九校戦四日目、新人戦一日目。
本戦は一旦休みとなり、今日から五日間一年生のみが出場できる新人戦が行われる。
現在の九校戦総合順位は一位が一高、二位に三高がつけていた。両校のポイント差は百点をきっており、新人戦の結果次第では逆転があり得る状況だった。
三高には十師族の『一条』や師補十八家の『一色』。さらには吉祥寺や十七夜、四十九院など前評判の高い選手が多く新人戦に出場する。
九校戦三日目のバトル・ボードで男女ともに優勝し、三高選手たちの盛り上がりは最高潮。
大会が始まる前から新人戦は三高が有利と言われており、逆転総合優勝へ向けてのお膳立ては整っていた。
三高の新人戦トップバッターは十七夜栞。栞は空間把握能力、演算能力に長け、見たモノすべてを瞬時に数式化し、魔法に応用する特別な眼を持っている。
スピード・シューティングは彼女の庭と言っても過言ではなかった。三高メンバーは彼女の優勝を信じて疑わない。予選一番手に登場した選手の試技を見るまでは……。
新人戦女子スピード・シューティング予選。試技の最初に登場したのは雫だった。その小さな身体に会場中の視線が向けられる。
雫は会場に姿を現すと、ふと一般観客席へと視線を送る。そして恥ずかしそうに小さく手を振ると射撃位置へと移動した。
雫が手を振った先には、例のごとくいつものメンバーが陣取っていた。
「可愛い幼馴染から手を振られた感想はどう?」
「本当に可愛いね。それに今日の雫ちゃんは可愛いだけじゃなくてカッコよさもある」
隣に座るエリカに茶化された遥だったが、飄々と答える。エリカはその答えに面白くなさそうに唇を尖らせた。
「ちょっとは照れたりしなさいよね~」
女誑しである遥がこの程度の事でひるむことはない。むしろ自信ありげに答えていた。
エリカと遥が仲良く話している隣では、パンフレットに目を通していた美月がほのかに話しかけていた。
「ほのかさん、準備はいいんですか?」
パンフレットには競技スケジュールが記載されている。そこには今日の午後から新人戦女子バトル・ボードの試合があることが書かれていた。
「大丈夫です……。私のレースは一番最後だから」
ほのかは少し硬い笑顔で答え、深雪が呆れ顔で口をはさんだ。
「ほのか、今から緊張していては試合までもたないわよ?」
「うっ、わかってるんだけど……」
摩利の事故の影響は無い。それは昨日の遥とのやり取りで消し去られたが、いざ、自分の試合が近づいてくると緊張して硬くなってしまう。
昨夜も遥との性行為が終わってから眠りについたほのかだったが、すぐに緊張で目が覚めてしまい、そのたびに遥が話し相手になっていた。
今は自分の試合を考えすぎないようにと、雫の応援に来た。しかし、真面目な性格のほのかは会場の雰囲気に呑まれてしまい、逆効果だったのかもしれない。
「本戦よりはお客さんも少ないんですけどね」
美月の呟きに反応したのはエリカと遥だった。
「朝一だからでしょ。この前は会長が登場するからって満席だっただけでこれが普通よ」
「まぁこれから徐々に人は増えてくるだろうし、午後からは美少女が登場するから会場いっぱいに客が入ると思うよ」
「ばかっ、ほのかのプレッシャーになるようなこと言ってどうするのよ!」
「ほのかちゃんはこのくらいで潰れるようなそんなやわな子じゃないよ。ね?」
「……はいっ」
胸はトロトロのプニプニに柔らかいけどね、と、最低な事を思いながらほのかに微笑みかける遥。
「それにほのかちゃんは約束してくれたし」
「約束?」
「うん。自分が俺にとって自慢の彼女だってことをみんなに証明するってね」
こんなガチガチに緊張した人が、そんな強気なことを言ったのかと全員の視線がほのかに向かう。
ほのかは「はうぅっ」と赤面させて俯いていたが、遥から手を握られると顔を上げた。
「それでほのかちゃんから勇気を貰って、俺も明日の試合頑張るんだ」
「私から勇気を……?」
「俺だって緊張はするよ。緊張で手が震えることだってある。でもそう見えないのはほのかちゃんがいてくれるからだよ」
「えっ?」
「もちろん雫ちゃんや、今だったらエリカちゃんや美月ちゃんがいてくれる。ついでにむさくるしい男友達もいるけど」
「俺たちはついでかよ!」
レオのツッコミには応えない。エリカの『空気を読め』という無言の圧力を感じてか、レオは口を閉じた。
「ほのかちゃんにも俺たちがついてる……俺のために勝ってよ」
「はる君……」
「って言ったら頑張ってくれる?」
