※この作品はR-18です。

魔法科高校の性春生活   作:八住 楓

5 / 109
小学生編は今回で終わりです。次回はついおk……。


第4話 小学校編後半

 二月十日。

 

 記憶が引き継がれてから早一年が経とうとしていた。俺は北山雫、光井ほのかと交流を深めながらポイントを稼ぐ日々が始まり、充実した毎日を送っていた。

 北山雫を雫ちゃん、光井ほのかをほのかちゃんと呼び、ほのかちゃんとは一日に一回手を繋ぐ仲になるほどに親密になったと思う。

 

 これも性神様の加護による力が大きい。半年前、ふとステータスの取得済み能力一覧を見てみると、アイちゃんからプレゼントされた結界魔法の他に加護として三つの能力を授かっていたのに気づいた。

 その三つというのが性神様というだけあって性に関する加護で、特に現状は『異性適性◎』という加護が役立っている。

 

 『異性適性◎』は異性との相性がずば抜けて良くなり、相手が自分に対して好意を持ちやすくなるというものだ。雫ちゃんには効いているのかわからないが、ほのかちゃんには絶大の効果を発揮している。これもエレメンツのせいなのか、だんだん俺に依存してきている実感がある。

 

 そんなある日、雫ちゃんからほのかちゃんについて相談があると昼休みに人気のない裏庭に呼び出された。もしかして俺の秘密に感づいたのかと内心焦ったが、相談内容は全くの別物だった。

 

「ほのかちゃんが苛めにあってる?」

「そう」

「誰から?」

「クラスの女子から」

「なんでほのかちゃんが?」

 

 ほのかちゃんがイジメにあう心当たりがない。最近表情が硬いと思う日はあった。初経が来て生理なのかと思っていたがまさかイジメにあっていたとは。許せない。

 

「ハルカのせいでもあるんだからね」

「俺のせい?」

「はぁ、やっぱり気づいてなかった」

「……ごめん」

 

 ちなみに雫ちゃんは俺のことを「ハルカ」と呼び、ほのかちゃんは「はる君」と呼んでいる。

 

「ハルカ、女子に人気なの気づいてるよね?」

「まあそれなりに?」

 

 他の男子とはそのまんまの意味で生きている年数が違うし女性の扱いに対する慣れが違う。学校でも男子より女子の方が友達が多いと自負しております。そういえば男子の友達と呼べる人いない気が……。

 

「女子から遊びの誘いがあっても断ってるよね?」

「うん、雫ちゃんたちと魔法の練習したいからね」

 

 俺が魔法を使えるようになったことを家族に話したところ大層喜ばれた。我が宮守家では呪われてるんじゃないかと思うほどに魔法資質のない子ばかり生まれ、魔法師の女性と結ばれてもその子には魔法の資質がないという家系だった。

 俺には二つ年下の弟と三つ年下の妹がいるがどちらも魔法の資質は無かった。俺が魔法が使えるとわかるまではその呪いが続くと言われていたが、その呪いを打ち払ったと父は更に豪傑な人間として称えられるようになった。

 父のおかげではなく性神様のおかげなんだけど、俺を生んだという意味で父は運がよかったんだろう。父は俺を不動産王の後継者として育てたかったみたいだが、俺に魔法の資質があるとわかるや否やすぐに後継者候補から外し魔法師になるよう教育し始めた。

 十師族にも顔が利きすぐに優秀な魔法師とコネができたが、俺はそれでも雫ちゃんたちとの時間を大切にしたかった。

 

 加護により魔法の練習をしなくても魔法を自由に使うことができるが、できるだけ自分の経歴を作りたかった。情報不足により九重八雲や司波達也に怪しまれるより、俺は北山家で魔法を勉強した、という信頼できる情報が欲しかったんだよね。

 いきなり出てきた謎の魔法師なんていかにも敵って感じだし胡散臭い。それが理由で司波深雪と距離を取られたら俺泣いちゃうし。

 宮守家としても北山家と手を組むことにメリットがあるし彼女たちには報われてほしいという気持ちがあり、いまはまだ十師族の手を借りず、北山家が保有する施設で魔法の修行に取り組む日々を送っている。

 閑話休題。

 

 そんなわけで学校のモブ女子たちと遊んでいる時間などないというわけだ。まさかそれがイジメの原因だとは思いもしない。

 

