」
服を吟味しながら店員に渡しているダズ。一瞬呼ばれた気がしたが、気のせいだろう。というか呼ばないでほしい。女の服なんて知らないのだ。
それよりも、だ。
……気になるのは、いままでダズが
本来のアイツは努力によって磨き上げられた筋肉で、魔物やゴロツキ、チンピラなどを軽々とのしてきたわけだが……あの身体になって、それが出来なくなったとなると相当困る。
今までダズには助けてもらってばかりだったのだ。万が一そのパワーが失われているとなると、今後はその対策も必要となるだろう。
……まぁ、それは後で確認するべきだ。
今はまだ確定したわけでもない。
「お客様はスタイルがすごいから、かわいい服をいっぱい選べますねぇ!」
「かわいい服よりも、動きやすい服の方がいいんだが……もっとこう、普通のポロシャツとか……」
「オフショルとか〜こういう風に背中が大胆に空いてるベアバックとか、特に今はこういう胸元が大胆に開いてるフロントキーホールなんてトレンドですよ!」
「はぁ……よくわかんねぇが試着させてくだせぇ」
あとで町外れにいって、いまのダズの実力を調べておかないとな……だが、もう時間もだいぶ夕暮れに差し掛かっているし、明日の方がいいだろうか?
というか買い物が長いな。普段自分たちの服を買う時はこんなに時間がかからないだろうに。
聞いた話によると女は買い物が長いのが当たり前らしい、が……?
は?
オレは、ふと視線を上にあげてダズの姿に目を疑った。
「お客様はお胸が大きいので〜オーバーサイズで着るよりもピチッとした感じの方がお似合いだと思うんですよね〜こういうのとかいかがですか〜?」
「な、なるほど……アニキぃ、どうです?」
それは、あまりにもダズの身体の魅力を
まず下半身だが、その健康的な血色をしたムッチムチで柔らかくジューシーそうな太ももが惜しげもなく晒されている。
尻が見えるのではないかと不安になるくらいに短いそのショートパンツを、ダズはしっかりと履きこなしていた。
あの太ももに指を食い込ませたら、と想像を掻き立てられる。柔らかくてすべすべなふとももを、隠しもせずに露出しているのだ。その足は男らしさのかけらもなく、逆に男の欲を掻き立てるためにあるのではないかと不安を覚える。
そのむちむちな肉付きの良さは、自身が食べ頃であると男の性欲本能に語りかけてくる……
そして———なによりも、その上半身。
身体にフィットした、体型を如実に伝える細ニット素材。くびれた柔らかそうな腹とダイナミックな乳の曲線が、その服によって大胆に強調されている。そのシルエットは女らしさが強調されている。
しかし問題は胸元にあった。
なんと、乳の下の部分がまったく隠されていないのだ。意図的に、露出されているではないか。
おそらく乳首のあるギリギリのところから、その下がすっぱりと切られたように
あえて下乳を露出させることで
あの谷間にはさみこんだら、果たしてどれだけ気持ちがいいのだろうか。重量感をもつ下乳が、ダズの動きに合わせてゆさりと大きく揺れ動く。
メロンのように大きくマシュマロのように柔らかそうな2つのたゆんたゆんに、目が奪われる———。
「———彼氏様、この服気に入られたみたいですねぇっ」
「えっ」
「アニキの審美眼に叶う服なら間違いねぇや! よし、この服を1枚頼むぜ!」
「待て」
店員はおそらく、オレの下心丸出しの視線に気がついていたのかもしれないが、鈍感なダズはそうでもないらしい。よかった。よくない。
晴れやかな笑顔で、オレが止める暇もなく服の会計に持っていくダズ。その即決力は、おそらくオレがお墨付きをだしたと
オレは気恥ずかしさに俯きながら、店員の会計が終わるよりも先に店の外に出ていた。
もう二度と女性服売場には来ない———いや、ダズに買い物をやらせたからいけなかったのだろう。あいつは、あのワガママボディで露出する強さを理解していない。
隣で歩くのがオレである以上、今度買う時は口を出さなくては———
* * * *
「で、なんでその服なんだ……」
「店員さんが着て行くかって言ってくださったんでね。せっかくのアニキが認めてくださった、この身体になって初の一張羅だ。早く日の目を見せてやらねぇと!」
「いやオレは認めてない」
やばい。
話していても、乳に視線が吸い込まれそうな気がする。
ダズはさっきまで着ていた服を紙袋に下げて、新品の女物の服を着こなしていた。むっちりとした下乳に、そして柔らかな太ももに、街ゆく男達の視線を集めているではないか。
「その短いズボンは……いや、それはもう諦める。だが、上の服は今まで通りのTシャツでも着ていられるだろ。その上の……それはもう、今日限りにしとけよ」
