ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
「北東、ここからあと5kmくらいだな……」
開発地区北部、天気は晴れ渡っていて快晴である。
時刻は13時を少し回ったところ。探し回ってこの時間なのは、いつも通りと言えるだろう。
ギルドに顔を出して、いつもと同じような魔物狩り依頼を受注。開発地区立入誓約書に情報の記載をしてから、
科学都市では型落ちどころか見ることも全くないオンボロ車であるものの、この辺りではまだまだ現役の車である。いまだに地面に接地したタイヤを使っているところに古臭い無骨さを感じるが、整地すらまともにされていないところを走らせるにはちょうどいい。
無理やり踏みならしている道には石や岩、木々の破片などばかりが転がっているものの、車に搭載されたサスペンションはしっかりと機能していてそこまでの不快感を覚えることはない。ダズに運転を任せて、オレはぼんやりと座っていた。
開発地区とは、科学都市開発予定の荒地のことを指す。
草木がぼうぼうに生い茂っていて、普通の動物から魔物まで出てくる危険地帯だ。
この街は外周一帯が全て開発地区に指定されている。街よりも南の方角はここ数百年をかけて魔物駆除が盛んに行われており、危険もかなり少ないらしい。
今回いるのは、その北部。
他の地帯よりも比較的危険度が高いとされているこちら側に、同業者たちはあまり来ないのである。
ここ数百年の南部開発地区の安全性の代わりに———北部に、大型の魔物が寄せ集められたのだ。
魔物達は基本的に街に近づくことはない。しかし、縄張り争いをする魔物連中が稀に街の方までやってくることがあるため、北部にも魔物掃討依頼はよく出されている。
北部の魔物掃討依頼は、南部に比べてほんの少しだけ金額が高くなっている。
しかし、北部にいくという危険度と金額が釣り合わないと思う者も多いらしく、受注する者も少ないのだ。
南部の方がまだ安全で同じくらいの金払いなのだから、そちらの方が好まれているのである。
特に、この土地に多く棲息する問題の魔物というのが———
「……さっそくいやがるな」
羽の生えた大型のトカゲ。すなわち、ドラゴンと呼ばれる連中だ。
あれらが厄介だと言われているのは、なによりも空を飛ぶことである。
あたりまえだが……人間には
かつての魔法使いは空を飛ぶという芸当ができていたらしいが、いまでは魔法の行使は禁止されているし、基本的に空を飛ぶ人間というのは存在しないのである。
一定の高さまでは浮上、滞空することができるものの、あるところからは法則性が無茶苦茶になってすべてが通用しなくなるとか。
数百年かけて何度も挑戦されてきたことではあるものの、人間が空を自由に闊歩する夢は、まだ実現していないのである。
まるで、
その言葉が炎上して、ニュースで大きく取り沙汰されていたのを、子供だったが覚えている。曲がりなりにも科学者であった彼が神を示唆するなんてとんでもないと、学会を干されたとかなんとか。
空路というものがあれば人類も目覚ましい発展を起こしていただろうが、そんなものもないために地道に道を切り開いて、邪魔をする魔物を排除していかなくてはならないのである。
ひいては、未来の人類のために。
火を噴いたり氷を落としたりと、危険な魔法を使う魔物連中には死んでもらうしかない。
……まぁオレはそんな大層な使命なんか持っていなくて明日のメシのためにやっているんだけどな。
「アニキィ、準備出来やしたぜ」
「よし……じゃあ、行くぞ」
車から降りたダズとオレがそれぞれ武器を構える。
こんな辺鄙な街で買ったものではなくて、旅に出る前に科学都市の中でも武器開発が活発なところまで行って、奮発して購入した掃討光砲と対衝撃吸収硬化盾である。
このあたりではまずお目にかかれないようなアイテムではあるものの、オレたちが買った時にはもう型落ちしていた個人使用専門の武器だ。どちらも中古で大体20マン程度と、そこそこお高いものの……手が出せないという金額ではない。頑張って貯金して買ったのだ。
購入してから数年経つし、だいぶ型落ちしてしまったかもしれないが、科学が未踏な危険地域へ赴くには欠かせないアイテム。
さて。
———眼帯を、外す。
オレは掃討光砲を構えた。
肩に載せるようにして照準をあわせるこの兵器は、クソデカくて重たいものの……オレとて、ダズほどではないがある程度鍛えているのだ。しっかりと砲口をドラゴンの頭の方に向ける。
大事なのは、集中すること———
オレの右目は、普段使っていないからか、それとも魔法のおかげか……
スコープ越しに見えるドラゴンの頭はとても小さいが、それでも当てられる自信があった。
距離にして、およそ4キロ。
羽を広げて、今まさに飛び立とうとするドラゴンの胸元を狙う。
