※この作品はR-18です。

魔法科高校の性春生活   作:八住 楓

55 / 109
第52話 女子会、温泉に入ろう

 地下の大浴場は一高一年女子の貸し切り状態だった。

 エイミィは温泉と言っていたが、天然の温泉ではなく人工温泉。しかも十人前後の収容能力しかないため、事前に許可を取らなければ使用することができない。

 

 この時間帯、彼女たち以外に利用を申請したグループはいなかったようだ。

 

 それもそのはず。

 選手として出番が近い上級生たちは既に就寝している者が大半。温泉に浸かって英気を養うのもいいが、一番身体が休まるのは眠ることだ。

 夜遅くまではしゃぐことができる人間というのは彼女たちのような一年生だけである。そして初めてこの場所を訪れる一年生が大浴場を知ってるはずもなく、貸し切りになるのは必然だった。

 

 ここでは服を脱いだ後にシャワーブースで身体を洗い、水着または湯着を着用した後に温泉に入る仕組みになっている。

 女性用の湯着は「帯を使わないミニ丈浴衣」で、締めつける部分が皆無のゆったりとしたデザインだ。

 着心地は頼りないモノだが入浴という用途に相応しいモノだった。

 

 もしこの場に男子がいれば、鼻血を吹き出して血の海にしたことだろう。それほど華やかで艶冶な光景が広がっていた。

 

「気持ち良ぃ」

「ふぅ」

 

 一足先にほのかと雫が湯に浸かる。

 

 家のお湯とは違い温泉水の硬さがあった。

 この温泉の効能は関節痛、筋肉痛が軽減されるらしいが、効能通り身体のコリがほぐれてくる感覚に二人は極楽の吐息を漏らす。

 揉みしだかれたように、背中の筋肉が緩んでいつもよりのびのびと広がった。

 

「わぁお!」

 

 遅れてエイミィや彼女が声をかけた同級生四人もお湯に浸かっていく。

 加えて深雪が少し遅れてやってくるため、この場には第一高校新人戦女子チームのメンバーがほとんど揃うことになる。

 

 女の子が集まってすることと言えば、これはもう、お喋りと相場が決まっている。ここ最近の話題はやはり九校戦の事。そして女の子と言えば恋愛話である。

 

 だがエイミィはそんなことより目の前の双丘に釘付けになる。

 

「ほのかスタイル良ぃ~」

 

 女の子同士、裸の付き合いが始まろうとしていた。

 

 エイミィの両手のひらと両目がほのかの豊かな胸へと伸び、今にも揉みしだきそうな気配を漂わせている。

 並々ならぬ気配に、ほのかは男性に見られているような羞恥と警戒を感じた。

 

「エイミィ?」

「むいてもいい?」

「はいっ!?」

 

 後退するほのか。しかしすぐに浴槽の壁にぶつかった。

 

「いいわけないでしょ!!」

「え~、こんなに発育の良い胸を揉まないのは勿体ないよぉ」

 

 おっさん化したエイミィ。迫りくる脅威にほのかの視線が雫へと向かう。

 

「助けて雫!」

 

 魔の手から逃れようとほのかが身体を反転させた瞬間、雫の目が鋭くなる。

 雫の視線はプルンっと揺れた大きな胸に伸びた。しかしほのかの胸の大きさに嫉妬したわけではない。

 多少の嫉妬はあるかもしれないが、それよりも雫の目にはとんでもないモノが映ってしまった。

 

「雫さんやぁ、ほのかの胸を揉んでもいいですかい~?」

 

 一昔前の悪代官が言いそうな台詞。

 

「いいんじゃない」

「えっ!?」

「ほぅ」

「雫!?」

 

 親友の裏切りに悲痛な叫びをあげるほのか。

 予想外の返事にエイミィの口が、遥が意地悪をするときのような三日月状に変化した。

 

 雫はお湯に浸かって着崩れした湯着をしっかりと身体に巻き付けながら答える。

 

「ほのか胸大きいし」

「しーずぅくぅ~~!!」

 

 ほのかにとっての死刑宣告を残して、雫は個室サウナへ向かう。

 

「きゃぁぁぁああああぁあ……」

 

 サウナの扉を閉めるとほのかの悲鳴が途切れ、熱気に身体を赤らめさせる。

 

「ごめんねほのか。でも、気づかれるわけにはいかないから」

 

 雫は胸元へ視線を落とすと、湯着で隠れた場所に赤い痕が付いていた。あのまま温泉に浸かっていたら見つかっていたかもしれない愛の印。

 よく見ると鎖骨やお腹の辺りにも痕が付いている。

 

