宮守遥十歳。俺の二度目の人生が始まった。
先ほど記憶の引き継ぎが行われて前世の記憶と今世の記憶の二つの記憶が手に入った。
そして現在、ベッドの上で横になりながら養護教諭から事情聴取ならぬ安否確認を受けている。どうしてこんなことになっているかというと、記憶の引き継ぎが原因だった……。
今日は小学校の始業式が行われた。今年から上級生になり周りの生徒も少し顔つきが違って見えた。
クラス替えにより式が終わればそのまま新しいクラスメイト達と自己紹介の流れだっただろう。
しかし俺がその場に参加することはなかった。
式の最中、突如襲ってくる頭を締めつける強烈な痛み。十歳の俺にその痛みが我慢できるはずもなく、奇声のような唸り声を上げながら倒れたらしい。らしいというのも養護教諭から聞いた話で倒れたときの記憶がない。
救急車を呼ぶか騒ぎになったみたいだが、すぐに目を覚ましたために初めての救急車を経験することはできなかった。そして念のために保健室に寝かせられ容体を確認されているというわけだ。
体温を測っている間にステータス画面の確認ができた。やはり他人には見えない仕様で養護教諭の目の前で使っても何の反応も示さなかった。
・ステータス(Ver1.1)
名前:宮守遥
種族:人間(童貞)
性別:男
年齢:10
性欲:13
経験人数:0(10)
経験回数:0
・ポイント
ポイント残高:10334
ポイント表
・能力設定
魔法能力設定
保健体育能力設定
その他設定
・取得済み能力一覧
・ミッション
あの時より僅かに変わっている。(Ver1.1)ということは徐々に修正されていくのだろう。
性欲が低いのは養護教諭が五十を超えたおばちゃんだからかもしれない。熟女も良いけど美人に限る。
家に帰ってから細部を確認するとして、ポイント残高が一万を超えている。どうやら記憶の引き継ぎが行われる前の行動もポイントに変換されるようで、ポイント表からポイント獲得の履歴を確認することができた。
〇ポイント表「履歴」
〈新しい順〉
4月10日〈3P〉女性に身体検査される
4月10日〈1P〉女性に腕を触られる
4月10日〈2P〉女性に下着を見られる
・
・
・
・
チュートリアルでは説明がなかったが、女性と関わったり何か行動を起こすことでポイントが獲得でき、そのポイントを消費することで様々なことに変換できるようだ。
『能力設定』の「魔法能力設定」から「加速系魔法」にポイントを振ることで加速系魔法が使えるようになったり、魔法科高校の劣等生で聞いたことのない魔法なども使えるようになるようだ。一度ポイントを振ってしまえばやり直しはできないのでまさにご利用は計画的にというわけか。
「保健体育能力設定」の欄にはずらりと性に関する事柄が表示され、唯一体育要素といえるのが身体強化できることくらい。このページはしばらく出番がないだろうし、当分はポイント集めと魔法能力向上を目標にしていこうと思う。
「うん。平熱みたいだし、さっきのような頭痛もないのよね?」
「はい」
「念のため親御さんに病院に連れて行ってもらうようお手紙書いておいたからちゃんと渡してね」
「わかりました」
保健室を後にし教室へと向かった。
教室では既にクラス全員の交流が済んでおり、案の定というべきか教室に入ると品定めするような奇妙な視線が送られてくる。
さらに無能な担任は俺を黒板の前に立たせると自己紹介するよう催促してきた。まるで転校生の挨拶だ。ってか、こいつは俺が倒れてるのに何かしたのだろうか。俺の中での評価は急下降していく。
「えー宮守遥です」
「それだけ? もう少し話してみようよ。将来の夢とか、好きな教科とかさ」
「将来の夢は優秀な魔法師になることです。好きな教科は体育。よろしくお願いします」
「……っそ、じゃあ早く自分の席について」
急に担任の態度が変わった。それに凍り付くような冷たい視線を向けてきた。この担任マジで気持ち悪いんだけど。
担任の対応が気になったのでさっき能力設定で取得していた、転生者にとってお決まりともいえる「鑑定」を担任にかけてみた。千ポイントも消費させられたが鑑定があればあのお兄様もびっくりの情報が手に入るし安いものだ。
鑑定をかけると視界上に鑑定結果が現れ、名前や年齢などの個人情報から魔法師であれば得意魔法やCADに入っている魔法が見えるらしい。
