空が黎明を迎え、遮光カーテンの奥には徐々に夏の陽が広がっていた。
部屋の中にまで日の光は入り込んでおらずまだ薄暗い。それでもはっきりと真由美の瞳は隣で横になっている遥の姿を捉えていた。
「身体に異変とか無いですか? 違和感とかあったらすぐ教えてください」
「だいじょーぶよ」
「そうですか……よかった。真由美ちゃんの身体が気持ちよすぎて無理やりしちゃったかなって思ってたんです」
自分の身体を気遣ってくれる優しさに真由美の胸が温かくなる。
笑った顔が愛おしく、可愛げのある表情に見惚れる。純白の髪の毛、細くて長いまつげに、その下の凛々しい眼。全てに恋情を抱くようになっていた。
一度抱かれるだけでここまで心境、見え方が変わるのかと、自分の防御力の低さに呆れながらも、初めて恋に落ちた余韻に浸る。
疲労からか多少の倦怠感があるものの、それ以上に幸福感が勝っていた。自分の中に残る遥の熱い滾りを感じながらゆっくりと瞼を閉じ、そして慌てたように目を開けた。
「ね、ねぇっ!」
「しぃ~、摩利ちゃんが起きますよ」
「あっ、ごめんなさい」
遥と真由美の視線が隣のベッドへと向く。二人の視界には安らかな寝息をたてながら目を瞑る摩利の姿が映る。
あれほど声を荒げたというのに熟睡している友に毒気を抜かれながらも安堵する真由美。
「な、中に……出したのよね?」
「はい。もしかして痛みがありますか?」
「痛みは無いんだけど……その……ね?」
言葉にするのを躊躇う真由美。我に返れば返るほど事の重大さを実感し始める。
「大丈夫ですよ」
「え?」
「妊娠はしてないですから」
「そうなの?」
「はい」
遥はほのかや雫たちにも説明している自分の体質について話した。
妊娠しないことを知ると少し残念そうに『そぅ』と声を漏らしたが、安心したようにお腹をさすっていた。
「もし心配なら九校戦が終わった後に検査しましょう」
本当にこの人は私の事を考えてくれている。と、女子生徒に人気がある理由を察した。
可愛い女の子を見つけるとすぐに口説く行動力さえなければ満点なのだが、遥の下腹部に反り立つソレを見て仕方ないと納得する。
自分一人では彼の相手をしきれない。性行為をすればするほど魔法力が上がるなどそんな魔法師聞いたこともなかったが、実技試験で深雪を超える魔法力を持つことを考えると遥の話を無視するわけにはいかなかった。
真由美の家が上流階級ということもあり、愛人がいる世界で生きてきたため一般人よりもそういうことに寛容。ただ、頭では理解していても本心は自分だけを見て欲しい気持ちがあった。
真由美の気持ちを読んだのか、遥は真由美の方を向くと優しく唇を重ねる。そして微笑みながら真由美の頭を撫でた。
思わずキュンとする真由美だったが、撫でられるくすぐったさに身悶える。
「真由美ちゃんの身体を綺麗にしましょうか」
「え!?」
「あと一時間もしないうちに朝食の時間が始まりますし、摩利ちゃんも起きてくると思うのでその前にエッチしたことを隠さないと」
「あっ……そ、そうね」
さっきまでは暗闇で見えなかったが、ベッドのシーツには真由美の処女が散った証拠が残っていた。他にも濡れたシーツや衣服、汗のニオイなど乱れた痕跡が部屋中に広がっている。
摩利に見つかるわけにはいかないと、真由美は立ち上がろうとするが足に力が入らない。それを見かねた遥は真由美の腰と太腿を掴むと身体を抱き上げた。
「ふぁっ……」
「一緒にお風呂入りませんか?」
「……う、ん」
真由美の頬が真っ赤に染まる。
当然異性と入浴した経験はない。幼い頃も父親と風呂に入ったことはない。そういうことは女性の使用人が世話をしてくれていた。
裸を見られることに抵抗がなかったわけではないが、既にそれ以上の事をしたのだから気にする必要もないと思っていた。
しかし存外裸を見られるというのは恥ずかしい行為である。この世界は同性と湯に入るにも湯着や水着を着るため、他人に裸を見られることに慣れていない。
