※この作品はR-18です。

魔法科高校の性春生活   作:八住 楓

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この場を借りて御礼申し上げます。

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第63話 親友同士の会話

 

 摩利の怪我は想像していたよりも軽傷だった。

 検査のために入院していたが、夕方には退院する見込みだ。九校戦九日目に行われる本戦ミラージ・バットにも出場許可が下り、これには真由美も一安心。真由美がメンバーたちに連絡すると、皆一様にホッと胸を撫でおろしていた。

 

 しかし少なからず競技に影響することは確かである。

 軽傷と言えど万全の状態で試合当日を迎えられるかは不明瞭。試合前の練習・調整をどうするか等の問題もある。それでも真由美が代役を立てなかったのには、とある人物の説得があったからだ。

 

「遥が?」

「ええ、はるか君がどうしても摩利を試合に出させてくれってお願いされちゃってね。頭を下げられた時は私も十文字君も愕然としちゃったわ」

「何であいつが……」

 

 摩利が気を失っている間、真由美と克人はこれからについて話し合っていた。内容は『ミラージ・バットで代役を立てるかどうか』について。

 

 検査結果は腹部の打撲という軽傷。すぐに痛みは無くなり、お腹の痣も消えるとのこと。

 ただ、万全を期するならば新人戦より本戦に戦力を集中する作戦を取るべきだった。つまりは摩利の代役として新人戦ミラージ・バットに出場予定だった深雪が本戦に出場するというもの。

 

 最終決定は真由美にあるが、真由美は摩利が起きてから彼女の体調を見て決めるつもりだった。しかし遥の熱い告白に情が移った。

 

 

 

 遡ること数時間前。

 

『どんな結果になろうと渡辺先輩をミラージバットに出場させてあげて欲しいんです。お願いします!』

 

 検査が終わり病室のベッドで眠りにつく摩利の隣で遥が真由美と克人に頭を下げた。

 

『どうしてお前が頭を下げる?』

『彼女の努力を知っているからです……練習期間中、誰よりも先に練習を始め、誰よりも遅くまで練習していたのは彼女です。この九校戦に懸ける思いは人一倍強いはずです。そんな渡辺先輩、摩利ちゃんの努力を、最後の九校戦の舞台で羽ばたかせてあげてほしいんです』

 

 摩利は元々魔法の才能があったわけではない。否、百家支流の家系である渡辺家の娘に魔法の才能が無いということはない。真由美や克人と比べて魔法の才能が無い、ということだ。

 彼らは十師族の人間。普通に勝負すれば勝てないのは必然である。

 しかし摩利は才能で勝てないなら、才能に勝る努力をすればいいと誰よりも鍛錬を続けた。

 

 その道のりは決して簡単なものではない。苦痛と苦悩の連続だ。だが彼女は努力し続けた。そして真由美や克人と肩を並べるところまで達し、三巨頭と呼ばれるまでに成長を遂げた。

 

 練習期間中、遥は軽い気持ちでどうしてそこまで練習するのかを摩利に尋ねた。すると摩利は九校戦に懸ける熱い思いを遥に告げるのだった。

 

「高校最後の九校戦。悔いが残らないようにやれることは全部やって燃え尽きたいんだ。出られなかった同期の分まで……あたしの身体には三年生全員の想いが詰まってるんだよ。練習不足でした。体調が悪かったで負けることは決して許されない。だからあたしは休む暇があったら練習するのさ」

 

 選手全員が摩利と同じような気持ちを持っているとは限らない。けれど、摩利は人一倍責任感が強く、姐さんと慕われる存在。九校戦に懸ける思いは格別に強かった。

 

 そのときの摩利の凛々しい横顔を遥は忘れないだろう。そしてそんな摩利に欲情した遥は摩利に「練習しすぎて怪我したら元も子もありませんし、息抜きとして一週間に一度のアレ、やりますよ」と迫ったのは言うまでもない。

 

 勇ましい頬が徐々に赤面していく姿を見ながら、必死に声を我慢して自分に抱きついてくる摩利を思い出していると、克人が口を開いた。

 

