※この作品はR-18です。

魔法科高校の性春生活   作:八住 楓

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3月3日投稿予定でしたがお礼を兼ねて投稿します。
これからも宜しくお願い致します。


第64話 達也とお話

 大会本部から解放された遥だったが、今度は原作主人公である司波達也から詰問を受けていた。

 

 作業車の中はモニターディスプレイの光しかなく、薄暗い事もあって妙な緊張感と威圧感が渦巻いているが、達也から敵対感情のようなものは見られない。

 

「俺が何者だって?」

 

 遥は近くにあった椅子に座って足を組む。達也に手のひらを見せながら、外国人のような大袈裟な反応を取った。

 

「どこからどう見てもそこらへんにいる男子高校生じゃないか」

 

 おどけてみせるが達也が求める答えではなかったようだ。

 

「それに、俺が何者だろうと俺が言いたくなければ言わないし、人には聞かれたくない事があるもんだよ。それこそ君にだってね」

 

 遥は達也の生い立ちを知っている。含みを持たせた言葉だったが、さすがに自分が四葉とかかわりがある事を知っていると思いもしない達也は気にしなかった。

 

「どうやらお前は誤解してるようだが、俺の質問の意図は、俺たちに害をなす存在なのかどうか、という事だ」

「敵じゃないと思うけどねぇ、俺はただ幸せに暮らしたいだけだし」

 

 遥にとって達也は敵ではない。

 

「じゃあ今回の件とお前は何も関係ないという事か?」

「今回の件がよくわかってないんだけど、摩利ちゃんと七高の選手がぶつかったことについて?」

「そうだ」

「七高の選手のミスなんじゃないの? で、摩利ちゃんが巻き込まれた。それで終わりじゃない?」

 

 遥は達也に真実を話す気が無いようだ。

 

「もしかして俺が、七高の選手を操って摩利ちゃんに突っ込むよう仕組んだとか思ってる? まさか、そんなことできるわけないじゃないか」

「俺は可能だと思っている」

「まじで?」

 

 今回の件に関しては関係ないとはいえ、想像以上に達也が自分を警戒していて驚く遥。そこまで目を付けられていたのかと目を丸くする。

 

「だが、それは『遥ならできる』という意味で、お前が犯人だと決めつけてるわけじゃない。可能性があるってだけだ」

 

 時期尚早かもしれないが達也自身、様々な疑問が折り重なり遥に追及せざるを得ない状況だった。

 

「遥であれば七高の選手を誘惑して言う事を聞かせることくらいわけないだろ?」

「いや、さすがの俺でも無理だからね?」

 

 達也は遥の事をどう思っているのだろうか。

 もしかしたら淫魔大王か何かで、遥の目的が『この世の女性全てを自分の支配下に置くことだ』、とでも考えているのかもしれない。

 そうであれば達也の問いかけにも納得がいく。

 

 遥の異常さに中てられて達也のIQが少々下がってしまっている感が否めないが、深雪にも魔の手が向かうかもしれないことを考えると、今のうちに釘を刺しておこうと思っていても不思議ではない。

 

「まあいいだろう。これを見てくれないか?」

「ん?」

 

 達也は卓上用のディスプレイを遥に見せる。画面は二分割されていて、バトル・ボード準決勝の映像とそれをワイヤーフレーム化したシミュレーション映像が表示されていた。

 

「今回問題視してることは七高の選手が渡辺先輩に突っ込んだ時、渡辺先輩の足元が不自然に沈んだことだ」

「ふーん」

「渡辺先輩の足元の水面が陥没したことでバランスを崩し、二人が衝突する原因となった。水面陥没が無ければ渡辺先輩の魔法が発動し、二人とも怪我をすることはなかっただろう」

 

 今は七高の選手が摩利に突っ込んだことは置いておく。

 

「これは事故の状況を分析したものだ。これによると水面を陥没させた力は魔法によるものとわかった」

「魔法ねぇ」

「水中に生身の人間が潜んでいたというのはあり得ない」

 

 水中に人が隠れていれば誰かが気づくはず。そして仮に姿を隠す隠蔽魔法を使っていたとしても、誰にも気づかれないまでに完璧に姿を隠す術は現代魔法にも古式魔法にも存在しない。

 

「ならば人間以外の何かが水中に潜んでいたと考えるのが合理的だろう」

「人間以外?」

「あぁ、そこで俺は精霊魔法を得意とする幹比古と霊子光に対して鋭敏な感受性を持つ美月に話を聞いた」

 

 少し前まで二人はこの場所にいたが、今は五十里啓や千代田花音らと一緒に外に出ている。

 

 九校戦の会場には不正防止のために魔法師が競技場に配置され、抵抗魔法によって外部からの魔法を無効化している。また、監視装置によっていつ、どこで、誰が魔法を使ったか全て記録されるようになっている。

 

 これらに反応が無かったという事は、今回水面を陥没させたのは外部からの魔法や他の選手ではないことが証明している。

 ましてや自然現象ではありえない。

 