下のショートパンツは、まだ街中で普通に女が履いている姿を見るし、許容範囲内だから許すとして……上に着ている服は許せない。
———のだが。
「! そ、そういうことですかい……この上の服は、正装だってわけですね、アニキィ!」
「違う……いやもうそれでいい」
ダズは都合よく、オレの言葉を深読みしすぎてかっこいい感じに自己完結していた。
訂正するのも億劫で、ダズがそれを着ないならと適当に頷いておく。
こうしたダズの勘違いは多いのだが……最初は無理にでも弁明していたが、次第に無駄だとわかってきてからは諦めている。
それに、ここまで築いてきた信頼関係や兄貴分への尊敬を、わざわざ地に落とす必要はない。
こいつはこういう男だし、オレだって尊敬されるのは悪い気分じゃないのだ。……いや、騙している気になる時はたまにあるけれど。
と、考え事をしながら歩いていたその時だった。
「ってぇな! この野郎!」
「……あ? テメェがぶつかってきたんだろうが」
オレが普通に道を歩いていたところ、肩をわざとあててきた男が因縁をつけてきた。相手は3人、見るからに一昔前のヤンキーといった風貌。
あまりにも、テンプレート通りな連中だ。
「いっ、いっでぇ〜! 骨折れたなァ〜!」
「なんだってェ! それじゃあお前、慰謝料がいるよなァ〜?」
「アァーン?」
この辺りはオレたちが普段借りている家の近くなのだが……確かに、男2人と思って油断をしていたが、この辺りの治安はとびきり悪いのだ。
しかしいつもならこんな手合い、オレとダズに絡むことはないのだが……やはり、ダズが女になったせいなのか。
その証拠に……このチンピラの目は、明らかにダズの乳に向いている。
「慰謝料をよォ〜、払ってもらえねェかなァ〜?」
「ミッちゃんの腕折れてるからなァ〜? こりゃ面倒見てくれる女もいるよなァ〜?」
「アアオーン?」
いつの時代からこの男はやってきたのだろうか。
今時、オレの記憶ではこんなわかりやすい脅迫をしてくる奴はいないものだが……これも、土地柄というものなのだろうか。数百年遅れているのは人権問題だけではなくて、チンピラの様子もなのか。
首を上下に揺らして威嚇してくる3人。というか3人目はもはや威嚇音しか出してない。
「はぁ……ダズがいないと、やっぱ困るな」
アイツは大柄で筋肉質で、ゴリゴリだ。だからこそ2人で歩いていてオレたちに喧嘩を売ろうなんざ男はまずいない。
しかし———こんな夜道を、男と女2人で歩いていたら……確かに絡まれても仕方がないだろう。
あまりやりたくないな、と思いながらも渋々眼帯に手をかける。普段ならダズが前に出てさっさと倒してくれるものだが、今日ばかりはそうも言ってられないだろう。
と、そう思っていたのに。
「おいダズ、下がってろ」
無表情のダズが、オレの前に出てきた。
いくらなんでもいきなり女に殴るなんて事はしないだろうが……しかし危険だからと、オレはダズを後ろに引こうとする、が。
———
「なんだァねぇちゃん、気が利くじゃないかよ〜」
「自分から身を出してくれるなんて優しい彼女じゃねぇかぁ」
「オ〜ン」
オレが感じ取った異変にも気がつかず、ダズの下乳に手を伸ばしたチンピラ2号は———その手首をダズに捕らえられた。
はたしてその手の動きを見切ったものは、この場にいるだろうか。長年一緒にいるオレでも、アレを避けるなんてことはできない。
あぁ、なるほど。じゃあいいか。
オレはダズの肩にかけていた手を下ろし、そして眼帯も元の場所に戻す。
手を掴まれていないチンピラ2人は、これから自分たちが食べようと舐めてかかっている目の前のエモノにヘラヘラと笑っているが———手首を掴まれたチンピラだけは、
「……杞憂だったな」
1人でどうしようかと悩んでいたが、必要なかったな。
———ダズは、ものすごく強い。
力が強く、身体の動かし方というものを理解している。それは、女になっても変わらないようだ。
努力の結晶で積み重ねた、その戦闘技術。後天的に磨き上げた肉体的センス。オレは、それがあるからこそダズを誰よりも買っているのだ。
オレの相棒はコイツしかいない。なぜなら、コイツより強い男をオレは知らないから。
静かに怒っている弟分は、3人の男を見上げながら小さく呟いた。
「アニキに、喧嘩売ろうなんざ……」
そしてゆっくりと、見せしめかのようにびきびき、ばきばきと音が聞こえてくる。
それは、チンピラの手首から聞こえてくる音だった。きっと、あれはもう治療してもうまく動かせないだろう。
異変に気がついた残りのチンピラ2人だが、それでももう遅い。
ダズの前で、オレにちょっかいかけた時点で終わっている。
「1億年、早いんだよッ……この、ボケナスどもがァ」
そして、一方的な制裁が始まった。