ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
記憶もない頃から、ずっと自分の右目には光がなかった。自分の顔には当たり前のように眼帯が取り付けられていたのだ。
眼帯を取るときは、ずっと目を瞑らなくてはならない。それが、オレに課せられていた
違法ビル群が立ち並ぶ一画に、その真っ白な施設は佇んでいた。
真っ白に塗られている塀は高く、その出入り口から外に出るのは許可制である。門限は17時まで。
狭い運動場には古びた小さめの遊具がほんの少しだけ置いてあった。型落ちした、寄付金で購入されたとかの遊具たち。
味気のない風景だったと思う。
どこか寂しくて、冷たいところだった。
生まれたばかりのオレは乳児院に何者かが預けたらしく、2歳頃にこの施設へと移されたらしい。
親の名前も知らなければ、与えられたものも何もない。オレは、この施設では極めて珍しい部類だった。
1番古い記憶はこの施設だったし、子供の頃の思い出というのも全てここの施設の中だけで完結する。
他の子供たちは親の虐待や、家族が死んで天涯孤独だったり、経済的な理由だとかで来ている子供ばかりだ。
そんな子供たちはなにかしら、自分の持ち物を何か持っていた。それがひどく羨ましかった思い出がある。
たとえば、まだ親が怖くなかった頃に買ってもらったおもちゃの変身アイテム。クリスマスに奮発して買い与えてくれたゲーム。両親が生きていた頃に買ってもらった科学都市の機械。
それが羨ましかった。
なにせオレは、親というものを知らないのだから。
「クロくんこっち来ないで!」
「………………………………わかっ、た」
記憶もない頃から、ずっと同じ施設の子供達には嫌われていた。仲間外れは当たり前で、話しかけただけでイヤな顔をされるし、勉強道具たちは何度も隠されていた。
オレは1番最初から、ずっとずっとひとりぼっちだった。
「クロに近付くと石になるぞ!」
「こっち見るなよ!」
「近付いてくるんじゃねーよっ!」
あれは多分、4歳くらいの時。年齢が倍も離れている歳上のお兄ちゃんたちに投げかけられた暴言が、今でも強く記憶に残っている。
「クロくんは魔法を使って人を石にしちゃうんだよ!」
「えーひどーい!」
「チカちゃんはお花を咲かせてくれたのに! クロくんはひどい魔法しか使ってくれないんだって!」
あれは多分、6歳くらいの時。女の子達の会話が聞こえてきて、それに酷く落ち込んでしまったのだ。オレだって、花を咲かせる魔法が使えるなら使っていた。
これしか、使えない。みんなはもっとすごいことができるのに。
オレはみんなを傷付ける魔法しか使えない。
「……〜〜ですよ。子供たちは素直ですからねぇ」
「
「そりゃ誰だって石化されたくないですよねぇ。 クロくんの
「まぁまぁ、その分手当をかなり貰ってるじゃあないですか……」
あれは多分、8歳くらいの時。先生に褒めてもらいたくてドアの前で待っていた。
先生たちがオレのことを話す声が聞こえてきて、オレは静かにそれを聞いていた。友達も親もいないオレにとって先生だけが心の拠り所だったのに。
1番優しくしてくれた先生は、それが仕事だったらしい。オレは先生だけが救いだったのに、先生はオレのことが嫌いみたいだ。
先生も、オレのことを怖がっていた。
オレは先生に酷いことするつもりはないのに。先生の言いつけを守って、眼帯を絶対に外さないようにしているのに。
———でも、僕が全部悪いんだ。
「なんで、みんな、ぼくに意地悪するの……?」
「なんでって、おまえのせいだもん!」
あれは1番古い記憶。
みんなに仲間外れにされて、悲しくて。
どうしてって聞いたときに教えてくれた、一個歳上の男の子。
みんなの中心にいて、いつも楽しそうに笑っていた男の子。なのに、オレを見る目だけはあまりにも冷たくて。
「だって、お前のせいで院長先生がいなくなっちゃったんだ!」
「ぼくっ……何もしてないよ……?」
「でも! 僕は見たんだ!」
———お前の眼帯を外した院長先生が
———その格好のままずっと固まって
———病院に運ばれてから、ずっと戻ってこない!