『バトル・ボードで想定外の結果に終わり、優勝確実とは言えなくなった。宮守、お前は渡辺一人のためにチームを犠牲にしろと言うのか?」

 

 克人の厳然な雰囲気に隣にいる真由美でさえ身構えるほど空気がひりつく。並の人間では口を開くことすらままならない状況に、遥は微笑みながら克人を見た。

 

『摩利ちゃんの分のポイントは俺が稼ぎます。アイスピラーズブレイク、そしてモノリスコードで優勝します。モノリスコードで優勝すれば本戦の優勝獲得ポイントと同じですし、お釣りがくるはずですよね?』

『優勝できると思ってるのか? お前が出る種目は二つとも、あの『一条』が立ちはだかってくるぞ』

『優勝します。優勝して見せますよ』

 

 そう言いながら不敵に笑う。

 何の根拠もない自信だ。実績も信頼も乏しい一年生の言葉だが、克人の声に即答した瞬間、病室に一筋の風が吹いた。克人の重厚な威圧感を破る爽やかな風が彼らを包み込む。

 

 腕を組んだまま仁王立ちの克人。口を閉ざしたまましばらく遥の瞳を見つめ、そして真由美の方へと身体を向けた。

 

『七草、あとはお前が決めろ』

『ええっ!? わ、私が!?』

『お前がリーダーだ。俺はお前の決定に従う』

『えぇっ……』

 

 不意を突かれて代表としての仮面が外れてしまっていた。ここまで話しておいて? と、不満そうに克人を睨むが、克人は口角を上げながら真由美に宣言した。

 

『俺は宮守の意見を支持する。渡辺に任せようと思う』

『十文字君?』

『宮守。渡辺が出ないと言ったらどうするんだ?」

『……あの人は骨が折れてようが必ず出ると言いますよ。そういう人ですから』

『なるほど、確かにこいつはそういうやつだ』

 

 可愛らしい寝顔を見せる摩利を囲いながら男二人は笑いあう。

 

 遥の言葉は何の根拠もない自分勝手な感情論に過ぎない。摩利が事故に遭ったように、百パーセント勝てる保証はない。にもかかわらず、遥の言葉は克人の堅牢な心を動かした。

 

『後輩にここまで言われて、俺たちが覚悟を決めないわけにはいかないだろう』

『十文字君、それってもう答えが出ちゃってるじゃない。私に聞く意味あるかしら?』

『これは俺の気持ちというだけだ。別に強要してるわけでは断じてない』

『半ば強要じゃないのよ……はぁ、わかったわ、そもそも私も最初から摩利を外すことは考えていなかったし、摩利に出てもらいましょう』

『ありがとうございます』

 

 真由美はそこで初めて遥の少年のような笑い顔を見た気がする。思わず見惚れてしまい、頬を赤らめた。

 

『ありがと真由美ちゃん。大好きだよ』

 

 思わぬ遥の一言に顔中真っ赤にさせながら克人に言い訳を始める。

 

『ふぇえっ!? ちょ、ちょっとは、はるか君!? じゅ、十文字君ち、違うのよこれは別にそう言う事じゃなくて、先輩後輩として好きってことなの、決してそう言う事じゃないからね!!?」

 

 早口で捲し立てる。

 

『……うむ、俺はピラーズブレイクの決勝リーグの準備があるからそろそろここを発つとしよう』

『ちょっと十文字君!?』

『会頭、優勝のお手本を見せてください』

『任せろ』

『ちょっと二人とも~!?』

 

 

 

 

 

 

「ってことがあったのよ」

「そうか、あいつが……」

 

 摩利に全てを話すと、ベッドで横になっていた摩利は真由美に背を向けた。

 

「あれ、摩利、もしかして照れてる? 嬉しくて照れてるんじゃないの?」

「う、うるさいぞっ、近寄るな、少しは病人を労われ!」

「病人って軽傷じゃないの。あぁ~摩利の耳が真っ赤になってる~いいなぁ摩利は後輩に慕われて~」

 

 小悪魔の仮面をかぶった真由美の摩利に襲い掛かる。しかし摩利の思わぬカウンターに真由美の顔が一気に赤くなることに。

 