ましてや照明が付いた明るい場所で、異性に裸を見られる羞恥心は真由美が生きてきた十八年間で一番と言っていいほど大きいモノだった。
「いいお湯ですね」
「あぅぅっ……」
一般の選手が泊っている部屋のバスルームは一人用。シャワーと浴槽があるが、浴槽は男一人が足を伸ばして入ることができるかできないか程度の大きさで、二人で入るには手狭な造りとなっている。
そこに男女二人が入ればどうなるか。
「は、はるか、くん……あ、あまり抱きついたら……んっぁ、だめよ?」
「抱きつかないと入れないですよ」
「で、でもぉ……あんっ、ぁ……」
遥の足の間に真由美が腰を下ろす形で密着して湯に浸かる。遥の両手が真由美のへその辺りで組まれ、その力加減によって密着度が変わるため性行為よりも恥ずかしい目に遭っていた。
「好きです、真由美ちゃん」
「んっ、いま、言わなくてもいいじゃない……っ」
「でも本当なんですから仕方ないじゃないですか。本当に……愛しています」
声が出せる環境に移ったが、浴室では喘ぎ声を出すたびに声が反響して自分の恥ずかしい声が鼓膜を揺さぶる。
「ぁんっ……ねぇ、みみもとで呟いてるのはわざと?」
「少しでも真由美ちゃんと触れ合っていたいので声を出そうとするとこうなるんです」
「そぅ」
「はい」
入浴と遥の声が重なり、心地よい温もりが真由美の身体を包みこむ。逆上せ気味になってきたが、まだこの感覚に浸かっていたいと思えるほどにこの空間に酔っていた。
遥の声を聴くたびに身体の熱が上がっていくような錯覚を起こし、次第に頬が赤らんでいく。
「真由美ちゃんがあんなに乱れるなんて……すごく可愛かったです」
「やめて、思い出させないで」
「どうしてですか? 俺は今の真由美ちゃんも好きですけど、気持ちよさそうに喘ぐ真由美ちゃんも魅力的で興奮しましたよ?」
「……だって、恥ずかしいんだもの」
「ふふっ、可愛いです」
「ンッ……」
ピロートークは終わらない。
真由美は徐々にこの時間に悦楽を感じ始めていた。
「遥くんが悪いのよ? 私、初めてだったのに、あんな激しくするなんて……」
「真由美ちゃんの身体が魅力的過ぎて我慢できなかったんですよ」
「んふっ、そんなこと言っても許さないんだから」
「じゃあどうしたら許してくれますか?」
「……次は優しくして頂戴」
「また我慢できなくなって激しくするかもしれませんが善処します」
「ふふふっ、お願いね?」
真由美は自分のお腹の前で組まれた遥の手を取って指を絡める。自分よりも大きな手に興味津々といった具合に何度も握っては緩めるを繰り返していた。
「俺の指、変ですか?」
「ううん、男の人の指ってこんなゴツゴツしてるんだって……これ、剣道の肉刺?」
「そうですね。最近また剣を振り始めたので」
「剣道部にも顔を出してるそうね」
真由美の目がジトリと遥に向いた。
真由美は遥とエリカの関係を知っているため、二人で剣道部に顔を出していることに嫉妬の感情を抱く。それに真由美の耳には壬生紗耶香の事も入っていた。
複数の女性と仲良くすることに、理解できていても納得するのにはまだ時間が必要なようだ。
「これからは真由美ちゃんとの時間も作りたいと思います」
「……無理しなくていいのよ?」
「いいえ、俺が真由美ちゃんと一緒にいたいからそうするんです」
前までは遥の甘言を聞き流していたが、今では全てが身体の中に沁みこんでいく。
「真由美ちゃんに相応しい男になるまで待っていてください」
「……それって告白かしら?」
「はい」
「えっ……あっ、そ、そうなのね……」
大胆な告白に思わずたじろいでしまう。
まんざらでもない様子だが、これは真由美だけの問題ではない。今の真由美は無責任に遥の告白に対して返事ができる立場ではなかった。
「相応しい男って……一体どうするつもりなの?」
「ふっ……まぁ見ていてください」
「……なにをするかわからないけど、無茶はしないでね?」
「勿論です。真由美ちゃんには笑っていてほしいですから」
「そんなことばかり言って……んぁっ、ちょ、っと、そんなところにキスしちゃダメだって言ってるのに……ンンッ」