初めて鑑定を使ったが気になる単語が出てきた。それが〈反魔法主義者〉という単語。魔法が使えない人に対して適用されるわけではなく、魔法に批判的な人物に付けられる称号のようなものだ。
過去に魔法師絡みで何かあったとしか思えないが、「鑑定」ではそこまでわからない。新学期早々担任に目を付けられた形となったわけだが、ブランシュなどの反魔法国際政治団体に所属してるわけじゃないので無視するのが一番。変に関わらなければいいだろう。
今日は始業式とホームルームだけで午前中には帰宅できるらしい。色々なプリントや教科書が配られたがその間も一切目を合わせてこない担任だった。わかりやすくて逆にいいかもしれない。
「宮守くん、だったよね?」
「ん?」
ホームルームが終わり生徒たちは各々帰路につこうとしている。そんな中、二人の女子が机の前に来て話しかけてきた。
「ごめんなさいっ!!」
「……えっと、何で謝られたのかわからないんだけど」
「あ、えっと、本当にごめんなさい」
うん、許そう。
「この子も悪気があったわけじゃないから許してあげてほしい」
隣の子も申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「はい、許しました。それで名前教えてくれる?」
可愛い子だから許した。何があったか知らんけど。
「うん! 宮守君は遅れてきたからみんなの自己紹介聞いてなかったんだよね? 私は光井ほのか。よろしくね」
「よろしく」
「ほら、雫も挨拶しよーよ」
「……北山雫」
まさかの原作キャラ登場である。
黒歴史ともいえる始業式中に叫ぶという一躍時の人となった俺にも春が来たようだ。性神様万歳。
「あれ、北山さんとは初めましてじゃないよな?」
「覚えてたんだ」
「えー? 二人は知り合いだったの?」
今世の俺の記憶が彼女のことを覚えていた。
「うん、北山さんの家が開催するパーティーに参加したことがあってその時にね」
俺の記憶が間違っていなければそのパーティーでやらかしてるんだが北山雫が忘れていることを祈ろう。
「そのとき宮守君に告白された」
「えええぇえぇええええー!!?」
「ほのかうるさい」
「ご、ごめん」
教室にはまだ半分ほどクラスメイトが残っていたが、その視線を独占していた。
クラスメイト達は遠目に俺たちのことを見てくるだけで近寄ろうとはしない。さっきホームルームで担任が魔法師は危険な人間だから近寄るなとか言っていたのが原因だろう。あんな担任首になればいいのに。
「宮守くんは雫のことが好きなんですか!?」
「あはは、あの時は若かったからね」
「えっと、いまも若いと思うんだけど」
女子は恋バナが好きだときくが、光井ほのかも例外ではなかった。嬉々とした瞳が向けられる。
俺と北山雫は小学二年生の頃に彼女の父親が総帥であるホクザングループが主催する立食パーティーで出会っていた。俺の父も実業家、というか全国にホテルや様々な施設を持つ不動産王と呼ばれる人物らしく、縁あってパーティーに参加できたというわけだ。
俺の記憶によると、俺と父が主催者である北山潮氏に挨拶しに行ったときに隣に北山紅音と彼女もいて、俺の第一声が「雫さんを嫁にください」というこれまた黒歴史発言だった。
確かに北山雫は可愛い。けど両親の前でそれは度胸があるどころの騒ぎではない。過去の俺何やってんだよ、そしてグッジョブと過去の俺を誉めた。
さすがに良い返事は貰えなかったものの印象には残ったようで北山潮氏からは「英雄色を好むと言うし跡継ぎには困らないかもしれないね」と笑っていた。
紅音氏からは「口は災の元とも言いますし、お気を付けさない」と俺が当時は魔法が使えない状態だったので不評だったが、成長した姿を見せれば評価も変わるだろう。親子丼を狙える逸材だ。
「それから会ってなかったよね?」
「うん。私は学校で見かけたことあるけど、お母さんが仲良くしちゃダメって言ってたから」
「え」
「冗談」
「雫! あんまり揶揄っちゃ駄目だよ」
この時から二人の仲の良さが伝わってくる。俺には幼馴染がいなかったし羨ましい。
「それで雫は告白の返事どうしたの?」
掘り下げなくていいんだよー? あの時、返事は貰えなかった気がする。っていうか俺が告白したせいでその場が騒然として声も聞けなかった。
「お父さんが保留にしてた。お母さんは断りたかったみたいだけど」
そういうことは本人に言わない方がいいと思うよ?