 懇親会が終わった後に部屋で遥に付けられたキスマークだ。

 

 熱によって白い肌が赤く染まっているが、それでは隠せないほどくっきりと唇の痕が浮き上がっている。

 雫はその愛の印に指を押し付けると嬉しそうに頬を緩め、そして口を尖らせながら一人愚痴る。

 

「ハルカのバカ。こんなに付いてたら誤魔化せないじゃん」

 

 彼女たちが温泉から出るまでここに避難しよう。そう思った雫はしばらく汗を流し続けた。

 

 

 雫が個室サウナに避難した後、エイミィを始めとする女子五人がほのかを囲んでいた。

 

「よいではないかよいではないかぁ」

「エイミィは一回揉んだんだから次は私に揉ませてよね」

「え~どうしよっかな~ほのかの胸、ポヨンポヨンして気持ちいーんだもん」

「ちょっとみんな落ち着いてってばぁ~っ!!」

 

 せめてもの抵抗とばかりに直接触らせることはしないが、エイミィの両手には弾力ある柔らかな感触が残っている。

 余韻に浸りながら再びエイミィの両手が迫りくる。

 

「何を騒いでいるのかしら。あまり騒ぎすぎると貸してくださった軍の方に失礼になるでしょう?」

 

 エイミィの手でほのかの双丘に触れようかというタイミングで、シャワーで身体を洗い終えた深雪が大浴場へと姿を現した。

 

 湯船に浸かっていたチームメイトの視線が一斉に深雪の肢体へ注がれる。

 

 艶やかな黒髪、透き通った白い肌、引き締まった肉体、そして魅惑的な胸。

 同性である彼女たちが息を呑むほどの美しさ。

 

 ほのかの身体を弄んでいたエイミィの口から「ほぅ」と吐息が漏れる。

 

「な、なに?」

「ごめんごめん、つい見惚れてしまったよ」

 

深雪の問いかけに里美スバルという中性的な容姿の女子が答えた。少年っぽさのある顔立ちだが、前袷からは女性的な肉体がのぞかせている。

 

「ちょっと女の子同士で何言ってるの?」

 

 焦った声を出す深雪。ここにはCADを持ってくることができないため、無防備な姿が晒されている。

 奇妙な緊張感をはらみながら、深雪が口を開く。

 

「それより随分盛り上がっていたようだけれど、何の話をしていたの?」

「えっ!? な、なにも話してないよ。それよりも――」

「ほのかの胸が柔らかいね~って話してたんだぁ」

 

 ほのかが話題を逸らそうとするもエイミィを前にしては意味を成さない。

 

「……聞こえてきた悲鳴はほのかのモノだったのね」

「あはは~」

「あまり強く触っては駄目よ? 紅く腫れてしまっているじゃないの」

「え? そんなに強く揉んだつもりはなかったんだけど……」

 

 深雪に集まっていた視線がほのかの胸に注がれる。

 騒いだ影響でほのかの湯着がはだけてしまい、前袷から豊満な双丘のほとんどが露出してしまっていた。

 辛うじて突起物は見えなかったが、それでも綺麗な桜色の乳輪が見えていた。

 

「ふぇっ!?」

 

 ほのかは急いで湯着を正す。

 

 しかし時すでに遅し。この場にいる全員にソレを目撃されてしまった。

 ほのかは胸を見られてしまった羞恥心から顔を真っ赤にする。だが、彼女たちはほのかの乳輪が綺麗な桜色をしていたことなどどうでもよくて、それ以上に胸に付いていた痕の方が気になっていた。

 

「ほ、ほのか?」

「うぅ、恥ずかしい……」

「えっと、そうじゃなくて、ほのかの胸に付いてるのって……もしかして……」

「え?」

 

 まだほのかは気づいていなかった。

 

「キスマークじゃないよね?」

「……えっ!?」

 

 ほのかは慌てて自分の胸へ視線を落とす。他人に見られないよう湯着で隠しながら、胸の上部に付いた赤い痕を見つけると、初めて遥に裸を見せた時と同じくらいに胸が跳ねる。

 

「ちちちちち、ち、違うよっ!! ここれははる君に付けられたんじゃないよっ!?」

 

 ほのかの態度が全てを物語っていた。

 

 深雪は眉間に手をあてて俯き、エイミィや他の女子たちは苦笑いを浮かべる。

 

「ほのか、私たちは別に宮守くんに付けられた痕だとは言ってないわよ」

「え? あっ……」

 

