ある日舎弟がTSしたけど忠犬巨乳がどぷんたぷん 作:芥目たぬき
科学都市から随分と離れた辺境の街。
しかしこんな街にも、年に数回は大きなイベントというものがある。
昔から街に根付いた祭り事はもちろん、この時代だからこそ……そしてこの街だからこそのイベント。
すなわち、科学都市からの年に一度の輸入期間である。
まぁ、こんな辺鄙な土地に来る機械は科学都市の最先端からは程遠い型落ちばかりだ。科学都市の方から来ているオレ達からすれば、そう大したものではないのだが———
それでも、この街の住人達は皆笑顔になっている。
たとえば、遠い科学都市で働いている息子や孫の久々の帰省だったり。以前発注していた科学都市の製品が到着したり。
人によってその理由は様々だが、共通して待ち遠しく思っていたというわけで。
しかしオレたちは、街の朗らかな雰囲気とは裏腹に、とても焦っていた。
「ご老人……聞きたいことがある。すまないが、ディーテという人を知らないか?」
「いや、知らないねぇ……」
「おいガキども、ディーテっつう女は知らないか?」
「ウワァおっぱい星人だー!!!」
「は? いや、それよりもディーテっていう……」
「すまない、ディーテという人を探しているんだが……」
「えっ………………ナンパですか?」
「いや違っ、あの、ナンパじゃなくて」
「ごめんなさい私急いでて……」
「ディーテってぇ女を探しているんだが……」
「なんだぁ嬢ちゃんかわいいなぁ? どこの店の嬢? ……ぶべらっ!?」
「セクハラは殴る。んで、ディーテって女だが……」
オレとダズは、ジジイの家を探すのに苦労していたのである。
身体の女体化の原因が、ジジイ曰くディーテという女らしいという事を知ってからしばらく、この街の至る所を探し回っている。
辺境ゆえに寂れているといっても……地方全体で見たら、この街はまだ人が多い方だ。隠れられる場所も、とても多い。
あれから何度かジジイが捕まっているところに足を運んでいるものの、なかなか口も割らず。
住まいはどこかを確認するために、例の若い兄ちゃんに頼んでジジイの身分公称を確認してもらったところ、なんと
……こんなご時世で、そんなことがあるものなのか?
しかし、どうやら未だにスラム街のようなところでは、出生登録がされない場合もあるらしい。というのが警官の言い分だった。そんなわけで、オレとダズは地道に人探しをしているわけだ。もちろん、ギルドに依頼も出しているが……情報はゼロである。
———出来れば、輸入期間が来る前には見つけ出したいというのが本音である。
この街では常に南から北、つまり都市側からの恒風が吹き続けている。それに乗って、1年に一度大型の嵐———通称プレーステールが来る。
このプレーステールというのは普通の嵐とは違い『必ず決まった時に、決まった経路を、決まった威力で進む』特殊な嵐なのだ。それはもう、ずっと昔からそうだし、例外というのはないらしい。
さらにプレーステールの後は、不思議と魔獣達がかなり大人しくなるという習性がある。これは、通常の嵐では起きないことだが、プレーステールに限定して起きる不思議な現象である。
———科学的にプレーステールの検証も行われているが……いかんせん
もし、何故魔獣が大人しくなるのかを調べることができれば人類の大きな一歩になるのだろうが、人が解明できる空はせいぜいが
輸入期間は、その嵐の直後。
つまり魔獣が大人しくなっているたった数日の間で、大型高速車が平野を高速で街までやってきて、そして帰っていくのだ。
この輸入期間というのはとにかく人の出入りが激しくなる。1年に一度のこのタイミングしか、街からの出入りが出来ないのだ。
……まぁ、自分の足で旅をするような猛者ならば話は別だが、通常の一般人ならまず命取りである。
オレとダズもプレーステール後の輸入期間を使ってこの街に来ている。街から出て行く者もいれば、ここにやってくる者もいる。だからこそ、その前にディーテとやらを見つけ出したいが……
「ほんとにいやがるんですかねぇ、ディーテとやら!」
「考えていても仕方ねぇよ。……探すしかないさ」
輸入期間に突入すれば、最悪の場合
嵐が来るまで、あと1ヶ月もない。
* * * *
その日も、オレとダズはぐったりとした状態で帰路についていた。
ただでさえ日銭稼ぎの魔物退治という自転車操業で日々を過ごしていたものの、そこに追加して人探しも日課になったのだ。
正直、睡眠時間も少なければ焦りからプレッシャーもかかっている。
「アニキィ……も、もういいのでは……?」
「……よくはないだろ」
ぐったりと、椅子に座って突っ伏しているダズを尻目に、オレは苛立ちながらも地図にチェックマークを書いていた。
この街の地図はもうだいぶ赤色になっていて、それだけの場所に話を聞きに行っているものの……まだ、北部や西部には聞きに行っていないところもある。
狭い街だと思っていたが……それでも地道に回っていると、広さを感じるものなのだ。同じ場所でも時間を変えて聞きに行ってみたり、もしくは詳しそうな人はいないかと聞いてみているものの、状況は芳しくなかった。
「もうすぐプレーステールが来るんだぞ。嵐の最中なんざ外出もできねぇし、輸入期に逃げられたらどうすんだ」