「雫としては?」
「別に、初対面だったし断ってたと思う」
「ふーん」
そりゃまぁ、ね。いきなり告白されても困るよな。
「まあまあ、昔のことは置いといて。光井さんは何か用があって話しかけてくれたんじゃないの?」
「はっ、そうだった」
可愛い。ロリほのかちゃんにロリしずくちゃんぺろぺろ。っていかんいかん、性欲値が「40」まで上昇している。
この身体ってもう精通してるのか? 精通してなかったら性欲の下げ方がわからないんだけど。でも小学四年生なら女性に抱き着いたとしても問題にならなそうだし大丈夫か? ギリ銭湯で女子風呂に入っても許される年頃だろう。
「さっき自己紹介の時に将来の夢で魔法師になるって言ってたから気になって」
「あぁ、もしかして光井さんも魔法が使えるの?」
「はいっ、雫と一緒に練習してるんです!」
「へぇ、二人は仲がいいんだね」
「雫とは幼馴染で親友だから、ね?」
「……うん」
照れる雫ちゃんも可愛い。俺ってロリコンじゃなかったけどこんなに可愛い小学生がいるならロリコンでもいいような気がしてきた。他の名も知らぬモブキャラのことは置いといて、彼女たちの攻略を第一目標としよう。
「でもおかしい」
「何が?」
「宮守家は魔法が使えない家系ってお母さんが言ってたから。パーティーの時も魔法が使えないみたいな話してたよね?」
「……そんな前のことなんてワスレチャッタナァ」
「……」
「あの時は本当に魔法が使えなかったんだよ」
「どういうこと?」
「ま、ここで話すのもなんだし、帰りながら話さない?」
少しだけだが学校で生活して気づいたことがある。それは魔法が使える人と使えない人達の間には僅かに溝のような気疎い関係ができているということ。
俺が魔法師発言をしたときもそうだが、彼女たちと話しているときも周囲の生徒たちは近寄る気配すら見せなかった。
北山雫や光井ほのかほどの美少女であれば、他に友達がいてもおかしくないのに教室から校門を出るまで誰からも声を掛けられることなく、彼女たちもそれが当たり前のような感じだった。
高嶺の花すぎて話しかけられないとも捉えられるが、一般人にとって魔法師とはどういう存在なのかわからない。いっそのこと反魔法主義者である担任に聞いてみるか。
「俺、BS魔法師みたいなんだよ」
美少女二人を侍らせながら考えていた設定を語りだす。二人の視線に悶々としちゃうが、俺って見た目どうなってるんだろう。 魔法の資質が高い人ほど美形になりやすいって聞いたことがあるけど元々魔法の資質が無い俺はどうなんだ。不細工だったらぐれてやる。
「それも成長していくことで魔法が使えるようになる特殊なタイプらしくてね、実際最近まで自分が魔法使えることすら知らなかったんだよ。だから両親も知らないし今日初めてこのことを人に話したかも」
「そうなんですね、どんな魔法なんですか?」
「ほのか、あまり人に魔法のことを聞くのは良くないよ」
「あっ、ごめんなさい!」
「いいよ全然。北山さんと光井さんになら話してもいいと思ってたし」
「どうして?」
「二人とも可愛いから」
「かわっ……っ」
「……」
ほのかちゃんはすぐ態度に現れるからついつい弄ってあげたくなる。雫ちゃんはポーカーフェイスだけどその無表情を壊したくなる。二人といると俺の中のサディスティックな部分が蠢いてくるよ。
「まぁ冗談はその辺にしておいて」
「じょ、冗談!?」
「二人が可愛いってのは本当だよ」
「ふぇ、え、あ、あの」
「ほのか、宮守君はほのかをからかってるだけだから」
「え、そ、そうなの!?」
二人を可愛いと思ってるのは本当だけどね。
