この場所にエリカがいるのは遥の影響によるものだ。
当初は遥がエリカと美月をこのホテルに招待し、九校戦期間中を一緒に過ごすことを計画していた。
遥と千葉家は浅くはない関係にあり、その計画を知った千葉家当主がエリカにただ飯を食わせるわけにはいかないと給仕のアルバイトにねじ込んだ。
そうでなくても千葉家としては元々エリカをこの場所に派遣することは決定事項であったため、すんなりと宿泊の許可が下りた。
千葉家当主としてはエリカの出自事情から彼女を甘やかすことができず、この先も千葉家にいられるかも不明瞭。であれば、家柄がよく魔法師としても有望株。かつエリカが気にしている宮守遥の元に嫁ぐのも吝かではないと考えている節があり、あわよくばこの期間中に二人が同衾することを望んでいた。
当の本人たちは既に同衾以上の事を済ませているのだが、そういう経緯があり、エリカは原作よりも憂鬱な気持ちでここにいるわけではなかった。
もうすぐ遥たちが部屋へと辿り着く。
エリカは遥の腕に抱かれながら、潤んだ瞳が彼の首筋の痕を捉えた。
「早速ほのかたちとおっぱじめたの?」
「ん? あぁ、首の痕の事か。懇親会があるからエッチは駄目だよって言ったら、じゃあこれならいいでしょって押し倒されてね」
その光景が容易に想像できるあたりエリカの常識はバグっている。自分だけは正常と思っていても、気づかぬうちに二度と抜け出せない沼にどっぷりと嵌っていた。
「噛み痕もあるのによく周りに気づかれなかったわね」
「初対面の人を見る時、一番に見るのは顔だからね。次に目だったり全体の体型を見たりするけど、首を意識してみることはないよ」
宮守グループの後継者として一時期帝王学を学んで得た知識。
相手が高校生ではなく社会人となれば、顔よりも身だしなみや表情を見たりするが、それでも首に意識が向かうことはない。
「それに俺ってかっこいいから笑ってれば変に思われることは無いんだよね」
「普通自分でカッコいいって言う?」
「じゃあエリカちゃんは俺の事かっこいいと思う?」
「……知らないわよ」
プイッと目を逸らす。その頬は僅かに赤く染まっていた。
「ふふっ、エリカちゃんは可愛いね。今は美人さんだけど」
「うるさい」
「でも俺はひたむきに剣を振り続ける真剣な眼差しのエリカちゃんに惚れたんだ。女の子なのにかっこよくて、強くて、逞しくて。女の子にこんなことを言うのは失礼かもしれないけど、そんなエリカちゃんだから俺は好きになったんだよ」
「……だ、だまれぇ!」
「あの時のかっこいいエリカちゃんも今はこんなに可愛らしい女の子になっちゃったけどね」
「……っ」
顔のチークを濃くしたようにエリカの頬が真っ赤に染まる。
「明日は一日何もないからいっぱい愛してあげる」
「っっ、ば、ばかっ! 少しは手加減しなさいよねっ」
部屋に着くとエリカをソファーに座らせる。
一面ガラス張りとなった窓からは、西に沈む太陽が雄大な富士山と重なる絶景が広がっていたが、今のエリカには景色を楽しむ余裕がなかった。
「シャワー浴びる?」
「……いい」
「ふっ」
「なによ」
「何でもない」
シャワーを浴びる時間すら勿体ないのか、エリカはバイトの制服を脱ごうとするがそれを遥が止めた。
「なに?」
「せっかくメイド服を着てるんだからご奉仕プレイがしたいなぁって思って」
「……ご奉仕プレイ?」
二人は寝室へと入る。
ベッドのシーツが乱れている。本当に首に痕を付けるだけで終わったのかと疑問に残るほどの荒れ具合だったが、気にすることなく遥はベッドに腰を下ろす。
「どうすればいいの?」
「じゃあ今から俺の事はご主人さまって呼ぶこと」
「はっ?」
「いいねぇ、その蔑むような視線。ご主人様に無理やり手籠めにされて抵抗するけどお金のために仕方なく奉仕するメイドって感じがするよ」
「ホント呆れるほどのヘンタイね」
「俺が変態なのはわかりきってることじゃないか」
「開き直ってるのもムカつく」