「真由美ちゃんの肌すべすべです」
風呂に入る前に髪の毛を束ねているため真由美のうなじが遥の顔の前に見えていた。
エリカのポニーテールが好きだったり、真由美のうなじに目を奪われたりと、もしかしたら遥がうなじフェチなのかもしれない。
そんなことはさておいて、遥は真由美のうなじに唇を付けると、首を伝って背中や肩の辺りを吸い始めた。
「痕、残っちゃうからぁ……」
「キスしちゃいけないんですか?」
「……だめ」
「ふぅん、じゃあ痕が残らないキスならいいですよね?」
「え?」
遥の両手が真由美の太腿へと伸びる。そしてお湯の中で真由美の身体を抱きかかえると、後ろから巨大に反りあがった逸物を真由美の秘部へと導いていく。
「えっ、ちょっと遥くん!?」
「真由美ちゃんの一番奥にキスすることにします」
「だめだめっ……お願いだから遥くんっ!」
破裂寸前の逸物を真由美の発情した割れ目へとあてがう。
あまりの慌てっぷりに真由美の声が震え、浴槽から大量のお湯が飛び出す。しかし狭い浴槽で抵抗しても遥の動きは止められなかった。
「ふぅンンッッっ……」
ぷっくりと膨らんだ亀頭が真由美の割れ目に食い込むと、ハッと息をのむ。あの快感が再び真由美の身体を襲う。
そしてそのまま、二度目の貫通。
「ひゃぁぁあああぁああッッッッ!!!」
真由美の悲鳴が浴室に響き渡り、何重にも反響して二人の鼓膜を揺らした。
「ぁぁあっっ、きもちぃっ……ぁっ、ぁっ……ぁああッッッ!!!」
一度挿入された時の快楽を知ってしまった以上、逸物の先端部分が子宮に触れた瞬間、真由美の身体に電撃が駆け抜けた。
腰を反らせながら遥の身体に倒れこみ、ガクガクと全身を痙攣させる。
「キスしちゃいましたね」
「ぁっ……ぁっ、んぁっ……はぁはぁっ、ンンンぁッッ……」
「真由美ちゃんの中、奥までドロドロしてます。ふふっ、今はこの辺りまで刺さってるのかな?」
真由美のへその下を指でさすると下腹部が震えているのがわかる。
「すごい締めつけです。そんなに気持ちいいんですか?」
「きもち、ぃぃっ……すごぃのぉ……」
「さっきまで処女だったのに、そんな乱れて、真由美ちゃんはエッチな子だったんですね」
「んんんぅっ……わたしの、せいじゃな、ぃ、もん」
唇の端から涎を垂らしながら遥の方を向く。
「こんな、すがた……はるかくんにしか、みせないんだから」
「嬉しいです」
「はるか、くんの……すごくおっきくて、ぁんっ、きもちぃぃ……っ」
「どこが気持ちいいんですか?」
「……なかぁ、いちばん、おくが……ぁああっ」
「ふぅん、真由美ちゃんは一番奥が好きなんですね。じゃあいっぱい突いてあげます」
遥の性器は加護の特性からその人が一番求めている形に変換することができる。
処女だろうと痛みが無く、真由美が乱れるのは必然だった。
「あっ、もっ……また、ぁあっ、いきそぉ、とけちゃぅぅッッッ!!!」
水中であまり激しいピストン運動ができないが、何度も奥を突かれて荒れ狂う真由美。
遠慮する必要がなくなった途端に真由美の悲鳴にも似た嬌声が飛び交い、すぐに絶頂の瞬間が訪れようとしていた。
「そこ、だめっイクっ……しゅぐいっちゃぅぅぅぅっっ!」
「いっていいですよ」
「あんっ、あっ……はる、くんも……ね?」
「はい、俺も一緒にイキます。あと十回突いたらイキましょう」
「うん、ぅん……突いて……ぇぇっいぐっっっ!」
ぶじゅっ、ぶじゅっ、ぢゅぶっ、と抽送するたびに水中から甘い水音が出てきて、本気汁が噴き出す。
それがお湯なのか、愛液なのかわからなくなってきた水中で、巨根を真由美の一番奥へと突きたてた。
「あっ」
真由美のピンク色に染まった背中が、吊り橋のように撓む。
「あ、ああああっッッ!!!」
あまりの快感に真由美は大声を出し、惚けた表情を見せる。
「俺もイクっ……」
「いくっ、ぐっふゥンンッ、ゥんっ……ぁあああああっッッ!」
ブビュッ、ビュッ、ビュクンっビプドプ、ドピュ、と、衰え知らずの二射目が真由美の奥へと注がれる。