「お前だって、あたしが寝てる横で遥とエッチなことしてたくせに……って、あっ」

「えっ……ま、まり、あなた……まさか、起きてた、の?」

「……あんだけ大きな声で叫んでたら起きるだろ、まったく」

 

 しまった、と頭をかく摩利とは対照的にかぁぁあっと、真由美の顔が紅潮していく。それこそリンゴやトマトと表現した方が正しいほど綺麗な赤色が顔全体に広がる。

 

「ま、ままり? そのことは誰にも……」

「言えるわけないだろ誰にも。お前と遥が肉体関係にあるだなんて言ってみろ。一高だけじゃなく魔法師界全体が荒れるぞ」

 

 十師族である『七草』家、長女の真由美と日本の不動産王と呼ばれる『宮守』家、長男の遥のスキャンダルは魔法師界だけではなく財界にも影響を与えかねない出来事だ。

 勿論、やましい気持ちなど存在しない、純粋な恋愛関係であれば問題は無い。

 

 しかし真由美には婚約者が、遥には恋人がいるため、この事実が公になれば二人の、もしくは二人の家の足を引っ張りたい連中が挙って二人を非難するだろう。

 

 真由美の場合は重婚制度に守られるが、遥は重婚制度を利用するために真由美を利用したと罵られ、なし崩し的に他の女性陣との関係も発覚するかもしれない。そんな爆弾に火をつける勇気は摩利には無かった。

 

「そう、よね。やっぱり私たちは……」

 

 『禁断の関係』と真由美が呟いた。哀愁漂う真由美に摩利は続ける。

 

「真由美は遥の事をどう思ってるんだ?」

「わ、わたし!?」

「お前以外に誰がいるって言うんだ」

「そ、そうよね……私は……」

 

 自分の気持ちに問いかける。

 遥の事を想像すると、すぐに笑った顔が浮かび上がってきて、年下とは思えない包容力ある姿が真由美の頭に広がった。

 

 先ほど自分と克人に迫ったときの遥の表情を思い出すと、カッコよかったなぁ、などと感想を抱き、生意気ながらも憎めない可愛さに惹かれていることに気づいた。

 

 そして何より、あの日の事を思い出すと真由美の身体に熱が帯びてくる。

 

「やっぱり、私は、はるか君の事が好き」

 

 摩利の問いかけから暫く時間が経ったが、真由美は明確に自分の気持ちを言葉にした。その声は摩利の耳にも届き、目尻を下げる。

 

「なら、もう答えは出てるじゃないか」

「答え?」

「遥と結婚しろ」

「えぇぇええええっっっ!?」

 

 病室に真由美の悲鳴が木霊する。

 

「な、何言ってるの摩利!? 結婚だなんてまだ早すぎるわっ、私たちは高校生なのよ?」

「もちろん今すぐと言ってるわけじゃないぞ」

「……ぁ」

 

 先走り液よりも濃厚な真由美の先走り。勘違いにより一段階顔面の赤みが増す。

 

「特に真由美は十師族で色々問題や障害があると思うが、お前の気持ちが本物なら心を決めておくべきだ」

「私の心……」

「あれほど結婚するまでは純潔を守り続けるべきだと豪語していたお前が身体を許したんだ。そのくらいの覚悟があってしたんだろ?」

「……うん」

 

 真由美は小さく頷いた。

 

「でも、私たちだけの気持ちじゃどうにもならないこともあるのよ」

「……あたしには十師族のしがらみはわからない。けど、親友としてのアドバイスくらい聞け」

「ふふっ、ありがと。でもベッドに寝転がりながら言われても説得力ないわよ」

「馬鹿者。こう見えて腰を浮かせて腹筋を鍛えてるんだぞ」

 

 摩利なりのジョークで場の雰囲気が和らいだ。

 

「摩利はどうなの?」

 

 そこに真由美が爆弾を投下する。

 

「あたし?」

「摩利だってはるか君とエッチなことしてるじゃないの」

「なぁっ!?」

「私、見ちゃったのよね。貴女とはるか君が二人きりでひと気の無いところに行って抱き合ってるのを。キスしているところを」

「キスはしていないぞ!」

「でもキスされていたじゃない」

「っっ」

 

