※この作品はR-18です。

魔法科高校の性春生活   作:八住 楓

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誤字報告感謝します。



第24話 974日ぶり

 彼女たちが少女探偵団を結成した翌日の日曜日。俺は都内のとある山奥へと来ていた。

 高校生になって初めての休日。ぐっすりと眠る二人には出かけてくると書き置きを残してきたし大丈夫だろう。

 

 三年ぶりに占い師の格好をしている。あの頃に比べて身体が二回りくらい大きくなり、新調した衣装を身に纏っている。それにしても占い師の格好で登山は厳しいものがある。

 

「この奥か」

 

 額の汗を拭いながら目的地へと進んでいく。

 ステータス画面のマップに表示された場所。そこにかつて俺が渡した携帯化した石を持った人物がいる。

 携帯化した石は破壊されない限り何処にあろうと位置が把握できる仕組みになっていて、例え認識阻害魔法でも誤魔化すことは不可能である。

 

 この辺り一帯に張り巡らされた認識阻害の魔法による結界が構築されていようと、この奥に石がある事は確認済み。

 

 

 目には目を歯には歯を、結界には結界を。

 目の前には結界が展開されている。だが四葉の魔法師が展開した強力な結界であろうとアイちゃん特性オリジナル魔法には敵わない。

 元々展開されていた結界の側面に自分の結界魔法を重ねて発動させた。すると俺が発動させた結界の部分だけ元々あった結界に穴が開く。

 

 本来この結界を越えるためには、無系統魔法を鍵とした自動ゲートをくぐったり、特定の地点で特定の想子波を照射する必要があるようだが、この裏技を使えばドラえもんの通り抜けフープのようにどこでも通り抜けることが可能になる。まさにチート能力。

 

 結界内は先ほどまでの山林と変わらない木々に囲まれた場所だった。少し歩くとそこだけ地面の草がはげ、人ひとり分の道ができている。

 その道に沿って歩いていくと俺の『気配察知』が反応した。

 

「出てきてくださいませんか? 桜井穂波さん」

「……何者ですか」

 

 二十代にしか見えない顔立ちをした桜井穂波が姿を現した。三年ぶりだというのに前と変わらぬ綺麗な人だ。原作ではすでに亡くなっているから不思議な感覚。

 

「覚えていませんか?」

「……まさか」

「三年前の沖縄で出会っているではありませんか」

「あの時の、占い師?」

 

 あの頃に比べて声も姿も変わってしまった。

 

「どうしてここへ?」

「前にお渡しした石のことで話がありましてね」

「いや、そうではなくて……」

「あぁ、どうしてこの場所が分かったのか、ってことですか。簡単ですよ。あの石には私にだけわかる特別なGPSのような能力が付いてましてね」

 

 一瞬警戒したような動きを見せたがそこは実力者。異常を悟られないようすぐに態度を戻す。

 

「安心してください。私は口が堅いのでね」

 

 結界を越えた方法は企業秘密とだけ答えると、彼女はどこかに連絡した。おおよそ見当はついている。主に連絡したのだろう。

 

「ついてきてください」

「いいのですか?」

「あなた以外に侵入者は確認できておりません。それにあなたがどこかの刺客だとすれば私はすでに殺されているでしょうし」

 

 確かに殺せるが、こんな綺麗な女性を殺すほど愚かではない。

 

 森の奥へ進むと大きな湖があった。湖の水が太陽の光をはね返して鱗のように輝き光っている。そして湖のすぐ近くには木造の西洋建築物がひっそりと建っていた。

 

「こんな山奥までようこそいらっしゃいました。どうぞおかけくださいな」

「失礼します」

 

 外観から想像通りの内装の建物だった。一番奥の部屋に案内されたが、誰一人使用人らしき人を見かけない。

 部屋に入ると司波深夜が出迎えてくれた。ミステリアスな雰囲気を醸し出しながら優雅に微笑んでいる。これで四十代なのだからこの世界の住人はおかしい。

 

 妖艶な唇、強調された胸に視線を向けながら声を絞り出す。

 

「お久しぶり、ですかね」

「そうですね。九百七十四日ぶりですわ」

 

 ん?