「ディーテとやらが出て行くなんて決まったわけでもねぇですぜ。急いだって……」
「じゃあお前は女のままでいいって言うのかよ? よくねぇだろうが」
オレはペンの裏を噛みながらも、地図全体を俯瞰して眺めていた。思い当たるスラム街は全部回ったものの……まだ見落としているところがあるかもしれないと、もう一度街全体を思い返す。
さっきまでは夜の店を中心に話を聞きに行っていて、今の時刻は夜の3時を回っていた。
「先に寝てろ。明日も早ぇんだ……」
「アニキも寝てくだせぇ! もう、しばらく徹夜じゃあねぇですか……」
「いや……もう少しやってからだな。お前は先寝てろ」
「……そう、ですね……ありがとうごぜえやす、アニキ」
女の身体で、慣れていないのにそうも無理させてられない。それにダズにはこれまでも無理をかけてきているのだ。
せめてこのくらいは、兄貴分としてやらせてもらいたいものである。
何か言いたそうなダズだったが、オレは見ないふりをしていた。
と、いうのが昨夜の事で。
「…………おはようごぜぇやす、アニキィ」
「……? おう、おはよう」
ダズは、男だった時の自身のTシャツだけを身につけて、股を押さえながら部屋に入ってきた。
その顔は血の気の引いた真っ青な状態で、オレは怪訝に思いながらもどうしたのかと、寝ぼけ眼をこすりながらも聞いてみる。
ダズは自身の腹を抱えながら、かなり躊躇った後———口を開いた。
「……すいやせんアニキィ……その、どうやら、何か呪いが進行しているようでさぁ」
「………………は?」
「血が……」
———股から血が、止まらない。
「女の身になるだけでなく……まさか、死ぬような呪いだったなんて……」
どうやら、ダズはズボンを履くと血で汚れると判断したのだろう。下半身には何も身につけておらず、ソコを手で押さえている。
その指の間から、ぼとりと血が床にこぼれおちた。
「股から、血?」
「女の身体になるだけじゃあなくて、まさか、こんなコトになるなんてっ……」
と、顔を真っ青にしてダズは怯えながらも言っているが。
……いや、それはおそらく女特有のものだ。
女の身体なら、当たり前である。
しかし男のオレたちからすれば、まったく縁のない事なワケで。
「…………腹は痛いか?」
「……まぁ、我慢できねぇほどではありませんが……鈍痛がありやす」
「いい、わかった。薬局行ってくるからお前は今日寝てろ」
女が身近にいなかったオレとて、女体というものに興味はあったし、子供の頃に同じ施設の女子たちがたまにコソコソと話しているのを知っていたので、
だが……そこまで再現されていたのかと思うと、ダズの身体をこんなことにしたヤツはなんて
「———あの、アニキ……」
「いい、とにかく寝てろ」
男女の差というのはなにも見た目だけではない。
女の体は、つまり身篭る機能を有しているという話だ。月に一度、7日間だけの特殊な肉体システム。
すなわち、生理というものだろう。
「コレで死にゃしねぇが……ま、今日は安静にしたほうがいいかもしれねぇな」
「ですがアニキィ、今日の予定は……」
「明日以降だ。寝てる方が楽なら汚れないように布でも敷いて横になっとけ。座れるなら、オレが戻ってくるまでトイレ入ってろ。何がいるのかわからないが……ナプキンだったか? 買ってくる」
時間を見て……大丈夫だ。近所の薬局ならば、あと10分もせずに開店の時間である。何を買えばいいのかてんでさっぱりだが、とりあえずあるものを適当に買ってくればいいだろう。
「歩くのも辛いならとにかく楽にしてろ……はぁ、まさかこんなことになるなんて……」
「あのっ……オレぁ、死ぬんでしょうか……?」
「は?」
「こんなことになったことねぇでさぁ。このまま出血し続けて、量も増えていって死ぬってぇことは……」
「……あー、まぁ死ぬことはないだろうな」
これが普通の生理ならば、まず死ぬことはないだろう。
「不安なのはわかるが……あまり気を負うんじゃねぇぞ。オレも詳しくはしらねぇ事だが、女なら誰にでもある事なんだ」
「……アニキィ」
「すぐに帰ってくる。いいから安静にしておけよ……帰ってきたら女の体ってやつを教えてやるから、とにかく何もするな。いいな?」
「…………わかり、やした……」
オレはダズをトイレに向かわせて、さっさと外出の準備をすすめる。……といっても服を着替えて、顔を洗うだけだが。
床にポツポツと垂れている血を濡れた雑巾で拭き取り、それから財布をポケットの中に突っ込んだ。
トイレからは、うめくような押し殺した声が少しだけ聞こえてきて、苦しいのだろうかと心が少しだけ締め付けられる。
アイツの言い方的に、きっと生理というものを知らなかったのだろう。いきなり股からたぷたぷと血が流れ出て、怖かったのだろうか。今も続いているのだろう腹痛に混乱しているのだろうか。
ただでさえ女になった混乱の中にいるのに、さらにそんな症状に見舞われたら……怖いに決まっている。
とにかく鎮痛剤と、生理用品を買ってこよう。
オレはさっさと家から飛び出して、薬局へと向かった。
ところで、オレはさっき「帰ってきたら女の体を教えてやる」と言ったが……もしかして、相当気持ち悪いことを言ったのか?
ダズに限って変な受け取り方をすることはないだろうが……言い方にはもう少し気をつけなくてはならないな……