この目でスコープを覗くと、まるで次の行動が手にとるように把握できる。反対の目では出来ないことだが、右目だけは直感的にそれを理解できるのだ。普段使っていないからこそ、こういう力を秘めているのかもしれない。……まぁ、もしかしたらそういう魔法なのかもしれないが。
ここに来るだろうとわかっているところに目掛けて、オレはいつものように引き金をひいた。
———轟音。
そして身体が引っ張られるような反動がやってくるが、それはダズが支えてくれる。肩にかけての負担は大きいが、購入してあるプロテクターを付けているためそんなにダメージは大きくない。
「……ッダズ!」
「大丈夫でさぁ!」
魔物は、
胸にぽっかりと貫通穴が開いても、あいつらはその程度で簡単に死ぬほどやわではないのだ。ありあまる生命力を振りかざして、攻撃されたことに気がついたドラゴンはこちらに顔を向ける。
———来る。
先程までオレの身体を支えていたダズが、ひらりと前に飛び出して対衝撃吸収硬化盾を構える。
クソデカいその盾は大男のダズが持っていても大きいと感じられるものだったのに、小柄な女が持つと尚更大きく感じてしまう。身長よりもずっと大きなそれは、内側からは外の様子が見れるように特殊加工がされているのだ。
そして、そのドラゴンはこちらに剛速で翼をはためかせながら———オレ達に目掛けて
だが、無駄だ。
「……いつも通りだな、ダズ」
「この程度、軽くて仕方ねぇや」
衝撃は盾の効果でだいぶ緩和されているだろうが、それでも常人なら吹き飛ばされるくらいの反動を受けているハズ———しかし、相変わらずの馬鹿力のおかげでダズはケロッとした顔でそう返してきた。
剛速の火の玉と氷、そして水の濁流を盾にぶつけられているというのに、それを笑顔で耐え切れている。
———まったく。
今まで通りじゃないのは見た目だけで、中身は何ひとつ変わっていない。
「何が
近付いてくるドラゴン。それに伴って、激しくなる攻撃。
炎は渦のようにあたりを焼き払い、氷の礫が容赦ない砲弾のようにダズが支える盾に振り下ろされる。
それでも盾を構える手は少しもブレることがない。この怪力こそがダズであり、信用に足りる最強の相棒の力なのだ。
それは女になっても、やっぱり変わらない。
「充分にオレを守ってくれている。何も問題ねーだろ」
「……えぇ」
「さっさと終わらせるぞ。おとといの調査も日が出ているうちにやりたいんだ」
そして、ドラゴンがすぐそこまで近付いてきて———
* * * *
「やっぱり、何もなかったな」
「アニキぃ、ご足労かけてしまって、本当に……」
「……気にするな」
夜。
オレとダズは街に戻ってきていた。ギルドにて今日の報酬振込の手続きを行なって、それからいつものように帰路に着く。
ダズのことに関して、特になんの成果も得られなかった。
魔法という超常現象が常に隣にいるようなこの現実だが、それでも性転換魔法という事象はきいたことも見たこともない。そう簡単に解決するとは思えないが、前日の行動をおさらいしてもなんの糸口も得られなかったのだから、全くにもってお手上げである。
せめて、なにかヒントでもあれば……
「女になった時のことはわからない、か?」
「すいやせんアニキィ……朝、起きた時にはこの体になっていたもので」
だよな……わかっていた事だが、進展がなくてため息が溢れる。
ギルドに張り出した依頼にも何もひっからないのだから、ほぼ八方塞がりと言ってもいいだろう。
自分たちの足で調べられる範囲だとこのくらいだが、それでもヒントのかけらも出なかったのだ。
「すいやせん、アニキィ……」
「気にするな。あとは……あのジジイか」
そういえば、昨日ギルドに行った時変に絡まれたあの変態ジジイがなにか知ってそうだったな。
———あのジジイは、明らかにおかしかった。
なにせダズの怪力を持ってしても、振り解けないパワーを持っていたのだ。
今日のダズの活躍した様子を見る限り、鍛えた力は女の姿になっても消えていないようだった。
だというのにそのダズを押さえつけることが出来たあの老人は、果たして何者なのだろうか?
「……うわっ!? あ、アニキ!」
ぶっちゃけあいつがダズをこの体にしたと言われても納得できるほどの怪しい男なのだが……
「アニキィ!」
あした、詰所に行ってあの男の釈放がいつなのか聞いてみよう。できれば面会させてくれればいいのだが……難しいかもしれないよな。
穏便に話を聞くことができればいいのだが……
「アニキィィィ!」
———ん?
やけに騒ぐダズの声に、深く思考に潜っていたオレの意識は浮上していく。
もうあと数mも歩けば家の中なのだし、用件があるなら家で落ち着いた時に言ってくれればいいのだが。
「アニキィィィ!? た、助けてくだせぇッ!?」
「ダズ、近所迷惑になるからあまり大声は…………?」
———は?
振り返ったオレは、あまりの光景に目を疑った。
そこには、無理やり服を脱がされているダズと、いまちょうど考えていた男……
……………………お前捕まったんじゃないの?