「その二人から話を聞いたってことは精霊魔法を疑ってるのか?」

「そうだ。そして幹比古に話を聞いた結果、精霊魔法によって水の精霊が水中に潜んでいたという結論に至った」

「潜んでいた精霊が水中から水面を陥没させたというわけか」

「そうだ」

 

 水面を少し陥没させるだけであれば大きな力は必要ない。それこそ猫だまし程度の力でいいのだ。

 

「あー、だから美月ちゃんを呼んだわけね。美月ちゃんの眼なら精霊を視ることができるから。でもそれは眼鏡を外していたらの場合」

「それについては俺が安直だった」

 

 遥との行為によって少しずつ眼の力をコントロールできるようになってきているが、遥が近くにいないと制御することはできない。そのため日常生活ではまだ眼鏡を必要としている。

 

 眼鏡を付けて試合を観戦していた美月が精霊の存在を視ることは不可能だった。

 

「普通の魔法師は潜伏状態の精霊……霊子を知覚することは困難だ。それこそ美月のような特殊な眼を持っていないとな」

 

 達也の眼が遥に向けられる。

 

「遥、お前は前に実験棟で幹比古が発動させていた精霊の色を美月同様見分けることができていた。なら、水中に潜んでいた精霊を見つけることもできたはずだ。なのにどうして何も疑問に思わなかったんだ?」

 

 達也が遥を疑う最大の理由がそれだった。

 

 達也は遥の力を認めているからこそ、遥ほどの人間がそれを見落とすはずが無いと疑問を抱いた。

 現に遥は事故現場から最も近い客席を歩いていた。気づかない道理がない。

 

「水中に精霊がいることを不思議に思わなかったのか?」

「ふっ、おかしなことを聞くんだね。バトルボードのコースは全長三キロ。しかも客席から直接見ることができるのはスタート位置と最初の直線、それとゴール周辺だけだよ? まぁ事故現場はギリギリ見ることはできたかもだけど、事故が起こった時、俺は観客席から落ちて競技エリアにいたからフェンスのせいでコースは見えなかったし、精霊も見えなかったね」

「事故現場に一番近い場所を歩いていたじゃないか」

「……へぇ知ってたんだ」

「試合前にお前の姿を確認している。客席から落ちたこともな」

 

 まさか見られていたとは思っていなかったため驚く遥。しかし、見られていることも想定しての行動だ。

 

「だったら俺がコースの方を見てないこともご存じじゃないのかな?」

「遥お前はトイレに行くと言って席を立ったそうだな。あの周辺にトイレはない。ならなぜあの場所にいた。それは精霊に気づいて確認するためだったからじゃないのか? それとも精霊を仕掛けた本人か」

「誘導尋問じゃん」

「答えてくれ。俺はお前を信じたいんだ。俺にお前が無実だという事を信じさせてくれ」

「意地悪だなぁ、それは悪魔の証明じゃないか」

 

 達也の睥睨をもろともせず、遥は椅子を回転させながら髪の毛を靡かせる。

 

「答えろ」

 

 椅子の背もたれを押さえて遥の顔に覗き込む達也。まるでキスする五秒前の距離感だが、決してBL的展開が始まろうという空気は無い。

 

 遥の能力は異性だけが対象だ。遥の匂いに興奮して達也が襲い掛かることはあり得ない。

 

「あの場所にいたのは本当に偶然だよ。あの席の近くに他校の可愛い女の子がいてね。ナンパしようと思って向かったんだよ」

「ナンパ?」

「そんなこと正直に言えるわけないだろ? だからトイレに行くって誤魔化したんだけどさ、それが原因でこんな攻められるとは思わなかったなぁ。まぁ自業自得だね」

 

 達也の表情に落胆が見える。それは正直に話してくれなかった失望か、はたまた想像していた答えが返ってこなかったやるせなさかはわからない。

 

「女の子に目を奪われてよそ見していたら人とぶつかっちゃってねーまさか客席から落ちるとは思わなかったよ。まぁそのおかげで一番に摩利ちゃんの元に駆け付けられたからよかったかもしれないけど」

「そうか」

 

 達也は椅子から手を離して恋人から友達程度の距離感に戻る。

 

「だから精霊を見てないし、俺は無関係だ。としか言いようがない。それを信じてもらうしかないね」

「……その言葉、信じていいのか?」

 

 数ある可能性の一つ。それが『遥、犯人説』だ。しかし現実的に考えればありえないことは達也も重々承知済み。それくらい遥の行動一つ一つが達也にとって怪しいモノだった。

 

「俺が大好きな摩利ちゃんが傷つくのを黙って見過ごすと思う?」

 

 身体を貫く衝撃。これほど説得力のある言葉を達也は聞いたことが無かった。

 

「……それもそうか」

 

 女性関係に対しては超がつくほどだらしない存在。だが同時に遥の行動原理が『女性にモテるため』と考えれば全ての行動にも合点がいく。

 

「お前が女子からの印象を良くするために白馬の王子様を演じ、わざと事故を誘発するような糞野郎じゃない限り、遥の言葉を信じるとしよう」

「信じられてない気がするけどまぁいっか」

 