「ヒトゴロシなんだぞ! お前は!」
「ヒト……ゴロシ……?」
「おまえが魔法を使って院長先生をころしちゃったんだ! おまえのせいだ!」
「でも、ぼくっ……知らない……!」
「みんな、見たんだぞ!」
その言葉に、オレは周りを見渡した。
自分よりもずっと身体の大きな子達が、オレを見下ろしている。
他の子供達がオレを見ていた。
目が、目が、目がオレに集まる。
みんなオレを睨んでいた。
院長先生はきっと人当たりが良くて優しい人だったから、オレのことをみんな恨んでいるんだろう。
みんなが大好きだった院長先生を、オレが奪ってしまったのだ。
「知らない……! 違うもんっ……ぼくっ……」
院長先生なんて知らない。僕はそんなことしたことない。
必死に弁明しても、子供の言葉が子供に通じるわけもなく。
「かえせよ!」
「かえせ!」
「ぼくたちの院長先生を」
「「「お前のせいなのに!!!」」」
ぼくのせいなんだ。
ぼくの魔法が、みんなから奪った。
そんなことしたくないのに。ぼくは。
———この目が。
———この目がなければいいのに。
———こんなことしかできない魔法なんて、使えなくてもいいのに。
* * * *
「———はぁっ……はぁっ……」
久しぶりに見た夢だ。ドッと背中にまとわりつく汗が気持ち悪い。
布団もじんわりと湿るほどの大量の嫌な汗をかいていたオレは、再度眠る気にもなれなくて身体を起こした。
暗い部屋で、時刻はまだ明け方の少し手前。
「……気持ち悪りぃな」
はぁ、とため息をひとつ。
ベタベタした身体からオサラバして、気分を変えるために部屋を出た。向かうはシャワー室である。
思えば、シャワーというものに最初は慣れなかったものだ。
なにせ、この土地に来てから初めてこんな
もともと住んでいたあの施設ですら、シャワー室なんて設備はなくて、当たり前のように
あの設備も相当オンボロだと思っていたものだが……場所も変わればなんとやらというやつだろう。
もっと都市部から離れていけば、いずれは入浴の文化すらない、沐浴だけとかの街に辿り着きそうだ。
あの頃の生活から比べればこの辺りは随分な僻地だと感じられるが———意外と、住めば都なのだ。
自分の手を使って洗わなくてはならないのは不便だし、洗い残しだってたまにある。それでも、全身洗濯機と同じくらいにサッパリはするし気分はいい。
と、オレはそんなことを思いながら扉を開けたからだろうか。
何も気にせず、いつものように開けたそこには。
———全裸で水を滴らせた、女がいた。
ッ?!?!?!
「ッあ、うぉっ……!? ご、ごめっ……!」
思わず後ろにひっくり返るみっともないオレだが、女は身じろぎひとつしない。
当たり前だ、いまの一瞬でオレはこの女と、
「———」
ぼんやりと口を開けているのは、おそらく驚きの声を上げる前に固まってしまったからだろうか。普段は下ろしている前髪をタオルでかきあげながら、両腕を上げて静止している。
扉を開けてすぐに視線があってしまったから、なんとも間抜けな顔をして、幼なげな目を丸く見開いてダズは固まっていた。
いや、というか。
まずい。
これは大変、まずい。
———
——
—
「(デッケェ……いやダメだろ……まだ戻れる、これ以上はダメだろ、落ち着け)」
その5分後。
「(も、もう少し……もう少しだけ触っていても……くそ、プリップリですげぇ弾力……)」
さらに10分後。
「(いい加減やめろ! 止まれ! これ以上やったら、ダズの顔見れなくなるぞ! コイツは男、男、男……!)」
* * * *
危うく展開が成人指定になる手前で理性を取り戻したオレは、眼帯を装着して扉を閉めてから石化を解除することにした。
大変危ないところだった。ギリギリセーフだと思いたい。……セーフだよな?