「TS巨乳エロコスプレじゃよ! TS巨乳エロコスプレスケベじゃよ!」
「くっそぉおおお! はなし、やが、れぇえっ!」
「無駄じゃ! ワシはTS娘の服を着せ替えしてる間だけ全ての物理攻撃を無力化できる制限スキル持ちじゃからね!」
老人は意味のわからない言葉を羅列しながらも、ゲヘゲヘと笑いながらダズの服を脱がせていく。
男の頃から着ていたTシャツは無惨にもビリビリに引き裂かれ(ショートパンツは気に入られたようで、普通に脱がされていた)、そして気がつけば一瞬にして全裸に剥かれている。
ここ、人通りが無いとは言っても、一応外なんだが……?
ダズはそれに対して全力で暴れて振り解こうともがいているものの、
普通に見れば、小娘の抵抗が老人に効いてないように見えるかもしれない。しかし、ダズの事を理解しているオレからすればそれは異常な光景であった。
…………いや、殺すだろ。
オレの目の前で、よくもダズに手を———
「ブッッッ死ねクソジジイがよッ!!」
「あ? うるせいチート野郎!」
眼帯を外して、ジジイの目をこちらに向けようと手を伸ばし……そしてオレは
それがジジイの裏拳を入れられて吹き飛んだのだと気が付いたのは、壁に叩きつけられて背中に衝撃が走ってからだった。
———瞬間、呼吸が止まる。
……いま、何が起きた?
理解する前に身体が後ろに吹っ飛んで、そして考える前に身体に痛みが走る。
「アニキィ!」
「!? ッぐうううう、いっでえええなクソがァ」
オレが吹っ飛ばされた瞬間に、ダズは老人の首元に手を伸ばして、その細っこい首に指を食い込ませる。
常人の首なら指圧で抉れるくらいに力を込めているだろうに、老人はそれでもヘラヘラと笑っていて———
「アニキにッ……手ェ出すんじゃねェよッ……」
怒りから本気でねじり殺そうとしているダズだが、老人はそんな抵抗を意に返さない。全裸にひん剥いたダズに対してどこからともなく取り出した黒い布っきれで、ダズの大事なところを覆うように着せていく。
「んなぁっ!? く、そがっ……オレに触るんじゃねぇ!」
「ワシの前で抵抗は無駄じゃ。大人しくエロスケベコスプレをするがよい」
それは———黒マイクロビキニであった。
「ッ……ダズに、なにしてやがる、クソジジイ……」
「着エロじゃけど?」
何を当たり前のことを、とでも言いたげに首を傾げながらも、するするとそれを着せていく。暴れるダズの手足を指先で軽く留めて、そこにあまりにも布面積が少なすぎるそれをつけていくのだ。
ムチムチとした下半身には、面積があまりにも小さすぎるTバックのような紐の水着を。その豊満な胸には、乳首をギリギリ隠……しきれないほどの大きさのビキニを装着させたのだ。
悲しい事に———その豊満な身体にマイクロビキニは、とても下品に似合っていた。
「ウホッ……これは極上マゾメスの素質アリじゃろ♡」
その言葉に、納得せざるを得なかった。
あまりにも下品で低俗な衣装だが、だからこそエロいのだ。
乳肉にヒモが食い込んでいるし、腰回りの肉にもヒモが食い込んでいる。柔らかそうな体付きが、その薄っぺらく安っぽい布切れのおかげで強調されている。
特に———桃色の乳輪がほんの少しだけビキニから見えている様が、はしたなくて興奮させるのである。
黒いビキニと白い肌の間の、ほんの数ミリのぷっくりとしたピンク色が……そのビキニの下に隠されている甘堅い乳首を想像させて、男の下心をこれでもかと揺さぶってくる。
———だが。
それが、ダズを前にして言う言葉なのは
「……調子乗るのもいい加減にしろよクソが」
自分でも驚くほど、低くて冷たい声だった。
ここまで怒ったのは———はたしていつぶりだろうか。あまりにも腹立たしくて、怒りが炎のように燃え盛り、そして指先はどんどん冷たくなっていく。
痛みも忘れて、オレはゆっくりとジジイへと足を進めていく。ぶん殴られて吹っ飛ばされたことなど、煮えたぎる怒りに身を包まれて、すっかり忘れていた。
———離れろ。
オレは惨めにも助けられなくて。
ダズは力負けする恐怖に呆然としていて。
「そいつは……オレの弟分だ。テメェが安く簡単に
「……アニキ」
ダズの事を愚弄されるのが、あまりにも許せなくて怒りが込み上げる。オレの弟分で、オレの大切な友人なんだ。それを、こんなクソジジイに翻弄されるというのがひどく腹立たしい。
———離れろ。
オレは、ゆっくりと静かに、告げた。
MB=マイクロビキニ