 自分のやらかしに気づき、穴があったら入りたいとばかりに顔の半分ほどを湯の中に潜り込ませる。

 

 ブクブクと空気の泡が湯の表面に浮かび上がってくる。

 

「ほのかと宮守くんってどこまで進んでるの?」

「ぶふッッ」

 

 エイミィの問いかけに水中で吹き出す。

 これなら胸を揉まれていた方がまだましだと泣き顔を見せる。

 

「えっと、えっと……」

「エイミィ。ほのかが困ってるじゃない」

「え~でもこの中で恋人がいるのほのかだけだし色々聞きたいよ~~!」

 

 深雪が咎めるが、異性に興味があるお年頃。

 九校戦やファッション、オシャレの話題もいいが、やはり恋愛話には勝てない。特に人の恋愛話ほど盛り上がるものはない。

 

「もうキスはした、よね?」

 

 エイミィの視線が赤い痕があった場所へ向く。

 

「う、うん」

 

 恋人ならキスくらいはする。

 結婚まで純潔を守り続けるのが一般的な時代でも、そういうことをする人がいないわけではない。

 

「じゃあ、じゃあさ、その……え、エッチなことは?」

 

 さすがのエイミィも直接的な表現は憚られるらしい。興奮した口調でほのかに尋ねる。

 さきほどは止めた深雪だったが、彼女も静かに口を閉ざして固唾を呑んで見守っている。

 

「う、うん」

 

ほのかはゆっくりと首を縦に振る。

 

「きゃああああっ~~!!」

「いつの間にかほのかが大人になっちゃったっ!?」

「おのれみやもりはるか~~こんな幼気な女の子をよくも~~!」

「この大きなおっぱいが好き勝手されてるの!?」

 

 大浴場のボルテージが最高潮に達する。

 そういう行為をすることが珍しいからこその反応。良くないと教育されてもアウトローな事に惹かれてしまうのはどの世界、どの年代も共通だ。

 

「初めては痛いって聞くけどどうなの?」

「どこで? いつ? どうだった!?」

「宮守君はちゃんと優しくしてくれた!?」

 

 興味津々の彼女たち。ほのかも最初は話すことを拒んでいたが、一度口を開くと愛する者の事をみんなに知ってほしいと話し始めた。

 

「えっと、初めては痛くなかった、かな? それよりもはる君と一緒になれたことが嬉しくて……。好きな人と触れ合うのがあんなに気持ちいいんだって、痛みよりも幸せって思ってた。場所は……えっと」

 

 初めては雫の部屋で雫含めて三人で行われた。しかしそんなことを言えるはずもなく……。

 

「私の部屋だったよ。クリスマスにクリスマスパーティーをした後、そのまま……。はる君は凄く優しくて緊張してた私をリードしてくれて」

 

 初めての経験を赤裸々に語り始めた。

 

「好き、とか愛してるってずっと言ってくれて嬉しかった。それで――」

「あぁもうわかったからっ!! もうこれ以上はお腹いっぱいだよっ!!」

 

 聞いた本人たちが照れて顔を赤面させていた。

 

「ほのかと宮守くんがラブラブなのは知ってたけどまさかそこまで進んでるとは……」

「今のほのかの顔見た?」

「みたみた。こっちが恥ずかしくなるくらい幸せそうな顔してた」

 

 惚気にあてられた彼女たちは湯船から出て浴槽の縁に腰かける。

 

「でも大丈夫?」

「え、なにが?」

「宮守君って色々噂があるからさ」

「噂って?」

 

 例の男子たちが流した噂の事である。嫉妬して遥を陥れようと流した噂だが、いつの間にか聞こえなくなっていた。

 

 ほのかも噂を聞いたことがあり、今そのことを口にした女子を睨む。

 完全にほのかの八つ当たりなのだが、見たこともない険のある表情に女子はたじろいでしまう。

 

「ほのか、怖いわよ」

「え、あぁ、ごめん!」

「ううん、大丈夫だから」

 

 深雪に指摘され笑顔を取り戻す。

 

「好きな人の悪口を言われたら怒るのは当たり前だよ~」

 

 エイミィの明るい口調によって場が和む。

 彼女のルビーのような光沢ある紅い髪の毛は、お湯に濡れて黒っぽい茶色に変色していた。

 

「あれって宮守くんに嫉妬した男子が流したって噂だよ」

 

 何処からか広まった遥を擁護する噂。

 