ほのかの眼が輝いた。
頼ってばかりではなく遥の役に立ちたい。最近のほのかは、遥に頼りきっている自分の情けなさや不甲斐なさに辟易していた。
遥から距離を取り、相応しい女になるため自分を鍛えなおすことも考えていた。しかし初めて自分を頼ってくる最愛の人が目の前にいた。
遥と触れ合い、結ばれている時間が最も快楽を感じる瞬間だとすれば、今は最も心から喜悦に浸れる瞬間だった。
「はいっ、頑張りますッッ!!」
遥の手を自分の胸に押し当てて両手で包み込む。
その場に桜が爛漫と咲いたように、エリカや美月、深雪までもが頬を赤らめるような艶然とした笑みを見せる。
男性陣が見惚れていたのは言うまでもないが、遥の手がほのかの豊満な胸に呑み込まれているのを羨ましく思っていたことは秘密である。
「そろそろ始まるな」
「今年の新人はどうなんだ?」
周りの客の呟きで深雪たちは視線を移す。
既に雫はシューティングレンジに立っていた。あとは開始の合図を待つだけだけだ。
「さっき、バトルボードでほのかちゃんのエンジニアのあーちゃんと話したんだけど、ほのかちゃんの試合の補佐は俺が就いてもいいって言われたよ」
「えっ!? ホントですか!?」
静まり返った会場で、ほのかの喜悦とした声が遥の耳に届く。
九校戦では試合に出場する選手の他に、選手一人につき補佐の者が一名、競技エリアでの観戦が認められている。
これは選手に何か問題があればすぐ対応できるようにと定められた制度だ。試合中にCADの調整ができないとはいえ、エンジニアの生徒が補佐に就くことが多い。
競技によっては補佐をつけない学校もあるが、エンジニアだけが選手を支えているわけではない。
ほのかにとっては最適任者が補佐になった。
ほのかの心が躍っている間にスタートのランプが点り、試技が始まった。
ランダムにクレーが射出され、得点有効エリアにクレーが入った瞬間、それは、粉々に砕けた。
次のクレーは中央で、次はエリアの両端で二つ同時に砕け散る。
「うわ、豪快」
エリカがシンプルな感嘆を漏らす。
大勢の観客からも嘆声が漏れている。
「もしかして有効エリア全域を魔法の作用領域に設定しているんですか?」
美月の質問にほのかが答える。
「そうですよ。領域内の固形物に振動波を与える魔法でクレーを砕いているんです」
「振動であんなに粉々になるものなの?」
美月に続いてエリカも疑問を口に出す。
「それは『疎密波』だからですよ。固形物は内部で部分的な膨張と収縮を繰り返すことで脆くなって崩れやすくなるんです」
「へぇ~」
「急加熱と急冷却を繰り返すと硬い岩でも脆く、崩れやすくなるのと同じ原理ですね」
疎密波を与える具体的な仕組みとしては、有効エリア内に一辺十メートルの立方体を設定し、その各頂点と中心の計九つのポイントを震源とする。起動式にその番号を入力すれば、震源ポイントを中心に半径計六メートルの球状破砕空間が形成される。
それがこの魔法だ。
見る者によっては余計な力を使っているような印象を持つだろう。
もっと細かく座標を設定すればこれよりも微小な力でクレーを破壊することも可能。
雫は座標設定は苦手ではない。むしろ一番近くにいる人間が、細かく座標設定する魔法を使う為、雫も座標設定、つまり精度の高い魔法を得意としていた。
しかし、この魔法は精度よりも威力に重きを置いた魔法である。精度を犠牲にする代わりに威力と速度を上げているのだ。
このスピード・シューティングという競技の特徴として、選手の位置、有効エリアとの距離、エリアの広さが常に一定だ。つまり、この魔法では、それらが起動式の定数として処理されている。故に雫は九つの番号から設定し、事実上、引き金を引くだけでクレーを破壊することができてしまう。
演算領域のポテンシャルをフル活用することができ、魔法の連続発動も、マルチキャストも思いのまま。
雫の処理能力があってこその魔法だ。
この魔法の固有名称は『
試技は終盤に差し掛かり、雫はいまだパーフェクトだ。
新人戦でパーフェクトを出すのは真由美以来二年ぶりの快挙となるが、順調なペースでクレーを粉砕していく。
ほのかたちはパーフェクトを期待して頬を綻ばせていたが、最後の一発を外してしまった。
「あぁー」
「おし~~!」
美月やエリカ、会場からは落胆のため息が聞こえてくる。
「雫、最後だけなんか変じゃありませんでしたか?」
「そう? 気、抜いちゃったのかな」
「そうかなぁ……」