 

「随分と見違えましたわね」

「そうでしょうか? 貴方様は前と変わらずお美しいですね」

「うふふっ、御世辞がうまいのは変わっていないのね」

 

 互いに腹の探り合い。

 

「こんな山奥で暮らしているとは思いませんでしたよ。失礼ですがもっと派手な生活をしてるかと」

「ここは空気が綺麗で落ち着きますの。魔法に触れる機会も少ないですし、安静にした方がいいと仰ったのは貴方の方じゃありませんか」

 

 こんな山奥に住んでるとか思わないじゃん。四葉の本宅に住んでたら行くのが大変だったからここでよかったんだけどね。

 

 彼女は表向き静養してることになってるらしい。沖縄海戦で被害に遭い、深い傷を負ったとされている。

 離婚し今は桜井穂波と隠居生活。

 新しい男を作らないのかと尋ねると遠回しに告白されたので丁重に断っておいた。すると拗ねたように頬を膨らませていたのだが、これほどあざとい四十代は初めて見た。

 

 美人は三日で飽きると言うが、俺なら死ぬまで傍に置いておくね。性格が悪かったとしてもこんなにエロい四十代はなかなかお目に掛かれないよ。

 

 雑談もこの辺にして本題へと移っていく。

 

「本日はお話が有って参りました」

 

 司波深夜は桜井穂波が淹れた紅茶を口にする。一つ一つの動きが洗練されていて魅入ってしまうな。

 

「私が渡した石のことなんですが、まだ持って……くれているようですね」

「ええ、これを指にはめてから嘘のように身体が楽になったもの。傍に置いておかない理由がないわ」

 

 紅茶を持つ手の薬指にキラリと光る指輪が見えた。薬指に付けるのはどうかと思うが、まだ身に着けていることに安堵する。

 

「まさか返してほしいと仰るんじゃありませんよね?」

「いえ、実はその石の効果は約三年で切れてしまうのです。前にお渡しした時には言い忘れてしまい、連絡を取る手段もなかったもので、こうして直接訪ねたというわけでございます」

「そう、なの」

「それで本日は石の交換に参りました」

「交換?」

「はい。先ほど効果が三年で切れてしまうと言いましたが、こちらとしても正確な時間までは把握できていないのです。それが千日なのか、きっかり三年なのか……。ですので効果が切れる前にこの石と交換しなければと思いまして」

 

 司波深夜と桜井穂波用に二つの石を机の上に置いた。前と同じ効果が付加されている。

 

「それじゃあこの石はどうなさるおつもり?」

「効果が切れればただの石ころと同じですから焼くなり煮るなりお好きにどうぞ」

「それは交換とは言わないのではないのかしら?」

「あっ」

「ふふふっ、面白い人ね」

 

 笑われてしまった。笑い方まで優雅だし、笑った時の目尻の垂れ方が深雪ちゃんとそっくりだ。

 

「ごほん、それで言いにくいのですが今回はお気持ちの方を頂きたくてですね」

「こんなおばさんでよければ……」

「いいのですか?」

「……ふふっ、冗談よ」

 

 食い気味になってしまった。お金が貰えればベストだが、美女の身体はプライスレスだ。つい反応してしまった。司波深夜も焦ったように笑って誤魔化してるし変態だと思われたかもしれない。

 

「今までこんな貴重な石を扱ったことが無いのだけれど、相場はどれくらいなのかしら?」

「お気持ちで結構ですよ」

「……穂波さん、あなたならこの石二つにどれくらいの値を付ける?」

「これは深夜様と、私の命の源です。私ごときでは……」

「素直な感想を聞きたいのよ」

「はい。では僭越ながら、「これ」くらいでしょうか?」

「ふーむ、そうねぇ、年間それくらいでも良さそうだけどどうしましょう」

 

 桜井穂波は指一本立てた。一千万だろうか。まさか百万なんてことは無いと思うが、それだけ貰えればウハウハだ。

 