エリカは本気で嫌っているわけではない。少しだけ素直じゃないだけだ。
「俺もエリカちゃんが嫌がることはしたくないから強制はしないけどどうする?」
強制された方が遥のせいにできるためエリカとしては羞恥心が少なくて済む。しかし選択肢を委ねられると、その決定がエリカの意思となるため羞恥心にまみれてしまう。
「ふふっ、じゃあ俺の膝の上に座って」
エリカはプレイを続行することを選んだ。
遥は嬉々としながら膝の上に乗ったエリカの頭を撫でる。
「可愛い。好き」
「いいから、早く次しなさいよね」
「うん。じゃあキスしよっ」
目を瞑る。しかしいつまで経っても訪れない快楽に静かに目を開けた。目の前には三日月状に微笑む遥がいて、エリカの目が鋭くなる。
「何でしないのよ」
「今のエリカちゃんはメイドなんだから、エリカちゃんからご奉仕しないと」
「……あっそ」
遥の胸元に両手を添える。
「目、つぶりなさいよ」
「え~やだなぁ。エリカちゃんのキス顔見たいからこのままキスしてよ」
「っ」
どれだけ交わろうと、交わる瞬間というのは緊張するものだ。その緊張を和らげ、安らぎを求めるために触れ合うのだが、人の温もりというのは存外心地よかったりする。
だから人は人を愛する。
「ンッ……んぅ……ちゅっ」
エリカの唇が遥の唇と重なる。
そこにはリップを気にしてキスを躊躇する彼女の姿はもうなかった。エリカの両手が遥の胸元から首に回り、髪の毛を梳くように撫でると最終的に両頬を包みこんだ。
毎回キスは遥がリードする形で行われるが、今はエリカが奉仕する番。エリカの舌が遥の唇をノックして、積極的に舌を絡めていく。
唾液の交換。
遥の唾液は性神様の加護の能力によって甘みがある。そこに先ほどの懇親会で飲んだオレンジジュースの甘みと酸味が、新鮮なキスを演出した。
くちゅっ、ちゅっ、ちゃっ、ちゅうぅ……。
味覚だけではなく、触覚や聴覚でキスを楽しむ。
「ちゅっ……なによ」
「エリカちゃんの唇って柔らかくて気持ちいいなぁって思ってさ」
「っっ、そういうことは言わなくていいのよ!」
「でも本当の事だから。それにエリカちゃんとキスすると幸せな気持ちになるんだ」
「ばかうるさいっ、それ以上言うなぁ!」
「ふふっ、こんな彼女がいて幸せだなあ」
止まらぬ遥の愛の告白に堪らずエリカはたじろいだ。
無上の喜びと共に羞恥心が襲ってくる。
「今日のエリカちゃんはホントに大人っぽくて魅力的なんだよね……んっ、くちゅりっ……」
遥の舌戦を止めるには口を覆うしか方法がない。再び唇が重ねると、そのまま遥をベッドの上へと押し倒した。
「はぁっ、んはぁっ、今日は、あたしがあんたを滅茶苦茶にしてあげるんだから」
「あんたじゃなくてご主人様、でしょ?」
「……ご、ごしゅ、ご主人しゃま」
「ふっ、かわいい」
目を潤ませながら遥の上着のボタンを外していく。
ジャケットを脱がせ、ワイシャツのボタンを外すと引き締まった肉体が姿を現した。
「……」
過去一番と言っていいほど遥の肉体は鍛え上げられていた。
女性のようなきめ細かな白肌に、服の上からではわからない筋骨隆々な肉体美がエリカの視界に広がっている。
感嘆とした吐息を漏らしながら、無意識のうちにその筋肉へと手を伸ばすエリカ。
「エリカちゃんの好きにしていいんだよ」
「はっ……」
我に返ると遥を睨む。
「九校戦のためにたくさん筋トレしたからね。メイドさん的にはどう?」
「……ま、まぁまぁじゃない?」
「じゃあもう少し鍛えた方が良いと思う場所を舐めてくれない?」
「はい?」
「口で言われるよりも触って教えてもらった方がわかりやすいしね」
「なら指でいいじゃない」
「指より舌の方が興奮するし、メイドならご主人様の命令は絶対だよ?」
目つきが鋭くなるが、怒りの感情は見えない。それどころか先ほどからエリカの視線が遥の肉体に釘付けだった。
「どこから舐めてくれる?」
「んっ、れろっ……チュルッ」
「ふぅん、腋が鍛え足りないんだ」