さすがは一番の付き合いが長いだけあって親友の微々たる変化に気づいた様子。しかしそれがなぜなのかはわからなかったようだ。
遥はにんまりと微笑みながら立ち上がる。
「はる君?」
「トイレ行ってくる」
「あ、じゃあ私も……」
そう言ってほのかも立ち上がる。
「ならあたしも行こうかな」
「え、じゃあわ、わたしも……」
エリカや美月も立ち上がった。
「一気に行って大丈夫かな?」
四人が立ったことでできた空席を見る。
「あーじゃああたし後ででいいわ。こいつらの中に深雪だけ残していくと何されるかわからないし」
「あぁん?」
エリカの煽りにレオが反応するが、シッシっと追い払う仕草を取る。さらに煽っているのがわからないのだろうか、それともわざとなのかはわからない。
「私は美月と一緒に行くのではる君は先に行ってていいですよ」
「そう?」
「はい。女子トイレは混みますからね」
「じゃあ、そうしよっかな。もしナンパされたりしたら俺の名前呼んでね。すぐ駆け付けるから」
巨乳二人が並ぶと壮観なものがあり、男であればついつい目線が向いてしまうのは仕方がないことだ。しかしだからといってナンパしていい理由にはならない。
ボディーガードしようにも、遥には別の目的があり、彼女たちと一緒に行くことはできなかった。
「じゃあまた後でね」
「はーい」
遥は客席を後にした。
雫の試技を観戦した三高の天幕では、泡を食ったように狼狽していた。
「どうなってるんだいったい!?」
「あんなの見たこと無いぞ!」
試合前の目算では、栞の脅威になりそうな選手はいなかった。しかしいざ蓋を開けてみると見たことのない魔法の連発。
惜しくもパーフェクトは逃したものの、三高メンバーに激震が走った。
同じ天幕内にいた愛梨も動揺こそしたものの、冷静に栞へ尋ねる。
「栞、今の戦法がわかった?」
「ええ」
栞の眼は雫の魔法の特性を的確に捉えていた。
「おそらくこの戦法からいって北山選手は細かな範囲指定が苦手。二種のクレーが飛び交う対戦形式ではより高い精度が要求される。けれどそこは私のテリトリーよ。演算能力を駆使すれば彼女の魔法など脅威ではない」
「さすがの分析ね」
「あれだけの威力を百発も。試技は六回あるから午後の決勝トーナメントでは疲れもあると思う。最後の一発を外したみたいにこれからミスも増えるでしょうね」
栞の分析はお見事としか言いようがない。けれど、二つ、彼女が見誤ったことがある。
一つは雫は範囲指定の魔法が苦手ではないという事。そしてもう一つ。雫の体力は実質無限だという事だ。
遥と性行為することで魔法力は上昇するため、どんな威力の魔法を何発放とうが疲れることはない。肉体的な疲弊はあっても、心は常に満たされたまま挑むことができる。
さらに言えば、最後の一発を外したのも不可抗力が働いたからとも言える。雫の身に起こった異変。それに気づかなければ栞に勝機はないだろう。
栞は自信ありげに試技のため、競技エリアへと向かった。
愛梨も途中まで一緒についていき、関係者専用エリアのトイレの前で別れた。その後すぐに、とある人物がやってきたため女子トイレに隠れることになったが、愛梨は女子トイレに隠れたことを後悔するのだった。
「お疲れ様」
試技を終えた雫が選手控え室へと戻ってきた。
エンジニアの達也は立って雫を出迎えると、持っていたCADを交換する。
「まずは予定通りだな」
「なんだか拍子抜け」
「最後の一発はどうしたんだ? 何か問題でもあったか?」
「ううん。ちょっと目が痒くなって目を瞑ったら間違えただけ」
「……そうか」
「うん。ちょっとお手洗いに行ってきてもいい?」
「ああ、あと三十分近くは時間があるから、十分前に帰ってきてくれれば大丈夫だ」
「わかった。じゃあ行ってくるね」
本当にトイレなのか、と達也は疑問に思ったが、それを女子に聞くとセクハラで訴えられかねないため口にはしなかった。
試技に行くときと、帰ってきてから雫の歩き方が不自然に変わっていたのに気づいていたが、無言のままCADに目を移す達也だった。
トイレに向かった雫は、ある人物を見つけると内股のまま駆け出した。
「ハルカ!!」
「雫ちゃん、すごかったよ」
雫はそのまま遥の胸に飛び込んだ。
この場所は関係者エリアで各高校の関係者しか入れないが、人目が無いわけではない。偶然周りには誰もいないが、雫が外で抱きつくのは珍しい。それには理由があるのだが……。
「そ、それどころじゃない……ハルカの、ばぁかぁ……っ」