「まさか遊んでくれないからって、女子たちが俺と仲のいいほのかちゃんをイジメてるの?」

「それに近いかも。自分たちとは遊ばないのにほのかとばかり一緒にいるから」

 

 嫉妬ってことか。小、中学生のイジメの理由や動機なんてくだらないものが多い。前世の俺なんて名前が女の子っぽいってだけでイジメられてたし、女の子と仲良くしただけで「夫婦だ~」と弄られた時もある。

 精神的に幼稚な人間が多いから仕方ないのかもしれないがそれでも親しい人がイジメにあうのは見過ごせない。

 

「他にも――」

「他にも理由があるのか!?」

「去年の運動会でほのかがリレーで転んじゃって、結果として白組が負けたから……」

「それでイジメてるって?」

「そう」

 

 馬鹿馬鹿しい。ふざけた理由だ。あのリレーで勝っていたとしても最後の騎馬戦で完敗したから結果は変わらなかった。

 それにリレーで転ぶことができるのはリレーの選手に選ばれた人間だけだ。ほのかちゃんはその選手に選ばれて走った。選ばれてもいない人間がほのかちゃんを罵倒してもいい理由にはならない。

 

 他にも『男子の告白を断ったから。その男子のことが気になっていた女子が生意気とほのかの悪口を言いふらしてる』とか『ハルカとは遊ぶのに俺とは遊ばないのか、と、男子がほのかに詰め寄ってる』などなど、雫ちゃんにも被害が出てそうなものがいくつもあった。

 

「私は別に。ハエがいるからっていちいち気にしてたら埒が明かないし」

 

 随分と強い子だ。さすがホクザングループ総帥の娘なだけはある。カワユス。

 

「ほのかちゃんの優しい性格が仇となったわけか」

「それだとまるで私が優しくないみたいな言い方」

「雫ちゃんも優しいよ。でも優しいだけじゃなくて嘘をつかない素敵な女の子だからね。俺はそんな雫ちゃんが好きだよ」

「……そんなことより今はほのかのことが大事」

 

 相変わらず無表情だ。赤面した姿を見てみたいがするのだろうか。だがこれでウィークリーミッションの『女性に15回好きという』をクリアした。残りは『女性に抱き着かれる』だけだが、これがなかなか難易度が高い。俺から抱き着いても無効だし、抱きついてと命じてもカウントされないからたちが悪い。

 

「女子に男子に大人気だなまったく」

 

 担任に相談するつもりはない。あの担任は俺だけじゃなくほのかちゃんと雫ちゃんも毛嫌いしてるし話したところで俺たちが悪者にされてしまう。

 

「解決策としては直接イジメてる所を見つけて問いただすか、俺たちがずっとほのかちゃんと行動すれば大丈夫だと思うけど」

「ずっとは厳しい」

「そうだね」

 

 ほのかちゃんと一緒に行動すればイジメを防ぐことはできるかもしれないが根本的な問題の解決にはならない。

 

「あえてほのかちゃんを一人にしてイジメられてる所を助けるってのは?」

「ほのかを囮にしたくない」

「だよなぁ……ところで今ほのかちゃんは?」

「……職員室に行ってくるって言ってたからいまは、一人?」

「ってことは……まさかな」

 

 俺は雫ちゃんを置いて駆け出した。そんなことはないと思うが妙な胸騒ぎがしたからだ。

 感情的になるのはこの世界の俺が幼いからだろう。ほのかちゃんのイジメに気が付かなかった自分に苛立ちながら職員室の扉を叩いた。

 

 職員室に入るとほのかちゃんの姿は見えない。もう教室に帰ったか。杞憂で終わればいいのだが、そんなことを思いながら教室の方へ足を運んでいると、クラスでほのかちゃんによく声をかける女子連中が女子トイレの前で屯っているのが見えた。

 

「あいつがいない」

 

 あのグループはよく七人で行動している。一組の女子五人、男子二人で構成され、その中でもクラスのカーストトップにいるオオサキって女子がほのかちゃんによく声をかけている。

 確か、ほのかちゃんに告白した男子のことを好きだったのがオオサキだったような。当の本人はこの場にいないが、女子トイレの前で屯ってるってことはトイレの中にいるのか? オオサキ一人残してトイレに行くような連中じゃないことはよく知っている。

 