先程までの柔らかな感触と、ヌルヌルが手に残っていてごくんと生唾を飲み込む。
最後の方はギリギリだが、先っちょの先っちょだけだからセーフである。指の第一関節までだから、仮にバレても許してくれるだろう。いくらダズでもそれ以上は怒るかもしれないが、第一関節くらいまでならきっと許してくれるに違いない。だめかな。
———童貞をこじらせて早27年。
ダメだと思いつつも、目の前にいるのが大切な弟分であると認識していても、それでも、肉欲には勝てなかった。
だって目の前で○○○が丸見えの女がいたら、誰だってそうする。どことは言わないが、初めて触ったそこの感触は、熱くてヌルヌルで、柔らかくて……ダメだ、思い出しただけでダメになる。
あんなエロい身体しているダズが悪いのだ。
なんであんなに乳がでかいのか。どうして身体がメスになってしまったのか。
これでは、オレの下半身が永遠に収まらないではないか。
「———はぁ」
とりあえず、ダズが出たらシャワーを浴びよう。
先程までは全く暗かったはずの空は、いつのまにかだいぶ白んでいた。
「———アニ……キッ!? うぉ、わ、わっ……? ん、んんんっ?!」
石化から解除された瞬間、ダズは先程まで言いかけていた言葉を発して……そして目の前から唐突に男の姿が消えたことを認識する。
その瞬間、乳と尻、そして股ぐらから、味わったことのないゾワゾワとした感覚が一気に押し寄せてきたのだ。
とっさに悲鳴を押し殺そうと手を口に当てて、ダズは身体を丸め込ませる。何者かに揉みほぐされているような感覚を、突然叩きつけられたのだ。
「(なんっだ、これぇっ……! 女の体、だからなのかッ!?)」
それは、ダズにとって知らない感覚だった。
自身の敏感なところをこねくり回されるのは、人によっては快感と言えるのだろう。しかし、ダズにはそんなものは不要なのだ。
言いようもない怒りが沸々と燃え上がってくる。
何故、己がこんな目に遭わなくてはならないのか。どうして、自分はこんな姿になってしまったのか。
「(くそが、くそが、クソがッ———!)」
自分自身への怒りで、目の前が赤く染まり上がる。今なら、魔物を何匹も相手に戦うことだってできるだろう。それくらいに、ダズは怒り狂っていたのだ。
寝ていても、この柔らかく弱そうなこの身体が気になって眠れなかった。無理やり寝たら、ひどい悪夢を見る始末だ。
だからシャワーを浴びて汗を流して……その最中にも、この柔らかい身体が視界に入って気分は降下するばかりであった。
そして、風呂上がりの身体を拭いている時におそらく彼と視線があったのだろう。
彼は、ダズが石化するのを酷く嫌う。多分、身内だからと気にしているのだろう。ダズは石化に対して全く気にしていないものの、彼に嫌な思いをさせる事は本意ではない。だから、うっかりしていた自分の迂闊さに腹を立てるのである。
「(オレぁ……アニキに、迷惑かけてばかりだ)」
アニキは「お前の体を元に戻すぞ」と言ってくれた。
まだ旅の途中———「石化魔法を封印する方法を調べる」道半ばだというのに……その足を引っ張ることしかできないことに、ダズは心底落ち込んでいたのだ。
「(女の体になってから、アニキの様子は少しだけ変だ。
おそらく、オレが使い物にならないからと思って……それでも、アニキは優しいからオレを手元に置いてくださるんだろう)」
ダズの尊敬するアニキは、無口でクールで知的な男である。女にうつつを抜かすようなヤワな男ではなく、常に目的のために歩き続けている男らしい男の理想なのだ。
そんなアニキに迷惑をかけているという自責で押しつぶされそうになっていたダズは、悔しさから拳を握り込み歯を強く食いしばった。
まさかこの瞬間にも、尊敬する男が
世界観なんですけど、都市部はすごい近未来でそこから離れれば離れるほど文明が古くなっていくシステムです。
そこについては後々じわじわ説明回を入れていきます。
アニキの名前の愛称はクロ君です。本名はいずれ。