鎖骨の下、胸筋の辺りに口を付けたかと思うと、すぐに腋の方へと顔を移動させる。
筋肉フェチであり匂いフェチであるエリカの大好物となる場所だ。一緒に寝るときも、目を覚ますとエリカの顔がそこに埋まっていることが多々ある。
腋臭症ではないのだが、匂いを強く感じられるらしい。匂いだけなら男性器よりも極上のモノがあるようだ。
遥も苦笑いを浮かべずにはいられないが、腋を丹念に舐めると腹筋へと移動する。
腹筋の縦筋の溝を舌で沿うように舐め、下腹部の辺りで止まった。
「ぷわぁっ……んふぅっ」
「じゃあ次は下も舐めようか」
筋肉を堪能すると、エリカは従順なメイドへと成り果てていた。
こくんと小さく頷くと、素直にベルトを外して遥のズボンを脱がせる。
パンツ越しにもわかる股間の隆起。
それが引っ掛からないよう器用にパンツを剥ぐと、下腹部から逞しくそそり立つ遥の逸物が、エリカの欲望を昂らせる精の匂いを掻き立てながら姿を現した。
しっかりとエリカの網膜に焼き付けられる。
「ご奉仕してくれる?」
遥がそう呼びかけるとエリカは、下唇をキュッと噛みながら黙って頷いて見せた。
片手では手に余るため両手で逸物の根元を握る。
ビクンビクンと無気味に脈打ち、熱を持った逸物。エリカはキュッと握りしめると、いきり立つモノに顔を近づけた。
柔らかな唇が逸物の先端部分を包み込む。
「う、わぁっ、ぁぁ、きもちぃい」
この瞬間だけは何度味わっても慣れることができない。
遥の腰が浮き、快楽に呻く。
「ジュルッ、ジュル……ジュプッ」
唾液をたっぷりと溜めた口唇から濁った音が漏れ、エリカの頭が上下に忙しなく動く。
エリカの頬が窪んでは膨れ、膨れては窪んでを繰り返す。
エリカとて伊達に遥の恋人をやっていない。遥の弱点は知り尽くしているつもりだ。
唯一遥からマウントを取れる瞬間であり、気持ちよさそうな喘ぎ声を聞くたびに女性としての悦びが胸の奥から湧いてくる。
ジュルルッッ、ジュボッ……ジュルジュルッ。
水音が響き渡る。
「んはぁっ、んふっ……すごいっ、はぁっ、ベトベト」
逸物から口唇を離すとエリカの口腔は粘り気で満ちていた。
「チュルッ、チロチロッ……チュリッ……チュッ……」
遥のような巨大な逸物を長時間フェラするのは疲れるものだ。ほのかが異常なだけで、五分以上口に含んでいるだけで顎や口が開かなくなってくる。
エリカは唾液がべっとりと付いた逸物を手で扱きながら、亀頭部分を舌で舐め始めた。
「もっと早くッ」
「こう?」
「あぁっ、きもちっぃ、っ、イキそう」
んふっ、とエリカの口角が上がる。
手と舌の動きを速めると遥の呻き声も大きくなってくる。
腰が震え、亀頭が膨らんできた。
「あぁっ、イクっ……エリカちゃん、口の中に……ッッ」
「ンンンンンッッッ!!?」
イク瞬間。遥の両手がエリカの後頭部を掴むと、逸物を喉の奥まで突き刺した。
エリカの苦しそうな声にならない悲鳴が木霊する。
ドピュプッ……ドピュドピュ……。
とめどなく溢れ出る大量の精液。
全身がわななき、神経中枢が蕩けそうな快感が迸った。
「ンンンンッッ……ンンぁッッ!!」
喉の奥に流れ込んでくる熱い滾りに呼吸が止まる。
一瞬、自分の頭を抑える遥の手の力が緩んだ瞬間に逸物を口の中から放り出した。
しかし、快楽から解き放たれた熱い精液は留まることを知らない。
エリカの顔や髪の毛、ヴィクトリア調のドレス風味の制服に大量の精液が降り注がれた。
「……ングッ、ごぽっ……んぷっ」
飲み切れなかった精液がエリカの口から飛び散る。
粘り気が強く、淫靡にエリカの唇から白い精液が垂れる様は、遥の感情を昂らせることに。
「……だしすぎ、よ……ばかっ」
無理やり喉の奥に出したことは咎めない。
「きゃっっ!?」
形勢逆転とばかりにエリカをベッドに押し倒す。
「は、はるか?」
「ご奉仕してくれたお礼に俺もご奉仕してあげるよ」
「……休憩は?」
有無を言わせず遥はスカートをめくり上げると、既に蜜潤で溢れる秘境が出来上がっていた。