 今の時代トイレの扉を閉めて上からバケツの水を落とすなんて前時代的で幼稚なことはしないと思うけど。

 

「なあ、オオサキさんって今どこにいるの」

「え? あっ、宮守君!」

 

 トイレの前で談笑している女子の一人に声をかけた。他三人も話を止めて俺の方へ視線を向けてくる。鑑定開始。

 

「オオサキさんに用があるんだけどさ、教室にいなくて」

「あぁ~めぐみなら~職員室に用があるって言ってたよ」

 

 ギルティー。俺の鑑定って結構便利で相手が嘘をついているかも鑑定してくれる優れもの。この女子の発言から虚偽の判定が出た。それにさっき職員室に行ってきたけどオオサキはいなかった。

 

「そっか……じゃあどいてくれる?」

「へ?」

「それとも君たちがイジメに加担してるって公にしようか?」

「……な、何のことかわからないよ宮守君」

「最後通告ね。今ならその中にいる人たちだけのせいにしてあげるからどいてくれない?」

「えーっと、うちらトイレしに来ただけだから教室戻るね、じゃあね」

 

 グループなんてものは仲間を簡単に裏切るもの。それが何の力も持っていない小学生ならなおさらだ。彼女たちは正しい選択をしたよ。

 

 さて、動画でも撮るか。携帯端末のビデオ機能をオンにする。

 

 女子トイレの扉を開けると例のグループの残りのメンバー三人が奥の扉の方で固まっていた。一人はオオサキ、一人はほのかちゃんに告白したとされる男子でもう一人は忘れた。

 

「な、なんで宮守が女子トイレに入ってきてんのキモイんだけどー!」

「ならそっちの男子二人はどうなんだよ」

「そ、それはあたしが呼んだからいいの!」

「そんな理屈が通ると思ってんのか」

 

 一番奥の個室の扉が謎に閉められている。俺の姿を見た途端に男子二人は面白いほど狼狽したように顔を伏せていた。オオサキの後ろに隠れたって隠れられるはずないだろ。

 

「で、男子二人とこんなところで何してたわけ?」

「べ、別にいいじゃない! あたしがどこで何してようと。それとも何? あんたあたしのこと好きだから気になるわけ?」

「アホか、俺が好きなのは今もこれからもずっとほのかちゃんと雫ちゃんの二人だよ」

 

 ガタン、と奥の個室からドアを叩くような音がした。男子二人が扉を抑えてるせいで開くことはなかったがあそこにほのかちゃんがいるのだろう。

 こういう時のために知覚能力を取っておくべきだった。こんなことが起きるとは思わなかったし、彼女たちの安全のためにも取ろうと誓った。

 

「その奥に誰か入ってるのか?」

「さぁ、トイレだし誰か入ってるんじゃないの?」

「あっそ、じゃあ力ずくでも開けさせてもらうけどいい?」

「女子が入ってたらどうするつもりよ!」

「その場合はちゃんと責任取るから」

「ちょ、ねえ二人で止めてよ!」

 

 男子二人が俺の前に立ちはだかる。悲しき男子たちよ。好きでもない女子の言いなりになる気分はどうだい? 俺なら死んでも断るけど、言いなりになるなら好きな女子に限る。どちらかと言えば俺が命令したい派だ。

 

「お前たちがオオサキと女子トイレに侵入してイチャコラしてたって言いふらそうか?」

「ふん、お前の言ったことなんて誰も信じねーよ!」

「そうかなぁ、俺って意外と女子に人気あるみたいだし、俺が頼めば学校中いやこの街くらいなら簡単に広まると思うけどなぁ」

「ちっ、こんなクズがどうして光井なんかと一緒に……」

「俺はクズじゃないからほのかちゃんと一緒にいられる。クズなのはどっちかなぁ?」

「光井のこと名前で呼びやがってムカつくんだよこの糞野郎がっ!!!」

 

 積年の恨みとばかりに鬼の形相で殴り掛かってきた。正当防衛を主張するなら一発殴られておこうか。

 

 ボゴッゥ、っと爆音が頭の奥に響いてくる。

 

「いってぇっ」

 

 本気で殴りやがったこいつ。相手が十歳、十一歳だからって舐めてたけど俺も同じ年だから痛みには弱かったわ。

 それに今思い出したけどこいつ柔道やってたんじゃなかったっけ。そりゃあ打撃強いわな。

 