 一先ず達也の疑いは晴れる。

 

「疑ってすまなかった。少し神経質になっていたようだ」

「いいってことよ。俺も摩利ちゃんが事故に遭って動揺していたし、俺が水中に精霊がいることに気づけていれば今回の事故は起きなかったかもしれない。俺にも責任はあるよ」

「そんなことはない。今回は防げなかった事故だ」

 

 そうだろうか。と遥は一瞬顔を顰める。本当に他の方法はなかったのかと自問自答するが、答えは見つからない。

 

「あ~でも友達に疑われるのって辛いなぁ。病んじゃうわぁ、明日から新人戦始まるって言うのにメンタルブレイクだわ~冤罪きちぃ~」

「……」

「ただ謝ってもらうだけじゃ立ち直れる気がしないかもー」

「……何が望みだ」

「可愛い女の子とデートできたらメンタルリセットできるかもしれないな~どこかに黒髪ロングの美少女いないかなぁ、俺と同い年でお兄ちゃんがいる女の子なら尚良しだし生徒会に入ってるような真面目で責任感の強そうな子だと気が合うかも~」

「……この件に関して深雪は関係ないだろ」

「あー深雪ちゃんなんてこの条件にぴったりだね!」

「遥お前……」

 

 今回の件に関しては達也に非があるため強くでることができない。しかし大事な妹を遥と二人きりにしてはいけないと失われた感情が訴えかけてくる。

 

「俺も同伴するならのんでやらないこともない」

「デートにお兄ちゃん同伴はきちぃって~そこまで過保護にすると嫌われちゃうよー」

 

 だがこの辺りが妥協点だろう。

 

「なにも深雪ちゃんの気持ちを無視して強制的に俺とデートさせろって言ってるわけじゃないよ。俺が深雪ちゃんをデートに誘うからそれとなく協力してくれってことさ。自分の手で女性を振り向かせないと意味ないしね」

「深雪が断った場合はどうなる」

「その場合は男らしく手を引くよ」

「お前には恋人がいるだろ」

「美しい花は両手いっぱいにして愛でたいものなんだよ」

 

 遥の毒牙にかかるのは反対だが、遥以上に女性に尽くす男を達也は知らない。

 深雪が望んだ場合は仕方ないと諦める。

 

「わかった。だが無理やり深雪をどうにかしようとした場合、お前を……消す」

「あ~こわっ」

 

 一瞬、明確な殺意を向けられ遥は自分の身体を抱きしめる。

 遥からすればダメージはゼロだが、微動だにしないのも怪しまれると思い身体を震わせた。演技派俳優も驚きの迫真の演技だ。

 あざとくも目を見開かせて達也から距離を取る遥。今度宮守グループのCMに出演することが決まったが、そのまま演技派俳優として芸能界入りも夢じゃないかもしれない。

 

「それともう一つ聞きたいことがあるんだが」

「ん? 俺は深雪ちゃんのこと好きだよ」

「そんなことを聞きたいわけではない」

「絶対に深雪ちゃんのことを幸せにする自信はある」

「……渡辺先輩と七高の選手が衝突した後、障壁魔法が展開されたと思うが、それを展開した人物に心当たりはないか?」

「大会運営の関係者じゃないの?」

「……違う」

 

 達也は断言する。まるで障壁を展開した人物に心当たりがあるかのような言い方だ。

 

「さぁ? 俺には心当たりはないかな。来賓には著名な魔法師が来てるし、今年は十師族当主も来てるって話じゃないか。その誰かってこともあるんじゃないの?」

「……」

「まあ俺は嘘つきだから本当のこと言ってるとは限らないけどね~」

「それはどういう意味だ」

「おっと、帰りが遅いから心配だ、寂しいって恋人から連絡が来ちゃった。じゃあまたっ」

「おい遥!」

 

 珍しく達也は声を荒げたが、手を伸ばして遥を掴むより先に遥は作業車を飛び出した。

 虚しく空を切り、さっきまで遥が座っていた椅子に腰を下ろす。そこに座っていた人物の温もりを感じながら、いま遥が言った言葉の意味を考える。

 

「本当のことを言ってるとは限らない……?」

 

 それは摩利の事故の真実を隠しているという事か、障壁の使い手を知っているという事か。それとも自分を疑ったことに対する遥なりの意地悪だったのか、五十里啓たちが戻ってくるまで頭を悩ませる達也だった。

 

 




今回に関して達也は本気で遥が犯人だと思っているわけではありません。
入学編での図書館にいた事だったり、会場へ移動中のバス内での出来事、今回の出来事など、遥の怪しい行動がちりつもとなった結果、今回のお話となりました。

遥が嘘をついている件についても、恋人には本当の事を言うかもしれませんが、現状達也に真実を話す事はありません。

最近重たい話ばかりなので次回★回かも!?

【次回の投稿は3月4日19時予定です】
今回1日早く投稿したので3月5日になるかもしれません。
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