下着を横にずらし、亀頭に蜜を絡めていく。準備は万端。
「いっぱい愛し合おうね」
優しく微笑むと、エリカの断末魔のような甘声が響き渡る。
懇親会はサプライズゲストの登場や、悪ふざけなどがあったものの、時間通りに終わった。
懇親会を終えたほのかと雫が部屋へと戻ってきたのは、遥たちが会場を抜け出してから一時間半後のこと。
二人は来賓の挨拶辺りから遥とエリカがいないことに気づき、懇親会が終わると急いで部屋へと戻ってきたのだが、部屋に入って最初に感じたのは精と汗の匂い。
恐る恐る寝室の扉を開け、二人の視界に入ってきたのは……
「ごしゅじんしゃまっ……らめっ、んぁっ……もぅ、だめっ……たしゅ、けて……」
メイド服を着て、精液まみれでイキ狂ったエリカと、身体中に汗や愛液やら体液を浴びた遥が結合している姿だった。
一時間近く繋がったままの状態で全身性感帯となったエリカ。身体中を痙攣させながら虚ろな目を二人に向ける。
その視線に気づき、遥も二人の方へ視線を送る。
「ほのかちゃん、雫ちゃんおかえりなさい」
「……ただいまです、じゃなくてっ!!」
「ほのかちゃんキスしよ」
「はいっ!」
単純なほのかは遥とのキスに応じる。口を封じてしまえばほのかは怖くない。
「ずっとエリカとエッチしてたの?」
「んちゅっ……うん、そうだね」
「はる君もっとぉ」
「はいはい」
気づけばほのかは制服を脱ぎ捨て下着姿になっていた。着脱しにくいはずの制服だが、ほのかにかかればものの数秒で脱ぐことが可能だ。
懇親会前から我慢してた性欲が爆発した様子。
雫はため息をつきながらほのかが脱ぎ捨てた制服をハンガーにかける。
「エリカをお風呂に入れてくるね」
「あー今触らない方が良いかも」
「え?」
「ンンンッッッ!!!」
雫に触れられただけでエリカの身体が弓なりに跳ねた。
「え?」
「はははっ」
「ハルカ」
「ん?」
「やりすぎ」
「……俺も反省してるんだけどね」
「はぁっ」
ほのかが一心不乱に遥の身体を求める姿を見ると怒るに怒れない状態である。
「渡辺先輩が怒ってたよ」
「摩利ちゃんが? なんで?」
「来賓の挨拶の時にいなかったからだと思う。後で説教するって言ってたけど……」
雫の視線が遥の唇や身体に向かう。
エリカのリップによって普段以上にキスマークが強調され、とても人前に出られる状況ではなかった。
「明日の方がよさそう」
鼻をつまみながら換気システムの設定を『弱』から『強』へと変える。
「ほのかもあとで温泉に行こうってエイミィたちに誘われたんだからあまり夢中になっちゃダメだよ」
「むぅ」
「温泉に入っててほのかの身体から精液が出てきたらどう説明するつもり?」
「……はるくぅん」
「そういうことなら温泉から戻ってきてからだね」
「うぅ」
懇親会の終わりにエイミィから温泉に誘われた二人。
部屋にはユニットバスやシャワーもあるのだが、温泉があると聞けば温泉に入りたくなるお年頃。
特に一年生の出番である新人戦まで時間がある。今の段階ではまだ、緊張よりも興奮と高揚の方が勝っている。同級生との団体旅行気分ではしゃいでしまうのも年齢を考えれば仕方のないことだ。
ほのかも何も考えず二つ返事で了承していたが、目の前にあるデザートがお預けになった気分である。
「はる君も一緒に行きませんか?」
「行ってもいいけど一緒には入れないよ?」
「あぅ、そうでした」
さすがに軍の施設で混浴はできない。
「それにエリカちゃんの面倒も見なきゃいけないから二人で楽しんでおいでよ」
「……はい」
エイミィたちと約束した時間までもう間もなく。ほのかはギリギリまで遥と肌を触れ合い、雫がほのかを連れ出すまでそれが続いた。
50話では多くの感想ありがとうございました!
感想頂いたお礼は来週あたりにしたいと思います。
サプライズゲストは誰だったんでしょうねぇ……。次回明らかになるかもしれません。
【次回の投稿は2月6日19時予定です】