 ってあーうわっまじかぁ、奥歯抜けてるしだりぃ。乳歯だったからよかったけど永久歯が抜けてたら滅茶苦茶慰謝料請求したわ。

 

「口ん中切れてるし、普通顔殴る? これじゃあ殴ったの隠し切れないよ?」

 

 喧嘩するなら顔じゃなくて腹を殴れっていうしな。前世では髪の毛引っ張り合うとかどうしようもない喧嘩しかしたことないから、前世含めて顔殴られたのって初めてかもしれない。

 抜けた歯で口の中を切ったかもしれない。口の中が血の味で気持ち悪い。

 

「ひっ!」

 

 歯と一緒に血をトイレの床に吐き出すとオオサキが怯えたように声を上げた。お前がやれって言ったんだから血くらいでビビるなよ。

 俺もあまりの血の量の多さに少しビビったけどさ。

 

「あ、あんたやりすぎよ!」

「でもお前がやれって言ったし」

「そこまでやってとは言ってないわよ!」

 

 トイレの鏡に映る俺の口元がわずかに赤く腫れていた。せっかくの美形が台無しだぜ全く、とか言ってみた。

 

「仲間割れはいいからさ。仲良く警察に捕まりな」

「け、警察!?」

「そうだよ。俺を殴って怪我させた。立派な暴行罪だ。俺はこの後警察に行って君たちに暴行を受けたと証言するとしようかな」

「ちょ、待てよっ!! お前が脅すようなこと言ったから悪いんだろーが!」

 

 警察に行っても意味がないのは自明の理。よくて損害賠償できる程度か。でも小学生相手にはこの程度の脅しでもよく効く。今の小学生は昔よくネタにされていた「先生に言いつけてやるー」というのは効かない。小学教師の力なんて怖くないからな。

 でもそれが親、警察となると変わってくる。

 

「何のこと? 俺はそんなこと一言も言ってないし、急に殴られた。その結果がこの怪我だよ」

「ふざけるなっ、俺たち三人が言えばお前が嘘ついたことになるにきまってる!」

「加害者三人が口裏を合わせたって思われるから意味ないよ。それに証拠っていうならもう一人いい証人がいるじゃないか」

「誰のことだよ!」

「その奥の個室に入ってる人。その人に証明してもらえばいいんじゃなかな? 見えてなくても殴ったときに出たドゴッって音は聞こえてるはずだからね」

「……そ、それは」

「できないの? なら俺が開けてあげるよ」

「止めろっ――」

「おい、もう一度俺に触れたらその時はわかるよな? 罪を重ねるな」

 

 さすがに二度は俺もキレる。男子は扉から離れ、オオサキも人が変わったように顔色を青くしながら男子たちの後ろへついていく。

 

「……ごめんね、ほのかちゃん」

「……っ」

 

 トイレの個室に入っていたのはやっぱりほのかちゃんだった。ガムテープを猿轡のように口元に貼られ、パーカーを半脱ぎにさせられ、手を後ろに縛られ身動きが取れない格好にさせられていた。

 ゆっくりとガムテープをはがし拘束を解く。あのとき四葉真夜にはできなかったことを……。彼女はどうなっているのか今はそんなことより目の前のほのかちゃんが大切だ。

 

 ほのかちゃんの目からポロリポロリと滝のように涙が流れ出てきた。俺は胸が締め付けられるように苦しくなり、ほのかちゃんの小さな身体を力いっぱい抱きしめていた。

 胸元では肩を震わせてしゃくりあげの声を漏らし、不安や心細さを解消させていく。

 

「ほのかっ!!」

 

 どうやら雫ちゃんも駆け付けたようだ。教室に戻っていた同じグループの女子に聞いたんだろう。

俺とほのかちゃんの様子を見ると安心したようにほっとした表情を見せていた。初めて雫ちゃんのそんな顔を見たかもしれない。

 手招きすると雫ちゃんもほのかちゃんの元に駆け寄り俺ごと抱きしめていた。

 

 ウィークリーミッション『女性に抱き着かれる』をクリアした瞬間でもあった。

 

 

 

 

 




評価、感想ありがとうございます。皆様の温かいメッセージが私の活力となります。
活動報告の方にもコメントありがとうございます。想像以上に反応があって嬉しい限りです。10人の候補者の参考にさせて頂きます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。