 目には目を歯には歯を。カウンターにはカウンターを。真由美のパンチが摩利の急所を捉えた。

 真由美の顔の赤みが摩利にも伝染する。

 

「修次さんとなかなか会えないってボヤいてたけれど、恋人の居ぬ間に浮気かしら?」

 

 あえて茶化すような口調で聞くことで、真由美なりに摩利の気を遣ったつもりだった。だが、真由美が想像していた以上に摩利の気持ちは冷めてしまっていたようだ。

 

「修は優しいから無理やりああいうことはしないしな」

「ああ言う事ってキスとか?」

「あぁ」

「キスしてほしかったってこと?」

「……ムードとか雰囲気とかはそれなりに欲しいが、付き合って一年以上経つのにキスするどころか手を繋ぐこともないんだ」

 

 摩利の恋人の修次は千葉道場で剣術を学ぶ武闘派。

 遥と違って硬派で奥手であった。

 

 しかしこの時代の男性は見た目は肉食系だが、中身が草食系な者ばかり。

 これは時代がそういう男たちを生んでしまったと言うしかないが、男たちの中にも婚前交渉は悪という考えを持つ者がいるのも事実。

 

 遥との交流によって男の身体の感触、匂い、息遣いを知ってしまった今の摩利には草食系男子では物足りなくなっていた。

 

 修次が悪いというわけではない。遥が摩利をそう変えてしまったのだ。時代の流れと遥の登場によって、摩利と修次が結ばれない世界が形成されていた。

 

「キスしてって言えばよかったんじゃないの?」

「あたしから? そんなはしたないこと言えるわけないだろ」

「……まぁ、たしかに?」

 

 真由美も遥の身体を知らなければ、女性から男性側に求めるのは、はしたない行為だと思っている。真由美には摩利、修次、二人の気持ちが痛いほど理解できた。

 

「修次さんとは別れるの?」

「……わからない。でもこのままじゃいけないとは思ってる。ちゃんとケジメはつけるつもりだ」

 

 摩利は遥との関係を修次に告げるつもりでいた。遥の名前は出さないが、浮気したことを話すのだろう。そもそも、口づけすら許していないあの状況を浮気と呼べるのかは怪しいところだが……。

 価値観は人によって異なるため、摩利にとってあれらの行為は浮気だったのだろう。

 

「もし修次さんが許したとしても、私が一発殴ってあげるわね」

「……たのむ」

 

 それが親友としての役目だから。

 

 摩利と修次の関係がどんな結果で終わろうと、次のステップに進むための贖罪はしなければならない。

 

「遥にも頼むぞ」

「えっ、あー……うん」

「おい、その空返事はしないやつだろ」

「だって好きな人に手を出すのは憚られるっていうか、無理?」

「はぁ……これが恋ってやつなのか?」

 

 恋は盲目。

 

 真由美と摩利の話は退院の手続きが終わるまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 彼女たちの心を弄ぶ悪の重罪人、宮守遥はというと、ようやく大会本部から解放されてホテルへと戻ってきていた。

 

 こってりと注意を受けて疲労困憊の遥だったが、達也から相談したいことがあるというメールを受けて一高の作業車へと向かう。

 

「来たけど……って俺だけ?」

 

 遥はバトル・ボードでの事故の原因についての相談だと思い、五十里啓や幹比古、美月がいることも想定していたが、作業車にいたのは達也だけだった。

 

「他の人には少しの間、外してもらった」

「ふぅん。それで相談って?」

「単刀直入に聞く。今回の事件はお前が引き起こしたものか?」

 

 達也の鋭い眼光が遥を捉える。しかし達也の眼には何も映し出さなかった。

 

「お前は、いったい何者なんだ……?」

 

 




摩利は彼氏がいるので扱いが難しい。
シリアス先輩はお呼びじゃないんですけど……。
シリアスな展開になるときは物語の終盤って相場が決まってますよね。

【次回の投稿は3月3日19時予定です】
やる気によっては3月2日に投稿するかもしれません。
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