あれだけ迫力満点の演技をした人物とは思えないしおらしい態度。声がかすれ、目には涙を浮かべている。
「どうしたの?」
「もうだめっ……こっちきて」
雫は遥の手を引きながら女子トイレへと駆けた。個室に入ると鍵を閉め、遥を便器に座らせる。
幸い入るところは誰にも見られず、トイレの中も静かだ。
「エッチしたくなっちゃった?」
「違うもん……ばか」
「んふふっ……」
雫はユニフォームを脱ぎ始め、上は下着姿、下は何も穿いていない状態になった。
欲情した雫が遥をトイレに連れ出し、これからおっぱじめるのかと思われたが、そうではない。
遥の視線からは見えないが、雫の後方……お尻の穴からあるモノが生えていた。
「あら、雫ちゃんは猫ちゃんだったのかな?」
「ぅぅぅっっ……」
「ふふっ。最後の一発外したのってやっぱり……」
「ハルカのせい……ハルカがスイッチ入れたから」
雫の言葉に遥は悪い笑みを浮かべながら、ポケットから小さなボタンを取り出した。そして何事もなかったかのようにスイッチを押した。
「あああっッッ、ダメッ……ッッ。んはぁっっ……はぁっ、ハァっハァッ……」
すると急に雫が喘ぎ出し、遥の胸に倒れこむ。
「気持ちよさそうだね」
「バカバカっ……!」
「まさか、あんなに大迫力の演技をした人のお尻の穴にアナルビーズが入ってたとは誰も思わないよね」
そう。今、遥が言った通り、雫のお尻の穴には長さ二十センチほどの電動アナルビーズが挿入されていた。遠隔操作が可能で、どこにいようとスイッチを押すとそれがくねくねと動き出してしまう。悪魔の棒だ。
先ほど行われた試技の最後の瞬間、遥は皆に隠れながらそのスイッチを押した。
試技の最中だった雫は、最初こそ気づかなかったが、あまりの刺激の強さに魔法の制御を誤り、パーフェクトを逃してしまった。これが真実である。
雫のミスではない。遥のせいなのだ。
「許さないから……」
「それはスイッチを押したことに?」
「……うん」
「でもソレを挿入るって言ったのは雫ちゃんからだよね?」
「……だって」
雫は遥に抱きつきながら、右手を自分のお尻へと伸ばした。
「ンンぁっ……なかぁ、ゴリゴリって……ンンッ……ぁ、ぁはっ……ンンンッゥっ……」
ヌチュッ……ヂュボォッ……と音をたてながらゆっくりとソレが抜かれていく。
「ハァッ……ハァッぁ……」
「手伝おうか?」
「ダメッ! ハルカがやったら……だめだから……」
身体を痙攣させながら凹凸になった棒が雫のお尻から生えてくる。
ゆっくりと、徐々にソレの全てが雫の中から抜かれた。
「ハァッ……ぬけ、たぁ……」
アナルビーズを引き抜くと、雫のお尻から大量の白濁液がピチャピシャーッ、とトイレの床に巻き散った。
軽く精の匂いがしてくるが、すぐにトイレの芳香剤の匂いが香ってくる。
「あー床汚れちゃったよ?」
「……ハルカのせい」
「ふふっ、こんなにたくさん精液がお尻の中に入ってるのに試合してたんだ」
「……」
床に散乱する精液。
雫の体液で薄まってはいるが、それでも精液だと一目でわかる濃い白色をしていた。
「エッチな子」
「ッッッッ」
遥の言葉攻めに雫は顔を赤面させる。
「でも嬉しいな」
「嬉しくない。ハルカのせいでパーフェクト逃した」
「パーフェクト狙ってたの?」
「ううん、別に。でも取れた」
「俺はパーフェクトなんかよりも、大観衆の前で俺の精液をお尻の穴に入れたまま試合してくれたことの方が嬉しいし興奮したな」
「ドヘンタイ」
「雫ちゃんは人のこと言えるのかなぁ?」
試技の前に遥と雫がアナルセックスプラス性行為したのは事実だ。しかし、お尻の穴に大量の精液が入りっぱなしになってしまい、試合中に精液が漏れることを危惧した雫が遥の提案に乗ったのも事実。
遥の提案がアナルビーズで蓋をするという最低な提案だったのが運の尽き。試合時間に追われて雫の思考力が低下していたのも重なり、とんだ辱めを受けたのだった。
「ハルカの精力が強すぎるのが悪い」
「それだけ雫ちゃんの身体が気持ちよかったんだよ。それに雫ちゃんのことが好きすぎて我慢できなかったんだ」
「……そんなこと言っても誤魔化されないんだから」
「ちゅっ」
「んぅ、誤魔化されないから」
「んふっ……まだ時間ある?」
「……ある」
「じゃあ許してもらうまでこうしてる」
そう言うと、遥と雫は時間ギリギリまでトイレの中で甘い水音を響かせ続けた。
トイレ……?
サブタイトルは『雫の尻(試技)』だった?
【次回の投稿は3月10日19時予定です】