「あ、ぁ……っ、ぁ……っぁ」
恍惚とした喘ぎ。
真由美の全身に快楽が迸る。
「あぁっ、すき……」
真由美の秘部からドロリと濃い精液が出てくると、優雅に浴槽を泳ぎながら満たしていく。
「後は任せてください」
耳元でそんな声を聞きながら、真由美は意識を失った。
「……ぃ……み……ろ」
誰かの声に真由美の瞼が開かれる。
「はる、か、くん?」
カーテンが全開になり、朝の光が真由美の瞼を重くする。
窓の外には九校戦の盛り上がりを感じさせる人の波が蠢いており、既に日常が始まっていることを知らせていた。
「おい真由美、何を寝ぼけてるんだ。さっさと起きないか!」
「……まりぃ?」
「遥とお楽しみだったのか?」
「ふぇっ!? にゃ、にゃにを言ってるの!?」
真由美は寝起きが弱いが、摩利の言葉に一瞬で目が見開かれた。
「何を焦ってるんだ……。いま寝言で遥の名前を出していたぞ。もしかして夢の中で遥と盛り上がっていたのかと思ってな」
「……え、あっ……そうだったかも……よく覚えてないわ」
遥との行為が見られていたわけではないと安堵する真由美。
「それよりも、そんな恰好で寝てるから変な夢を見るんだ」
「え?」
真由美は自分の身体を見下ろすと、一糸纏わぬ姿で毛布に包まれていた。
ベッドのシーツも新品同様になっており、赤いシミなどどこにも見当たらない。遥との出来事は全て夢だったのか、アレが夢? などと思いながら、自分の胸に視線を向けると、確かに遥と交わった証拠が残っていた。
真由美は胸の痕を摩利に見えないよう毛布で隠す。
「ったく、今日も試合があるんだからそんな恰好で寝て風邪でも引いたらどうするんだ」
「ごめんなさい。でもこのくらいがちょうどいいかなぁって思って」
「夏でも風邪は引くんだからな? それよりも早く起きないと色々準備が間に合わなくなるぞ」
「えっ!? いま何時!?」
「八時半だな。あと三十分で一試合目が始まるな」
「ちょっとっ!! どうしてそんな時間まで起こしてくれなかったのよ!」
「去年起こしたら機嫌が悪くなったじゃないか」
「去年は去年よ。急いで準備しないと……」
九校戦二日目は本戦クラウド・ボールの予選から決勝までと本戦アイス・ピラーズ・ブレイクの予選が行われる。
真由美が出場するのは本戦クラウド・ボール。大会自体は九時から開始予定だ。既に会場への入場も許可されており、二日目も多くの観客で賑わうだろう。
幸いなことに真由美の試合は十時予定だったため、まだ時間に余裕があるが、試合前には点呼がありそれに遅れると失格になるため遅れるわけにはいかなかった。
「なぁ真由美」
「なに?」
急いで着替える真由美に摩利が尋ねる。
「これ、男物の下着だろ? どうしてそんなものがお前のバッグの近くに落ちてるんだ?」
「えっ?」
明らかに真由美が穿く者とは思えない男性用下着を摩利が持っていた。
真由美は直感的にそれが遥のモノだと気づき、寝起きの頭をフル回転させて言い訳を考える。
「そ、そそれは兄の。そう兄のなの。間違えて兄の下着を持ってきたから、いつまでもカバンに入れておくのも汚いし外に置いておいたのよ」
「ふぅん。なんか生暖かいしニオイも……」
「……昨日寝る前にジュースを溢して、それで拭いたからかしら?」
「そう言う事にしておいてやろう。急がないと間に合わなくなるぞ」
「もう、だったら話しかけないでよ!」
「実はお前と遥が……――」
摩利の呟きが真由美に届くことはなかった。
「え? 今何か言った?」
「いや、べつに」
数時間前の事を思い出し、頬を紅潮させる摩利。話題に出さないのは試合を控える親友の為か、それとも……。
九時前には部屋を出て一高天幕へと向かう。
あまりにも遅い到着に一高生徒たちは心配した様子だったが、遥から『重役出勤ですね』と肩を叩かれて睨んだのはいうまでもない。
本当は物語を進めるはずだったんです。気づけば二回戦目が始まっていた……。
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