「でも宮守くんって女の子に優しいから勘違いする子とか出てきちゃいそうだよね~」

「私は自分だけに優しくしてほしいから誰にでも甘い言葉を言う宮守君みたいな人とは合わないかも」

「え~それは独占欲強くなーい? 確かに誰にでも好きとか言うのは困るけど~」

 

 一旦沈みかけた調子も、取り戻してしまえば、浴室は賑やかなさえずりで満たされていく。

 

「そういえば深雪も宮守くんと仲良いけど自慢の彼氏が美少女と浮気してるんじゃないの??」

 

 他人事のように話を聞いていた深雪だったが、自分の名前が出て身構える。

 

「私は別にそんなつもりは……」

「私ははる君を信じてるから」

 

 遥が浮気や不倫をしないことに対して信頼しているわけではない。それは疾うの昔に諦めた。

 何人の女性と付き合おうと、遥が選んだ女性であればその人が信頼に値する人物であると、遥の眼力を信頼している。

 

 遥が適当に口説いているわけじゃないことを知っていた。

 

「惚気ごちそうさま~」

「私はそんなつもりで言ったわけじゃ……」

「はいはい。じゃあさ、みんなの理想の男性のタイプ話そうよ~」

 

 女子会は続く。

 

 ある女子が「ドリンクバーのバーテンの小父様が素敵だった」と言えば、ある女子は「中年趣味とか終わってる」と答える。

 ある女子が「五十里先輩なんて包容力がありそう」と言えば、ある女子が「婚約者持ちを好きになっても虚しいだけ」と返す。

 

 理想の男性が身近にいないことを嘆きながら、最終的にはほのかを羨ましがる。

 

「女子に優しくて包容力や大人の魅力があって頼りになる。おまけに顔が良い宮守遥って何者なんだよ~」

「実家はお金持ち。魔法の実技も学年一位とか完璧すぎて怖いんですけどー」

「えへへっ」

 

 愛する者を誉められて悪い気はしない。

 

「顔が良いって言ったら三高の一条の跡取りがいたのよね?」

「あぁ、結構イイ男だったね」

 

 ここで不意にエイミィが湯船の隅にいた深雪に話を振る。

 

「そういえば彼、深雪のこと熱い眼差しで見てたよね」

「そう? 全然気が付かなったけれど」

「一目惚れされたんじゃない?」

「まさか」

 

 興味がなさそうに一笑する。深雪の頭には別の人物が浮かんでいた。

 

「深雪はお兄さんにぞっこんだもんね」

「何を期待しているのか知らないけど……私とお兄様は実の兄妹よ? 恋愛対象として見たことなんて一度もないから……それに、私にも忘れられない人がいるもの」

 

 一条将輝でも、実の兄である達也でもない別の人物を頭に思い描く。

 

 見たことのない儚くも妖美な表情にその場にいた全員の動きが一瞬固まった。

 

「何その意味深な発言~」

「深雪にも好きな人がいるの!?」

「……好き嫌いの問題じゃないわ」

 

 エイミィとほのかが深雪に尋ねるが、深雪から明白な答えは返ってこない。

 

 『ただ、命を助けられたお礼を言いたいのよ』と胸の中での呟きは誰にも聞こえることはなかった。

 

 ほのかは妙に落ち着かない胸のときめきを感じながら、静かに深雪の顔を見つめていた。

 

 

 そうして初日の裸の付き合いが終わった。

 明日も夕食後に温泉に行こうと誘われたほのかだったが、今日と明日は遥と愛し合うと決めていたため断った。

 今日のように身体に痕が残っていたら何を言われるかわからない。よからぬ噂がこれ以上広まらないためにも、しばらくはエイミィたちと温泉に入らないと誓ったほのかだった。

 

 そして一人、サウナ室に入った雫は身体中を真っ赤にさせながら脱衣所に戻ってきた。

 あまりの紅潮具合に体調を心配した深雪だったが、胸元に赤い斑点を見つけると口をつぐんだ。

 

 ほのかと同じ痕が雫にも。

 深雪は追究することなくエイミィたちから雫を隠すよう間に入る。

 

「あの、はる君とのことは、その、他の人には……」

「大丈夫だって。絶対に誰にも言わないから」

「絶対だよ?」

「宮守くんにはほのかとラブラブの事を茶化すかもしれないけどね~」

 

 他の女子たちに他言しないことを念押ししたが、軽い返事に不安を感じるほのかだった。

 

 




お気に入り・感想・評価・誤字、脱字報告ありがとうございます。
皆様の応援が活力となります。

【次回の投稿は2月8日19時予定です】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。