「でも本当に二人のことは可愛いと思ってるし、戸惑ってる光井さんのこと好きだなぁ」
「す、好きっ!?」
雫ちゃんからのジトーっとした視線が俺をより興奮させる。さすがにやりすぎたと思うし今日はこの程度にしておこう。徐々にね。
「話を戻すけど、実は自分でもよく魔法のことはわかってなくてね。父に相談しようと思ってるんだよ」
「そ、そうなんですね、じゃあ魔法を使ったことは?」
「一回だけね。その魔法で自分が魔法を使えるってわかって、色々調べたんだけど該当する魔法がなかったんだよ」
「だからBS魔法師だと思ったんですね」
「うん」
それから俺は二人と情報収集しながら仲を深めていった。北山雫は無口で基本的には自分から話すことはなかった。それでも光井ほのかとは普通に会話している。人見知りなのかな。
二人と別れたあと無事に家に着くことができた。家の場所がわからなかったらどうしようかと思ったが、身体が覚えていたようで無意識のうちに家の方へ歩いていた。
不動産王と呼ばれることだけあって自宅は豪邸だった。場所も一等地で洋風な館と見間違えるほど巨大な建物だ。
塀が家の周りを囲み、立派な門扉を潜り抜ければ花のアーチがお出迎えをしてくれた。庭には噴水があってどんだけ広いんだよ。
俺が学校で倒れたことを聞きつけた執事やら世話役が慌てふためいていたが、自分の部屋に入ると再びステータス画面を表示させた。
・ステータス(Ver1.1)
名前:宮守遥
種族:人間(童貞)
性別:男
年齢:10
性欲:46
経験人数:0(10)
経験回数:0
・ポイント
ポイント残高:9554
ポイント表
・能力設定
魔法能力設定
保健体育能力設定
その他設定
・取得済み能力一覧
・ミッション
鑑定にポイントを使った分が引かれているが、彼女たちと一緒に下校した分のポイントが加算されていた。
まずは今週のウィークリーミッションを確認。
〇女性に10回告白する(3/10)
〇学校に登校する(1/5)
〇魔法を使用する(0/10)
クリアボーナス〈ポイント1000追加〉
まだ性に関するミッションはなかった。性行為をしろとか言われても無理だったからいいんだけど。
告白の回数表示が(3/10)とされているが三回も告白した覚えがない。もしかして愛の告白だけじゃなく自分の秘密や思いを告白すればいいのだろうか。この辺りも色々研究していかないといけない。
「今が小学四年ってことは沖縄海戦まであと三年か」
司波達也と司波深雪の仲が一気に縮まるきっかけともいえる追憶編だ。あの出来事をきっかけに司波深雪は重度のブラコンを患うようになる。
「司波深雪を攻略するには行くしかないよなぁ」
司波深雪が司波達也と親密になればなるほど攻略難易度は上がっていく。もし彼女と親しくなるなら沖縄に行かない手はない。
「問題はどうやって沖縄に行くか」
中学生が一人で沖縄に行くと言って許されるとは思えない。
「俺の記憶によれば沖縄にも父親が経営するホテルがあったよな?」
俺が有能であることを証明してなんとか沖縄に行く算段をつけよう。そのためにはポイントの振り方が重要になる。
「透視を覚えて女性の服の中を見るってのもいいな、それなら透明化を覚えた方が……いやいやまてよ……」
そのあと執事が部屋に入ってきて病院に連れていかれるまでポイントのやりくりに頭を悩ますのであった。
光井ほのかの謝罪の理由は後ほど明らかになります。特に深い意味はありません。良い子なんです。
誤字報告ありがとうございます。名前を出していいのかわからないのですがとても感謝しています。誤字に「ー」が多いのは私の方のワードソフトがおかしいのかなんなのか…