「口座振り込みでいいかしら?」

「ええ。こちらに振り込みお願いします」

 

 使っていないアドレスから海外の銀行を経由して俺の口座に振り込まれる。多少の手数料を取られるけど微々たるものだ。

 

「……二億?」

 

 何度確認しても変わらない。

 

「ごめんなさい。いますぐに融通できるお金がそれくらいしかないの。足りないというのであれば後日振り込ませていただくわ」

「……いえ、貰いすぎなくらいです。貴方様のお気持ちありがたく頂戴いたしました」

 

 今すぐに帰って二人とパーティーしたい。札束風呂もできるな! 万札でマン汁を拭いてあげよう! しないけど。

 

「私と穂波さん、深雪や達也の命を守ってくれた対価としては安すぎるわね」

「元々お金を要らないと言ったのはこちらですのでお気になさらず」

 

 この二億という大金は今回の商談での対価。前回のは俺からの贈り物なのだから気にする必要はない。

 

「それじゃあ私たちの気が済まないわ」

 

 私たち?

 

「我々四葉家と手を組みませんか?」

「深夜様!?」

 

 予想外の展開になりそうだ。まさか向こうから話を持ち掛けてくるとは。

 

「穂波さん。彼は私たちの事なんて全てお見通しなのよ。そう、三年前からね」

「そうだったのですか……」

「私の妹で現四葉家当主、四葉真夜もあなたと手を組むことを承諾しています。これが承諾書です」

 

 今の時代では珍しい紙媒体にサインが記されている。本人の字を知らないが、鑑定すると本物だということの確認が取れた。

 

「確かに本物のようですね」

「ええ。あとは貴方が認めてくれるなら正式に協力体制を取ろうと思います」

「そうですか。ではサインしますね」

「……よろしいのですか?」

「何かありましたか?」

「いえ、条件を確認しなくても……四葉を怖がる者が多いですし少しは警戒するのが普通では?」

 

 四葉と言えばアンタッチャブル、触れてはいけない者たちだ。

 自分の子どもを魔改造したり抹殺しようとするやべー連中だけど俺には力があるからね。四葉を怖がる理由がない。

 

 手を組むにあたって条件が幾つか記されていた。

・俺と四葉は敵対しない

・四葉は俺に対して利益違反行為をしないが、俺が四葉に対してはその限りではない

・四葉は俺が困ったときに手を貸す

・互いの持つ情報を共有する(全てではないが)

・四葉家の女を差し出す

・俺の素性を明らかにせよ

・四葉へ優先的に石の提供

 

 かいつまむとこんなところだろう。かなり俺に忖度した条件のような気がするが、それだけ俺を脅威に思っているということか。

 

 まぁ俺をハメるための罠という可能性もある。利用するだけ利用して捨てられるのは御免だ。

 そのため一年間仮契約という形にした。仮契約では俺の素性を明かす必要が無く、一年間様子を見て四葉が本気で協力関係を築く意思を感じればこの書類にサインしよう。本契約を結ぶときに俺の素性を明らかにすることを約束した。

 

 それまで四葉家の女はお預けだけど、四葉の女性って誰だろう。

 俺としては深雪ちゃんは攻略する予定だから深雪ちゃんでいいんだけどな。

 

 仮契約にサインする。

 そこで俺はもう一つ条件を付けたした――。

 

 

「本日は有意義な時間を過ごすことができましたわ」

「こちらこそ深夜様と穂波様のようなお綺麗な女性と同じ空間にいられただけで幸せでした」

 

 変装してるのを忘れて普段通りに話してしまう。もし宮守遥として彼女たちと出会えばバレる自信があるぞ。

 

 なれない交渉ごとに神経をすり減らしたが、大金を手にしたことで帰りの足取りは軽かった。

 尾行されていないか警戒しながら家路につく。濃密な時間を過ごした気がする。家を出発した時には太陽が昇ったばかりだったのに、今じゃ西日が差していた……。

 

 

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